税務調査、ウチにはいつ来るの?
別に悪いことをしているわけではないけれど。事業をしているとなんだか気になるのが「税務調査」です。
言葉は聞けども馴染みはないので、一度経験するまでは疑問でいっぱい。そんな税務調査に対する3大疑問にお答えします。
質問が多い税務調査に関する3つのコト
まだ一度も税務調査を受けたことがない。そんな人からもっとも多く質問されるのが次の3点です。
- ウチには税務調査が来るのか?いつ来るのか?
- 税務署は突然やってくるのか?
- 税務調査ではいったい何をされるのか?
順番にお話をしていきます。
ウチには税務調査が来るのか?いつ来るのか?
と聞かれたら、答えてあげるが世の情け。ではあるものの。
ゴメン、わからない。
と答えたくなるのが税理士の本音です。だって、調査に行こうと決めるのは税務署ですから。でもそれでは元も子もないので、「可能性としてどうなのか」というお話を。
法人は100社に3社、個人は100人に1人
キレイに3年周期で税務調査が来る会社もあれば、開業来ずーっと税務調査がありません、という会社もあります。バラバラです。この点をデータで見てみましょう。
公表されているデータとして「実調率」というものがあります。算式で言うと、「調査した件数/調査対象の件数」。納税者という母数に対して、どれだけ税務調査ができたか、という割合です。
平成26年の実調率を見ると、法人が3.2%、個人が1.1%。つまり、法人は100社に3社。個人は100人に1人程度ということです。
個人の場合には「事業」をしている人だけではなく、「不動産を売却しました」というような人も母数に含まれます。よって、「事業」をしている個人の実調率としてはもう少し高くなります。
少なっ!という感じでしょう。以前の実調率はもっと高かったのですが、「申告件数増加」の流れなどもあり、実調率は低下を続けてきた経緯があります。
実際には、売上や利益・税額など事業の規模感(規模が大きい方が調査になりやすい)、申告の内容(急に売上が伸びた等)などによって調査対象が決まるわけで。アトランダムではありませんから、実調率は参考程度ということになります。
それでも可能性の問題としては、「調査は決して多いものではない」ことから、いざ税務調査となれば「あちゃ~当たっちゃったよ・・・」という感じです。
調査の時期は2つに分かれている
税務署は7月初旬に人事異動があります。その7月を中心にして、調査の時期は2つに分かれます。それぞれの時期に行われる調査は、会社の「決算月」でおおむね決まっています。こんな感じです。
- 7月から12月に行われる調査 ・・・2月~5月決算の会社
- 1月から6月に行われる調査・・・ 6月~1月決算の会社
それぞれの時期に、決算月の早い会社の方から順番に調査が行われていきます。個人事業に関して言うと、夏から秋にかけての時期が調査のピークです。
このように調査時期には傾向がありますので。あまりに傾向を外した時期に調査通知があった場合、「なんかヤバいやつ?」という勘が働くことになります。
税務署は突然やってくるのか?
ある日突然、玄関先に。「〇〇税務署の者です」なんてことはフツーはありません。
任意調査と強制調査
税務調査には2種類あります。「強制調査」と「任意調査」です。
世間的に強いイメージは「強制調査」でしょう。いわゆる「マルサ」が家宅捜査に入り、大量の段ボール箱を運び出す。そんな画が思い浮かぶはずです。
ところで、税務行政を行う機関の「たてつけ」は、次のようになっています。
国税庁- 国税局(全国11局+沖縄国税事務所)- 税務署(全国524署)
このうちマルサは、国税庁の指揮下にある地方組織「国税局」内にある査察部の俗称です。問答無用ではじまる強制調査は、マルサのお仕事です。
いっぽうで。フツーの税務調査は、そんな国税局の出先機関の位置づけである「税務署」によって行われます。
税務署が行うフツーの調査が「任意調査」です。ちゃんと事前に、税務署から日程調整の電話連絡が入ります。顧問税理士がいれば、税理士の方に連絡がいきます。
ということで、ちゃんと事前に決められた日程で調査にやってきます。突然やってくるようなことがあれば「やっべーぞ」なんてものではありません。とんでもなくマズイことです。
抜き打ちの調査
とはいえ。任意調査でも税務署が突然やってくる。そんなケースもあります。「事前の調査」と「現況確認の調査」です。
まずは「事前の調査」ですが、これは飲食店などに「客」として来店し、ひそかに行われる調査です。こんなことを聞いたら、あの人もこの人もみんな税務職員に見えてくる・・・・
なにをしているかというと、いちばんは「売上を抜いていないか」を見ています。そのときの客数や単価などから売上額を推測。後日、税務調査に入った際に帳簿とズレがないかを確認するのです。
客数や単価のほかにも、売上伝票の扱いやレジ打ちの状況なども観察し、「売上を抜いている」過程がないかをチェックします。
もうひとつは、「現況確認の調査」です。これも飲食店の「現金商売」などの業種で行われることがあります。
現金売上は、売上伝票をポイして、レジにも打たなければわからない。という一面もあり、現金商売は脱税をしやすい。ということで「現場を押さえる」ために行われるのです。
そのため午前中の早い時間帯に突然、調査官が店先に現れます。びっくりしますよねぇ、これは。でも安心して下さい。相手が税務署であれば、あくまで任意調査です。
まずは店先でお待ちいただき、顧問税理士に連絡です。すぐに来て立ち会ってくれるか、日を改められるように対応してくれるはずです。
顧問税理士がいない場合には、「営業時間中でとても対応できない」「店主不在(の場合には)でムリ」など、日を改めてもらうのが賢明でしょう。
悪いことをしていなくても、「ちょっと準備はしたい」というのが調査を受ける側の心理です。
税務調査ではいったい何をされるのか?
さいごに。税務調査とはどんなものなのか、ということについて。
1日のスケジュール
税務調査当日。税務署の調査官は10時ごろにやってきます。そして、16時ごろに帰ります。直行直帰というものができないので、税務署から来て税務署に帰るからです。
はじめの30分から1時間くらいで、仕事の概要的なお話をします。相手の調査官によりますが、雑談っぽい雰囲気で和やかに行われるものです。
顧問税理士や経理担当者に任せることはできますが、社長(事業主)も在席していた方が調査官の安心材料として働くことでしょう。
その後、「それでは帳簿を拝見」と言って、本格的な調査に突入します。調査官から指示があった書類や帳簿を提示していきます。必要に応じて質問に答えていく、それだけです。
税理士がいれば、そこは間に入って対応してくれます。その場合、帳簿の調査中ずっと立ち会っている必要はありません。税理士にお任せでもOKです。
帳簿の調査が終われば、質問事項や調査結果のまとめについての話があるので、そこは立ち会うようにしましょう。
だいたいは2日間
日程調整の際に、調査日数のはなしがあります。だいたいの場合、2日間を希望されることが多いです。
顧問税理士がいる場合には、「(会社の規模も小さいし等)ひとまず1日でやってみようよ」と説得したりもしますので、1日で済んでしまうことも少なくありません。
もちろん、時間がかかって長引くケースもあれば、半日で終わってしまうケースもあり。さまざまではありますが、だいたい2日くらいかな、と覚えておきましょう。
まとめ
税務調査についての3大疑問をまとめてみました。
はっきりいって、税務調査は来るか来ないかわかりません。ゆえに、いつ来てもいいよう。この3大疑問の理解など、最低限の準備と心構えはしておきましょう。
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きょうの執筆後記
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税務調査。なんとも不穏な響きです。なにもしてないけれど、気持ちとしては滅入ってしまう。それが税務調査です。
顧問税理士はいない、という場合でも。税務調査に関しては、スポットでも税理士に立会いを依頼することをおすすめします。調査官の話の意図を組むのは難しいところが多分にありますので。