はじめての確定申告。経理をするにあたって、「いちばん大事」なことはなんですか?
と聞かれたら。いちばん大事、たった1つだけ、というのなら。ずばり、「売上」だとお答えします。
フリーランスにとっての「売上」とは?、についてをお話しをしていきます。
フリーランスが大事にすべきは「売上」
フリーランスになれば避けては通れないのが「確定申告」。その前提に、領収書など書類の整理や帳簿づけという「経理」が待っています。
はじめは不慣れな確定申告と経理を前に、「何をしたらよいものか」と迷ってしまうこともあるでしょう。
やるべきことは決して少なくありませんが、まずはあえて1つ、たった1つ大事なことは?と聞かれたら。
それは、「売上」です。
あたりまえじゃん、では済まされない
「売上」が大事だなんて当り前じゃないか、と思うかもしれません。
ところがどうして。思いと現実は一致するものばかりではないようです。
わたしが見聞きする限り。残念ながら売上が大事にされてはいない、という確定申告・経理が相当数あります。
売上をめぐる2つの現実
それでは、「売上が大事にされてはいない」とはどういうことなのか?
次の2つが挙げられます。
- 売上の税金計算自体に問題がある
- 売上の税金計算だけに終始している
現実にはこのような確定申告・経理が散見される。ということで、この後それぞれについてお話をしていきます。
売上の税金計算自体に問題がある
売上が大事にされてないケースのひとつめ。「税金計算自体に問題がある」は、さらに次の3つにわかれます。
- 現金売上の把握がいい加減
- 発生主義がわかっていない
- 売上の計上もれ、除外がある
結果として、税務調査になる、税金を追加で納付するという事態につながります。続いて、それぞれを見ていきましょう。
現金売上の把握がいい加減
売上代金をその場で現金にて受け取ることを「現金売上」と言います。
典型的なイメージは町の八百屋さん。店先で売る野菜や果物と引き換えに、お客さんからお代を受け取ります。これが「現金売上」。
いっぽうでフリーランスの売上は、商品・サービスの納品時に請求書を発行し、後日銀行振込というカタチが多いでしょう。
そんななか、たまの「現金売上」が発生すると、その売上が確定申告・経理から漏れてしまうことがあります。
受け取った現金は、記録せずに使ってしまえば跡形もないわけで。意外と注意が必要です。対策としては、
- お客さまにきちんと領収書を発行し、その控えを保管する
- 受け取った現金はすぐに使わず、まず銀行口座に預け入れメモ書きをしておく
発生主義がわかっていない
商品・サービスを納品し、請求書を渡した時点で「売上」を計上するのが確定申告・経理のルールです。
つまり、そのあとの入金がいつになろうが関係ない。あくまで、商品・サービスの提供の事実をもって「売上」を認識する。
これを専門用語で「発生主義」と言います。発生主義の用語まで覚える必要はないにしても、そのルールは押さえておかなければいけません。
たとえば、平成28年12月に納品・請求書発行、翌年1月に入金。さぁ、売上の計上はいつするの?
だいじょうぶですよね。答えは、平成28年12月です。
これを1月の売上としてしまえば、平成28年分の確定申告は「売上計上もれ」ということになります。対策としては、
- 請求書をきちんと発行し、その控えを保管する
- 請求書の発行日を売上の計上日として経理する
「発生主義」の対になる考え方に「現金主義」があります。売上で言えば、入金をもって売上に計上する、という考え方です。
一定の要件を満たす事業者は、税務署に届け出ることで「現金主義」を採用することができます
売上の計上もれ、除外がある
ついさきほど「売上計上もれ」という点に触れました。これは文字通り、売上の計上を漏らしてしまうことです。
売上の計上を漏らす、すなわちそれは「税金が過小になる」ことを意味します(売上が減る→利益が減る→税金が減る)。
言うなれば税金を集める役割の税務署にとって、「税金が過小になる」ことは許しがいことであり。税務調査等を通じて、きびしく追及されることと相成ります。
冒頭からここまで、税金計算は「売上」が大事だと言ってきたのはこのためです。
申告する側にとっては、「経費」だってもちろん大事なのですが。確定申告するうえで、まず正しくあるべきは「売上」なのです。
極端なハナシ。経費の計上もれがあっても税務署に指摘されることはないでしょう。ところが、売上の計上もれが不問に伏されることなどないのです。
ここでもうひとつ。
「計上もれ」が間違い・ミスという過失だとした場合、故意としての「除外」という考え方があります。
あきらかな売上を、自らの意思で、計上せずに外す。俗に言う「売上を抜く」というヤツです。もちろん、これは脱税です。
もしも、「売上を抜いてもバレないだろう」と考えるのなら甘すぎます。税務署はあなたの売上を把握するためのいくつもの手段を備えているのです。
- あなたの確定申告書
- あなたの取引先から入手する資料(支払調書や資料せん、というものなどがあります)
- あなたの税務調査
- あなた以外の税務調査から入手する情報(反面調査、などと言ったりします)
- タレコミ
などなど。さまざまな情報の組み合わせで、あなたの申告内容はチェックされているということを肝に銘じておきましょう。
ちなみに、脱税に関するペナルティの大きさは言うまでもありません。
追加納税という金銭的ダメージもさることながら。以後、税務署からマークされるという社会的ダメージも相当なものと言えます。以上。
売上の税金計算だけに終始している
売上が大事にされてないケースのふたつめ。「税金計算だけに終始している」は、さらに次の3つにわかれます。
- 入金管理をしていない
- 適切に区分していない
- 推移、傾向を見れていない
結果として、現在から将来にわたる資金繰りの悪化につながります。続いて、それぞれを見ていきましょう。
入金管理をしていない
言うまでもないことではありますが。売上はおカネとして「回収」してナンボです。
どれだけ高額だろうと、どれだけの枚数の請求書を発行しようと。最終的に入金されなければ、売上の価値は無いに等しい。
にもかかわらず、入金管理にまで気が回らないという方も少なくありません。気が付けば、「あれ、あの会社から入金が無いぞ」みたいな。
会社勤めをしていれば経理部などが担当してくれていた入金管理も、独立開業後は自分の仕事のひとつになります。
商売をしていれば、指定日までに入金をしていただけないお客さまもあらわれます。そのときに必要なことは、「催促の連絡」を一本入れられるかどうかです。
最初のうちであれば、なにも厳しい物言いでなくてもいいのです。「期日ですが入金を確認できませんでした」と言えばいいのです。
この一言がないと、「あそこは支払いが遅れても大丈夫だ」と思われてしまいかねません。
繰り返しになりますが、売上はおカネとして「回収」してナンボ。気乗りはしませんが、催促ができる入金管理に努めましょう。
適切に区分していない
確定申告をするためだけであれば、売上金額の集計さえできれば事足ります。
ところが、事業の将来、自身の将来を考えるのであれば。それだけで済ませるわけにはいきません。
いまある売上が将来にわたり見込めるか、あらたな売上の見込みはどこにあるか、など。将来を考えなければいけません。
その際、必要になるのが、いわゆる「売上分析」です。売上分析のキホンは、売上の適切な区分。
たとえば売上について、次のような目的に沿って区分をしてみるのはどうでしょう?
- お得意さま度合い、得意先の偏りを知るため → 相手先別に区分
- やりたい仕事ができているか、やるべき仕事ができているかを知るため → 商品・サービス内容別に区分
- 狙った仕事が獲れているかどうかを知るため → 受注経緯別に区分
- 仕事の生産性は上がっているかを知るため → 商品・サービス単価別に区分
毎月の売上高や年間の売上総額だけを見ていても見えないものが、区分をすることで見えてくるはずです。
推移、傾向を見れていない
売上は区分をしただけでも足りません。あわせて、その推移と傾向をみることも大切です。
一時点を捉えて眺めてみても、たいていの場合は「ふ~ん、そんなもんかね」で終わります。
そんな鵜呑みで終わらぬよう。同じ切り口で区分した売上を時系列に並べて見ることで、それぞれの傾向を知ることができます。
その傾向をつかみ、目指したい姿と比べてみて。日々コツコツと軌道修正を加えることこそが、「経営改善」の姿です。
事業の最終成果は「利益」ではありますが。売上が無ければ、利益もなにもありません。
だからはじめに売上を把握して管理する。追って、経費の把握と管理。結果、利益が最大化する。順序で言えば、まずは「売上」です。
まとめ
フリーランスにとって大事な「売上」について、2つの側面からお話をしてきました。
- 売上の税金計算自体に問題がある
- 売上の税金計算だけに終始している
とくに開業したばかり、はじめての確定申告を迎えられる方には、ぜひとも一度はご確認いただきたい内容です。
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きょうの執筆後記
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