会社は取引銀行(融資を受けている銀行)を増やしすぎると、3つのデメリットがありますよ。というお話をしていきます。
ひとつも困るけど、たくさんでも困る。
会社が取引銀行を増やしすぎることには、デメリットがあります。
ちなみに。ここで言う「取引銀行」とは、「融資を受けている銀行」のことです。つまり、たくさんの銀行から融資を受けていることにはデメリットがある。
いっぽうで、ひとつの銀行からだけ融資を受けているのはよくない。とのハナシはあるわけですが↓
だからといって、「取引銀行をいっぱいに増やせばいい」というわけではない。そういうことです。では、どれくらいの数の銀行と取引をしておけばいいのか? 会社の年間売上高を目安にすると、こんな感じです↓
- 年間売上高 3億円未満 → 民間銀行2〜3つ+日本政策金融公庫
- 年間売上高 3億円以上 → 民間銀行3〜4つ+日本政策金融公庫
- 年間売上高 5億円以上 → 民間銀行4つ以上+日本政策金融公庫
この目安を超える数の銀行と取引をしていると、デメリットが生じるかもしれない。では具体的に、会社が取引銀行を増やしすぎるデメリットとは? おもに、こちらの3つになります↓
- 関係性が深まらない
- 金利が下がらない
- いざというときにタイヘン
これらのデメリットがあると困りますよね、ということで。このあと、3つのデメリットを順番に見ていきましょう。
会社が取引銀行を増やしすぎるデメリット3選
【デメリット1】関係性が深まらない
会社が取引銀行を増やしすぎるデメリットの1つめ。それは、「関係性が深まらない」です。取引銀行を増やしすぎるときに起こるのが、「融資残高の分散」になります。
たとえば。会社全体で 5,000万円の融資を受けようとするときに、2つの銀行から 2,500万円ずつ借りるケースと。5つの銀行から 1,000万円ずつ借りるケースとで考えてみましょう。
これを銀行の側から見た場合、どちらがいいかと言えば、基本的には前者です。2つの銀行から 2,500万円ずつ借りるケース。なぜなら、そのほうが銀行は利息収入を稼げるからです。
もしも金利が同じ2%だとしたら、1,000万円貸すよりも、2,500万円貸したほうがいい。もちろんこれは、融資先の会社が安全な状態の場合に限ります。貸しても返ってこないような危ない会社はまた別です。
それはそれとして。基本的には、銀行は「貸したい」のですから、融資残高は多いほうがいい。
そう考えると。5つの銀行から 1,000万円ずつ借りるような場合、銀行としては「あまり稼げない」ということになります。稼げない会社相手に「手をかける」のではコスト倒れです。
すると、銀行はその会社に対する足が遠のく。会社は銀行からの「融資提案」を受けにくくなる。ひいては、融資が受けにくくなる。会社が取引銀行を増やしすぎるデメリットです。
逆に、稼げる会社であれば、銀行も足繁く通うことはできるでしょう。関係性が深まりますので、融資提案も受けやすくなる。会社は融資が受けやすくなります。
なお、2つの銀行からあわせて 5,000万円の融資を受けようとする場合。半々の 2,500万円ずつ… という借りかたはおすすめできません。ひとことで言うと、「メインバンクができにくくなる」からです。
会社にメインバンクがないと、それはそれでデメリットがあります。たとえば、3,000万円と 2,000万円など、強弱をつけて借りるのがよいでしょう。くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
【デメリット2】金利が下がらない
会社が取引銀行を増やしすぎるデメリットの2つめ。それは、「金利が下がらない」です。
さきほどの事例をもういちど。会社全体で 5,000万円の融資を受けようとするときに、2つの銀行から 2,500万円ずつ借りるケースと。5つの銀行から 1,000万円ずつ借りるケースとで考えてみましょう。
どの銀行も、ひとまず貸出金利は2%だとします。すると、2,500万円ずつ貸すケースのほうが、1,000万円ずつ貸すケースよりも、銀行の利息収入は多くなる。というのはだいじょうぶですよね。
「金利」が同じであれば、融資残高が多いほど、利息収入の「金額」は大きくなります。ではここで、金利を下げられるとしたら、どちらが下げやすいか? を考えてみましょう。
言うまでもなく、2,500万円ずつ貸しているほうの銀行です。融資残高が多い分だけ、多くの利息収入があるわけですから。1,000万円ずつ貸している銀行よりは金利を下げられる余地は大きい。
であるならば。5つの銀行から 1,000万円ずつ借りるケースは、2つの銀行から 2,500万円ずつ借りるケースに比べると金利が下げにくい、ということになります。
これもまた、会社が取引銀行を増やしすぎるデメリットです。あまり取引銀行を増やしすぎて、融資残高が分散すると金利の引下げ交渉もしずらくなる。覚えておきましょう。
ところで。いま(2021年2月8日現在)は、低金利の時代です。すでにじゅうぶん金利が低いとも言えます。
たとえば、1,000万円の融資について。金利交渉をがんばって、0.1%引下げられたときの効果は、年間で1万円です。ひと月あたりにすると、833円です(返済が進むと効果はもっと下がります)。
低金利時代における金利交渉は、「労多くして得るものが少ない」ということもありますので。やりすぎには気をつけるようにしましょう。くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
【デメリット3】いざというときにタイヘン
会社が取引銀行を増やしすぎるデメリットの3つめ。それは、「いざというときにタイヘン」です。
あまり考えたくないことではありますが。いざというときの典型として「リスケ」があります。リスケ(リスケジュール)とは、当初の約束どおり返済をすることができず、銀行に返済猶予を求めることです。
そのリスケをするときには、取引銀行すべての「承認」を得なければいけません。どこか1つでも「リスケは認めない」という銀行があれば、他の銀行も「だったらウチもイヤだ」ということになってしまいます。
この点で。取引銀行の数が多ければ多いほど、承認を得られない可能性が高まると言えるでしょう。
また、承認を得るためには、各取引銀行に説明をして回らねばならず。取引銀行の数が多いほど、時間と手間とを要します。すべての銀行を集めていちどに説明する、いわゆる「バンクミーティング」もありますが。
どこかの銀行が「リスケは認めない!」と言い出したのをきっかけに、他の銀行もいっせいに「ウチもイヤだ!」となりかねないのが、バンクミーティングの怖さです。
そう考えると。まずはメインバンクから、理解を得やすい順に各取引銀行から理解を得ていくのがよいでしょう。結果として、取引銀行の数が多いほど時間と手間がかかる。リスケが時間との勝負であれば、そのあいだに会社がつぶれてしまうこともありえます。
これもまた、会社が取引銀行を増やしすぎたときのデメリットです。
なお、リスケの場面以外にも。毎年の決算説明にも似たようなことが言えます。会社は毎年、決算が終わったら銀行に説明をすべきです↓
決算説明は、すべての取引銀行に対してすべきなので、やはり取引銀行が多いほど時間と手間がかかる。ここでもまた、取引銀行が多いことがデメリットになります。
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まとめ
会社は取引銀行(融資を受けている銀行)を増やしすぎると、3つのデメリットがありますよ。というお話をしてきました。
取引する銀行は、ひとつでもいけませんが、おおすぎてもいけない。自社の規模・状況に合わせて、最適な銀行の数を考えるようにしましょう。
- 関係性が深まらない
- 金利が下がらない
- いざというときにタイヘン