どうやら利益も出ているようだし。飲み食いして節税するか、ウッシッシ。
というのはよく聞くハナシです。では、その飲み食いで受け取る領収書1枚で、いくらの節税ができるのか?
経費にする領収書の金額から節税額を計算する方法と、それにまつわる怖ーいハナシをセットでお届けいたします。
【結論・計算方法】節税額=領収書の金額 × 税率
会社や個人事業者が事業をしているなかで、「利益が出ている」あるいは「利益が出そうだ」というときに。気になるのが節税です。
税金で持っていかれるくらいなら、いっそ〇〇に使っちゃおう! という話はよくあるもので。
ところが、その〇〇に使った金額でいくらの税金が安くなるのか、いくら節税になるのかまでは知らない。という人は少なくありません。
たとえば。節税を目的に10万円の飲み食いをしよう、という場合。果たして、節税の効果はどれくらい?
ということで。今回の記事タイトル「1枚の領収書でいくら節税できるかを計算する方法」に対して、まずは結論を提示することにします。次のとおりです ↓
節税額 = その領収書の金額 × 自社(自分)の税率
算式はとってもシンプル。ちょっと困るとしたら「税率」の部分でしょう。会社であれば自社、個人事業者・フリーランスであれば自分の税率が何%であるかの情報が必要です。
そんな「税率」については、のちほど詳しく触れるとして。
ひとまず、「税率が30%だとしたら」という前提で、さきほど思案していた飲食代10万円の節税効果を計算してみましょう。次のとおりです ↓
カンタンですよね。10万円で飲み食いをして、3万円の税金が安くなりました。10万円分の飲食が、実質7万円でできました。やったぜ! おしまい。
とはいかないところが、節税の奥深さであり恐ろしさ。3万円トクしたようでいて、実は大損しているかもしれないから気を付けて! というのが、きょうの本題です。
【本題・怖いハナシ】経費で節税したつもりが実は大損という・・・
3万円トクしたようでいて実は大損。そんなことある? と首を傾げているあなたは、このあとの話できっと恐怖します。略してコワバナ。略さなくてもいいですね。
話自体は略するまでもなく、すぐに終わります。とても簡潔。では行きますよ。
10万円の飲食代で、たしかに税金は3万円減りました。けれども、サイフの中のおカネは10万円無くなってしまいました。
怖っ。超~怖いんですけど。「超」とか言うな、とは思いますが。だって、ほんとうに怖くないですか?
3万円トクしたつもりでいたのに、10万円も損をしていたなんて・・・
ここで大事なことは、「使った金額以上に節税はできない」ということです。税金を減らすことばかりを考えていると、使った金額のことが抜け落ちる。
とてもあたりまえのことではあるのですが、節税を目的に経費を使おうとすると、そんなあたりまえで大事なことが抜け落ちます。気をつけましょう。
【本題のつづき】その10万円は経費なのか?それとも浪費なのか?
さきほどの怖い話を補足します。飲み食い10万円の発端は、「税金で持っていかれるくらいなら、飲み食いしちゃおう!」でした。
実は、この「税金で持っていかれるくらいなら」というのが、怖い話になってしまった原因です。
その説明のために少し話が変わりますが、「おカネの使い方」には大きく分けて3つあります、という話。それがこちら ↓
- 事業を続けるための「経費」というおカネの使い方
- 事業を成長させるための「投資」というおカネの使い方
- ムダ使いにあたる「浪費」というおカネの使い方
ここで話を戻して、「税金で持っていかれるくらいなら」は、上記3つのおカネの使い方のどれにあたるのか?
事業を続けるため? 違います。税金を減らすための飲み食いをしなくても事業は継続可能です。事業を継続させるための経費とは、たとえば、社員の給料や事務所家賃など。
では、事業を成長させるため? これも違います。税金を減らすための飲み食いで事業が成長することはありません。事業を成長させるための投資とは、たとえば、人材育成や新設備の導入など。
というわけで。「税金で持っていかれるくらいなら」の飲み食い10万円は、残された「浪費」に認定されます。残念ですが。いやはやほんとうに残念です。
会社や個人事業者が、おカネを「浪費」として使うとき。浪費の文字どおり、おカネはムダに終わります。ただただ消えて無くなるばかりです。10万円もそのようにして消えました。
経費や投資としておカネを使った結果の節税はOKですが、節税目的・節税ありきでおカネを使うことはNGであることを覚えておきましょう。節税目的・節税ありきは「浪費」です。
【補足】自社(自分)の税率について
ほんとうにお伝えしたかった大事な話はさきほどまでで終わりました。ここからは、本題の補足として、「税率」のお話をしておきます。
冒頭、節税額の計算式で登場した「税率」について。その詳細を保留していましたよね。そのお話です。
自社(=会社・法人)の場合
結論から言うと。会社・法人の税率は、おおむね「30%」です。法人税、法人住民税、事業税をすべて含めて30%くらい。
とはいえ。厳密には、大企業と中小企業とでは違っていたり、おなじ中小企業でも課税所得(≒利益)の大小で税率は変わってきます。
細かいことを言い出せばキリがないわけですが、税金の申告書をつくる税理士でもない限り、そのような「厳密さ」にさほどの興味関心はないでしょう。
というわけで。会社・法人の税率は、おおむね「30%」。そのように理解をしたうえで、冒頭の節税額計算式を利用していただければと存じます。
中小企業(資本金1億円以下)で、かつ、年間の課税所得(≒利益)が800万円以下の場合の税率は22%前後です。30%とはだいぶ差がありますので、念のため申し添えます。
自分(=個人事業者・フリーランス)の場合
前述した会社・法人の税率は一律30%でしたが、個人事業者・フリーランスの税率は、課税所得(≒利益)に応じて税率が大きくなります。こんな感じです ↓
課税所得の金額 | 税 率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
上記の表は国税庁の公式WEBサイト・タックスアンサー(「No.2260 所得税の税率」)に掲載されているものです。
課税所得が少ない人は5%からはじまり、最大で45%まで。よ、よ、よ、45%? と驚きたいところですが、そこまではなかなか稼げませんね。かく言うわたしも・・・
気を取り直して、仮に課税所得(≒利益)が400万円だとして、上記の表にあてはめて税率をみてみましょう。
課税所得 400万円ということは、「330万円超 695万円以下」の行にあたります。ゆえに税率「20%」。
この課税所得 400万円の人が、飲食代 10万円を使ったとすると。「10万円 × 20%」で、税金が2万円減ります(おカネは10万円無くなることをお忘れなく)。
ところで、上記の表は「所得税」に関するものでした。これに加えて、個人事業者・フリーランスには「住民税」もかかります。住民税は、一律10%です。
ゆえに、課税所得 400万円である場合、節税額を計算するときの税率は「20%」ではなく、住民税も加えた「20%+10%=30%」です。
個人事業者・フリーランスの税率は、「所得税の税率にプラス10%(住民税)」と覚えておきましょう。
個人事業者・フリーランスの課税所得とは?
さいごにもうひとつだけ補足します。さきほどの所得税の税率表で使った「課税所得」とは具体的にどういう金額なのか?
平たく言うと「課税所得=利益」ではありますが、厳密には違います。算式で表わすと次のとおりです ↓
課税所得=売上ー経費-青色申告特別控除額-所得控除
算式を見ると寒気がする、というヒトもいるようですが。そこまで難しいものではありません。
まずは、算式の前半。売上-経費=利益、ですよね。そこから、「青色申告特別控除」と、「所得控除」をマイナスしていきます。
青色申告特別控除とは、青色申告をしている人の特典である65万円または10万円の控除額を言います(詳しくはこちらの記事を「フリーランスの最強節税「青色申告」のメリットをまとめ」)。
所得控除とは、配偶者控除や扶養控除、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除など。経費とは別に、その人の状況に応じてマイナスすることができる控除額を言います(詳しくはこちらの記事を「確定申告で漏らさない・間違えないための『所得控除』講座」)。
こうして計算した「課税所得」をもとに、所得税の税率表にあてはめます。ちょっとたいへんかもしれませんが、領収書1枚の節税額を求めたいのであればがんばりましょう。
まとめ
1枚の領収書でいくら節税できるかを計算する方法、についてお話をしてきました。要点をまとめると次のとおりです ↓
- 領収書1枚の節税額=領収書の金額 × 自社(自分)の税率
- 使ったおカネの金額以上に節税はできない
- 使うおカネは「浪費」ではないのかを考える
節税目的・節税ありきは「浪費」です。目先の節税ではなく、長い目で見たときの手元のおカネに注目しましょう。
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きょうの執筆後記
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