融資条件のひとつである「返済期間」について、会社が銀行に相談・交渉をするときのために。
銀行融資の「返済期間」をどうするか?の考え方をお話していきます。
返済期間を決めるのは銀行、ではあるけれど。
会社が銀行から融資を受けるときに、「どうしたらいいの?」と悩むことのひとつに「返済期間」が挙げられます。
もっとも、返済期間などの「融資条件」を最終的に決めるのは銀行ですから。会社にはどうしようもないところはあります。
とはいえ、融資条件が決まる過程で、相談・交渉ができないわけでもありません。ですから、会社も、返済期間についての考え方を押さえておくのがよいでしょう。
というわけで。銀行融資の「返済期間」をどうするか?3つの考え方について、お話をしていきます。こちらです↓
- できるだけ長く
- 資金使途は正しく
- 返済しないことも考える
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行融資の「返済期間」をどうするか?3つの考え方
《考え方1》できるだけ長く
銀行融資の「返済期間」をどうするか?3つの考え方、1つめ。それは「できるだけ長く」です。
返済期間の基本的な考え方として、できるだけ長くするのがよいと理解しておきましょう。
言うまでもありませんが、返済期間が長いほど、毎月の返済額は少なくてすみます。返済するためには「利益」が必要であり、その利益が不確実であるとすれば、毎月の返済額はできるだけ抑えておきたいものです。
この点で。返済期間を長くすると、金利が高くなる。だから、金利を抑えるために返済期間をできるだけ短くしよう。と、考える会社があります。
やめておきましょう。さきほどお話をしたとおり、利益が不確実であるとすれば、返済額を抑えるほうを優先すべきです。
わずかばかりの金利差を優先するあまり、返済ができなくなるようでは元も子もありません。
ですから、利益に絶対的な自信がある場合を除いて、金利よりも返済額を抑える。そのためには、返済期間はできるだけ長くすることをおすすめします。
返済期間について、資金使途(おカネの使いみち)ごとに見てみると。設備資金の返済期間は5年〜15年くらい、運転資金は3年〜7年くらいが一般的です。
まず、設備資金とは。文字どおり、「設備(を購入する)のためのおカネ」になります。
設備資金の融資を受けるときの返済期間は、「購入する設備の耐用年数(使える期間)」より長くすることを考えましょう。
たとえば、購入金額 800万円、耐用年数8年の設備を購入するとしたら。毎年の減価償却費は 100万円になります(800万円÷8万円)。
この設備を全額融資で購入するのであれば、返済期間は8年以上にすべき。という話になります。
なぜなら、返済原資は「利益+減価償却費」だからです。仮に、利益がゼロだとすると、減価償却費の金額が、返済原資になります。
減価償却費の金額分しか返済ができないと考えると、返済期間は耐用年数以上にしなければいけない。
ちょっと、ハナシが会計的でわかりにくいかもしれませんが。だいじなのは、設備資金の返済期間は「設備の耐用年数より長く」です。
ちなみに。耐用年数には、税法で決められた「法定耐用年数」というものがあります。この設備なら〇年!と一律に決められた耐用年数です。
この法定耐用年数に対して、実際の耐用年数のほうが短い場合には注意しましょう。
融資を受けるときには、法定耐用年数で返済期間を決める。ところが、返済期間が終わるまでに、設備は寿命を迎えて更新が必要になる。
そこでふたたび融資を受けて設備投資をすると、旧設備の返済を残したまま、新設備の返済もはじまります。こうなると、資金繰りはとても苦しい。
耐用年数は慎重に考えたうえで、返済期間を銀行に相談するようにしましょう。
いっぽうで、運転資金とは「設備資金」以外に必要なおカネです。言い換えると、仕入や経費の支払いに必要なおカネになります。
運転資金の融資を受けるときの返済期間は、自社の「資金繰り表」を見ながらです。
資金繰り表で、ムリが無い「毎月の返済額」がいくらなのかを検討する。返済額が決まれば、返済期間を決めることができます。
したがって、会社は銀行に「資金繰り表」を提示しながら、耐用年数の相談をするようにしましょう。
資金繰り表もなく、銀行のいいなりでテキトーに返済期間を決めてしまうと。実際には返済できない… ということはあるものです。
[ad1]《考え方2》資金使途は正しく
銀行融資の「返済期間」をどうするか?3つの考え方、2つめ。それは「資金使途は正しく」です。
銀行から融資を受けるときに、設備を購入するためのおカネを「運転資金」で借りようとする会社があります。
設備資金を借りるのは、運転資金を借りるよりもメンドーだからです。
設備資金を借りるには、設備の仕様書や見積書、事業計画書(設備を購入することで利益は増えるのか?を示す)、購入後の領収書の提示が求められるます。
そりゃあ、メンドーだ。と、ほんとうは設備資金で借りるべきところを「運転資金」とウソをついて借りてしまう。
すると、なにが起きるか?
返済期間が「短かすぎる」。結果として、返済額が多くて資金繰りが悪くなる… ということが起こりがちです。
さきほど、《考え方1》でもお話をしたとおり。設備資金よりも運転資金のほうが、返済期間は短くなります。
たとえば、購入金額 600万円、耐用年数6年の設備を購入するとしたら。毎年の減価償却費は 100万円です(600万円÷6万円)。
このときの返済原資は 100万円になります(利益 ゼロ+減価償却費 100万円)。
にもかかわらず、運転資金 600万円、返済期間3年で融資を受けたとすると。毎年の返済額は 200万円です。返済原資 100万円ではぜんぜん足りません。
だから、設備資金を運転資金として借りてはダメなのです。返済期間を考えるのであれば、資金使途は正しく借りましょう。
また、資金使途どおりにおカネを使わない会社に対して、銀行は厳しい目を向けています。ひとこと言えば、約束違反は許さないぞ。そういう話です。
明確に資金使途違反となれば、一括返済を求められたり。今後いっさいの融資を断られてしまったり。会社は大きな罰を受けることになります。
おカネに色はないのだからわからないだろう、と考えるのであれば甘すぎます。おカネの流れ、おカネの使いみちというのは、見る人が見ればわかるのです。気をつけましょう↓
《考え方3》返済しないことも考える
銀行融資の「返済期間」をどうするか?3つの考え方、3つめ。それは「返済しないことも考える」です。
《考え方1》では、返済期間はできるだけ長いほうがいい、というお話をしました。返済期間が長いほうが、毎月の返済額が少なく、資金繰りがラクだからです。
毎月の返済額を少なく、と言うのなら。いっそ返済しないのはどうでしょう。返済しなくてよいのであれば、資金繰りはラクラクです。
でも、そんなことはできるのか?返済しないなんてことができるのか?
できます。「短期継続融資」と呼ばれる融資です。
短期継続融資は、その名のとおり、「短期で継続的な融資」になります。返済期間1年以内の融資ではあるものの、返済期間がくると、ふたたび返済期間1年以内で融資をしなおす。
結果として、会社は「借りっぱなし」の状況になります。
ただし、短期継続融資の対象は、いわゆる「経常運転資金(売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務)」に限られます。
また、返済期間がきたときの会社の状況によっては、融資をしなおしてもらえないこともありえる。という点には注意が必要です。
ただそれでも、経常運転資金分のおカネを「返済なし」で借りられるのは、大きなメリットになります。
「返済期間をできるだけ長く」と考えるときには、短期継続融資を受けることも検討してみましょう。くわしくは、こちらの記事もどうぞ↓
銀行融資におすすめのメニュー
モロトメジョー税理士事務所では、「銀行融資のサポート」をするメニューをそろえています! 当事務所は経営革新等支援機関の認定を受けています。
銀行融資の記事まとめページ
銀行融資入門セミナー
銀行融資・財務のコンサルティング
銀行融資の個別相談
まとめ
返済期間などの「融資条件」を最終的に決めるのは銀行です。
とはいえ、融資条件が決まる過程で、相談・交渉ができないわけでもありません。ですから、会社も、返済期間についての考え方を押さえておくようにしましょう。
- できるだけ長く
- 資金使途は正しく
- 返済しないことも考える