フリーランスは経費をいくらまで使っていいの? その答えは「いくらでも」です。
けれども、手放しでは喜べない。気をつけるべきポイントがありますよ、というお話です。
フリーランスの経費に上限は無い、のだけれど。
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ということもあって、フリーランスと思われる方からの「キーワード検索」により記事の閲覧をいただいているところです。
その検索のようすを見ていると。時折あるのが「経費 いくらまで」というキーワードです。つまり、「経費をいくらまで使っていいのか?」との疑問だと思われます。
経費が多いほど利益は少なくなる(利益 = 収入 − 経費だから)。利益が少なくなると税金が少なくて済む(税金 = 利益 × 税率だから)。というのが疑問の出どころでしょう。
では、その疑問に対する回答は? と言えば。「いくらでも」です。言い換えると、「フリーランスの経費に上限は無い」ということになります。
えっ、そうなの? いくらでも経費にしていいなんてラッキー! と思われるかどうかはわかりませんが。実は、手放しでは喜べない、気をつけるべきポイントがあります。
そこで、フリーランスは経費をいくらまで使っていいの?に対する3つのポイントについて、お話をしていきます。こちらです ↓
- 経費は仕事に関するものだけ
- その利益で生活できるのか?
- 税金を減らすとおカネはもっと減る
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
フリーランスは経費をいくらまで使っていいの?に対する3つのポイント
《ポイント1》経費は仕事に関するものだけ
冒頭、「フリーランスの経費に上限は無い」と言いました。ただし、「気をつけるべきポイントがある」とも言いました。
というわけで、気をつけるべきポイントの1つめ。それは「経費は仕事に関するものだけ」です。言い方を変えると、「仕事に関係のないものは経費にはできない」です。
仕事に関係のないものまで経費にすれば、当初の税金は少なくなります。けれども後日、税務署に見つかれば税金を追徴されてしまいます。だから、「仕事に関係のないものは経費にはできない」のです。
そんなのあたりまえだろう、と思われるかもですが。実際には「仕事に関するもの」を判断するのは、意外と難しかったりもします。なにをもって仕事かどうか? を判断するかの基準が明確ではないからです。
そこでわたしは、次の3つの「自問自答」を判断基準としておすすめをしています ↓
- 他人が経費にしていたらズルいと思うか?
- 経費にすることに迷う気持ちがあるか?
- 良心に恥じるところはあるか?
これらの質問に対して「すべてNO」であれば、仕事に関係がある。「ひとつでもYES(あるいは、NOと言えない)」があれば、仕事に関係があるとは言えない。と考えます。
結局のところ、仕事に関係があるかどうかを決めるのは「じぶん」です。
この点で、「知人は〇〇を経費にしているらし」とか、「友人は税務署から△△は経費ではないと指摘されたらしい」などと言うフリーランスの方もいますが。
他人は関係ありません。他人の状況は100%じぶんと同じとは限らないからです。じぶんが自信を持って「仕事に関係がある」と言えるかどうかであって、他人は理由にならないことを覚えておきましょう。
なお、そもそも「どのようなものが経費になるのかな?」ということを知りたいのであれば、「勘定科目一覧」が参考になります。
たとえば、カフェで仕事をしたときのお茶代は「会議費」など。どのような支払いがどのような勘定科目になるか、を知ることができるのが「勘定科目一覧」です。経費になるものを知るための気づきにもなるでしょう。
勘定科目一覧についてはこちらの記事も参考にどうぞ ↓
《ポイント2》その利益で生活できるのか?
フリーランスの経費に上限は無いけれど、気をつけるべきポイントの2つめ。それは、「その利益で生活できるのか?」です。
例を挙げて考えてみましょう。
ある1年間の収入が 700万円のフリーランスAさんがいたとします。Aさんが確定申告に向けて経費を集計してみたところ、その金額は 500万円でした。
すると、Aさんの利益は 200万円になります(700万円 − 500万円)。では、この 200万円という利益で、Aさんは「生活」をすることができるのでしょうか?
ちなみに。利益 200万円に対して税金も支払わなければいけません。社会保険料(年金保険料・健康保険料)も支払わなければいけません。そのあと残ったおカネで1年間生活する。可能でしょうか?
Aさんの家族構成や生活ぶりなどにもよりますが、けっこう厳しそうですよね。税務署もそう考えます。
ということは。Aさんが経費だとしているもののなかには、実は仕事と関係がないもの(プライベートの費用)が混じっているのではないか?調査してみようかな。と、税務署は考えるわけです。
《ポイント1》では、「経費は仕事に関するものだけ」という話をしました。それを再確認する意味でも、「その利益で生活できるのか?」との視点を持っておくのがよいでしょう。経費をあらためて見直すきっかけになります。
また、「その利益で生活できるのか?」と考える第三者は税務署だけにとどまりません。
たとえば、銀行。銀行から融資を受けようとする場合、確定申告書や決算書の提示が必要です。銀行は、そこに記載されている「利益」が多いほど、返済力があると評価します。
さきほどのAさんはどうでしょう? 利益は 200万円。生活費すら厳しいのですから返済はできないだろう…(だから融資できない)というのが銀行の見方です。
これは、家や事務所など賃貸する場合の審査、クレジットカードをつくろうとする場合の審査などでも同じことです。審査に落ちるのも困りますよね。
経費に上限はありませんが、「その利益で生活できるのか?」という視点も見落とさないようにしましょう。
《ポイント3》税金を減らすとおカネはもっと減る
フリーランスの経費に上限は無いけれど、気をつけるべきポイントの3つめ。それは、「税金を減らすとおカネはもっと減る」です。
「経費をいくらまで使っていいのか?」と考えるフリーランスの狙いは、「経費を多くできれば税金を少なくできる」ことにあります。
ところが。そのようにして税金を減らすと、実はおカネはもっと減る。減らした税金以上におカネが失くなってしまうことを見逃している方もいるので注意が必要です。
これも例を挙げて考えてみましょう。
ある1年間の収入が 800万円のフリーランスBさんがいたとします。Bさんが確定申告に向けて経費を集計してみたところ、その金額は 300万円でした。なお、Bさんの税率は 20%だとします。
すると、Bさんの税金は 100万円です((800万円 − 300万円)× 20%)。けれどもBさん、「そんなに税金を払うくらいなら経費を使おう」と考えます。
そこで、決算間際に 200万円の経費を追加で支払ったとしたらどうでしょう?
税金は 60万円になりますね((800万円 − 300万円 − 200万円)× 20%)。当初の 100万円からは 40万円の税金を減らすことができました。
では、Bさんの「手元に残ったおカネ」はどうでしょう?
経費 200万円を追加払いしなければ、「手元に残ったおカネ」は 400万円です(収入 800万円 − 経費 300万円 − 税金 100万円)。これに対して、経費 200万円を追加払いすると、「手元に残ったおカネ」は 240万円です(収入 800万円 − 経費 500万円 − 税金 60万円)。
経費を追加払いすることで、税金は 40万円減りましたが、手元の残ったおカネは 160万円も減ったことになります。
税金を減らすとおカネはもっと減る。手元に残るおカネを増やしたければ、実は税金を払ったほうがいい。
経費には上限がないからと、経費を増やすことばかり、税金を減らすことばかりに目を奪われていると、見逃してしまいがちなところです。じゅうぶんに気をつけましょう。
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まとめ
経費が多いほど税金が少なくて済むことから、「経費をいくらまで使っていいのか?」との疑問が生まれます。
結論は「いくらでも」とはなりますが。手放しでは喜べない、気をつけるべきポイントについてはきちんと押さえておきましょう。
- 経費は仕事に関するものだけ
- その利益で生活できるのか?
- 税金を減らすとおカネはもっと減る