事業性評価、という言葉をご存知ですか?
これからの銀行融資には欠かせない、事業性評価による融資を引き出すポイントについてお話をしていきます。
もはや「知らない」とは言えない事業性評価について
会社・事業における銀行融資について。「事業性評価」という言葉をご存知でしょうか?
事業性評価は、次のように定義されています ↓
財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長性などを適切に評価すること
上記のとおり、借り手の「事業の内容」や「成長性」を評価しようというのが「事業性評価」です。
その「事業性評価」にもとづいて融資をしよう、という動きが、ここしばらくのあいだ銀行のなかで広がり続けています。
でも、待てよ。「事業の内容」や「成長性」を評価するなど、あたりまえではないのか? いまさらなんだ? と思われるかもしれません。
そのとおりです。事業性評価の考え方自体はとくに目新しいものではなく、むしろ、そもそも銀行にとって必要な「目利き(の能力)」だと言えます。
ところが。1990年代のいわゆる「不良債権問題」をきっかけに、金融庁主導のもと、「画一的・機械的」な融資が先行。その象徴が「金融検査マニュアル」です。
金融検査マニュアルとは、金融庁が金融機関を検査するときに考慮すべきことをまとめた手引書的なもの。金融庁の監督下にある銀行は、このマニュアルにしばられた、ということになります。
かくして、各銀行の目利きは鳴りを潜め、「画一的・機械的」な融資が浸透するにいたったわけですが。
数年ほど前、潮目が変わりました。その結果が、冒頭で触れた「事業性評価の広がり」です ↓
2019年には金融検査マニュアル廃止の流れもあり、事業性評価(つまり、各銀行の目利き)にもとづく融資が加速するものと考えられます。
そのような流れのなかで。おカネを借りる側の会社や個人事業者が、事業性評価による融資をうまく引き出すポイントについて、このあとお話をしていきます。次の3点です ↓
- 決算書の重要性は変わらない
- 銀行とより深いコミュニケーションをとる
- 事業性評価に役立つツールを使う
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行から「事業性評価」による融資を引き出すポイント
《ポイント1》決算書の重要性は変わらない
冒頭、「事業性評価とは?」というお話をしました。
事業性評価とは、借り手の「事業の内容」や「成長性」を評価する、ということでしたよね。
これにより、銀行融資の対象が従来よりも広がる、と言われています。
いままでは決算書の内容が良い「ローリスク先」に限られていた融資が、これからは事業の内容や成長性が良ければ「ミドルリスク先」まで融資が受けられる。
ところが、これを「拡大解釈」して、決算書をおろそかにするという誤解があります。
つまり。事業の内容が良ければ、あるいは成長性があるならば融資が受けられる。決算書(過去の数字)の内容は問われないのだ、という誤解です。
そんなことはありません。結論として、決算書の重要性に変わりはありません。
いくら「事業の内容」や「成長性」を評価すると言っても、それらはこれまでの「過去」と無関係ではなく、むしろ「過去」にもとづいていると言えます。
その「過去」を数字であらわした「決算書」が、もしもとんでもない赤字、とんでもない債務超過(資産よりも負債が多い)だとしたら?
いくら借り手が事業の内容や成長性をアピールしたところで、「説得力」は出ませんよね。ほんとうに将来は良くなるの?と疑いたくもなるでしょう。
過去は過去でしかありませんが、それでも将来を考えるうえで過去は参考になるものです。
そう考えると、決算書をおろそかになどできません。実際、事業性評価の定義としても、そのような「表現」になっています ↓
財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長性などを適切に評価すること
上記のとおり、「財務データ(=決算書)」に「必要以上に依存することなく」と言っています。必要以上に依存しないだけで、財務データが重要でない・必要ないとは言っていません。
したがって、事業性評価による融資についても従来同様、決算書の内容が良いに越したことはないのです。
端的に言えば、毎年きちんと利益を出す。この考え方には変わりはなく、その先に「事業の内容」や「成長性」の評価がある、と考えましょう。
《ポイント2》銀行とより深いコミュニケーションをとる
繰り返しになりますが、事業性評価とは、借り手の「事業の内容」や「成長性」の評価を言います。
と、言葉にすればなんてことはありませんが、実際に「事業の内容」や「成長性」を評価するというのは簡単なことではありません。
銀行も、決算書などの数字を眺めているだけでは理解しきれないところであり、もっと踏み込んでの観察が必要になります。
この点で。だいじなのは、銀行とより深いコミュニケーションをとることです。
具体的には、
- 自社のビジネスや商品・サービスについて話をする
- 話をするだけではなく、実際に見てもらう・体験してもらう
- 試算表や資金繰り表を定期的に提示して、事業の傾向・推移を理解してもらう
などが挙げられます。
これに対して、「銀行担当者とはビジネスや商品について、それほど話したことがない」という会社は少なくないようです。
これでは、事業性評価による融資もなかなか進みません。
銀行から聞かれずとも、会社のほうから積極的に話をする機会をつくるのがよいでしょう。
ただそれも一朝一夕に理解をしてもらえることでもありませんから、定期的・継続的に機会をつくることも大切です。
そこで、試算表や資金繰り表を提示することがよいきっかけになります。
1年に1回、決算書だけを渡しているのではなかなかコミュニケーションもとれません。
会社が毎月つくっている(はずの)試算表や資金繰り表をもとに、銀行とのコミュニケーションを深めていきましょう。
《ポイント3》事業性評価に役立つツールを使う
事業性評価による融資を引き出すにあたり、銀行とより深いコミュニケーションをとりましょう、というお話をしました。
ただ、「事業の内容」や「成長性」についても、どう話をしてよいかわからない。なにを話せばよいかわからない、ということもあるでしょう。
そこで、銀行とのコミュニケーションに役立つツールをご紹介しておきます。次の3つです ↓
- ローカルベンチマーク
- RESAS(リーサス)
- まち・ひと・しごと創生総合戦略
上記のツールを簡単に説明すると、
ローカルベンチマーク
ローカルベンチマークとは、経済産業省が推進する「企業診断ツール」です。
WEBサイトから無償で提供されているExcelファイルに、必要な情報を入力していくことで、会社の「財務情報(いわゆる定量情報)」と「非財務情報(いわゆる定性情報)」とを、簡潔に整理することができます。
銀行といっしょに見ながら話をすることで、「事業の内容」や「成長性」についての理解を深めることに役立つでしょう。
RESAS
RESAS(リーサス)とは、政府組織である「まち・ひと・しごと創生本部事務局」が提供する無料のWEBサービスです。
このサービスでは、産業構造や人口動態、人の流れなどについて、日本全国の膨大なビッグデータを、数字やグラフなどさまざまなカタチで見える化することができます。
自社・事業の成長可能性を裏付けるデータとして、銀行に提示をするのがよいでしょう。
まち・ひと・しごと創生総合戦略
人口減少や都心集中・地方格差の問題解決に向けた、政府の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」にもとづき、各地方公共団体も、それぞれの「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定しています。
たとえば、神奈川県では、持続可能な社会に向けて、「未病産業」や「ロボット産業」の推進を挙げています。
もし、自社がこららの産業に属するのであれば、地域の方向性と、自社の方向性とが合致するということです。
結果、地域からも期待される企業として、また、地域に大きな貢献をしうる企業として、銀行からの評価につながります。
したがって、地域の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に目を通し、自社の事業内容や成長性に関わる部分については、銀行に提示・説明をしていくのがよいでしょう。
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まとめ
銀行から「事業性評価」による融資を引き出すポイントについてお話をしてきました。
2019年には金融検査マニュアル廃止の流れもあり、事業性評価(つまり、各銀行の目利き)にもとづく融資が加速するものと考えられます。
そのような流れのなかで。おカネを借りる側の会社や個人事業者が、事業性評価による融資をうまく引き出すことができるよう、ポイントを押さえておきましょう。
- 決算書の重要性は変わらない
- 銀行とより深いコミュニケーションをとる
- 事業性評価に役立つツールを使う
それでは、このあと順番に見ていきましょう。