入居時の仲介手数料やら敷金やら礼金やらって経費になるのかな? 更新時の手数料はどうなの? 退去時のリフォーム費用は? 戻ってきた敷金はどうなるの?
などなど。フリーランスの『(自宅兼)事務所家賃』の仕訳を入居から更新・退去までをまとめます。
フリーランスの「事務所家賃」の仕訳を入居から更新・退去まで
フリーランスが仕事をする場所として「事務所」を持つのなら。事務所の家賃は、もちろん「経費」です。
また、「自宅兼事務所」としての家賃についても、その事務所部分はやはり「経費」です。
でも待てよ。入居時には仲介手数料やら敷金やら礼金やら、それらは経費になるのかな? 更新時の手数料はどう? 退去時のリフォーム費用は? 戻ってきた敷金はどうなるの?
と、事務所家賃にまつわる疑問はいろいろあるものです。
そこで、事務所の入居時から、その後の更新・退去まで。それぞれの場面で、フリーランスが経理処理で必要とする「仕訳」についてお話をします ↓
- 入居時 ・・・ 仲介手数料・敷金・礼金・保険料
- 入居後 ・・・ 光熱費
- 更新時 ・・・ 更新手数料
- 退去時 ・・・ リフォーム費用(原状回復費用)、敷金の戻り
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
入居時
(自宅兼)事務所の「入居時」には、ケースバイケースで、実にさまざまな名目の支払いが見られます。
これらの支払いを、内容に応じてどの勘定科目に振り分けるかがポイントになります。
勘定科目の確認
入居時の支払明細書を見ながら下記に当てはめて、該当する「勘定科目」を探っていきましょう ↓
支払の内容 | 支払金額 | 勘定科目 | 決算書の表示 |
敷金 | 退去時に返却される | 敷金 | 貸借対照表・資産の部 |
退去時に返却されず、20万円未満 | 地代家賃 | 損益計算書・経費 | |
退去時に返却されず、20万円以上 | ※ | ※ | |
保証金 | 退去時に返却される | 保証金 | 貸借対照表・資産の部 |
退去時に返却されず、20万円未満 | 地代家賃 | 損益計算書・経費 | |
退去時に返却されず、20万円以上 | ※ | ※ | |
礼金 | 20万円未満 | 地代家賃 | 損益計算書・経費 |
20万円以上 | ※ | ※ | |
仲介手数料 | ー | 支払手数料 | 損益計算書・経費 |
前家賃 (入居日の翌月分家賃) | ー | 地代家賃 | 損益計算書・経費 |
日割り家賃 (入居日〜月末までの家賃) | ー | 地代家賃 | 損益計算書・経費 |
管理費・共益費 | ー | 地代家賃 | 損益計算書・経費 |
火災保険料 | 今年の分 | 損害保険料 | 損益計算書・経費 |
翌年以降の分 | 前払費用 | 貸借対照表・資産の部 | |
鍵交換費用 | ー | 消耗品費 | 損益計算書・経費 |
家賃保証料(入居時一括払い) | 退去時に返却される | 保証金 | 貸借対照表・資産の部 |
退去時に返却されず、20万円未満 | 支払手数料 | 損益計算書・経費 | |
退去時に返却されず、20万円以上 | ※ | ※ | |
家賃保証料(毎月払い) | ー | 支払手数料 | 損益計算書・経費 |
仕訳例
では、前述の表を元にして、具体例で見てみましょう ↓
入居時に、下記 370,000円を振込で支払った
- 敷金 100,000(退去時に返却される)
- 礼金 100,000
- 仲介手数料 50,000
- 前家賃 100,000
- 火災保険料 20,000(保険期間2年、契約日 4月1日)
【単独で事務所の場合の仕訳】
自宅兼事務所ではなく、単独の事務所である場合の仕訳は次のとおりです ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
敷金 地代家賃 支払手数料 地代家賃 損害保険料 前払費用 | 100,000 100,000 50,000 100,000 7,500 12,500 | 普通預金 | 370,000 | 敷金 礼金 仲介手数料 前家賃 火災保険料(4.1-12.31分) 火災保険料(12.31以降分) |
火災保険料(保険期間 2年)については、「契約日(4月1日)から決算日(12月31日)まで」と「それ以降」とで、金額を月数あん分しています。
前者については経費になる、後者については経費にならない、という経理処理に注意しましょう。
支払いをしていたとしても、決算日を超える分はその年の経費にはできないということです。
ここで経費にならなかった「前払費用」は、翌年、次のように仕訳をすることで経費になります。
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
損害保険料 | 10,000 | 前払費用 | 10,000 | 火災保険料(1.1-12.31分) |
はじめに「前払費用」とした金額は「12,500」、そこから「10,000」を「損害保険料」として経費に振り替えるのが上記の仕訳です。
残りの「2,500」は、さらにその翌年の経費、ということになります。
【自宅兼事務所の場合の仕訳】
前述の仕訳について、事務所が「自宅兼」である場合の仕訳を見てみましょう。自宅兼事務所の利用状況を、「自宅分は70%、事務所分は30%」と仮定します。
下記仕訳のうち、上段については「単独で事務所」の仕訳と同じです。異なるのは、下段に「事業主貸」の仕訳が追加されているところです ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
敷金 地代家賃 支払手数料 地代家賃 損害保険料 前払費用 | 100,000 100,000 50,000 100,000 7,500 12,500 | 普通預金 | 370,000 | 敷金 礼金 仲介手数料 前家賃 火災保険料(4.1-12.31分) 火災保険料(12.31以降分) |
事業主貸 | 180,250 | 地代家賃 支払手数料 地代家賃 損害保険料 | 70,000 35,000 70,000 5,250 | 礼金 自宅分 仲介手数料 自宅分 前家賃 自宅分 火災保険料 自宅分(4.1-12.31分) |
上記仕訳のうち、「事業主貸」のところで、自宅分 70%(総額 180,250円)を「経費」から除いていることになります。
なお、「敷金」や「前払費用」などの「資産」については、「事業主貸」の処理を要しません。
この事業主貸について、詳しくはこちらの記事をどうぞ ↓
入居後
続いて「入居後」について、確認をしていきましょう。
勘定科目の確認
入居後の支払家賃の明細を見ながら下記に当てはめて、該当する「勘定科目」を探っていきましょう ↓
支払の内容 | 勘定科目 | 決算書の表示 |
家賃 | 地代家賃 | 損益計算書・経費 |
管理費・共益費 | 地代家賃 | 損益計算書・経費 |
家賃保証料(毎月払い) | 支払手数料 | 損益計算書・経費 |
電気代、ガス代、水道代 (家賃と別途支払いの場合も含む) | 水道光熱費 | 損益計算書・経費 |
仕訳例
では、前述の表を元にして、具体例で見てみましょう ↓
毎月の家賃など、下記 120,000円を振込で支払った
- 家賃 100,000
- 管理費 5,000
- 電気代等光熱費 15,000
【単独で事務所の場合の仕訳】
自宅兼事務所ではなく、単独の事務所である場合の仕訳は次のとおりです ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
地代家賃 地代家賃 水道光熱費 | 100,000 5,000 15,000 | 普通預金 | 120,000 | 家賃 管理費 電気代等光熱費 |
【自宅兼事務所の場合の仕訳】
前述の仕訳について、事務所が「自宅兼」である場合の仕訳を見てみましょう。自宅兼事務所の利用状況を、「自宅分は70%、事務所分は30%」と仮定します。
下記仕訳のうち、上段については「単独で事務所」の仕訳と同じです。異なるのは、下段に「事業主貸」の仕訳が追加されているところです ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
地代家賃 地代家賃 水道光熱費 | 100,000 5,000 15,000 | 普通預金 | 120,000 | 家賃 管理費 電気代等光熱費 |
事業主貸 | 84,000 | 地代家賃 地代家賃 水道光熱費 | 70,000 3,500 10,500 | 家賃 自宅分 管理費 自宅分 電気代等光熱費 自宅分 |
上記仕訳のうち、「事業主貸」のところで、自宅分 70%(総額 84,000円)を「経費」から除いていることになります。
更新時
続いて「更新時」について、確認をしていきましょう。契約更新時の、更新手数料をどう扱うかがポイントです。
勘定科目の確認
更新時の支払明細を見ながら下記に当てはめて、該当する「勘定科目」を探っていきましょう ↓
支払の内容 | 支払金額 | 勘定科目 | 決算書の表示 |
更新料 | 20万円未満 | 地代家賃 | 損益計算書・経費 |
20万円以上 | ※ | ※ | |
更新事務手数料 | 支払手数料 | 損益計算書・経費 | |
火災保険料 | 今年の分 | 損害保険料 | 損益計算書・経費 |
翌年以降の分 | 前払費用 | 貸借対照表・資産の部 |
仕訳例
では、前述の表を元にして、具体例で見てみましょう ↓
更新時に、下記 150,000円を振込で支払った
- 更新料 100,000
- 更新事務手数料 50,000
【単独で事務所の場合の仕訳】
自宅兼事務所ではなく、単独の事務所である場合の仕訳は次のとおりです ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
地代家賃 支払手数料 | 100,000 50,000 | 普通預金 | 150,000 | 更新料 更新事務手数料 |
「更新料」と「更新事務手数料」は何が違うのか?ということについて触れておきますと。
「更新料」は、契約を更新するにあたり、「貸主」に対して支払うものです。
いっぽうの「更新事務手数料」は、契約を更新するにあたり、「不動産仲介会社」に対して支払うものです。
【自宅兼事務所の場合の仕訳】
前述の仕訳について、事務所が「自宅兼」である場合の仕訳を見てみましょう。自宅兼事務所の利用状況を、「自宅分は70%、事務所分は30%」と仮定します。
下記仕訳のうち、上段については「単独で事務所」の仕訳と同じです。異なるのは、下段に「事業主貸」の仕訳が追加されているところです ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
地代家賃 支払手数料 | 100,000 50,000 | 普通預金 | 150,000 | 更新料 更新事務手数料 |
事業主貸 | 105,000 | 地代家賃 支払手数料 | 70,000 35,000 | 更新料 自宅分 更新事務手数料 自宅分 |
上記仕訳のうち、「事業主貸」のところで、自宅分 70%(総額 105,000円)を「経費」から除いていることになります。
更新時
さいごに「退去時」について、確認をしていきましょう。退去時の、リフォーム費用(原状回復費用)や敷金の戻りをどう扱うかがポイントです。
勘定科目の確認
更新時の入金明細を見ながら下記に当てはめて、該当する「勘定科目」を探っていきましょう ↓
支払の内容 | 勘定科目 | 決算書の表示 |
リフォーム費用(原状回復費用) | 修繕費 | 損益計算書・経費 |
敷金の戻り | 敷金 | 貸借対照表・資産の部 |
保証金の戻り | 保証金 | 貸借対照表・資産の部 |
日割り家賃の戻り | 地代家賃 | 損益計算書・経費 |
仕訳例
では、前述の表を元にして、具体例で見てみましょう ↓
退去時に、下記 130,000が振り込まれた
- 日割り家賃の戻り 30,000
- 敷金の戻り 50,000(リフォーム費用 50,000が相殺されている)
【単独で事務所の場合の仕訳】
自宅兼事務所ではなく、単独の事務所である場合の仕訳は次のとおりです ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
普通預金 修繕費 | 80,000 50,000 | 地代家賃 敷金 敷金 | 30,000 50,000 50,000 | 日割り家賃の戻り 敷金の戻り リフォーム費用 |
「地代家賃」は通常、左側(借方)の勘定科目として「経費」になりますが。ここでは日割り家賃の「戻り」なので、右側(貸方)で「経費のマイナス(=収入)」として仕訳します。
また、右側(貸方)の「敷金」は「戻り 50,000」と「リフォーム費用 50,000」とで合わせて 100,000です。当初、敷金支払い時に計上していた「敷金 100,000」がゼロになるように仕訳します。
【自宅兼事務所の場合の仕訳】
前述の仕訳について、事務所が「自宅兼」である場合の仕訳を見てみましょう。自宅兼事務所の利用状況を、「自宅分は70%、事務所分は30%」と仮定します。
下記仕訳のうち、上段については「単独で事務所」の仕訳と同じです。異なるのは、下段に「事業主貸」の仕訳が追加されているところです ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 | 摘要 |
普通預金 修繕費 | 80,000 50,000 | 地代家賃 敷金 敷金 | 30,000 50,000 50,000 | 日割り家賃の戻り 敷金の戻り リフォーム費用 |
地代家賃 事業主貸 | 21,000 35,000 | 事業主貸 修繕費 | 21,000 35,000 | 日割り家賃の戻り 自宅分 リフォーム費用 自宅分 |
上記仕訳のうち日割り家賃の戻りについては、「事業主貸」のところで、自宅分 30%(総額 21,000円)を「経費のマイナス(=収入)」から除いていることになります。
また、リフォーム費用については、「事業主貸」のところで、自宅分 70%(35,000円)を「経費」から除いていることになります。
まとめ
フリーランスの「(自宅兼)事務所家賃」の仕訳を入居から更新・退去までについてお話をしてきました。
入居時、入居後、更新時、退去時、それぞれでいろいろな勘定科目・仕訳が出てきます。
支払や入金の明細を見ながら、間違いのないように気をつけましょう。
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