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間違えるとマズい!『おカネを払う=経費』じゃないモノ6選【フリーランスの経理・仕訳】

「おカネの支払い=経費」じゃない

” おカネを払ったものは経費でしょ。”

と考えたくもなりますが。実は、おカネを支払ったのにもかかわらず、経費にならないものもあるのです。

そんな、「おカネを払う=経費」じゃないケースについてお話をしていきます。間違えも多いところですから、要チェックです!

目次

間違えるとマズい!「おカネを払う=経費」じゃないモノ6選

フリーランスの経理・仕訳について。「おカネを払う=経費」だろう、という勘違いがあります。

たしかに割合で言えば、おおむね「おカネを払う=経費」でしょう。けれども、なかには「おカネを払う ≠ 経費」もあるのです。

つまり、おカネを支払っても、経費にはならないものがあるのです。

これは要注意。間違えてしまえば、経費にし過ぎということになり。結果として、税務署へ納める税金が少なすぎ、ということになります。

この間違いが税務調査で見つかると、ペナルティ(少な過ぎた分の税金+罰金的税金+遅延利息的税金)をくらいます。

そんなことにならないよう、「おカネを払う=経費」ではない、というケースを押さえておきましょう。次の6つのケースです ↓

  1. 金額が高いモノを買った
  2. 生活費を取った
  3. 所得税・住民税などを支払った
  4. 経費を前払いした
  5. 銀行に借入金を返済した
  6. 決算時に在庫になるモノを買った

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

本記事では、消費税の経理処理については「税込経理」を前提にお話を進めます。「税込経理」とは、文字どおり、消費税込みの金額(本体価格と消費税を区分しない)で経理をする方法です。

 

《ケース①》金額が高いモノを買った

たとえば、フリーランスが 33万円のパソコンをクレジットカードで買いました、という場合。33万円という「おカネを支払った」のにもかかわらず、経費にはなりません。

ではどうなるのか、を仕訳で示すとこうなります ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
器具備品330,000未払金330,000

「器具備品」は「資産」の勘定科目として、貸借対照表に計上します。損益計算書に計上する「経費」ではありません。

これについて、「器具備品」ではなく、「消耗品費」などとして経費にしてしまう間違いがありますので注意が必要です。

このように、「金額が高いモノ」を購入したときには、「おカネを払う=経費」にはならないのです。

ここで言う「金額が高いモノ」とは、ひとつあたり(パソコンで言えば1台あたり)30万円を超えるモノが該当します(白色申告の場合には10万円を超えるモノ)。

ちなみに、このパソコンは永遠に経費にならないのかと言うと、そうではありません。

パソコンの購入代金は、4年間に分割して経費にしましょう、という税金・経理のルールがあるからです。分割して経費にすることを「減価償却」と呼びます。詳しくはこちらの記事をどうぞ ↓

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《ケース②》生活費を取った

たとえば、フリーランスが 仕事用の銀行口座から生活費として10万円を引き出した、という場合。10万円という「おカネを支払った」のにもかかわらず、経費にはなりません。

ではどうなるのか、を仕訳で示すとこうなります ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
事業主貸100,000普通預金100,000

「事業主貸」は「資産」の勘定科目として、貸借対照表に計上します。損益計算書に計上する「経費」ではありません。

これについて、「事業主貸」ではなく、「給料賃金」などとして経費にしてしまう間違いがありますので注意が必要です。

フリーランスのような個人事業者は、事業者本人に対する「給与(経費)」という考え方がありません。生活費としておカネを引き出しても、「おカネを払う=経費」にはならないのです。

生活費以外にも、仕事用の銀行口座からプライベートの支払いをした、という場合にも同じく「事業主貸」となります。

事業主貸ってなんだ? 事業主借とどう使い分けるんだ? ということについては、こちらの記事をどうぞ ↓

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《ケース③》所得税・住民税などを支払った

たとえば、フリーランスが確定申告で計算した所得税 15万円を銀行口座から支払いました、という場合。15万円という「おカネを支払った」のにもかかわらず、経費にはなりません。

ではどうなるのか、を仕訳で示すとこうなります ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
事業主貸150,000普通預金150,000

「事業主貸」は「資産」の勘定科目として、貸借対照表に計上します。損益計算書に計上する「経費」ではありません。

これについて、「事業主貸」ではなく、「租税公課」などとして経費にしてしまう間違いがありますので注意が必要です。

所得税や住民税などの税金の支払いでは、「おカネを払う=経費」にはならないケースがあるのです。

いっぽうで、個人事業税や自動車税など、税金でも「経費」にできるケースもあります。「この税金は経費になるの?」ということについては、こちらの記事をどうぞ ↓

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《ケース④》経費を前払いした

たとえばフリーランスが、翌年の1月に参加するセミナー代金 2万円を、年内に銀行口座から支払いました、という場合。

2万円という「おカネを支払った」のにもかかわらず、経費にはなりません。ではどうなるのか、を仕訳で示すとこうなります ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
前払金20,000普通預金20,000

「前払金」は「資産」の勘定科目として、貸借対照表に計上します。損益計算書に計上する「経費」ではありません。

これについて、「前払金」ではなく、「研修費」などとして経費にしてしまう間違いがありますので注意が必要です。

このように、サービスの提供を受ける前の支払い(前払い)では、「おカネを払う=経費」にはならないのです。

では、いつ経費になるのかと言うと、サービスの提供を受けたときです。上記の例では、翌年1月、セミナーに参加したときに経費になります。仕訳がこちら ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
研修費20,000前払金20,000

この仕訳によって、貸借対照表に資産として計上されていた「前払金」が、損益計算書の経費として「研修費」に振り替えられることになります。

 

《ケース⑤》銀行に借入金を返済した

たとえば、フリーランスが銀行から受けている融資について 5万円を銀行口座から支払いました、という場合。5万円という「おカネを支払った」のにもかかわらず、経費にはなりません。

ではどうなるのか、を仕訳で示すとこうなります ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
借入金50,000普通預金50,000

「借入金」は「負債」の勘定科目として、貸借対照表に計上します。損益計算書に計上する「経費」ではありません。

これについて、おカネを支払うのだから経費ではないのか、と考える間違いがありますので注意が必要です。

銀行から融資を受けたときには、「ただ借りただけ」なので、収入(利益)だとは考えにくいですよね? 実際、借りたときには「収入(利益)」にはなりません。仕訳で示すと ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
普通預金1,000,000借入金1,000,000

貸借対照表に「負債」として「借入金」を計上し、損益計算書の「収入」に計上するわけではありません。

ですから、返済するときも「経費」ではないのです。借りたときには「収入」ではないのに、返したときには「経費」になるのではおかしな話ですよね。

ちなみに、借入金にかかる利息については「経費」になります ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
利子割引料2,500普通預金2,500

 

《ケース⑥》決算時に在庫になるモノを買った

たとえば、フリーランスがお客さまに売るための商品 20万円をツケ(買掛)で買いました、という場合。仕訳で示すとこうなります ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
仕入高200,000買掛金200,000

なーんだ、ちゃんと「経費(「仕入高」として)」になっているじゃないか。というのは早とちり。

問題になるのは、この 20万円の商品が、決算時点(12月31日時点)で売れずに在庫になっているケースです。この場合には、決算日に追加の仕訳が必要です ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
商品200,000期末商品棚卸高200,000

簿記に不慣れな人には、なんともキビシイ仕訳ではありますが。これは、たいへん重要な仕訳です。

この仕訳によって、当初に「仕入高」として経費に計上した 20万円を、「商品」という資産に振り替えているのです。20万円という「おカネを支払った」のにもかかわらず、経費にはなりません。

したがって、上記の仕訳を失念すると、経費が余計に計上されることになります。先の例で言えば、「仕入高」とした 20万円もの経費が過大になります。要注意です。

なお決算日の翌日、つまり1月1日には、次の仕訳をすることで、ふたたび「資産(商品)」から「経費(期首商品棚卸高)」に戻します ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
期首商品棚卸高200,000商品200,000

そしてまた決算を迎えたときには、その時点の在庫金額で、さきほどの「商品 ××× / 期末商品棚卸高 ×××」の仕訳をすることになります。

これはちょっと難易度が高いですね… とはいえ大事なところですから、決算日に在庫を持つようなフリーランスはしっかり勉強をしておきましょう。

 

まとめ

「おカネを払う=経費」じゃないケースについて、6つのケースをお話をしてきました。

これらの経理・仕訳を間違えてしまうと、税金が少な過ぎ、ということになってしまいます。十分に気をつけましょう。

  1. 金額が高いモノを買った
  2. 生活費を取った
  3. 所得税・住民税などを支払った
  4. 経費を前払いした
  5. 銀行に借入金を返済した
  6. 決算時に在庫になるモノを買った

 

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  きょうの執筆後記
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