銀行融資に関しては、「簡易キャッシュフロー>年間返済額」であるべきだ。と、言われます。
が、もしも「簡易キャッシュフロー<年間返済額」になっているときの対応策についてのお話です。
手元のおカネがなくなれば、会社はおしまい。
銀行から融資を受けている会社の社長が考えるべきことの1つに、「簡易キャッシュフロー>年間返済額」があります。
ちなみに、簡易キャッシュフローとは「税引後利益+減価償却費」のことであり、「借入金の返済原資」だと言われるものです。つまり、「税金を払ったあとに手元に残るおカネ(税引後利益)」に、「支出をともなわない費用である減価償却費」を足し戻したものが、簡易キャッシュフローであり、返済原資である。と、いうことになります。
このあたり、よくわからないようでしたら、こちらの記事も参考にどうぞ↓
話を戻して、「簡易キャッシュフロー>年間返済額」について。簡易キャッシュフローが返済原資ということは、簡易キャッシュフローが年間返済額を上回っているべきだ。と、いうことです。
これがもし、逆転してしまうと、つまり、「簡易キャッシュフロー<年間返済額」になるのはまずい。年間返済額の多い分だけ、手元のおカネを取り崩して返済をしなければいけない。手元のおカネがなくなれば、会社はおしまいです。
そこで、「簡易キャッシュフロー<年間返済額」の状況にある場合には、社長はなにかしらの対応をしなければいけません。では、どのような対応が考えられるのか? を、このあとお話ししていきます。
具体的には、次のとおりです↓
- 手元の預金で返済
- 折り返し融資
- 資産売却・私財投入
- 短期継続融資
- 一本化
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
本来、対応策としていちばんに考えるべきは、「税引後利益を増やすこと」です。したがって、そこはすでに検討済みである(これ以上すぐには利益を増やせない)、という状況を前提にします。
「簡易キャッシュフロー<年間返済額」の対応策5つ
【対応策1】手元の預金で返済
銀行から借入をする場合に、「すぐには使わないおカネ(余裕資金)」として借りることもあるでしょう。すると、預金口座にはその分のおカネが残っているはずです。
であるならば、「余裕資金」のなかから返済をしている限りは、簡易キャッシュフローがなくてもだいじょうぶだとわかります。これを算式で考えると、
簡易キャッシュフロー>年間返済額ー余裕資金借入分の年間返済額
であればいい、ということになります。借入返済については、なんでもかんでも簡易キャッシュフローがなければいけないわけではない。これを覚えておきましょう。
コロナ禍では、「念のために」とおカネを借りた社長もいるはずです。そのような社長の会社では、余裕資金が預金口座に残っているケースがあります。
ただし、念のために借りたつもりでも、結果として「使ってしまった」のであれば、やはり簡易キャッシュフローが必要になるところです。余裕資金の把握・管理につとめましょう。
【対応策2】折り返し融資
折り返し融資とは、もともと借りていた金額まで借り直す融資のことをいいます。返済を続けていれば、融資残高は減っていくわけですから、減った分の残高をもとに戻す。と、いうことです。
これにより、手元のおカネを増やすことができます。したがって、折り返し融資により、「年間返済額ー簡易キャッシュフロー」のおカネを確保できれば、資金ショートは防げるわけです。
折り返し融資は、もともと借入実績があるために、受けやすい融資だと言えます。にもかかわらず、折り返し融資を検討していない会社は、けして少なくありません。
銀行とお付き合いが密であれば、銀行のほうから提案してくれたりもするのですが。そういうケースばかりでもありませんから、「定期的」に折り返し融資の検討をするとよいでしょう。
定期的に、とは具体的にどういうタイミングをいうのか? 融資残高が当初借入額の3分の2くらいまで減ったら、というのがひとつの目安です。
【対応策3】資産売却・私財投入
ここで、ちょっとおもむきが変わりますが。会社の資産を売却して現金化するのも、ひとつの対応策です。会社によっては、使っていない不動産、塩漬けになっている株式などがあるでしょう。
それらを売却することで、「損失(買ったときの価格ー売ったときの価格)」は出るかもしれませんが、売却金額分のおカネは増えます。これにより、「年間返済額ー簡易キャッシュフロー」のおカネを確保できれば、資金ショートは防げるわけです。
また、不良在庫を抱えている会社もあるでしょう。売れば二束三文であったとしても、二束三文になるのであれば売る、というのも選択肢のひとつです。在庫を所有するコストもあるものですから、思い切って売却することも検討してみましょう。
というように、会社に資産がない場合でも。社長個人に資産があるのであれば、私財を会社に投入することもまた、選択肢のひとつになります。そう考えると、社長は役員報酬のすべてをプライベートに充てるのではなく、いざというときのために「貯めておく」こともたいせつです。
[ad1]【対応策4】短期継続融資
いわゆる運転資金を、毎月分割返済の方法で借りている会社は少なくありません。ちなみに、運転資金とは。算式で言うと、「売上債権+棚卸資産ー仕入債務」で計算される金額です。
これは、会社が事業を続ける限りは、常に「立て替え」が必要になるおカネであり、準備しておくべきおカネです。とはいえ、自己資金ではなかなか準備できないので、借入するのがセオリーになります。
が、せっかく借入しても、毎月分割返済をしていたのでは、返済のたびに資金繰りが厳しくなってしまうところが問題です。当初は、必要なだけのおカネを借りたとしても、徐々に、必要なだけのおカネを借りられていない状態になってしまうわけです。
これは、もともとの借りかたに原因があります。運転資金は本来、短期(1年以内)の手形貸付で借りるべきものです。そのうえで、返済期日には審査のうえ、更新をする。借りっぱなしの状態をつくる。これを「短期継続融資」と呼び、年間返済額を少なくすることができます。
運転資金分の借入を、毎月分割返済の証書貸付から、短期の手形貸付に借り換える。すると、「簡易キャッシュフロー<年間返済額」の状態を解消できる会社は少なくありません。
とはいえ、「いろいろな経緯」があって、短期継続融資に消極的な銀行もあります。そのあたりは、こちらの記事も参考にしながら、検討してみましょう↓
【対応策5】一本化
複数ある現在の借入をひとつにまとめて借り直すのが、「一本化」です。借り直すときに、現在の残り返済期間よりも、長い返済期間を設定することで、年間返済額を減らすことができます。
一本化をすることなく、新規の借入を増やしていると、年間返済額はふくらんでいくものです。したがって、折を見て、銀行に一本化を相談するのがよいでしょう。
相談せずとも、銀行のほうから提案をしてくれるとよいのですが。一本化というのは、銀行員にとっては「リスク」がある提案です。一本化したのち、その融資が回収できなくなれば、責任は一本化を提案した銀行員にあるからです。
そう考えると、会社の業績が悪くなりすぎないうちに、一本化しておくことが対応策になります。そのあたり、くわしくはこちらの記事も参考にどうぞ↓
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まとめ
銀行融資に関しては、「簡易キャッシュフロー>年間返済額」であるべきだ。と、言われます。
が、もしも「簡易キャッシュフロー<年間返済額」になっているようであれば、社長はなにかしらの対応をしなければいけません。そのときは、本記事の対応策を検討してみましょう。
- 手元の預金で返済
- 折り返し融資
- 資産売却・私財投入
- 短期継続融資
- 一本化