銀行が「売上はどうなのか?」とたずねてくるし、会社もまた「売上はどうなのか?」を話してしまう。
でもそこは、売上よりも「売上総利益」の話をしてみましょう。ということについてお伝えをしていきます。
なぜみんな、そんなに売上ばかりが好きなのか?
会社が融資を受けようとする場合、銀行とはいろいろな話をするわけですが。その話のひとつに「売上」が挙げられます。
銀行が「売上はどうなのか?」とたずねてくるし、会社もまた「売上はどうなのか?」を話してしまう。というのは「あるある」でしょう。
もちろん、売上も必要ではあるけれど。どちらがだいじか?と言われたら、「売上総利益」であることを忘れてはいけません。
銀行には売上よりも「売上総利益」について語りましょう。でも、なんで?ということで、ポイントをまとめてみました。こちらです↓
- 売上至上主義から離れる
- ビジネスモデルを伝える
- 価格ではなく価値で売る
これら3つのポイントを押さえて、銀行と話をすることで、銀行はより会社のことを理解できるようになります。融資がしやすくなる。
いっぽうで、会社もまた、自身のことをかえりみるきっかけになります。改善につながれば、やはり融資が受けやすくなる。
それではこのあと、3つのポイントを順番に見ていきましょう。
銀行には売上よりも「売上総利益」を語れ!3つのポイント
《ポイント1》売上至上主義から離れる
冒頭で、こんなことを言いました↓
銀行が「売上はどうなのか?」とたずねてくるし、会社もまた「売上はどうなのか?」を話してしまう。
世の中いっぱんに、「売上」に対する関心が高いようで。テレビをはじめとした各種メディアでも、「年商〇〇億円!」みたいな表現を見聞きします。
年商は〇〇億円かもしれないけれど、利益はゼロかもしれないし、場合によってはマイナスかもしれない。そう思うと、年商ばかりで良し悪しを判断することはできないわけです。
それでも、「やっぱり売上、売上!」と言っている人たちの考え方を「売上至上主義」などと呼んだりします。売上が増えることが善、売上を増やすことを善とする考え方です。
売上が増える・売上を増やすこと自体に問題はありませんが。売上が増えても、利益が減るようでは問題です。
たとえば。売上増加にこだわるあまり、値引き販売をしたり、売値そのものを下げてみたり。すると、売上は増えたのに、売上総利益は減ってしまった…ということが起こりえます。問題です。
銀行から融資を受けたときに、返済をする原資は「利益」です。利益が残ってはじめて、そのなかから返済をすることができます。
ですから、利益が減ってしまうと、その分だけ返済原資が減りますので、融資は受けにくくなる。ということを忘れてはいけません。
そうは言ったって、利益を出すためには売上が必要だろう、売上がなければはじまらないだろう。そう思われるかもしれません。
そのとおりです。けれども、「売上ばかりに偏らないように、売上総利益の増減も見るように」というのが、このお話の趣旨になります。
なにしろ、世の中いっぱんに売上至上主義なのですから。
銀行と対話をするためのツールとされる「ローカルベンチマーク」にもまた、「売上増加率」という指標が採用されています。
売上が前年よりも大きく増えているほど、高い評点がつくようになっている。だから、銀行もますます「売上はどうなのか?」に関心を持つんじゃないか!と、個人的には「ザンネンな指標」だと感じるところです。
まぁ、それはそれとして。採用されている以上はしかたありません。
そこで、銀行と「売上増加率(売上の増加)」について話になったときには、「ウチは売上ばかりではなく、売上総利益を重視している」と伝えるきっかにするのがおすすめです。
同業他社の売上増加率と比べて負けているとしても、売上総利益率の高さでは負けません。だから、返済力もあります。という話の流れに持っていきましょう。
売上至上主義からは離れることです。
《ポイント2》ビジネスモデルを伝える
そもそも論として。銀行には、自社の「ビジネスモデル」を伝えることがたいせつです。ビジネスモデル、つまり、自社が「どういう商売をしているか」を伝える。
なぜ、ビジネスモデルを伝える必要があるのか、と言うと。本来、銀行は、融資先の「事業の内容や成長可能性」を評価して融資をするものです。
ところが、過去いろいろありまして(長くなるので省略)、銀行は「決算書の良し悪し」や「担保・保証の有る無し」を重視した融資をするようになりました。
そんな状況を変えようと、最近では金融庁が銀行に対して、「事業の内容や成長可能性を評価して融資をしなさい」と言っています。決算書や担保・保証ばかりに頼らないように、と言っています。
というわけで。会社はこれまで以上に、ビジネスモデルを銀行に説明することがたいせつだと言えるのです。ビジネスモデルがわからなければ、銀行が「事業の内容や成長可能性」を評価することなどできないから、ですね。
この点で。売上ばかりではなく、売上総利益に着目すると、ビジネスモデルが見えてきます。
売上総利益とは、算式で言うと「売上高 − 売上原価」です。売上原価のなかみは「仕入高」や「外注費」。そこに目を向ければ、どのような商品や材料を仕入れているか、どのような加工をしているかが見えてくる。
商品や材料、加工のいかんで、販売する商品の「品質」に違いが出ます。ですから、仕入高や外注費の内容を銀行に伝えることで、同業他社商品・製品との違いを示すことができるでしょう。
良い商品・材料を仕入れているから品質が高い、腕の良い外注先がいるから品質が高い。そういう話ができるでしょう。
また、売上原価には「在庫」も関係します。在庫が多ければ、売上原価は少なくなる。在庫が少なければ、売上原価は多くなる。
この点で。在庫は少ないほうがいい、との見方があります。在庫をたくさん持つと資金繰りが悪くなる(売れるまではおカネにならない)、在庫を持つとコストがかかる(倉庫代などの管理費や廃棄ロスがある)からです。
じゃあ、在庫が多いのは「悪」かと言えば。そうでもありません。
在庫をたくさん持つことを「強み」にする会社もあります。在庫がある、つまり、「品揃えが良い」からお客さまに選ばれている会社だってあるのです。
このあたりも「ビジネスモデル」に関わるところですから、銀行に伝えるようにするとよいでしょう。逆に、伝えられないと、「在庫が多くてリスクがある会社だ(融資しにくい)」と見られかねません。
なお、自社の仕入先や外注先に「不足」がある場合。それを伝えることで、銀行から紹介を受けられる可能性があるのもメリットです。
銀行はいろいろな会社とお付き合いがありますから、自社に合った仕入先や外注先を紹介してもらえることがあります。どこか良い仕入先、良い外注先を探しているのであれば、銀行にも相談をしてみましょう。
というわけで、ビジネスモデルを伝えることはたいせつです。
《ポイント3》価格ではなく価値で売る
さきほど、売上総利益は「売上高 − 売上原価」だというお話をしました。これを聞いて、「うちはサービス業だし、売上原価なんてないし関係ない」と思われたかもしれません。
それはちょっと違います。なぜなら、どんな業種であっても「売上原価」はあるからです。
たとえば、コンサルティング業。決算書を見ると、「売上原価はゼロ」という会社があるでしょう。
でも、実際には、コンサルティングをするための直接的な「人件費」があったりします。これは、売上原価です(決算書で売上原価としている会社もあります)。
というわけで、どんな会社も「売上原価」と無縁ではないのです。
そのうえで。売上総利益が多い、売上高に対して売上総利益が多い(売上総利益率が高い)とは、どういうことなのか?
それだけ商品(あるいはサービス)の「価値」が高い、と言うことができるでしょう。
売上総利益が同じ 10,000という同業のA社とB社があったとして。A社の売上高は 15,000、B社の売上高は 20,000だとしたら。
B社は、価格を下げて、価格の安さで勝負をしている可能性があります。いっぽうのA社は、商品価値を高めて、同じ商品でもB社よりも高値で売っている。
価格で売るB社に対して、価値で売るA社、という構図です。
その結果、売上総利益は同じだとしても、B社はたくさん売るために、よりたくさんの人手が必要であったり、より長い営業時間が必要であったり。コストがかさめば最終利益は少なくなります。
A社は、と言えば。B社ほど商品を売る必要がないので、「余裕」があります。できた余裕で、さらに商品価値を高めるために人手や時間を投資することもできるでしょう。
すると、A社とB社の差はさらに大きくなっていくはずです。A社のほうが、B社よりも「成長可能性が高い」と言える。
さきほど言いましたよね。銀行はいま、「事業の内容や成長可能性」に注目していると。であれば、融資が受けやすいのは A社のほうです。
売上高ばかりを見ていると、B社のほうに目がいきがちになります。ともすれば、銀行もまた、売上高が多いB社に目を向けるでしょう。
だから、会社はしっかりと「売上総利益」のほうに目を向けるのです。銀行に対しても、売上総利益に目を向けてもらえるように話をするのです。
話をした結果、成長可能性を理解してもらうことができれば、以降の融資が受けやすくなります。ぜひ、売上総利益について話をしてみましょう。
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まとめ
会社が融資を受けようとする場合、銀行とはいろいろな話をするわけですが。売上の話ばかりではなく、売上総利益の話をしてみましょう。
3つのポイントを押さえていれば、おのずと話をしたくもなるはずです。
- 売上至上主義から離れる
- ビジネスモデルを伝える
- 価格ではなく価値で売る