銀行融資を受けるにあたって、だいじなこととして。会社が銀行に伝えるべき「だれになにを売るか、どう売るか」についてお話をしていきます。
銀行に、自社の商売を話してる?
会社が銀行融資を受けるにあたって、だいじなこととして「だれになにを売るか、どう売るか」が挙げられます。
「だれになにを売るか、どう売るか」とは、言い換えると、その会社の「商売」です。銀行融資を受けるには、会社がどのような商売をしているかがだいじ。銀行に、自社の商売を伝えることがだいじ。そういうことです。
銀行融資と言うと、とかく、決算書の重要性が注目されます。決算書の内容の良し悪しが、銀行融資の成否を分けるという話です。
もちろん、決算書が重要であることは間違いありませんが。決算書に加えて、「商売」が重要であることはあまり知られていないようです。
ではなぜ、銀行融資で「商売」が重要になるのか。それは、「事業性評価」という考え方があるからです。
事業性評価とは、「決算書の良し悪しや、担保・保証の有無に依存せず、会社の事業内容や成長可能性を評価する」ことを言います。そして、この事業性評価による融資を、金融庁は銀行に対して求めています。
決算書の良し悪しばかりではなく、担保・保証の有無ばかりでなく、会社の事業内容や成長可能性も見て融資をしなさいよ。と、金融庁は言っているわけです。
したがって。融資を受ける側の会社は、銀行が事業性評価をしやすくなる情報を提供することが重要です。情報を提供できれば、当然、融資が受けやすくなります。
その情報のひとつが、自社の「商売」についてです。
事業性評価で言われる「事業内容や成長可能性」を評価するには、会社の「商売」がわからなければムリですよね。なにをやっている会社かがわからなければ、事業性評価などできるわけがありません。
だから、「だれになにを売るか、どう売るか」がだいじになります。
にもかかわらず。自社の「商売」のことを銀行にきちんと伝えている、という会社は多くありません。決算書を渡しておしまい、という会社は少なくありません。
そこで。会社が銀行に伝えるべき「だれになにを売るか、どう売るか」について、次のようなお話をしていきます↓
- だれになにを売るか、はなんとなくわかる
- どう売るか、はわからない
- 銀行に伝えることが商売を再考するきっかけになる
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
だれになにを売るか、はなんとなくわかる
会社が銀行融資を受けるにあたっては、「だれになにを売るか、どう売るか」がだいじだ、というお話をしました。
会社は銀行に対して、「だれになにを売るか、どう売るか」を伝えるべきだ、とも言いました。
この点で、「だれになにを売るか」の部分については、会社が銀行に伝えずとも、なんとなくはわかるものです。
たとえば、銀行に渡す決算書一式のなかには「法人税申告書」が含まれます。その法人税申告書には「業種」の記載があるため、それを見れば、なんとなくはわかるだろう、ということです。
たとえば、「機械部品製造業」とあれば。「機械部品を、なにかしらの機械をつくっている会社に売っている」のであろうと想像できます。
また、「衣料品卸売業」とあれば、「衣料品を、衣料品を扱う店に売っている」のであろうと想像できるでしょう。
とはいえ。これだけの情報では、「見えてこない部分」があることに気がつかなければいけません。見えてこない部分のひとつは、「エンドユーザー」です。
自社で提供している商品やサービスの「エンドユーザー」はだれなのか? は、同じ「衣料品卸売業」であったとしても異なることがあります。
卸した先の衣料品が、街の小売店で「対面販売」されることもあれば、「ネット販売」されることもあるでしょう。卸した先が貸衣装店で、「レンタル」されることもありえます。
というように、「対面販売・ネット販売・レンタル」のそれぞれで利用するユーザー(エンドユーザー)の特性は違いますので。結果として、自社が卸している衣料品の売れ行きは、エンドユーザーの影響を受けることになります。
したがって、「だれになにを売るか(業種)」は同じように見えても、エンドユーザーしだいで、商売にはだいぶ違いが出るわけです。ひいては、エンドユーザーまで含めた事業性評価が求められます。
そう考えると。会社が銀行に対して「だれになにを売るか」を伝えるときには、直接の売上先だけではなく、エンドユーザーまでを含めて伝えることが大切だと気がつきます。
そのあたりを、わかりやすく伝えるのに役立つツールが「商流図」です。売上先やエンドユーザーなどを含めて、自社の商売の流れを図解したものが「商流図」になります。
くわしくはこちらの記事を参考にどうぞ↓
どう売るか、はわからない
ここまで、会社が銀行に伝えるべきこととして「だれになにを売るか」という話をしてきました。加えて、「どう売るか」という話が残っています。
もし、「だれになにを売るか」が同じ会社があったとしても、「どう売るか」によっては、まるで商売が違うということになります。
たとえば。「一般生活者(だれ)」に対して、「とある食料品(なに)」を仕入れて売るという会社があったとして。
実在の店舗に来店する人に売る、という売り方があります。これとは別に、実在の店舗は持たずに、ネットのみで売る、という売り方もあります。
この場合、同じ食料品だとしても、ネットのみで売る会社は、実在の店舗がない分だけコストを少なくできるはずです(店舗の家賃や店舗スタッフの人件費など)。
したがって、「ネットのみで売る会社」は「実在の店舗で売る会社」よりも、同じ品質の食料品を、より低価格で提供できるという「強み」がある。という伝え方ができるでしょう。
もちろん、「実在の店舗で売る会社」にも強みはあります。地産地消による地域貢献や、フェイス・トゥ・フェイスの情報提供が付加価値だ。という伝え方をすることもできるでしょう。
いずれにせよ。「だれになにを売るか」に加えて、「どう売るか」の情報が、事業性評価(事業の内容と成長可能性の評価)には欠かせません。
にもかかわらず、「どう売るか」を銀行に理解してもらえなければ、「となりの会社(同業他社)とはどこが違うのか?(違わないよね)」ということになってしまいます。差別化をすることができません。
「どう売るか」という点で、最近では、中間流通を排除したD2C(Direct to Consumer・)や、無在庫販売を実現するC2M(Customer to Manufactory)という売り方もあります。
これらは、従来の店舗ビジネスとは、将来性がまるで違ったものになるでしょう。
というように、「だれになにを売るか」が同じでも、「どう売るか」にはいろいろあります。いろいろあるのですから、会社のほうから銀行へ、きちんと伝えることです。
さらには、「値決め」も「どう売るか」に関わります。低価格商品を主体にした売り方、いわゆる「薄利多売」もあれば、その逆の「厚利少売」もあります。
「薄利多売」と「厚利少売」とでは、「だれになにを売るか」は同じであっても、やはり、商売としては大きく異なるところです。
このあたりの銀行への伝え方としては、「業務フロー(バリューチェーン)」をツールとして使うのがよいでしょう。
具体的には、経済産業省が提供している「ローカルベンチマーク」を使うのがおすすめです。ローカルベンチマークのなかには、「業務フロー」も、前述した「商流図」も含まれていますので。
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銀行に伝えることが商売を再考するきっかけになる
ここまで、「だれになにを売るか」と「どう売るか」を銀行に伝えましょう、というお話をしてきました。伝え方についてもお話をしてきました。
これらを聞いて、もしかしたら「銀行のためにそこまで手間や時間をかけるのか…?」と疑問に思われたかもしれません。
だとしたら、それは違います。
銀行のため、銀行融資をスムーズに受けるためだけではなく、会社自身のためでもあるからです。
「だれになにを売るか」と「どう売るか」は、会社が持続・成長を考えるうえでは最重要ポイントであり、出発点だと言ってよいでしょう。
もし、「だれになにを売るか」も「どう売るか」も、あいまいなままであれば、なにをすべきかがわからず、数値計画は絵に描いた餅になってしまいます。
これからどうすべきか(行動計画)や、数値計画を考えるにあたっては、まず、「だれになにを売るか」と「どう売るか」を決めることです。
また、時間がたって、会社をとりまく環境が変われば、「だれになにを売るか」や「どう売るか」も再考する必要があります。
変化に適応できず、旧態依然のままで、撤退を余儀なくされた会社の例は枚挙に暇がありません(税理士業界にいるわたしもまた、他人事ではありませんが)。
ですから、「銀行融資のため」をきっかけに、「だれになにを売るか」や「どう売るか」を考えることは、かけるべき手間であり、かけるべき時間だと言えます。
銀行に伝えることを通じて、ぜひ、商売を再考するきっかけにもしてみましょう。
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まとめ
会社が銀行融資を受けるにあたって、だいじなこととして「だれになにを売るか、どう売るか」が挙げられます。
にもかかわらず、それを銀行に伝えられていない会社は少なくありません。
融資の受けやすさにもかかわるところですから、「だれになにを売るか、どう売るか」という自社の「商売」について伝えるようにしましょう。
会社自身、商売を再考する、見直すきっかけにもなるところです。