銀行から融資を受けようとするときに見られる決算書。
その決算書について。銀行は、「1人あたり〇〇」の指標にも注目をしていますよ。というお話をしていきます。
森ばかり見て木を見ず、にならぬよう。
会社が融資を受けようとするときには、銀行から「決算書」の提示を求められます。決算書を融資可否の判断材料にするためです。
その決算書を、銀行はいろいろな角度からチェックをしているわけですが。「1人あたり〇〇」の指標にも注目していることを覚えておきましょう。
会社全体の数字は、決算書からわかります。では、その会社の「社員1人あたり」の数字はどうなんだろう? ということですね。
具体的には、次の3つの指標になります ↓
- 1人あたり売上高
- 1人あたり人件費
- 1人あたり営業利益
銀行はこれらの指標も見て、決算書の良し悪しを評価しています。言うなれば、会社という「森」全体ばかりではなく、森を構成する「木」である社員1人あたりにも注目をする。
そこで。各指標の計算方法、見方・考え方、銀行対応するうえでのポイントなどを、このあとお話していきます。
指標を見る前に「準備作業」に気をつけて
このあと、「1人あたり〇〇」の指標を見ていくわけですが。その前に、「準備作業」をひとつ。
1人あたり、と言うからには。「社員の人数」を把握しておく必要があります。
この人数を、銀行は会社にヒアリングして把握する方法のほかに、決算書に付属する「法人事業概況説明書」という書類から把握することがある。ということは覚えておきましょう。
法人事業概況説明書のなかには「期末従事員等の状況」の項目があります ↓
会社によってはそもそも記載をしていなかったり、最新の数字ではなかったり(前年のまま、とか)。顧問税理士に任せきりにするのではなく、会社も確認をしておくようにしましょう。
間違った数字をもとに、銀行が指標を計算しているようでは困りますので。
なお、「期末従事員等の状況」を記載するときには、「正社員(常勤)」と「パート・アルバイト」の人数は、分けて記載することをおすすめします。
このあとお話する「1人あたり〇〇」の指標では、「正社員1人あたり」をベースにして計算をすることが多いからです。
それでは、準備作業も終わったところで、いよいよ各指標について見ていくことにしましょう。
銀行融資で注目される「1人あたり〇〇」の指標
《指標1》1人あたり売上高
売上高 ÷ 社員の人数
算式自体は、とくに難しいことはありませんね。決算書(損益計算書)から「売上高」を抜き出して、それを「社員の人数」で割れば良し。
「1人あたり〇〇」の指標のなかでもメジャーな指標であり、「目標値を定めている」という会社も比較的多いのではないでしょうか。
銀行もまた、会社の「収益力」や「生産性」を図る指標として注目をしています。
この「1人あたり売上高」について。業種や会社規模によって、だいぶ差があることに注意が必要です。
したがって、自社の「1人あたり売上高」を他社平均などの資料と比較をするときには、業種や会社規模が合った数字と比較をするようにしましょう。
インターネットで検索をすれば、「1人あたり売上高」の統計資料が見つかります。参考にする統計資料の「社員の人数」は、正社員のみなのか、パート・アルバイトなども含んでいるのか? の確認も忘れないように。
ところで。「1人あたり売上高」は一見すると、「大きければ大きいほうがよい」と思われるかもですが。それは違います。
会社は「売上だけ」で成り立っているのではなく、「利益も」重要だからです。いくら「1人あたり売上高」が大きくても、めちゃくちゃに経費がかかっていて赤字… では意味がありません。
だから、「1人あたり売上高」だけを見るのではなく。後述する「1人あたり営業利益」とあわせて見ることが大切です。
銀行は、よく同業他社比較をします。「1人あたり売上高」だけを同業他社比較されて、「同業他社よりも1人あたり売上高が少ないですね」などと見られないように気をつけましょう。
会社によっては、「売上高の伸びは押さえてでも利益を伸ばす」との考えもあります。そのような会社は、銀行に対して「考え」をきちんと説明しておくことです。
《指標2》1人あたり人件費
人件費 ÷ 社員の人数
算式自体はシンプルなのですが。ここで言う「人件費」とはなんぞや? との疑問があります。
給料・賞与は当然としても、社会保険料などの法定福利費は含むのか? その他の福利厚生費は? など。そこは、比較対象にする統計資料がどうなっているかを確認して、それにあわせるようにしてみましょう。
ではなぜ、「比較対象」が必要なのか? やはり、銀行は他社比較をよくしているからです。
もし、自社の「1人あたり人件費」が他社よりも高ければ。それは「業績が良いから払える」ということや、「給与水準が高いので良い人材が集まっている」とのアピールになります。
ですから、会社は「1人あたり〇〇」の指標をみずから計算して、他社(統計資料)と比較をするような資料まで作成する。その資料を銀行に見せながら、自社の良いところをアピールするのがよいでしょう。
ちなみに。「1人あたり賃金」の統計資料としては、「RESAS(リーサス)」がおすすめです。
RESASとは、経済産業省と内閣官房が提供する「地域経済分析システム」です。だれでも無料で使うことができ、さまざまなデータを抽出・分析することができます。
RESASのページを開いたら、「メインメニュー」から、「雇用/医療・福祉マップ」を選択。そのあと「一人当たり賃金」を選びましょう。
すると、都道府県別の「一人当たり賃金」の年別推移を見ることができます。この数字と自社の数字を比較してみて、自社のほうが高ければ、銀行に対してアピールになるということです。
そのときは、RESASの画面を印刷して、資料として銀行に提示するとよいでしょう。
なお、RESASの「一人当たり賃金」は、人件費は「給料と賞与」、人数は「社員のみ」の定義です。RESASと比較するのであれば、自社もこれに合わせて「1人あたり人件費」を計算することになります。
[ad1]《指標3》1人あたり営業利益
営業利益 ÷ 社員の人数
この指標は、前に挙げた2つの指標ほど馴染みがないかもしれません。けれども、最近では注目度を挙げている指標のひとつです。
なぜ、注目をされているか? それは、「1人あたり営業利益」が、「ローカルベンチマーク」のなかで取り上げられているからです。
ローカルベンチマークとは。経済産業省が提供する、会社の「健康診断ツール」であり、会社の経営状態を把握するために銀行も注目をしているツールになります。
ローカルベンチマークは、あまたある財務指標のなかから厳選した6つの財務指標を取り上げました。そのひとつが「1人あたり営業利益」です(ローカルベンチマークのなかでは「労働生産性」という名称)。
銀行も注目をしている「ローカルベンチマーク」なのですから、「1人あたり営業利益」もまた注目をされてしかるべきです。
というわけで、ローカルベンチマークのExcelファイル(ローカルベンチマークのWEBサイトからダウンロードできます)を使って、自社の「1人あたり営業利益」を計算してみましょう。
すると、ローカルベンチマークが、自動的に同業他社との比較データを表示してくれます。比較した結果が良ければ、これも銀行に対するアピールになりますね。
なお、なお、ローカルベンチマークで言う「社員の人数」とは。パートや派遣・契約社員は含まず、従業員兼役員は含むとのこと。この前提と合わせて、自社の「1人あたり営業利益」を計算するようにしましょう。
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まとめ
銀行から融資を受けようとするときに見られる決算書。
その決算書について。銀行は、「1人あたり〇〇」の指標にも注目をしています。各指標の計算方法、見方・考え方、銀行対応するうえでのポイントなどを押さえておきましょう。
- 1人あたり売上高
- 1人あたり人件費
- 1人あたり営業利益
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