” 利益が出ていないんだから、確定申告しなくていいよね? ”
たしかに、しなくてもよいですが。それでも、フリーランスは利益がゼロでも確定申告をしたほうがいいよね、というお話です。
フリーランスは利益がゼロなら確定申告をしなくてもよいのか?
フリーランスにとって、一般に、「確定申告」はひとつの難所とされています。
じぶんの仕事について、1年間の利益を計算し、その利益に税率を乗じて税金を計算するのが確定申告です。
であるならば。利益がゼロ(もしくはマイナス)なら税金もゼロだし、確定申告しなくてよくない? という発想もあるでしょう。
たしかに。利益が無ければ、確定申告をしなくてもよいことになっています。税務署に確定申告書を出さなくてもいい。
のだけれども。フリーランスであるならば、利益がどうあれ確定申告をしたほうがよい。いや、すべきだ。というお話をしていきます。
フリーランスは利益がゼロでも確定申告をすべき9の理由について。こちらです ↓
- 税金の還付が受けられる
- 赤字を繰り越せる
- 国民健康保険料が安くなる
- 保育園の保育料が安くなる
- 児童手当が受け取れる
- 検診・健診・予防接種費用の免除・割引がある
- 不用意な税務調査を回避できる
- ローン・貸家の審査が受けられる
- フリーランスの気概を見せる
と、こんなにあるのです。確定申告をすべき理由が。
というわけで、これらを順番に見ていきましょう。
フリーランスの仕事で利益が出ていなくても、たとえば不動産を売却した利益がある、仮想通貨を売却した利益があるなど、別の要素がある場合には確定申告が必要になることもあります。
《理由①》税金の還付が受けられる
仕事の利益がゼロ(あるいはマイナス)で、確定申告をする必要がないとしても。確定申告をすることで、税金が還付される(戻ってくる)ことがありえます。
それは、じぶんの収入から税金(所得税)が源泉徴収されているケースです。原稿料、講演料、デザイン料、コンサルティング料などの収入について、入金時に税金が天引きされているケース。
このとき源泉徴収をされた税金は、支払者(つまり、フリーランスにとってのお客さま)が税務署に納付をしています。ゆえに、源泉徴収は「税金の前払い」制度です。
利益が無いのであれば税金もありません(利益ゼロ × 税率= 税金ゼロ)ので、確定申告をすることで、源泉徴収で取られすぎた税金の還付を受けることができるのです。
逆に、このケースで確定申告をしなければ税金は「取られ損」になりますのでご注意を。
《理由②》赤字を繰り越せる
利益がマイナス(赤字)だった場合。その年の税金はもちろんゼロですが、確定申告をすることで、翌年以降の税金を減らすことができます。
たとえば、平成29年の利益は100万円の赤字、平成30年の利益は300万円の黒字というケース。
これについて、平成29年分の赤字 100万円を確定申告しておけば、平成30年の利益と相殺をすることができるのです。
つまり、平成30年の税金は「(300万円 − 100万円)× 税率」で計算することになります。
いっぽうで、平成29年の赤字 100万円を確定申告していなければ、平成30年の税金は「300万円 × 税率」となり、税金が高くなってしまいます。この差は大きい。
ただし、上記のように赤字を繰り越すことができるのは「青色申告」をしている場合に限ります。やっぱり青色はいいよね、というハナシでもあります。
《理由③》国民健康保険料が安くなる
フリーランスが税務署に確定申告をすると、自動的に、住まいのある市区町村にも確定申告のデータが届くしくみになっています。
これによって、市区町村では収入や利益の金額を把握し、住民税や国民健康保険料を計算することができるのです
ところが。確定申告をしなければ、当然、市区町村では収入や利益の金額はわかりません。このとき、確定申告をしないフリーランスは、「収入や利益が不明な人」として扱われることになります。
国民健康保険料には、利益がなく住民税がかからない人に対しては「減免」の制度がありますが、「収入や利益が不明な人」にはこの減免が適用されません。
結果、高い国民健康保険料を支払わなければいけないことになってしまいます。払わなくてもよい保険料を払うことがないよう確定申告をしましょう。
また、高額療養費制度についても、確定申告をすることで自己負担限度額が下がりますので、医療費が高額になった際の払戻額が大きくなります。
ひと月にかかった医療費が高額である場合、自己負担限度額を超えた金額が払い戻される制度です。
《理由④》保育園の保育料が安くなる
保育園の保育料は、「住民税」の金額を基準にしています。
基本的には、住民税が低い(利益が少ない)人ほど保育料は安く、住民税が高い(利益が多い)人ほど保育料は高くなるしくみです。
さきほど《理由③》のところで、住民税は確定申告をもとに市区町村が計算をすると言いました。
ということは、確定申告をしなければ、住民税がいくらかが決まらず、保育料も決められないということになってしまいます。
利益が無いときでも、確定申告をすることで住民税がかからないことが明確になり、保育料を安く抑えることができます。
《理由⑤》児童手当が受け取れる
児童手当を受ける際にも、収入や利益のデータが必要になります。基本的に、利益が少ない人ほど手当は厚く、利益が大きい人ほど手当は薄くなるからです。
確定申告をしていなければ、利益がわかりませんので、やはり手当の額を決められないということになってしまいます。
同じような話として、公営住宅の家賃減免(住民税がかからない場合などの家賃減免)があります。これら手当や減免などを利用するためにも、確定申告をしておきましょう。
《理由⑥》検診・健診・予防接種費用の免除・割引がある
住まいの市区町村によりますが、利益が無くて住民税がかからない場合には、各種検診、健康診断、予防接種の費用が免除・割引になることがあります。
確定申告をしていない場合には、市区町村が住民税が計算できず、これらの免除・割引を利用することができません。
検診・健診・予防接種は、フリーランスが身を守る基本とも言える備えなのですから、しっかり利用できるようにしておきましょう。そのためにも確定申告です。
《理由⑦》不用意な税務調査を回避できる
利益が無ければ税金は出ない。よって、確定申告をしなくてもよい。
のですが。確定申告書の提出がなく、なんの情報もなければ、税務署は疑問に思うかもしれません。
「ほんとうに利益が出ていないのかなぁ。ほんとうは利益があるんじゃないのかなぁ。」と、税務署は疑ってかかるかもしれません。疑わしきは罰せよ、みたいな。
となると、「税務調査」になることがありえます。
収入や経費などについて申告をしておけば、受けずに済んだかもしれない税務調査を受けることになってしまうかもしれません。これはなかなかメンドーです。
もともと申告もしていないのですから、帳簿や領収書などの整理も不十分でしょう。そこにきて調査だなんて・・・
同じメンドーでも、まだ確定申告書をつくって提出するほうがよいのではないか。と思えるのであれば、利益ゼロでも確定申告をしておきましょう。
《理由⑧》ローン・貸家の審査が受けられる
金融機関でなにかしらのローンを組むというときには、まず間違いなく収入や利益についての情報提供をしなければいけません。
このとき使われるのが、税務署に提出した確定申告書の控えや、市区町村で発行してもらえる収入証明(所得証明)です。
しかし、これらのいずれも確定申告をすることが前提になります。
確定申告をしなければ、確定申告書の控えはありえません。確定申告をしなければ、市区町村は収入が把握できず、証明なんてできません。
いざそのときになって困ることがないように、あらかじめ確定申告をしておきましょう。
《理由⑨》フリーランスの気概を見せる
フリーランスにとっての確定申告は、なにも税務署のためだけではありません。
じぶんの仕事について、この1年の総決算を知る。というフリーランス自身の目的がまず大事なのであって、税務署のための確定申告はその「付属物」でしかないからです。
にもかかわらず。決して少なくないフリーランスが、税務署のための経理(帳簿づけ)をしています。確定申告があるからしかたなく経理をしています。
これだと、利益が無くて確定申告の必要がなければ、経理をしなくてもいい。経理が多少いい加減でもだいじょうぶ、という発想になりかねません。
ちがいますよね。経理をする、決算をする、確定申告をする、というのはフリーランスにとっては、自分自身のために欠かせないルーティーンだと言えます。
利益があろうが無かろうが、経理も決算も確定申告も変わらずいつもどおりやる。フリーランスとしての気概の見せどころです。
まとめ
フリーランスは利益がゼロでも確定申告をすべき9の理由について、お話をしてきました。
さいごに、いまさらですが ↓
利益が無ければ確定申告をしなくてもよいのですが、そのときには住まいの市区町村に「住民税申告書(名称は地域により多少異なります)」の提出が必要になります。
住民税申告書は、税務署に提出する確定申告書の住民税版です。これによって、収入・利益の金額、住民税がかからないなどのの情報が市区町村に登録されるしくみです。
結果、国民健康保険料の計算や、児童手当、検診等費用の免除・割引にも対応できます。
なーんだ、じゃあわざわざ確定申告しなくても、「住民税申告書」を提出すればいいじゃないか。というのでは、これまでのお話がムダになります。
お話をしてきた9つの理由の中には、住民税申告書では解決できないことがあったはずです。
フリーランスは利益がゼロでも確定申告をすべき、これが本記事の結論であることに変わりはありません。
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きょうの執筆後記
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