フリーランスの衣服代は経費にできるの?
ケースバイケースです。たとえばスーツ代。経費になる場合もあれば、ならない場合もある。経費になると言うヒトもいれば、ならないと言うヒトもいる。
そんなフリーランスの衣服代について。経費にするために考えるべき3つのことをお話しします。
フリーランスが衣服代を経費にするために考えるべき3つのこと
経費か否かをめぐり、たびたび質問に挙がるものとして「衣服代」があります。
ここで言う「衣服」とは、スーツや作業着といった洋服に加え、アクセサリーやメガネなど身につけるモノ全般までを含みます。
これらの衣服について、フリーランスが経費にするために考えるべきことをお話しします。次の3つです。
- ほんとうに仕事に使うのか?
- 世間一般に常識的か?
- 証拠を残す努力はしたか?
《考え方①》ほんとうに仕事に使うのか?
フリーランスが、その税金の計算をするうえで。衣服代を経費にできるかどうかを判断するにあたり、まずはじめに考えるべきこと。
それは、「その衣服をほんとうに仕事で使うのかどうか?」です。
話の大前提は「真実」
なんとも杓子定規ではありますが、「仕事に必要なモノ」しか経費にすることはできません。
ですから、「実は仕事では使っていないけれど、経費になったらいいな。うん、経費にしちゃおう。そのためにはどうしたらいい?」というハナシなら無しです。
それはハッキリ言って「脱税」であり、議論の余地がないものです。
ここから先の話は、「たしかに仕事で使っている」ことが前提になります。くれぐれも誤解のないように、との確認まで。
迷うのは仕事でも私事でも使うモノ
たしかに仕事で使っているのなら、経費になるに決まっているじゃないか! ということなのですが。
迷うのは、仕事でも使うし、プライベートでも使う、というようなモノ。
これは経費でイイのかな? 全額経費でイイのかな? と迷われることでしょう。
そのように「仕事だけでもない」ということも含めて、「たしかに仕事で(も)使っている」という衣服について。
次の《考え方②》へと進むことにします。
《考え方②》世間一般に常識的か?
衣服代を経費にできるかどうかを判断するにあたり、「たしかに仕事で(も)使っているか?」の次に考えるべきこと。
それは、「世間一般に常識的か?」です。
世間一般の常識=税務署の眼
この点でよく議論の的になるのが「スーツ」です。たしかに仕事で使うスーツなのであれば、経費にすることに問題はないはずです。
ところが、世間一般にスーツは仕事でもプライベートでも使うものとイメージされています。
たとえば、業務後の私的な飲み会にスーツで参加する、業務とは直接関係のない冠婚葬祭の場にスーツで参席する、など。
じゃあ、「仕事専用」のスーツというわけでもないのでしょ? じゃあ、経費にするのはおかしいんじゃないの? というのは税務署の定石でもあります。
これは当然の見方であり。したがって、「世間一般にはどうか?」という考え方が重要になります。
世間一般の常識に反して経費にするのであれば税務署からは疑われるのだ、ということを覚悟しておかなければいけないからです。
いっぽうで、世間一般に常識的に経費だ、という衣服代もあります。
- 工事・建設現場で仕事をする際の作業服・安全靴
- パフォーマーの衣装
- 飲食店など接客業のユニフォーム など
ヒトはヒト。自分は自分。
世間一般に反して経費にするのであれば税務署からは疑われる、と言いましたが。疑われること自体が悪いわけではありません。
疑われようがなんだろうが、真実が「仕事用」なのであれば、主張をすればよいだけのこと。世間は世間、ヒトはヒト。自分は自分です。
たとえば、さきほどのスーツ。セミナーで講師をするとき専用のスーツだとしたら。
人前で話をするのですから、身なりも大切です。普段使いのスーツよりもグレードが高いスーツを買い、仕事専用のスーツとして使っている。これならば経費として主張できるでしょう。
世間一般のイメージも大切ですが、最終的にはケースバイケース。世間一般のイメージに反するから経費にならない、ということではありません。
ふたたび迷う、仕事でも私事でも使うモノ
前述した講演専用スーツは経費100%の主張です。プライベートでは使わない、というものでした。
これが「プライベートでもちょっとは使うかな」という場合、迷いどころとなります。仕事でも私事でも使うモノとして、《考え方①》でも触れました。
この点について、税法には次のような考え方があります ↓
仕事と私事が混在するような費用については、仕事に必要な部分をきちんと区分できるのであれば、その部分は経費にしてもOK
このように仕事と私事が混在する費用のことを、専門用語では「家事関連費(かじかんれんひ)」と呼びます。
たとえば、自宅兼事務所であるスペースの家賃。これは家事関連費です。自宅部分と事務所部分の面積比などにより区分計算して、事務所部分は経費にすることができます。
では、仕事でも私事でも着るスーツは? これが物議を醸すところとなります。「仕事に必要な部分をきちんと区分する」ことが難しいからです。
スーツを着るたびに記録をとって区分計算するのもひとつの方法ですが、とても現実的とは思えません。このようなことから、取りうる手段は3つにひとつ ↓
- いさぎよく経費の計上をあきらめる
- 「えいやっ」と一定割合を経費にする(たとえば、7割は経費とか)
- 「ええいままよ!」と全額を経費に計上する
③はやっちゃダメなやつです。これはハッキリしています。
①か ②かという問いについては、明確な答えを持ちません。②は「えいやっ」の時点で不安が残り、税務署の眼を確実にパスできる保証はありません。
仮に、「だいたい平日だけ着ているから」ということで「5日 ÷ 7日 ≒ 70%」という理由だとしても、それは「きちんと区分する」とは言い難いものがあります。
さきほどの自宅兼事務所の面積比計算とは説得力が異なります。
よって、現実的には「程度問題」として解決される部分も出てくるはずです。
つまり、あまりに金額が大きいような場合には問題にされ、たいした金額でなければ問題にはされない。
そういうことも含めて、あえて身を引く①という選択肢もありえます。②がグレーゾーンである以上、①か ②かは自身の責任において判断する、覚悟を決めるということです。
《考え方③》証拠を残す努力はしたか?
さいごに「証拠を残す努力はしたか?」について。衣服代を経費にするぞ、と決めたときに、どう根拠付けするかということです。
証拠を出すのはこちらから
ここでもういちど、講演用スーツについて考えてみます。
事実、講演時のみ、仕事専用のスーツだとしても。税務署の眼としては「疑い」であることは、先に述べたとおりです。
「こっちが仕事専用だと言っているのだから、疑うのであれば疑う理由になる証拠を出せ!証拠を!」と、税務署に向かって叫ぶこともできるでしょう。
しかしそれでは、水掛け論。世間一般に反するのであれば、証拠はこちらから出したいものです。では、何を証拠とするか?
仕事で使ったことを示すのはカンタンだ
そのスーツは仕事で使ったのだ、という証拠を残すことはムズカシイことではありません。
たとえば、「衣服利用台帳」のようなものを作成し、「利用日」「利用目的(〇〇セミナー講師、など)」などを記録に残しておくという方法が考えられます。
もっとがんばるのであれば、現地とわかる場所でスーツを着用している姿を写真に撮って、これも台帳に貼っておくとか・・・
まぁ、そこまでやるかはともかくとして。仕事に使ったことを証拠として残すことはできるわけです。
確実に経費にしたい、税務署と揉め事はイヤだ、と言うのであれば。ここは惜しむべき手間ではないことを理解しておきましょう。
無いものを無いという証明はできない
逆に、「仕事以外では使っていない」ことの証拠を残すことは困難です。というか、基本的にムリです。
無いものを無い、という証明はできない。いわば「悪魔の証明」であり。「仕事で使っていない証拠」を要求されると困ってしまいます。
たとえば、胸のあたりに屋号を刺繍する。こんなの仕事以外じゃ着れないでしょ? ユニフォームみたいなものですよ、と言うとか。いやいや、ないない。刺繍なんてしない。
洋服タンスに監視カメラを設置して、四六時中、利用状況を記録しておく。もっとない。ありえない。
もう少し現実的なことはないものか?
仕事用スーツの領収書を取っておくことはもちろん、経費には入れないプライベート用のスーツを買ったときも領収書をとっておく。
ほらね、ちゃんと使い分けているんですよ。という説明の材料にする。無いよりはよいでしょう。
仕事で着用したら毎回すぐにクリーニングに出し、次に着用するまではクリーニング屋さんで付けられたタグをそのままにしておく。これも無いよりはマシか・・・
いずれにしても完全な証拠にはなりえません。ではこれらはムダな努力か?
ムダではない、とわたしは考えています。そういう「証拠を残す努力のあと」が、説得力を後押しすることはある。そのように考えています。知恵のだしどころ、努力のしどころです。
まとめ
フリーランスの衣服代について。経費にするために考えるべき3つのことをお話ししてきました。
税法うんぬんの議論はもちろんありますが、それ以前、そのほかに考えるべきこともあるのです。
その考えるべきこと3つについて、理解をしたうえで衣服代の経費計上を検討するようにしましょう。
- ほんとうに仕事に使うのか?
- 世間一般に常識的か?
- 証拠を残す努力はしたか?
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きょうの執筆後記
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