”税務署・税理士による確定申告の無料相談会。行ってみようかな・・・”
というときの注意点をまとめてみました。勘違いしやすいこと、間違えやすいことなど、いろいろお話をしていきます。
税務署・税理士の確定申告無料相談会に行くときの注意点
毎年、年が明けて確定申告期限が近づくと。税務署・税理士などによる確定申告無料相談が賑わいます。
税務署はもちろんですが、各地の税理士会(税理士が所属する団体)が主催する無料相談会に行こう、という人が増えるのです。
わたしも毎年、無料相談会の「相談員」として参加をしておりますが。参加をしているなかで、相談に来るなら「これに気をつけてほしい」という注意点をまとめてみます。
少なくない人たちが勘違いしやすく、間違いやすい点について。申告のやり直しなどのムダな時間を過ごすことがないように、ご確認をいただければと。次のとおりです ↓
- 相談可能な「内容」に気をつける
- 医療費控除は「10万円以上」とは限らない
- 支払った医療費分だけ税金が減るわけではない
- そもそも引かれている税金が無ければ「還付」は無い
- 前年の申告書は持っていく
- 配偶者の収入がわかる書類を持っていく
それではこのあと、それぞれについてお話をしていきます。
相談可能な「内容」に気をつける
税務署であれば、相談内容に制限はありませんが。税理士会主催などによる無料相談会には「相談内容」が限定されているものがあります。
たとえば、「収入は給与と年金のみ」とか。この場合、不動産の売却益があるとか、ビットコインの売却益があるなどの申告を相談することはできません。
無料相談会は混雑することが多く、待ち時間が「◯時間」ということも多々あります。たっぷりと待たされた挙句、「お受け出来ません」のひと言では泣くに泣けない。
無料相談会に出かける前には「受付可能な相談内容かどうか」を事前に確認しておきましょう。
医療費控除は「10万円以上」とは限らない
相談をお受けしている中で、「医療費はありましたか?」と聞くと。「いやいや10万円もいかないから」という回答が実に多くあります。ほんとうに多い。
しかし、それはちょっと違います。医療費控除は、必ずしも10万円以上なければできない、というものではありません。
詳しく説明することは避けますが、収入が一定金額以下である場合。医療費が年間10万円に届かなくても医療費控除できるのです。
「収入が一定金額以下」について、すこしだけ具体例を挙げると。収入が給与だけであれば、年収 3,116,000円未満であれば、医療費が10万円以下でも医療費控除できます。
収入が公的な年金(民間の個人年金をのぞく)だけであれば、年間の年金収入が3,166,666円未満であれば、やはり医療費が10万円以下でも医療費控除できます。
結論として。医療費については、ひとまず集計をしておきましょう。10万円に届かなくても、税金を減らすことができるかもしれません。
平成29年分の確定申告から「セルフメディケーション税制」がはじまりました。カンタンに言うと、ドラッグストアなどで買った「対象医薬品」を年間12,000円以上購入した場合の減税制度です。
これは、従来の医療費控除との選択(どちらかいっぽう)であることから、医療費控除の対象になる医療費とは別に集計をしたうえで相談をするようにしましょう。
支払った医療費分だけ税金が減るわけではない
医療費控除について、もうひとつ。医療費控除は、医療費支払額の税金が減るわけではありません。
たとえば、年間で医療費が20万円かかったとして。「これによる今回の税金の還付(戻り)は5千円です」と言うと、「え〜、たったそれだけ?」という声を聞くことがあります。
20万円くらい戻るのではないかと期待している人もいるようですが、それはちがいます。
そもそも、医療費には「足切り額」があります。前述した「10万円(収入が一定額以下の場合にはもっと少ない金額)」のことです。
ですから、医療費控除の計算では、支払った医療費 20万円から足切り額 10万円をマイナスした残りの10万円が減税の対象になります。
しかも、その残った10万円が減税額ではありません。減税額は、「(支払った医療費 20万円 − 足切り額 10万円)× 税率」です。さらに税率を乗じます。
つまり、同じ金額の医療費でも、税率が高い人(≒収入が高い人)ほど、減税効果は大きくなります。税率が低い人(≒収入が低い人)ほど、減税効果は小さくなります。
どうやら、医療費控除の減税額は、多くの人にとって「想像以下」であるようで。がっかりされる姿をみることが少なくありません。
「そんなに少ない還付金額なら、わざわざ相談に来なかったのに」というご感想を聞くこともあるので、医療費控除の効果については想像しておかれることをおすすめします。
そもそも引かれている税金が無ければ「還付」は無い
医療費控除をはじめ、社会保険料控除、生命保険料控除、寄附金控除など、さまざまな控除の効果を期待して。税金の還付(戻り)を期待される人がいます。
ところが、還付が無いケースもあるのです。そもそも引かれている税金が無い、というケースです。
「こんなに控除があるのに還付がないの!?」と驚かれる方もいますのでご注意を。
「還付」というのは、給与や年金から源泉徴収(天引き)されていた税金について、確定申告で精算をしてみたら引かれ過ぎだったので戻します、というもの。
ですから、給与や年金などからそもそも税金が引かれていないケースでは「還付」の対象になる税金がありません。還付はありません。
給与や年金には「源泉徴収票」という書類がありますので、そこで「源泉徴収税額」を確認しておきましょう。そこがゼロであれば、確定申告での「還付」は無いということです。
ただし、源泉徴収が無く、還付も無いから確定申告をしなくてよい、というわけではありませんのでそこもご注意を。逆に、源泉徴収が足りずに納税が必要になるケースなどもありますから。
前年の申告書は持っていく
前年にも確定申告をしているのであれば、その控え書類を持っていきましょう。そして、相談員に見てもらいましょう。
申告漏れやミスを防ぐ効果がありますから。前年と今年とを見比べることで、今年見落としていたり、相談者から聞き漏らしてしまったことなどを発見できることは少なくありません。
また、今年の申告書ができあがったら、前年の申告書と並べてみて、「どこが変わったのか?」という説明を受けるとよいでしょう。
税額についての理解も深まりますし、ここでも申告漏れやミスを防ぐ効果が期待できます。
たとえば、今年も医療費の領収書を相談者は出していたのに、相談員が医療費控除を計算し忘れていた、などということに気がつくことがありえます。
相談員の側も当然に気をつけてはいますが、相談をする側も「できるだけ」、申告漏れやミスが起きないように気をつけることをおすすめします。
配偶者の収入がわかる書類を持っていく
配偶者の収入について、金額を確認しておきましょう。相談に行くのがご主人であれば奥さんの、相談に行くのが奥さんであればご主人の収入のことです。
理由は、「配偶者控除(あるいは配偶者特別控除)」という計算に影響するからです。配偶者の収入金額によって、控除額が異なります。
「奥さまの収入はどのくらいですか?」と聞いてみて、「よくわからないなぁ、パートで100万ちょっとかなぁ・・・」などと答えられると相談員としては困ってしまいます。
よくわからないものをテキトーに処理してしまうわけにはいかず、結局、「確認をしてきてもらえますか?」となります。
ですから、配偶者の給与・年金の源泉徴収票など収入がわかる書類を持参するとよいでしょう。配偶者が自営業というケースだと、配偶者の確定申告書ということになります。
まとめ
税務署・税理士の確定申告無料相談会に行くときの注意点についてお話をしてきました。
せっかく時間をとって相談に行っても、勘違いや間違いによって、出直しとなるケースが散見されます。二度手間はイヤですよね。
本記事での注意点も参考にしていただき、無料相談会を有意義に活用しましょう。
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きょうの執筆後記
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