銀行が貸しすぎる。つまり、銀行が必要以上に融資をしすぎる。
ほんとうに銀行が貸しすぎるのか?会社が借りすぎる、という視点からお話をしてみます。
結論、借りすぎる会社があるだけ。
会社・事業における銀行融資について。
「銀行が貸しすぎる」という話を見聞きすることがあります。言い換えると、「銀行が貸すと言うものだから、ついつい借りすぎてしまった」みたいなハナシです。
そこで。
はたして銀行はほんとうに貸しすぎるのか? ということについてお話をしてみることにします。
では、はじめに結論から ↓
「銀行が貸しすぎることはなく、借りすぎる会社があるだけ」
これが、このあとの話の結論です。
なんだか、銀行を擁護するようで、会社を悪者にするようなフンイキもありますが。
もちろん(?)そういう意図はなく、わたしなりの「事実」をお伝えしようと考えた末に、さきほどのような結論となりました。
そんな結論の「理由」を、このあとお話していきます ↓
- 銀行がおカネを貸しすぎることがない理由
- 会社がおカネを借りすぎる理由
それでは順番に見ていきましょう。
銀行がおカネを貸しすぎることがない理由
銀行はおカネを貸したがっている、と言われます。そもそも「おカネを貸すのが銀行の商売」ですから当然です。
また。長く続く低金利の影響もあり、おカネを貸すことによって得られる利息収入は減ってしまい、多くの銀行が厳しい経営状況にあります。
ゆえに、「もっと融資をしたい・しなければ」との思いがあるでしょう。
いっぽうで、銀行からおカネを借りる、つまり、融資を受けるにあたっては「審査」があります。銀行の融資審査をクリアできなければ、おカネを借りることはできません。
では、銀行が「もっと融資をしたい・しなければ」といって、おカネをどんどん貸す・貸しすぎるか、と言うと。そんなことはありません。
それこそ、おカネを貸すのが銀行の「商売」だからです。
商売、ビジネスとしておカネを貸している以上、貸したおカネを「回収しそびれる」わけにはいきません。
加えて。貸し出すおカネの原資には、預金者からの預金が含まれます。回収しそびれるようなことがあれば、預金の引き出しに対応できない… ことも起こりえます。起きたときにはタイヘンな騒ぎです。
したがって、銀行は貸したおカネを回収できる、貸したおカネを返してくれる相手にのみ融資をします。
このとき、貸したおカネを返してくれる相手を見極める手段が「融資審査」です。
審査の内容・基準についてくわしくは省略をするとして。たとえば、大きなところでは次のようなものが挙げられます ↓
- 決算書の内容の良し悪し(おもにキャッシュフローの有無、債務超過の有無)
- 会社・事業の内容、将来性の良し悪し(いわゆる事業性評価)
これら審査は、商売としておカネを貸す者としての「論理(≒いかに貸しすぎないか)」にもとづくものですから、原則、「貸しすぎる」ということはありません。
そのような銀行の「論理」が、いかに徹底したものであるか・厳しいものであるかは、その論理を知れば知るほどに感じられるところでもあります ↓
CHECK! 銀行の論理がわかる「銀行・融資の記事まとめ」ページ
銀行は「人助け」や「慈善事業」でおカネを貸しているわけではありません。あくまで「商売」としておカネを貸しています。
ゆえに、銀行が貸しすぎることはない。
この点を理解したところで、次の「 会社がおカネを借りすぎる理由」というお話に進みましょう。
最近では、銀行の「不正融資問題」がニュースになっています。これは広い意味では「貸しすぎ」と言えますが、銀行の論理を無視した行為だという点では「論外」だと考えるべきでしょう。
つまり、不正融資問題は「貸しすぎ」とは別の問題だ、ということです。
会社がおカネを借りすぎる理由
ここまで、「銀行が貸しすぎることはない」というお話をしてきました。
これに対して。会社はおカネを借りすぎてしまうことがあります。結果として、銀行が貸しすぎたかのように錯覚してしまう。
というわけで。会社がおカネを借りすぎる理由について、その事例を挙げてお話をしていきます。事例は次の3つです ↓
- 粉飾決算をする
- 将来の「税引後利益+減価償却費」を見ていない
- 借りたおカネをムダに使ってしまう
それでは順番に見ていきましょう。
粉飾決算をする
利益を水増しするなどして「ウソ」の決算書をつくる。いわゆる粉飾決算。
これはもう「論外」だとしか言いようがないわけですが、現実にはある事例なので無視するわけにもいきません。
それはそれとして。
なんとしてもおカネを借りたい会社が粉飾決算をする。おカネを貸す側の銀行もそれは心得ているので粉飾決算を暴こうとする。
とはいえ、銀行も全知全能ではありません。すべての粉飾決算を見破れるわけではありません。
見破ることができずに、ウソの決算書にもとづいて融資をしてしまったら?
それを「銀行は貸しすぎだ」というのはおかしな話ですよね。どう見ても、悪事をはたらいてまでおカネを借りてしまった会社が悪い。
会社がおカネを借りすぎている。
もういちど言います。どう見ても、会社が悪い。だから、最初にも「論外」の事例だと言いました。以上です。
将来の「税引後利益+減価償却費」を見ていない
銀行が、会社のおカネを返すチカラ、つまり「返済力」として見ている指標があります。こちらです ↓
簡易キャッシュフロー = 税引後利益 +減価償却費
この簡易キャッシュフローが「会社の返済原資」であり、簡易キャッシュフローが多ければ多いほど返済力があると銀行は見ています。
投稿が見つかりません。したがって、融資審査の折にも、銀行は簡易キャッシュフローを算出しているわけですが、それは「過去」に対する見方が中心になります。
過去の数字が掲載された「決算書」でもって、簡易キャッシュフローを計算するからです。
ところが本来、簡易キャッシュフローは「将来」を予測して計算をすべきもの。返済をするのはこれから先の「将来」なのですから、「過去」ではなくて「将来」の簡易キャッシュフローで返済力を見るのが正解です。
もちろん、銀行もそれはわかっていますが、外部の者として会社の将来を予測するのは容易ではなく、どうしても「過去(決算書)」が重視されます。
これに対して、おカネを借りる側の会社はどうでしょう?
誰にも先のわからぬ将来のこととはいえ、外部の者である銀行よりは、予測をするにも材料・情報はそろっているはずです。
そう考えると。会社は、将来の「簡易キャッシュフロー」を予測したうえで、その簡易キャッシュフローをもって、「借りるべきか否か」を検討すべきだと言えます。
この検討をおろそかにした結果、借りたはいいものの、その後に簡易キャッシュフローが悪化。返済が厳しく「借りすぎ」になってしまった…
必要な検討をおろそかにして借りすぎたのであって、これを「銀行が貸しすぎた」というのは責任転嫁であり、自己正当化の言い訳です。
銀行が貸しすぎたのではなく、会社が借りすぎた。とてもよく見かけることの多い事例です。
借りたおカネをムダに使ってしまう
さきほど、銀行は会社の返済力として「簡易キャッシュフロー」を見ている、という話をしました。
これとは別に、銀行が返済力を補足するモノとしてみているのが「現金預金」です。会社が持っているおカネがいくらあるか。
会社がたくさんのおカネを持っていればいるほど、銀行としては安心です。
もし仮に、簡易キャッシュフローが悪化をしたとしても、現金預金があれば、そのあいだは返済をしてもらうことができるから。
ゆえに、現金預金が多い会社は銀行からの評価が高く、融資が受けやすくなります。
そのような会社が融資を受けたとして、あったはずの現金預金をムダ使いしてしまったらどうでしょう?
いつもよりたくさん飲み食いをしてしまう。必要以上の設備投資をしてしまう、などなど。
このあと簡易キャッシュフローが悪化したときには、返済が厳しくなって「借りすぎ」に… となってしまいます。
これは銀行が「貸しすぎ」たのか、と言えば。もちろん、違いますよね。会社がムダ使いをしただけです。
また、会社が銀行から融資を受けたときに、増えるのは「借金」だけではありません。同じだけの「おカネ」も増えます。
そのおカネもまたムダ使いをしてしまう、というケースがあります。
これもやはり、銀行が貸しすぎたのではありません。借りてはいけないおカネ(=ムダ使いするためのおカネ)を、会社が借りすぎただけです。
おカネがあるとついつい使ってしまう。「あるある」ですが、じゅうぶんに気をつけましょう。策はあります ↓
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まとめ
銀行が貸しすぎるのか?会社が借りすぎるのか?についてお話をしてきました。
結論は、「銀行が貸しすぎることはなく、借りすぎる会社があるだけ」です。
銀行の論理(≒いかに貸しすぎないか)を理解したうえで、会社が借りすぎてしまう理由・事例を押さえておきましょう。
- 粉飾決算をする
- 将来の「税引後利益+減価償却費」を見ていない
- 借りたおカネをムダに使ってしまう