信用保証協会の保証付き融資は、会社にとって借りやすい融資です。
ところが、信用保証協会の枠が残っていても融資が受けられないケースがあります。それはどんなケースなのかということと、対策についてお話をしていきます。
枠を過信すると、泣きを見る。
会社が銀行から融資を受ける場合には、大きく2つ、「信用保証協会の保証付き融資」と「プロパー融資」とがあります。
このうち、信用保証協会の保証付き融資とは、会社が返済できない場合には、信用保証協会が肩代わりをしてくれる融資です。ゆえに、銀行としてはリスクが小さく、貸しやすい。
いっぽう、プロパー融資は、信用保証協会の保証がない融資です。会社が返済できない場合には、銀行が 100%の損をかぶることになります。ゆえに、銀行としてはリスクが大きく、貸しにくい。
というわけで、銀行が貸しやすい、つまり、会社が借りやすいのが「信用保証協会の保証付き融資」です。とはいえ、無制限に借りられるわけではなく、「枠(上限)」があります。
一般保証(ほかに特別保証があります)で無担保の融資であれば、8,000万円。ただし、これは制度上の上限なので、会社の規模・状況に応じて、さらに少なくなるケースがあります。
なんにせよ、保証の「枠内」であれば、銀行は貸しやすく、会社は借りやすい、というのがポイントです。
ところが。信用保証協会の枠が残っていても、融資が受けられない・受けにくくなるケースがあります。それはいったい、どんなケースなのか? ということと、その対策について。このあと、お話をしていきます。
信用保証協会の枠が残っていても融資が受けられないケースとは?
信用保証協会の枠が残っていても、実際に融資が受けられなかったケースがあります。その状況を確認していきましょう。
損益計算書は3期連続赤字、貸借対照表は債務超過(資産よりも負債が多い)という会社です。売上不振にともない、利益が減少。資金繰りも厳しくなり、運転資金(仕入代金や経費を支払うためのおカネ)として 300万円の融資を銀行に相談しました。
業績が悪いので、プロパー融資というわけにもいかず、信用保証協会の保証付き融資が前提です(ちなみに、過去にもプロパー融資を受けたことはありません)。
相談の結果、銀行からの回答は、「信用保証協会が 100万円が限度だと言っている」というものでした。社長としては「しかたない、それでもおカネはほしい」と、100万円での融資を依頼したところ、なんと銀行からは断られてしまいました… という結論です。
なぜ、銀行は信用保証協会の枠が残っているのにもかかわらず、融資を断ってきたのか。それは、「いま 100万円を貸しても、すぐにまたおカネが足りなくなるはずだ」と、銀行が考えたからです。
おカネが足りなくなれば、当然、貸した 100万円の回収もできなくなってしまいます(もちろん、既存の融資分も)。回収できないとわかっていて、融資をするわけにはいきません。
もしも、回収できないとわかっていて融資をしたとなれば、そのときは、信用保証協会も肩代わりを拒否することになります。銀行としては、困ってしまうところです。
このようなことから、銀行は、信用保証協会の枠が残っていても融資を断ることがある。信用保証協会の枠が残っていても、会社は融資が受けられないケースはある、ということです。
では、そういったケースを避けるためにはどうしたらいいのか? 対策を確認していきましょう。
信用保証協会の枠が残っていても融資が受けられないケースへの対策
【対策1】プロパー融資とセットで受けられるようにしておく
信用保証協会の「枠」がいくらになるかは、それぞれの会社の規模・状況によります。この点で、枠に影響する状況のひとつに挙げられるのが、「プロパー融資があるかどうか」です。
プロパー融資は、銀行にとってリスクが大きい融資だという話をしました。にもかかわらず、銀行がプロパー融資をしているということは、「それだけ会社を信用しているからだ」ということになります。
したがって、プロパー融資があることを確認した信用保証協会は、「銀行がそこまで信用しているのだから、きっとだいじょうぶな会社なのだろう」と考えることはあるわけです。
結果として、プロパー融資を受けている会社の「枠」は、プロパー融資を受けていない会社に比べると、大きく広がる傾向にあります(絶対ではありませんが)。
事例の会社は、過去にプロパー融資を受けたことがありませんでした。そのような会社が、業績悪化時にプロパー融資を受けられることはまずないでしょう。
そう考えると、会社は日ごろから、プロパー融資を受けられるように取り組んでおくべきです。そのあたり、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
なお、公的機関である信用保証協会や日本政策金融公庫は、比較的、業績悪化に対しても寛大です。それでも、事例の会社は、融資希望額 300万円を 100万円に減額されました。
さすがの信用保証協会でも、あまり業績が悪くなると、減額せざるをえないということです。ひとつの目安として、3期連続赤字は信用保証協会や日本政策金融公庫でもキツい(許されるのは2期連続赤字まで)、と考えておきましょう。
【対策2】資金繰り表をつくっておく
事例の会社が、信用保証協会の枠内である 100万円の融資でさえ銀行から断れれたのは、「すぐにまたおカネが足りなくなるはずだ」と見られたからでした。
ではもし、もっとおカネがあるうちに融資を受けようとしていたらどうでしょう? 手持ちのおカネから返済できるわけですから、融資を受けられる確率は上がったはずです。
よって、「いずれ融資を受けるかもしれない」のであれば、できるだけ早く融資を受けることが対策になります。とはいえ、「いずれ融資を受けるかもしれない」ことなど、どうやって把握すればいいのか?
資金繰り表です。日ごろから、向こう1年ていど先までの資金繰り表をつくっていれば、融資の必要性を早くに察知できるようになります。
このとき、将来を楽観的に見過ぎることに注意しなければいけません。じぶんでつくった資金繰り表の「売上入金」を 30%減してみる、50%減してみるなどして、悲観的なシナリオについても確認してみるとよいでしょう。
そのうえで、「いずれ融資が必要になるかもしれない」と思えれば、早めに融資を受けるようにすることです。
なお、資金繰り表をつくっている会社に対して、銀行は安心感を持つものです。日ごろから資金繰り表をつくっている会社はとても少なく、それでもつくっている会社は「管理能力が高い」と見られます。
ひいては、融資が受けやすくする効果もあるため、やはり、資金繰り表をつくっておくのがおすすめです。
【対策3】経営改善計画書をつくる
業績悪化のなかで融資を受けるのであれば、経営改善計画書をつくったうえで融資の依頼をするのがよいでしょう。なぜなら、銀行は「いつまでに・どのようにして業績改善するのか」を気にしているからです。
この銀行の疑問に答えることができないと、どうしても融資は受けにくくなります。事例の会社も、経営改善計画書まではつくっておらず、社長が口頭で改善をアピールするのみでした。
もしも、経営改善計画書をもとに業績改善の話ができていれば、状況はもう少し違ったものになっていたかもしれません。
なお、経営改善計画書をつくる前提として、「現状把握・分析」が欠かせません。現状がよくわからぬままにつくられた計画には「説得力」がないからです。
具体的には、自社の「強み・弱み(いわゆるSWOT分析)」を把握したうえで、自社の戦略として「だれに・なにを・どのように売るか(いわゆる3C)」を見直します。
見直した戦略をもとに、再度、強み・弱みの分析を行うことも大切です(強み・弱みは、戦略が変わると逆転することがあります)。そのうえで、必要があれば、戦略も再度見直しましょう。
こうして検討された「現状把握・分析」にもとづいて、経営改善計画書をつくります。
ややもすると、いきなり「数値計画」からつくりはじめるケースがありますが。これでは、「数字あそび」と言われてしまっても文句は言えません。
まずは、現状把握・分析から。その現状把握・分析にもとづいて、業績改善に向けた数値計画・行動計画をつくっていく。この流れを間違えないようにしましょう。
現状把握・分析をするにあたっては、経済産業省が提供しているツール「ローカルベンチマーク」が役に立ちます。経営改善計画書といっしょに、銀行に提出するのもよいでしょう。
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まとめ
信用保証協会の保証付き融資は、会社にとって借りやすい融資です。
ところが、信用保証協会の枠が残っていても融資が受けられないケースがあります。それはどんなケースなのかということと、対策について理解をしておくようにしましょう。
信用保証協会の枠を過信していると、いざというときに、とても厳しい状況に陥ります。