銀行融資が受けられない・受けにくいという場合、銀行融資に関する「間違い」や「勘違い」といった共通点が見られます。
そこで。銀行融資で失敗しがちな中小企業経営者のチェックリスト、についてお話をしていきます。
「間違い」や「勘違い」があるから失敗する
会社・事業における銀行融資について。
思うように銀行から融資が受けられない… 借りたいのに借りられない… と悩む中小企業経営者は少なくありません。
そのような中小企業経営者には、銀行融資に関する「間違い」や「勘違い」といった共通点が多く見られます。結果、銀行融資で失敗をしてしまう。
そこで。銀行融資で失敗しがちな中小企業経営者のチェックリスト、についてお話をしていきます。
以下に掲載する 10のチェックリストのうち、あてはまるものが3つ以上あれば要注意。
じぶんはだいじょうぶかな? ということで、いちど確認をしてみましょう。チェックリストは次のとおりです ↓
- とにかく借金はしたくない
- 借金は早く返済するに限る
- おカネが無くなったら借りればいい
- メガバンクから融資を受けたい
- 銀行対応はできるだけ口頭で済ませる
- 税金を払うくらいなら経費を使う
- 銀行からの営業はお断りしている
- ひとつの銀行とじっくりお付き合いをするのがいい
- 銀行にはいつも金利を下げるよう言っている
- 融資条件がいい銀行があればすぐにでも乗り換える
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行融資で失敗しがちな中小企業経営者チェックリスト10
とにかく借金はしたくない
借金がない、つまり、銀行融資を受けていない会社に対して、銀行はこんなことを考えます ↓
”融資を受けたくても受けられない会社なの?”
業績が悪い、その他なにか事情(たとえば、粉飾決算をしているとか)があって、どの銀行もおカネを貸さないようにしているのではないか。と、疑っているわけです。
銀行から見たときには、「銀行融資を受けている」という実績が信用になります。借金をしている、借金ができることが信用になるのです。
したがって、業績がよいときなど「融資が受けやすい」ときに融資を受けておきましょう。そこでも「借金をしたくない」のでは、融資は受けにくくなるばかりです。
無借金経営がいちばん、と見聞きすることもありますが。それは、借金をしなくてもよい会社(大企業や優良企業)のハナシです。
業績が安定しない・資金繰りも安定しない中小企業であれば、まずは借りてでもおカネを持つことです。無借金経営はその先、業績も資金繰りも安定してからにしましょう。
おカネが無くなったら借りればいい
手元のおカネが無くなってから、あるいはだいぶ少なくなってから融資を受けよう、というのはムリな話です。
もしもあなたが、おカネを貸す側の立場だとしたら。そんな相手におカネを貸したいですか? ということです。
ましてや、銀行は「商売」としておカネを貸しています。家族・友人であれば「情」で貸すこともあるでしょうが、商売に情はありません。
銀行は、おカネを持っている会社に融資をしたいと考えています。より確実に、貸したおカネを返してもらえるからです。
これについて、「おカネを持っているのに借りるなんてヘンなの」と思われるかもしれません。
けれども、そこで(おカネがあるときに)融資を受けないから、そのあと(おカネが無いときに)融資を受けられるずに失敗をするのです。
借りる側の都合ではなく、貸す側の都合を考えるようにしましょう。
借金は早く返済するに限る
言うまでもないことですが。銀行はおカネを貸して、利息収入を得ています。
であるならば、融資残高は多いほうが、銀行にとってはいいわけで。融資残高が大きな相手こそが、銀行にとってのお客さまであり、お得意先です。
この点で。ただただ返済しているばかりだと、銀行の利息収入は減りますし、お得意さま度合は下がっていきます。
結果として、その銀行とのコミュニケーションが減る(担当者が足を運ばなくなる)、融資条件の改善も見込めない(金利を下げたりしたらますます利息収入が減る)という状況になりがちです。
また、返済が進んで「完済」ということになれば。前述した「借金をしている・借金ができるの信用」も無くなってしまいます。
借金を早くなくしたい、という気持ちはわかりますが。いつか融資を受けるかもしれないならば、返すばかりではなく「また借りる」という選択肢を検討しましょう。
メガバンクから融資を受けたい
銀行のネームバリューに惹かれてか、メガバンクから融資を受けようとする中小企業経営者がいます。
やめましょう。メガバンクにとってのお客さまは大企業です。中小企業への融資は、基本、考えていません。
メガバンクは豊富な資金力を活かして、低金利で大量のおカネを、安全な相手に貸すことを商売にしています。
ですから、中小企業に低金利で少量のおカネを貸しても商売になりません。そのうえ、大企業ほど安全ではない中小企業相手に低金利ではリスクが大きすぎます。
中小企業が融資を受けるのであれば、まずは信用金庫・信用組合。次いで地方銀行。あわせて、公的な金融機関である日本政策金融公庫です。
銀行とのお付き合いは「分相応」。自社・じぶんの身の丈にあった銀行選びが重要です。
銀行対応はできるだけ口頭で済ませる
銀行に融資を依頼する際、「口頭」だけで済ませる。ラクではあるかもしれませんが、融資の成功確率は下がります。
口だけではなく、それを裏付ける根拠としての「書類」があったほうが、成功確率は上がります。
具体的には、「試算表・資金繰り表・借入金一覧表」。この3点はあったほうがよいでしょう。
融資の可否を決めるのは、目の前にいる担当者ではありません。融資係長や支店長など、複数の目による「稟議」によって可否が決まります。
担当者に「口頭」で伝えた情報が、正しく稟議の場にまで伝わるかはわかりません。それ以前に、そもそも情報が不足すれば、稟議にもならないでしょう。
その情報を補うために、担当者が書類作りをするのであれば、担当者としては「手間のかかる融資先は後回し」でもなんら不思議はありません。
書類をつくる・書類をわたすことを惜しめば、融資が受けにくくなるということを理解しておきましょう。
税金を払うくらいなら経費を使う
こんなに税金を払うくらいなら経費を使ったほうがマシだ。というハナシを見聞きします。
それはそれでひとつの考え方ではありますが、銀行融資に関して言えば「NG」です。
銀行が融資をしたいのは「利益」が出ている会社、つまり、「税金」を納めている会社。逆に、税金を納めていない会社、つまり、利益が出ていない会社には融資をしたくない。と考えています。
借りたおカネを返済をするための原資は利益であって、その利益がない会社には危なくて融資ができない。ということです。
したがって、目先の税金を嫌うと、銀行からも嫌われます。税金を嫌い、経費を使って利益を減らせば、銀行から融資は受けづらくなる。
節税自体を否定するものではありませんが、銀行融資とのバランスには注意が必要です。
銀行からの営業はお断りしている
ときに、銀行から「融資を受けませんか?」との営業を受けることがあります。
これに対して、「いらん、いらん」とカンタンに断っている。というのであれば、得策ではありません。
銀行が「貸したい」と言っている・考えているのですから、借りやすいタイミングだということ。これを逃すのはもったいないからです。
このようなタイミングを逃しておきながら、結局あとになって「やっぱり貸して」と言うが借りられない… という中小企業経営者のなんと多いことか。
銀行が貸したいのは「いま」なのですから、「あとで」はありません。
いつか借りるかもしれないという状況であれば、「いま」借りる。いまはおカネがあったとしても、いま借りておく。これが、銀行からの営業時に考えるべきことです。
銀行融資は「借りたい」とき(おカネがないとき)には借りられないことを覚えておきましょう。
ひとつの銀行とじっくりお付き合いをするのがいい
ひとつの銀行からしか融資を受けていない、というのはよろしくありません。
第一に、その銀行の状況が変わってしまった場合に困ったことになるからです。たとえば、別の銀行に吸収合併される、支店長が変わる、担当者が変わる、など。
これらの状況変化によって、融資姿勢も変化することが考えられます。急に融資に対して厳しくなった、急に回収を迫られた、というケースは少なくありません。
また、ひとつの銀行とだけお付き合いをしていると「競争原理」が働かず、融資条件が悪くなりがちです。わかりやすい例で言えば「金利」。
金利が高いと思っても、ひとつの銀行としか取引がなければ、その銀行は金利を下げる動機がありません。競争相手がいないからです。
これに対して、複数の銀行と取引があれば。金利が高ければ、他の銀行に流れてしまうかもしれない… との危機感が、金利を下げる動機になりえます。
銀行とじっくりお付き合いをするのはよいですが。ひとつの銀行とだけ、はやめておきましょう。
銀行にはいつも金利を下げるよう言っている
銀行にはいつも金利を下げるように言っている。でも、下がらない… と言われる中小企業経営者がいらっしゃいます。
まず、銀行融資においては(というかおカネの貸し借りにおいては)、借り手の立場よりも貸し手の立場が上であることを再認識しましょう。
金利を決める主導権は基本的に「貸し手」の側にあります。そこを無理強いすれば、銀行としては「だったら貸さない」でおしまいです。
いっぽうで。さきほど、競争原理を活かして「金利」を下げる、という話をしました。これであれば、銀行にとやかく言わずとも、金利を下げることができます。
銀行交渉を考えるのであれば、直接的に要求をするよりも、「他の銀行との取引状況」という情報を開示するほうが効果的です。
そのときの資料として、「借入金一覧表」を作成して、常に情報を更新しておくようにしましょう。
融資条件がいい銀行があればすぐにでも乗り換える
いま借りているA銀行の融資よりも、よい条件(金利が安い、返済期間が長いなど)の融資をB銀行が提案してきた。
これは、乗り換え(B銀行で借りてA銀行に返済する)のチャンス!たしかにそのとおりなのですが。
これによって、A銀行との関係は終わることを覚悟しなければいけません。他の銀行に乗り換えるのは、乗り換えられた銀行からすれば「裏切り」行為ととられるからです。
銀行に限らず、じぶんのお客さまを他人にとられれば、おだやかではありませんよね。そういうことです。
別に、これからはB銀行とお付き合いをするからいいのだ。と言われるかもしれませんが。果たして、B銀行がA銀行よりも親身にお付き合いをしてくれるかはわかりません。
A銀行との付き合いが長く、B銀行とはお付き合いをはじめたばかり、というのであればなおのこと。
そもそも、B銀行は「この会社は融資条件しだいでカンタンに乗り換える」という目で見ています。明日は我が身ですから、シビアなお付き合いも予想されるところです。
目先の融資条件ばかりでなく、「中長期的に安定した資金調達」という点もふまえて、銀行選び・お付き合いをするようにしましょう。
銀行融資におすすめのメニュー
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まとめ
銀行融資で失敗しがちな中小企業経営者チェックリストについてお話をしてきました。
実は気づかないだけで、融資が受けられない・受けにくいことになっているかもしれません。
じぶんはだいじょうぶかな? ということで、いちど確認をしてみましょう。
- とにかく借金はしたくない
- 借金は早く返済するに限る
- おカネが無くなったら借りればいい
- メガバンクから融資を受けたい
- 銀行対応はできるだけ口頭で済ませる
- 税金を払うくらいなら経費を使う
- 銀行からの営業はお断りしている
- ひとつの銀行とじっくりお付き合いをするのがいい
- 銀行にはいつも金利を下げるよう言っている
- 融資条件がいい銀行があればすぐにでも乗り換える