税務調査って、税務署が突然来てはじまるの?
経験がないと、事情が分からず不安になってしまうのが税務調査です。いきなり税務署がやって来たら・・・
そんな税務調査が来る前に。どう始まって、どう終わるのか、その全体像を予習しておきましょう。
標準的な税務調査の流れ
はじめに、税務調査の全体的な流れを見ておきましょう。標準的なケースでは、次のとおりです。
- 税務申告書の提出
- 税務署からの連絡
- 税務調査の準備
- 税務調査の当日
- 税務調査の終了
この流れに沿って、それぞれお話をしていきます。
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税務申告書の提出
税務調査の目的は、「税務申告の内容に誤りがないかのチェック」にあります。
その前提になるモノが。税金を納めるべき人・会社が、「自ら提出した税務申告書」です。つまり、税務申告書の提出が、税務調査の起点。
フリーランス・個人事業者の所得税も、会社の法人税も。人や会社が自ら計算して申告書を提出・納税する、というのが日本の税金のルールです。
本来であればそれでおしまいなのですが。人や会社の計算には、間違いがあるかもしれない。もしかしたらウソもあるかもしれない。
そんなワケで、申告に「間違いやウソ」がないかをチェックしようというのが税務調査です。
ちなみに。申告すべきなのにしていない、という場合にでも税務調査はありえます。申告しなければ税務調査も来ないだろう、というのは勘違いです。
税務署からの連絡
税務署では提出された申告書の中から、税務調査の対象先を選んでいます。申告書すべてについて税務調査をするには、数が多過ぎるからです。
さまざまな観点・基準から、税務調査の対象に選ばれると。標準的な流れとしては、税務署(税務調査官)から電話による事前連絡があります。
顧問税理士がいれば、対応を任せることもできますが。いなければ、ここから自分で対応しなければいけません。
税務調査官は次のことについて告げるはずなので、ひとまず落ち着いてきちんとメモを取りましょう。
- 税務調査官の氏名、所属部署
- 調査の候補日時
- 調査の候補場所
- 調査の対象になる税目(所得税とか、法人税とか)
- 調査の対象になる期間(いつの申告についてか)
- 調査の対象になる帳簿書類 など
日時については、都合が悪ければ変更をしてもらうことが可能です。このあとお話する「準備」も必要ですから、その点も踏まえて考えましょう。
また、場所についても相談をすることができます。たとえば、店舗には調査をするためのスペースがないので、自宅がのぞましい場合など。調査官に理由を伝えて、相談をするとよいでしょう。
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税務調査の準備
いざ税務調査ということになれば、準備も必要です。まずは、必要な帳簿書類に不足がないか確認です。一般には、次のような書類になります。
- 税務申告書、総勘定元帳
- 売上に関する書類(契約書、請求書、見積書、注文書、納品書、領収書、レジロールなど)
- 仕入、経費に関する書類(契約書、請求書、見積書、注文書、納品書、領収書、在庫表など)
- 給与に関する書類(タイムカード、給与明細、賃金台帳、年末調整関係資料など)
- 預金通帳
- 株主総会議事録、取締役会議事録 など
上記の書類について、事前連絡で通知された「期間」の分を準備しましょう。
こうしてみるとわかること。それは、普段から書類を整理しておくのがいかに大切かということです。これだけの書類を、税務調査になって慌ててそろえていたのではかないませんので。
ついでに言えば。書類も「あればいい」というものでもありません。ぐっちゃぐちゃの領収書と、綺麗に整理された領収書と。どっちがしっかり経理・申告をしているようにみえますか?
綺麗なほうが、しっかりやっているように感じるはずです。どこまで綺麗にするかは別にしても。ぐっちゃぐちゃ、みたいなことは避けましょう。
さて。上記の書類にくわえて、「会社案内や組織図」もあれば準備をしておくとよいでしょう。次にお話ししますが、「調査当日」に会社概要を話すときに役立ちます。
ひととおり書類を揃えることができたなら。それぞれの「年」について、ざっと状況をおさらいするようにしてください。
たとえば。この年は、先行投資でいつもより経費が多かったんだよなぁ、とか。この年は、売上が急増したけど値引きが多くて、原価率が上がっちゃったんだよなぁ、とか。
そういう「いつもと違う」ところを、とくに思い出しておきましょう。「いつもと違う」ところには、税務調査官も興味を持っているものです。急に聞かれて慌てることがないように。
税務調査の当日
いよいよ迎えた税務調査当日。調査官は「身分証明書」を提示しますので、肩書き・氏名を確認しておきましょう。
通常は、世間話のテイで調査がはじまります。会社の概要や経営者の経歴などについて聞かれますので、会社案内や組織図などを見せながら話すとよいでしょう。
経営者個人の生活や趣味などに話が及ぶことがありますが。世間話のようにみえて、調査は調査です。
調査官は、社長の嗜好・趣味を把握し、そのあたりの「個人的な支払」までもが会社の経費になってやしないか。みたいなところまで考えています。
隠すことはありませんが、「よけいなコト」は話さない。という心がけはあってもよいかもしれません。緊張すると余分なことまで話してしまうのが「ヒト」です。ご注意を。
そういう意味では、調査場所には「よけいなモノ」も置かないことです。私物はもちろん、印鑑や現金などが無造作に置いてあるというのもやめましょう。
話が終わって、調査官が帳簿の調査に入れば。基本的には、ただ見ている、待っているほかありません。あとは調査官の求めに応じて、回答する、必要な書類を提示することになります。
このとき「慌てない」ことです。思い出せない、すぐに対応できないことがあればそう伝えましょう。後で回答します、で良いのです。
安易にテキトーな回答をしてしまい、あとで辻褄があわなくなる。というのでは、ずいぶんと心証が悪いものになってしまいます。
ところで。忙しければ、調査官の了解を得て席を外すこともできますが。ある意味せっかくの機会ですからね、調査官が何を調べているのか見学されることをおすすめします。
税務調査の終了
現地での調査が終わっても。その場で税務調査自体が終了するわけではありません。税務署内での検討を経て、後日、調査の結果が通知される流れです。
通知は2通り。問題があるか、ないか。そのどちらかです。
問題がなければ、「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」というよくわからない名称の書類を受け取り終了します。
カンタンに言うと、修正などをすべきところはありませんよ、ということです。これを「申告是認(しんこくぜにん)」と言ったりします。めでたし、めでたし。
いっぽうで、問題がある場合。調査官より、問題点(誤り)の指摘があります。これに対してどう応じるかで、2つに分かれます。
- 誤りを認めて、自ら「修正申告書」を提出する
- 誤りを認めない
調査官の言い分はもっともだ、と誤りに納得できたのであれば「修正申告書」というものを提出することになります。文字通り、当初の申告に対する修正版の申告書です。
やっかいなのは2つめの対応。調査官の言い分に納得できない場合です。まずは、自身の見解を示したうえで、調査官との話し合いということになります。これで済めば良いのですが。
それでも折り合いがつかない場合、税務署長が税額を決定する「更正(こうせい)」という対応をとります。税務署側で、バスンと強制的に終わらせてくるわけです。
これに対し納税者側には、税務署長に対する「異議申立(いぎもうしたて)」という手段が残されています。このあとは最悪、裁判にまでもつれこむことになります。
さすがにこうなっては「一般の人」には手に負えません。調査官の言い分に納得できない、というあたりで税理士に任せるのがセオリーです。
まとめ
税務調査の全体像についてお話をしてきました。
一般には馴染みがない税務調査には疑問がいっぱい、といったところでしょう。
顧問税理士がいないというような場合にはなおさらです。いざというときに慌てることがないよう、最低限の情報は予習をしておきましょう。
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きょうの執筆後記
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