今年買ったのに、今年の経費にならないもの。なーんだ?
って、ナゾナゾではありません。フリーランス・個人事業者の帳簿つけ(経理)では、実際にそういうものがあるのです。というお話をしていきます。
買ったのだから当然経費! とは限らない
フリーランス・個人事業者の帳簿つけ(経理)について。
間違いが多いことのひとつとして、「今年買ったのに、今年の経費にならないもの」が挙げられます。
買ったのだから当然に経費だろう、と考えるわけですが。実は、今年の経費ではない、今年の経費にしてはいけない。そんなものがある、ということです。
これを間違えれば「経費にしすぎ」であり、ひいては「納める税金が少なすぎ」ということになってしまいます。
税務署に見つかったら…? 追徴になりますね。それは困るし、なによりじぶんのためにも、正しい帳簿つけをしたいものです。
ということで、「今年買ったのに、今年の経費にならないもの」についてお話をしていきます。次のとおりです ↓
- まだモノを受け取っていない
- まだサービスを受けていない
- 買いだめした
- まだ商品が売れていない
- 値段が高いモノを買った
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
今年買ったのに「今年の経費にならない」もの
まだモノを受け取っていない
今年買ったのに、「まだモノを受け取っていない」という場合。今年の経費にはなりません。
おカネを払った(クレジットカード払いなどを含む)からといって経費にできるわけではなく、買ったモノを受け取ったとき(厳密にはモノを使ったとき)にはじめて経費にできるのです。
具体例を、図で見てみましょう。
- 今年、パソコン(80,000円)を買った。おカネは支払ったが、在庫がなかったためモノは受け取っていない
- 翌年になって、パソコンを受け取った
したがって、このようなケースで、今年の経費にしてしまうと「間違い」ということになってしまいます。気をつけましょう。
帳簿つけをするときの「仕訳」としては次のとおりです ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | |
《今年》買ったとき | 前払金 | 80,000 | 現金 | 80,000 |
《翌年》モノを受け取ったとき | 消耗品費 | 80,000 | 前払金 | 80,000 |
ポイントは、「買ったとき」には経費にはできず、「前払金」として仕訳をすることです。
前払金は「資産」の項目として、「今年」の貸借対照表に掲載されることになります。
そして翌年。モノを受け取ったときに、資産(前払金)から経費(例では消耗品費)に振り替える。という流れになります。
まだサービスを受けていない
今年買ったのに、「まだサービスを受け取っていない」という場合。これも、今年の経費にはなりません。前述の「モノ」と考え方は同じです。
おカネを払った(クレジットカード払いなどを含む)からといって経費にできるわけではなく、買ったサービスを受けたときにはじめて経費にできるのです。
具体例を、図で見てみましょう。
- 今年、航空券(30,000円)を買った。おカネは支払ったが、航空券を使っていない
- 翌年になって、出張で航空券を使った(飛行機に乗る、というサービスを受けた)
したがって、このようなケースでも、今年の経費にしてしまうと「間違い」ということになってしまいます。気をつけましょう。
帳簿つけをするときの「仕訳」としては次のとおりです ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | |
《今年》買ったとき | 前払金 | 30,000 | 現金 | 30,000 |
《翌年》サービスを受けたとき | 旅費交通費 | 30,000 | 前払金 | 30,000 |
ポイントは、「買ったとき」には経費にはできず、「前払金」として仕訳をすることです。
前払金は「資産」の項目として、「今年」の貸借対照表に掲載されることになります。
そして翌年。サービスを受けたときに、資産(前払金)から経費(例では旅費交通費)に振り替える。という流れになります。
買いだめした
今年買ったけれど、「買いだめをしている」という場合。これも、今年の経費にはなりません。
おカネを払った(クレジットカード払いなどを含む)からといって経費にできるわけではなく、買いだめしたものを使ったときにはじめて経費にできるのです。
具体例を、図で見てみましょう。
- 今年、プリンタのインクをまとめ買いした(60,000円)。おカネは支払ったが、買ったインクはまだ使っていない
- 翌年になって、インクを使った
したがって、このようなケースでも、今年の経費にしてしまうと「間違い」ということになってしまいます。気をつけましょう。
帳簿つけをするときの「仕訳」としては次のとおりです ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | |
《今年》買ったとき | 貯蔵品 | 60,000 | 現金 | 60,000 |
《翌年》モノを使ったとき | 消耗品費 | 60,000 | 前払金 | 60,000 |
ポイントは、「買ったとき」には経費にはできず、「貯蔵品」として仕訳をすることです。
貯蔵品は「資産」の項目として、「今年」の貸借対照表に掲載されることになります。
そして翌年。サービスを受けたときに、資産(貯蔵品)から経費(例では消耗品費)に振り替える。という流れになります。
ただし、今年のあいだに使い切れなかったからといって、必ずしも経費にするのはNGというわけではありません。
だいたいいつも同じくらいの数を買っていて(ストックしていて)、日常的に使っているものであれば、買ったときに経費にしてもOKというルールになっています。
要は、「今年、なんかたくさん利益が出たから、たくさん買いだめして経費にしちゃえ」というのはダメだ、ということです。
まだ商品が売れていない
モノを仕入れて、それを売る。という商売をしているフリーランス・個人事業者について。
今年買ったのに、「まだ商品が売れていない」という場合。これも、今年の経費にはなりません。
おカネを払った(クレジットカード払いなどを含む)からといって経費にできるわけではなく、商品が売れたときに経費にできるのです。
具体例を、図で見てみましょう。
- 今年、商品(50,000円)を仕入れた。今年のあいだには売れなかった
- 翌年になって、商品が 60,000円で売れた
したがって、このようなケースでも、今年の経費にしてしまうと「間違い」ということになってしまいます。気をつけましょう。
帳簿つけをするときの「仕訳」としては次のとおりです ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | |
《今年》買ったとき | 商品仕入高 | 50,000 | 現金 | 50,000 |
《今年》決算のとき | 商品 | 50,000 | 期末商品棚卸高 | 50,000 |
《翌年》売れたとき | 現金 | 60,000 | 売上高 | 60,000 |
《翌年》決算のとき | 期首商品棚卸高 | 50,000 | 商品 | 50,000 |
今回の仕訳は、少々やっかいです。上記4つの仕訳を順番に見ていきましょう。
まず1つめ、「《今年》買ったとき」には、「商品仕入高」の勘定科目でいったん経費あつかいをしています。
その後、「《今年》決算のとき」になって、売れなかった商品は経費からはずす、という仕訳をします。
借方・勘定科目の「商品」は、「資産」の項目として、「今年」の貸借対照表に掲載。
貸方・勘定科目の「期末商品棚卸高」は経費のマイナス(つまり収入のようなもの)として、「今年」の損益計算書に掲載されます。これで結果的に、仕入は経費からはずれることになります。
「《翌年》決算のとき」までに売れていれば、資産(商品)から経費(期首商品棚卸高)に振り替える。ここで、あらためて経費になる、という流れになります。
ちょっと難易度高めの内容ではありますが、間違いも多く、重要な部分でもあります。詳しくはこちらの記事も参考にどうぞ ↓
値段が高いモノを買った
今年買ったけれど、「値段が高いモノを買った」という場合。これも、今年の経費にはなりません。
ちなみに。ここで言う「値段が高い」とは、ひとつ 30万円以上(白色申告の場合には 10万円以上)のモノを指します。
そのように値段が高いモノは、おカネを払った(クレジットカード払いなどを含む)からといっていちどに経費にできるわけではなく、使う年数に応じて分割して経費にするのです。
具体例を、図で見てみましょう。
- 今年、仕事で使うクルマ(1,500,000円)を買った
- 今年から、翌年以降、クルマを使っている
このようなケースでは、いちどに今年の経費にしてしまうと「間違い」ということになってしまいます。気をつけましょう。
帳簿つけをするときの「仕訳」としては次のとおりです ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | |
《今年》買ったとき | 車両運搬具 | 1,500,000 | 普通預金 | 1,500,000 |
《今年》決算のとき | 減価償却費 | 250,000 | 車両運搬具 | 250,000 |
《翌年以降》決算のとき | 減価償却費 | 250,000 | 車両運搬具 | 250,000 |
ポイントは、「買ったとき」にはいちどに経費にできず、いったん「資産(例では車両運搬具)」として仕訳をすることです。
車両運搬具は「資産」の項目として、「今年」の貸借対照表に掲載されることになります。
そのうえで「使う年数」に応じて、今年・翌年以降、「分割して経費」にしていきます。仕訳で言うと、「減価償却費」がそれに当たります。
なお、「使う年数」は、専門用語で「耐用年数」と呼ばれ、資産の種類に応じて決まっています。たとえば、普通自動車であれば6年、軽自動車であれば4年、といった具合です。
このように、値段が高いモノを分割して経費にすることを「減価償却」と呼ぶのですが、申告書への記載も含めて少々難解であり、やっかいなところだと言えるでしょう。
くわしくは、こちらの記事も参考にどうぞ ↓
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まとめ
フリーランスの「今年買ったのに、今年の経費にならない」もの、についてお話をしてきました。
帳簿つけにおいては、間違いの多いところになります。
買ったのだから当然に経費だろう、と考えるわけですが。実は、今年の経費ではない、今年の経費にしてはいけない。そんなものがある、ということを確認しておきましょう。
- まだモノを受け取っていない
- まだサービスを受けていない
- 買いだめした
- まだ商品が売れていない
- 値段が高いモノを買った