事業主貸・事業主借はもう使い分けない!【どうせ元入金にガッチャンされるし】

事業主貸と事業主借

事業主貸と事業主借っていったいなんなの? しかも、どう使い分ければいいわけ?

というのは、多くの個人事業者・フリーランスが、確定申告・経理でぶつかる悩みです。

そんな悩みを解決するためのお話をしていきます。

目次

使い分けるな! 事業主貸、一本勝負。

個人事業者・フリーランスが経理をするうえで悩ましいのが勘定科目。旅費交通費、接待交際費、通信費、消耗品費などなど。

悩み
「これはナニ費にすればいいの?」

と悩んだことはただの一度もありません、と言えるヒトはいないでしょう。

なかでもとくにアタマを悩ませるのが、「事業主貸(じぎょうぬしかし)」「事業主借(じぎょうぬしかり)」という2つの勘定科目です。

2ついずれの勘定科目も、日常で使う言葉でないだけにイメージもつかず。

悩み
「じぎょうぬしかし? じぎょうぬしかり? なんのこっちゃ?」

と小首をかしげ、途方にくれた日もあるはずです。

時は流れ、ぼちぼち経理に慣れてきた今だとしても、「事業主貸と借のちがいはようわからん。どっちがどっちだっけ?」となおいっそう小首をかしげるばかり。ちがいますか?

そんな迷える「事業主貸」「事業主借」の経理について、本記事ではひとつの答えを提示します ↓

本記事の要点さきどり

事業主貸と事業主借は使い分けない。「事業主貸」の一本で経理する。

結論としては以上ですが。その理由、および、そもそも事業主貸・事業主借とはどういうときに使うのか、などについてこのあとお話をしていきます。

 

事業主貸・事業主借を使い分ける必要がない理由

さきほど、事業主貸と事業主借を使い分ける必要はない、と言いました。そんなことしてだいじょうぶ? という声が聴こえてきそうです。

ここでいちおう申し添えますが。「使い分ける」のがベストです。使い分けることができるのであれば、それがいちばんです。

けれども。よくわからないというのなら、迷ってしまうくらいなら、いっそ使い分けるな。「事業主貸」の一本でも、特段の問題は無い。そういう理解でお願いします。

なんの言い訳だったのかわかりませんが、話を元に戻しましょう。事業主貸と事業主借を使い分ける必要はない、という話でしたね。その理由をお話します。

決算日を過ぎると消える事業主貸と事業主借

さて。事業主貸と事業主借とを区別する必要がないワケとは、どちらもいずれ消えて無くなってしまうからです。

もう少し具体的に言うと。決算日(12月31日)を過ぎて翌年を迎えたところ(1月1日)で、事業主貸と事業主借は相殺され、元入金(もといれきん)に集約されます。

「元入金」だなんて、またヘンなのが出てきたなぁ、とウンザリするかもしれませんが。ひとまず、それはそれとして。

いずれ消えてしまうような事業主貸・事業主借なのであれば、そう気張らずともよいであろう。というのが、「事業主貸と事業主借とを使い分ける必要はない」という理由になります。

統一するなら事業主貸

事業主貸と事業主借とを使い分ける必要がないのだとして。では、どちらを使うか? どちらに統一するか?

それを決めるにあたり、そもそもどんなときに事業主貸と事業主借を使うのかを確認しておきます。まずは、「事業主貸」の具体例から ↓

  • 事業用の銀行口座から生活費を引き出した
  • 事業用の銀行口座から社会保険料(国民年金保険料、健康保険料など)を支払った
  • 事業用の銀行口座から所得税・住民税を納付した
  • 事業用の銀行口座から生命保険料が引き落としされた
  • 事業用の現金で、仕事とは関係がない買い物の支払いをした などなど

対して、「事業主借」の具体例はこちら ↓

  • プライベートの銀行口座から事業用の銀行口座に送金した
  • 仕事で必要な買い物をするのに、プライベートの銀行口座から振込をした
  • 事業用の銀行口座に、預金利息が入金された などなど

これらの具体例を要約するとこうなります ↓

事業主貸・事業主借の要約
  • 事業主貸=事業のおカネ(事業用の現金・事業用銀行口座の預金)をプライベートで使ったときの勘定科目
  • 事業主借=プライベートのおカネ(プライベート用の現金・プライベート用銀行口座の預金)を事業に使ったときの勘定科目

こうして、具体例と要約とをあわせ見たときにわかるのは。基本的には、「事業主貸>事業主借」であろうということです。

言い換えると。プライベートのおカネを事業に突っ込む(事業主借)よりは、事業で稼いだおカネをプライベートで使う(事業主貸)ほうが、金額も機会も多いだろうということです。

だったら、「事業主貸」のほうに統一しましょう。というのが、冒頭で掲げた「事業主貸と事業主借は使い分けない」の理由です。

【補足】事業主貸に統一すると
事業主貸に統一すると、事業主借は「事業主貸のマイナス」として扱われます。たとえば、事業用銀行口座に預金利息100円が入金された場合。
正確には「事業主借 100」ですが、「事業主貸 -100」として経理するということになります。いずれの場合にも納税額が変わってしまうようなことはありません

 

で、元入金はどうなるの?

さきほど、次のような話をしました。

決算日(12月31日)を過ぎて翌年を迎えたところ(1月1日)で、事業主貸と事業主借は相殺され、元入金(もといれきん)に集約されます。

では、もう一歩踏み込んで。事業主貸と事業主借は、どのように元入金へと集約されるのか? についても触れておくことにします。算式で示すと次のとおりです ↓

元入金集約の算式

1月1日の元入金=(前年12月31日の元入金残高+前年1年間の利益)+(前年12月31日の事業主借残高-前年12月31日の事業主貸残高)

こういう算式を見ていると気分が悪くなる、と言う方もいますけれど。心配は無用です。

上記算式による元入金の計算は、会計ソフトが勝手にやってくれます。新年の会計データを開いてみれば、旧年の事業主貸と事業主借が、元入金に集約されていることがわかります。

元入金は大きいほうがよい(小さいよりは)

計算自体は会計ソフトが勝手にやってくれることとはいえ。事業主貸と事業主借とが集約された「元入金の意味」くらいは理解しておくことをおすすめします。

というわけで。嫌かもしれませんが、さきほどの算式を再掲します ↓

1月1日の元入金=(前年12月31日の元入金残高+前年1年間の利益)+(前年12月31日の事業主借残高-前年12月31日の事業主貸残高)

これについて、「2017年1月1日の元入金」を計算使用とする場合、算式は次のように置き換えられます ↓

2017年1月1日の元入金=(2016年12月31日の元入金残高+2016年1年間の利益)+(2016年12月31日の事業主借残高-2016年12月31日の事業主貸残高)

では、算式の前半のカッコ書きから見てみましょう。「2016年12月31日の元入金残高+2016年1年間の利益」となっています。

つまり。利益が出ればでるほど、元入金は積み上がり、大きな金額になることを表わしている。

続いて、後半のカッコ書き。「2016年12月31日の事業主借残高-2016年12月31日の事業主貸残高」となっています。

さきほど触れたととおりですが、「事業主借」はプライベートのおカネを事業につぎ込んだことを表し、「事業主貸」は事業のおカネをプライベートで使ったことを表わします。

これらをふまえて、さきほどの算式を変形するとこうなります ↓

元入金の意味

元入金=過去の利益の蓄積+プライベートから事業につぎ込んだおカネ-事業からプライベートに使ったおカネ

過去の利益の蓄積と考えると、元入金が大きいほうが良い。誇らしい。誇らなくてもいいけれど。

また、プライベートのおカネを事業につぎ込むほど元入金は大きくなる。会社で言うところの「出資」「資本金」みたいなことですね。

逆に、事業のおカネをプライベートで使うほど元入金は小さくなる。

 

そう考えると、元入金は大きいほうが良さそうだ。もしもマイナスになるようなことがあれば、身の丈を超えておカネを使い過ぎではないのか? と、見ることができます。

 

会計ソフトが自動計算してくれる元入金ではありますが。そのあたり、そのくらいのことは読み取ることにしましょう。

 

まとめ

事業主貸・事業主借は使い分けない、ということについてお話をしてきました。

本記事の要点まとめ

事業主貸と事業主借は使い分けない。「事業主貸」の一本で経理する。

結論自体はシンプルですが、その理由と、元入金の意味については押さえておきましょう。

 

 

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  きょうの執筆後記
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