税金を少なくするために「利益を少なくしよう」、利益を少なくするために「経費を多くしよう」というのなら。
「経費を多くしよう」には、ちょっと注意が必要ですよ。そんなお話をしていきます。
経費を多くしよう、には注意が必要。
フリーランスが経理をするにあたって。「経費の扱い方」は、多くのフリーランスの関心事だと言ってよいでしょう。
なぜなら、経費が多いか少ないかで「利益」の金額が変わるから。利益の金額が変われば「税金」の金額も変わるからです。
税金をたくさん払いたい! というヒトは、あまりいないわけでして。すると、税金を少なくするためには「利益を少なくしよう」、利益を少なくするためには「経費を多くしよう」と考えることになります。
けれども。この「経費を多くしよう」という「経費の扱い方」には、ちょっと注意が必要ですよ。そんなお話をしてみることにします。必要な注意は、こちらの3つです ↓
- 経費は増やさない
- 経費は漏らさない
- 経費はムチャしない
これらは、意外と「盲点」にもなっているところです。それでは、このあと順番に見ていきましょう。
フリーランスが経費を扱うときの注意点
《注意点1》経費は増やさない
税金を少なくするために「利益を少なくしよう」、利益を少なくするために「経費を多くしよう」ということで。
もっと経費を増やす、もっと経費におカネをかける。すると、利益が減りますので税金も減ります。ところが、それ以上に「手元に残るおカネ」が減ることを見逃しているフリーランスは少なくありません。
カンタンな例で考えてみましょう。
500万円の利益を出せるフリーランスのA君がいたとして。税率を 20%と仮定すると、税金は 100万円です(500万円 × 20%)。
そこでA君は、「100万円も税金を払うのはイヤだ」と考えました。そうだ、もっと経費を増やそう。経費をあと 100万円増やしたら、税金は安くなるはずだ!
というわけで、経費を 100万円増やしたときの税金はどうなるか? 結論として、税金は 80万円になります。(500万円 − 100万円)× 20% という計算です。
かくして、A君の思惑どおり。税金は、100万円から 80万円になり、当初よりも 20万円も減ったのでした。めでたし、めでたし。
かと言えば、違います。ここで、税金を払ったあとの「手元に残るおカネ」のほうも見てみましょう。
当初、500万円の利益であれば。税金は 100万円ですから、利益から税金を引いた 400万円が手元に残ることになります。
これに対して、経費を 100万円増やした場合。利益は 400万円、税金は 80万円でした。利益から税金を支払ったあと、手元に残るおカネは 320万円です。
さて、どうでしょう? 手元に残るおカネは、経費を増やす前が 400万円。経費を増やしたあとが 320万円です。税金は 20万円減ったけれど、手元に残るおカネは 80万円も減ってしまいました…
ちっともめでたくはありませんよね。ところが、決して少なくはないフリーランスが、「目先の税金」に目を奪われているのです。
例では、増やした経費は「100万円」としましたが。増やした経費が 10万円であろうと 200万円であろうと結果は変わりません。やはり、経費を増やしたあとのほうが、手元に残るおカネは減ってしまいます。
加えて。経費を増やしたことで、利益を減らしているために、税金以外の場面で不利益をこうむる可能性もあります。
住宅ローンを組む、家を借りる、銀行から事業用の融資を受けるなど。「確定申告書を見せて」と言われたときに、利益が少ないために「お断り」をされてしまうかもしれません。
というわけで。経費は増やさない、との注意点を覚えておきましょう。とくに、「税金を減らすために経費を増やす」のは要注意です。
[ad1]《注意点2》経費は漏らさない
経費を増やすことを考えているいっぽうで、経費を漏らしているフリーランスがいます。
経費を増やそうとしながら、漏らしてもいるのですから、なんとも「お粗末」なハナシです。
経費を増やそうとするかどうかは別として。フリーランスが、経費を漏らしているのではもったいない。ほんとうは経費にできるはずのものを、漏らしてしまっているのではもったいない。
でも、意外と漏れていることもありますよ。という例を挙げてみましょう。
領収書を失くしてしまいました、レシートを失くしてしまいました… だから、金額もわからず経費にできませんでした。割とよく聞く話です。
失くしたというよりも、捨ててしまったという話もあります。
言うまでもありませんが、領収書やレシートは失くさないでください。捨てないでください。それらは、経費の証拠であり、経理をするうえでの資料でもあるのですから。
領収書やレシートの保管は「キホン」であるにもかかわらず。それもできずに、「税金を減らす良い方法はないか?」と息巻くのはおかしな話です。
まずは、経費を漏らさないこと。経費にできるものを確実に経費にすること。「税金を減らす良い方法」はそのあとです。
また、経費にできることを知らずに、経費を漏らしているケースもあります。
よくあるのは、喫茶店のコーヒー代が経費になるのを知らなかった… とか。仕事や作業で喫茶店に入ったのであれば、ひとりで飲んだコーヒー代も経費にできます。
ほかには、「家事関連費」と呼ばれる費用も、経費から漏れやすいものです。
家事関連費とは、仕事とプライベートの両方にかかわる費用のこと。たとえば、自宅兼事務所の家賃や光熱費、スマホの通話・通信料、クルマ関連の費用など。
仕事とプライベートの両方に関わる費用は、「仕事に使った分」については経費にすることができます。
けれども。このような家事関連費のことを知らなかったり、存在を知ってはいても、具体的な計算方法がわからずに手をつけられずにいる… というフリーランスの方を見聞きしています。
ですから、「もしかしたら、経費が漏れているかもしれない」との認識を持つことが大切です。
そのうえで、経理に関する本を読んでみたり、セミナーに参加してみたり、いちど税理士に相談をしてみるなどしてみるとよいでしょう。
経費を増やす以前に、経費を漏らさない。フリーランスが経理をするにあたっての注意点のひとつです。
[ad1]《注意点3》経費はムチャしない
フリーランスが経費を扱うときの注意点、さいごの3つめは「ムチャしない」です。
経費は多いほうがいい! との考えから、ムチャをするフリーランスの方がいます。
たとえば、さきほどの家事関連費について。1台しか持っていないスマホの通話・通信料の「全額」を経費にしているとか。
仕事用とプライベート用の2台持ちでもなければ、スマホを「完全に仕事だけ」で使っているということはないでしょう。なにかしら、プライベートでも使っているはずです。
だとしたら、通話・通信料のうちの一部は経費から外すことになります。全額を経費にするのは「ムチャ」です。
また、自宅兼事務所の家賃について、実際よりも多く経費にしているケースもよく見かけます。床面積の割合だと仕事部屋は 30%くらいなのに、80%も経費にしている… みたいな。
聞けば、仕事部屋以外にもリビングでも仕事をするだとか、トイレも使うだとか。たしかにそうかもしれませんが、リビングやトイレはプライベートで使う時間もあるでしょう。むしろ、プライベートのほうが多いのでは?
そう考えると、80%ということはなかなかないはずであり、「ムチャ」だと言えます。
家事関連費以外でも。ほんとうはプライベートだけれど、仕事だということで… と「ムチャ」をする。プライベートの飲食費を経費にツッコむ、といったケースはあるものです。
ムチャをすれば、目立ちます。ムチャをしている確定申告書は目立ちますから、税務署の目にも止まりやすくなります。
結果、税務調査で指摘をされれば、追加で税金を納めることになる。ペナルティも上乗せされて、必要以上におカネを失うことになります。フトコロが痛みます。
そして、なによりじぶんの「良心」が痛むはずです。ほんとうは経費ではないことをわかりながら、経費にしているのですから。後ろめたい気持ちがあるはずです。
家族にも、お客さまにも、社会にも。胸を張って生きることができるように、「ムチャ」はやめましょう。
ちなみに。もし、良心も痛まないというのであれば、それはもう、立派な「罪人」だと言えます。あしからず。
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まとめ
税金をたくさん払いたい! というヒトは、あまりいないわけで。
すると、税金を少なくするためには「利益を少なくしよう」、利益を少なくするためには「経費を多くしよう」と考えることになります。
けれども。「経費を多くしよう」には、注意が必要であることを押さえておきましょう。
- 経費は増やさない
- 経費は漏らさない
- 経費はムチャしない