「銀行からの借入金を早く減らしたい」
たしかに、借金は無いに限りますよね。そこで、会社が銀行借入金を減らす5つの方法とその良し悪しについて、お話をしていきます。
「借金は無いに限る」に間違いは無い
「銀行からの借入金を早く減らしたい」という会社は少なくないでしょう。
やはり「借金」は無いに限ります。しなくていい借金は減らす、という考えに間違いはありません。
では会社が、いまある銀行からの借入金を減らそうというときに、どのような方法が考えられるのか?
おもな方法と、その良し悪しをまとめたものがこちらです ↓
方法 | 良し悪し | |
1 | 在庫を減らす | ◯ |
2 | 売掛金を減らす | ◯ |
3 | 利益を増やす | ◎ |
4 | 固定資産を売る | △ |
5 | 手元の現金預金で返済する | × |
上記5つの方法とその良し悪しについて、このあと順番に見ていきましょう。
会社が銀行借入金を減らす5つの方法とその良し悪し
《方法1》在庫を減らす…◯
商品を仕入れて、それを売る。というような商売をしている場合、在庫が増えると借入金も増える傾向にあります。
なぜなら、在庫になっているあいだは、仕入代金分のおカネが流出している状態になるからですね。
在庫は売れればおカネに替わりますが、売れなければ「ただの在庫」でしかなく、そのままでは資金繰りには使えません。
したがって、在庫が増えるとその分のおカネが足りなくなる。ゆえに銀行から借入をする。これは別に間違ったことではなく、どちらかと言えばセオリーです。
ところが。不良在庫・過剰在庫を抱えるとなれば話は別です。不良在庫・過剰在庫はいつまでたってもおカネに替わらないのですから、銀行から借りたおカネの返済に困ります。
この点で「ウチは不良も過剰もない!」と言う会社は少なくありませんが、実は不良在庫・過剰在庫は多かれ少なかれあるものです。
その証拠に、入出庫表をつくってみればわかります。入ってくる商品(入庫)、出ていく商品(出庫)の推移を表にすると、「あれ? 動いてない…」「こんなに必要ないかも」という商品が見つかります。
もっとも、「入出庫表などつくっていない・つくったことがない」という話は多く。その場合には、不良在庫・過剰在庫の存在は免れないものと考えたほうがよいでしょう。
入出庫を管理できないと、盗難・紛失などにも気づきにくくなります。在庫商品が盗まれたり失くなったりすれば、おカネに替わらないのですから、やはり資金繰りの悪化につながります。
なにも「在庫」は商品だけではありません。事務で使うボールペンだって、コピー用紙だって在庫です。
ムダにたくさんストックされてはいませんか? ムダに種類をそろえてはいませんか? そもそも、使わずに済む方法はないですか(ペーパーレスなど)?
そう考えると、在庫を減らす「余地」はだいぶあるもので。ムダな在庫が減れば、ムダな借金をしなくて済みます。借入金を減らす方法の良し悪しとしては◯です。
《方法2》売掛金を減らす…◯
前述の「在庫」と似たような話になるのが「売掛金」です。
売掛金もまた、回収するまでのあいだは「ただの売掛金」。おカネを回収してはじめて、資金繰りに使うことができます。
よって、売掛金が増えるとその分のおカネが足りなくなる。ゆえに銀行から借入をする。これもセオリーです。
ところが。回収できない売掛金、つまり不良債権となると、やはり話は別です。不良債権はいつまでたってもおカネに替わらないのですから、銀行から借りたおカネの返済に困ってしまう。
この不良債権への取り組みが不十分な会社も少なくありません。
たとえば、得意先の売掛金推移をチェックしていない、入金遅延の確認・督促をしていない、支払条件の管理・改善ができていない、などなど。
不良債権になる前には「なんらかの予兆」があらわれるものです。その予兆をできるだけ見逃さないしくみを持ちましょう。
また、売上拡大時・売上拡大思考に起こりがちなのが「支払条件の悪化」です。売上を伸ばすために、相手の希望に支払条件を合わせすぎてしまう。
具体的には、通常「末締め・翌月末入金」のところを「末締め・翌々月末入金」でもOKしてしまう、といったケースです。
結果、売掛金は膨らみます。借入が必要になります。不良債権化したときのダメージも大きくなります。そこまでしても、必要な売上だと言えますか?
そう考えると、売掛金を減らす「余地」もあるものです。売掛金が減れば、必要な借金も減ります。借入金を減らす方法の良し悪しとしては◯です。
《方法3》利益を増やす…◎
利益は借入金の返済原資になるものです。税金を払ったあとに残った利益があるから、借入金を返済することができる、という考え方があります(借入金返済は経費ではありません)。
ですから、会社ががんばって利益を増やす。そして、借入金を減らすのは理にかなったことだと言えます。
ところが。決して少なくはない数の会社が、「出せるはずの利益」「増やせるはずの利益」を避けているのが現実です。
もしも、税率 30%の法人税を嫌って、経費 100万円を使ったら。税金は 30万円減りますが、おカネは 100万円減ります。そのまま法人税を払っていれば、おカネは 70万円残ったのに。
このように行き過ぎた節税思考がある場合、「出せるはずの利益」を失うことになります。失った利益の分、おカネも失いますから、ムダな借金をすることにもつながります。
また、値決めを誤り、安すぎる売値を設定していると。「増やせるはずの利益」を失っていることになります。
いわゆる売上至上主義のもとでは、安すぎる値決めに陥りがちです。いつも満席・いつも長蛇の列、という飲食店などはその一例だと言えるでしょう。
値上げによって客数が減っても、単価増で売上はそれほど落ちずに利益は増えます。満席・長蛇の列が無くなれば、お店のオペレーションにも余裕が出ます。
その余裕で商品力・サービス力を上げれば、さらなる値上げと利益増も狙えるでしょう。すると、ムダな借金をしなくてすみます。
したがって、「利益を増やすなんて当たり前のハナシじゃないか」と言いながらも、実は知らず知らず「出せるはずの利益」「増やせるはずの利益」を避けている会社がある。
そう考えると、利益を増やす「余地」は、「意外にもかなり」あるものです。利益が増えれば、必要な借金も減ります。借入金を減らす方法の良し悪しとしては◎です。
《方法4》固定資産を売る…△
一般に、借入金を減らす方法として「不要な資産を売却する」が挙げられます。
おもに、遊休不動産や、塩漬けになっている株式などを売却して現金化する、ということです。
たしかに、どうせ要らないモノであれば売ってしまって、早く現金化をするほうがよいでしょう。
ところが、こと小規模零細企業に関して言えば。不要な資産など、そうそう無かったりもするものです。
よって、固定資産を売るのはあまり現実的ではないだろうと考えれば、借入金を減らす方法としては△だと言えます。
なお、「不要な資産」ということに関連して。保険(積立金)の解約も、借入金を減らす方法のひとつです。
とくに、節税を狙って保険に加入、保険料支払いをしている会社が「赤字」というケース。
赤字で節税にもならないのに、保険料支払いでおカネは流出し続けている。でも、いま解約すると損だと言われるからそのまんま…
赤字が続いている・資金繰りが厳しいというのであれば、保険としての損はガマンをして、解約することも検討しましょう。おカネが減り続ける損のほうが深刻です。
解約すれば保険料の支払いは止まります。解約返戻金があれば現金化します。その分、ムダな借金をしなくてすみます。
( ※ 解約することにより保障は無くなってしまいますので、その点も忘れずに検討が必要なことには注意をしましょう)
《方法5》手元の現金預金で返済する…×
手元に余分なおカネがあるのであれば、それで借入金を返してしまったほうがいい。というのは、よく聞かれるところでしょう。
けれども。それは、銀行からの借入金を減らす方法としては × 、というのがわたしの考えです。
なぜなら、現金預金を減らすことには大きなリスクがあるから。もし、これから売上が減少したら? なにか損害が生じたら? 必要になるのはおカネです。
「そうなったらまた借りればいい」と言う会社がありますが、それは間違いです。
銀行は基本的に、前向きなおカネ(売上増加に伴う運転資金、設備投資など)を貸すところなのであり、後ろ向きなおカネを貸すところではありません。
また、運良く(?)借りられたとしても。実際に借りられるまでには、審査・手続きで時間がかかります。もし、それまでのあいだもたなければ…
したがって、困ったときには借りられない、困ったときに借りるのでは間に合わない。それが、銀行融資に対する正しい考え方だと言えるでしょう。
大企業が目指す無借金経営と、中小企業の無借金経営とを混同してしまう会社があります。
大企業が手元の現金預金を極力減らして借金を減らせるのは、投資家・銀行などから「いつでも・いろいろな手段」で資金調達ができるからです。それができる大きな信用があるからです。
これに対して、多くの中小企業にはそれがありません。もともとが過小資本なうえに、「いつでも・いろいろな手段」で資金調達ができるわけでもありません。
であるならば。それ相応の現金預金を手元において置かないと、いざというときに会社は存続の危機にさらされます。ここぞで投資ができず、成長機会を逃すこともあるでしょう。
借金が無いに越したことはありません。無借金経営を目指すのも間違いではありません。いっぽうで、「必要な借金」もあるということです。
銀行借入金を減らそうと急ぐあまり、手元の現金預金を減らしすぎることがないように注意しましょう。
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まとめ
会社が銀行借入金を減らす5つの方法とその良し悪しについてお話をしてきました。
「借金」は無いに限ります。しなくていい借金は減らす、という考えに間違いはありません。
けれども、借金を減らす方法には良し悪しがある。これを押さえておきましょう。
方法 | 良し悪し | |
1 | 在庫を減らす | ◯ |
2 | 売掛金を減らす | ◯ |
3 | 利益を増やす | ◎ |
4 | 固定資産を売る | △ |
5 | 手元の現金預金で返済する | × |