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仕訳で終わりの事業主貸・借、仕訳で終わらない事業主貸・借

事業主貸・事業主借の仕訳後

”この取引は事業主貸、こっちは事業主借… よし、終わりっ!”

ちょっと待って。それ、まだ「終わりではない」かもしれませんよ。というわけで、仕訳で終わりの事業主貸・借と、仕訳で終わらない事業主貸・借についてのお話です。

目次

「事業主貸・借」は仕訳をするだけじゃ終われない

フリーランス・個人事業者が帳簿をつける(経理をする)うえでアタマを悩ませるのが、「事業主貸・事業主借」です。

じぎょうぬしかし、ってなに? じぎょうぬしかり、とはどう違うの? と、悩んだことがあるのではないでしょうか。

結果、なんとか仕訳はできた! と、喜んでいるあなたへ。ひとつ確認があります ↓

仕訳をして終わりではない「事業主貸・事業主借」がある、ってご存知ですか?

つまり、仕訳をしたあとで、まだ「事後処理」が残っている事業主貸・借がある、ということです。

えっ、そうなの? と言うあなたは、このあと一緒に確認をしていきましょう。次のような順番でお話をしていきます ↓

  • 事業主借
    • 仕訳で終わらないグループ
    • 仕訳で終わりグループ
  • 事業主貸
    • 仕訳で終わらないグループ
    • 仕訳で終わりグループ

 

事業主借・仕訳で終わらないグループ

まずは、「事業主借」から。事業主借のうち、「仕訳で終わらない」取引を見ていきます。

事業所得以外の収入を受け取った

具体例
  • 本業ではなく、副業の収入を受け取った
  • アルバイトの収入(お給料)を受け取った
  • 不動産賃貸の収入を受け取った
  • 仕事で使っていたクルマを売ったおカネを受け取った
  • 自宅を売却したおカネを受け取った
  • 株を売ったおカネを受け取った
  • 仮想通貨を売ったおカネを受け取った など

これらの収入については、「売上高」で仕訳をしてはいけません。結論として、「事業主借」の勘定科目を使います ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
普通預金(または現金)×××事業主借×××

このように、「売上高」ではなく「事業主借」を使うのは、「収入は内容に応じて10種類に分けるべし。混ぜるべからず」という税金の考え方があるからです。

その10種類とは、ざくっとこんなカンジです ↓

所得の種類所得の内容
事業所得フリーランス・個人事業者の本業による収入
給与所得アルバイトで受け取った給料
利子所得預貯金や公社債の利子の受取
配当所得株式の配当、投資信託の収益分配金など
不動産所得土地・建物の賃貸収入
退職所得退職金
山林所得山林や木を売って得た収入
譲渡所得土地・建物、株式、固定資産(クルマなど)などの売却収入
一時所得生命保険の満期保険金など
雑所得公的年金の受取、副業の収入、仮想通貨の売却収入など

唐突に「所得」という用語が使われていますが、意味合いとしては「利益」のようなものです。

「収入」を内容に応じて10種類に区分し、それぞれの収入に対応する「経費」を差し引き、「利益」を計算する。このときの「利益」を、税金の世界では「所得」と呼んでいます。

というわけで。「所得は10種類に分けること」の考えにしたがい、本業(事業所得)以外の収入は「売上高」にしない、「事業主借」にしておく。それがさきほどの仕訳です。

そして、だいじなのはここから。仕訳をしておしまい、ではないのです。

確定申告では、それぞれの所得の金額を合算して、そこに税率を掛け算して税金を求めます。所得によっては、合算をせずに固有の税率を掛け算して税金を求めます。

したがって、本業(事業所得)以外の収入は「事業主借」と仕訳をしたうえで、確定申告時には税金の対象になることを覚えておかなければいけません。申告漏れに要注意です。

 

事業主借・仕訳で終わりグループ

続いて、同じ「事業主借」でも、「仕訳で終わり」の取引を見ていきます。

プライベート(個人用)のおカネを、事業(仕事用)のサイフに入金した

具体例
  • プライベート(個人用)のおカネを、事業(仕事用)の預金口座に入金した
  • プライベート(個人用)のおカネを、事業(仕事用)のサイフに移した など

これらの取引については、「事業主(自分)からおカネを借りた」と考えて、「事業主借」を使って仕訳をします ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
普通預金(または現金)×××事業主借×××

この仕訳をして終わりです。

事業(仕事用)の支払いを、プライベート(個人用)のおカネで立て替えた

具体例
  • プライベート(個人用)のサイフから、接待飲食(仕事用)の代金を支払った
  • プライベート(個人用)の預金口座から、事務所(仕事用)の家賃を支払った
  • プライベート(個人用)のクレジットカードで、パソコン(仕事用)の代金を支払った など

これらの取引については、「事業主(自分)におカネを立て替えてもらった」、つまりは借りたと考えて、「事業主借」を使って仕訳をします ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
接待交際費 など×××事業主借×××

この仕訳をして終わりです。

預金利息が入金された

具体例
  • 事業(仕事用)の預金口座に、預金利息が入金された

利息収入は本業(事業所得)の収入ではない、ということは前述したとおりです。したがって、「事業主借」を使って仕訳をします ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
普通預金×××事業主借×××

あれれ、事業所得以外の収入は確定申告で忘れちゃいけないんじゃなかったの? いい質問です。

ところが、利息収入(利子所得)については例外です。銀行から入金される際、すでに20.315%(国税 15.315%+地方税 5%)の税金を天引きされているのです。

よって、確定申告を要しないため、仕訳をして終わりとなります。

所得税の還付金が入金された

具体例
  • 事業(仕事用)の預金口座に、確定申告による所得税の還付金が入金された

所得税の還付金は、本業(事業所得)の利益を計算するにあたって「収入」にはなりません。多く払いすぎた税金が戻ってきただけです。収入から外すように、「事業主借」を使って仕訳をします ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
普通預金×××事業主借×××

この仕訳をして終わりです。

【参考】還付金に「還付加算金」が付いている場合

所得税の還付金には、還付加算金(利息のようなもの)が付くことがあります。この場合の還付加算金の金額は、「雑所得」として確定申告が必要です。

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事業主貸・仕訳で終わらないグループ

こんどは、「事業主貸」です。事業主貸のうち、「仕訳で終わらない」取引を見ていきます。

税金を支払った

具体例

事業(仕事用)のおカネ(現金・預金)で、

  • 予定納税分の所得税を支払った
  • 売上から、源泉所得税が天引きされた

これらの税金は「経費」にはなりません。経費からは外すように、「事業主貸」を仕訳に使います。

【予定納税分の所得税】

年間の所得税が一定額を超えると、7月と11月に、所得税の前払い(前年の年間税額の3分の1ずつ)をしなければいけません。これを「予定納税」と言います。仕訳がこちら ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
事業主貸×××普通預金(または現金)×××

所得税は「経費」ではありませんので「事業主貸」を使います。仕訳は以上。なのですが、これで終わりではありません。

7月と11月に納付した予定納税の金額を、翌年3月15日申告期限の確定申告に反映させ無ければいけないのです。

具体的には、「確定申告書B」の第一表にある「所得税及び復興特別所得税の予定納税額(第1期分・第2期分)」の欄に、予定納税をした合計額を記載します。

これにより、「年間の所得税額」から「予定納税で前払いした金額」を差し引いて、確定申告の納税額を計算することになります。忘れると、納税額がムダに多くなってしまうので注意です。

【天引きされた源泉所得税】

仕事の内容によりますが、売上から源泉所得税を天引きされるケースがあります。この源泉所得税は、いわば「税金の前払い」です。

たとえば、売上 100,000円から、10,000円の源泉所得税が天引きされた場合の仕訳がこちら ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
普通預金(または現金)
事業主貸
90,000
10,000
売上高100,000

源泉所得税は「経費」ではありませんので「事業主貸」を使います。仕訳は以上。なのですが、これで終わりではありません。

1月から12月のあいだに天引きされた源泉所得税の金額を、翌年3月15日申告期限の確定申告に反映させ無ければいけないのです。

具体的には、「確定申告書B」の第一表にある「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額」の欄に、天引きされた源泉所得税の合計額を記載します。

これにより、「年間の所得税額」から「源泉所得税として前払いした金額」を差し引いて、確定申告の納税額を計算することになります。忘れると、納税額がムダに多くなってしまうので注意です。

所得控除に関するものを支払った

具体例

事業(仕事用)のおカネ(現金・預金)で、

  • 医療費を支払う
  • 社会保険料(国民年金保険料、国民健康保険料など)を支払う
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)、国民年金基金の掛金を支払う
  • 小規模企業共済の掛金を支払う
  • 生命保険料を支払う
  • 地震保険料、損害保険料を支払う
  • 寄付金を支払う、ふるさと納税をする

これらの税金は「経費」にはなりません。経費からは外すように、「事業主貸」を仕訳に使います ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
事業主貸×××普通預金(または現金)×××

というわけで、本業(事業所得)の経費にはならないのですが。「所得控除」と呼ばれる仕組みによって、所得から差し引くことができます(税金が安くなります)。

したがって、仕訳をしておしまい、というわけにはいきません。確定申告の際には、しっかり「所得控除」を受けられるよう覚えておきましょう。

具体的には、「確定申告書B」の第一表にある「所得から差し引かれる金額」の各種控除欄に、該当する控除額を記載することになります。

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事業所得以外の経費を支払った

具体例

事業(仕事用)のおカネ(現金・預金)で、

  • 副業収入を得るための経費を支払った
  • 不動産収入を得るための経費を支払った
  • 株式の売買手数料を支払った など

事業所得以外の「収入」は、「事業主借」で仕訳をすると前述しました。所得の種類に応じて、収入を分けなければいけない。混ぜてはいけないからです。

これとは逆に、事業所得以外の「収入」を得るための「経費」もまた、所得の種類に応じて区分します。

したがって、事業所得以外の経費は、事業所得の経費から外すように、「事業主貸」を仕訳に使います ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
事業主貸×××普通預金(または現金)×××

当然、仕訳をしておしまいではありません。「事業主借」とされた事業所得以外の収入から、「事業主貸」とされた経費を差し引いて、利益(所得)を計算しなければいけませんので。

せっかくの経費を漏らしてしまうことがないように。「事業主貸」で仕訳をしつつ、事業所得以外の経費として、きちんと覚えておきましょう。

 

事業主貸・仕訳で終わりグループ

さいごに、同じ「事業主貸」でも、「仕訳で終わり」の取引を見ていきます。

プライベートにおカネを使った

具体例
  • 事業(仕事用)の預金口座から、生活費として現金を引き出した
  • 事業(仕事用)の預金口座から、プライベート(個人用)の支払いについて振込をした・引落された
  • 事業(仕事用)の現金で、プライベート(個人用)の支払いをした

「仕事とは関係がない」ものに、仕事用のおカネを使った、ということですね。これらについては、次の仕訳をして終わりです ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
事業主貸×××現金(または普通預金)×××
【参考】家事関連費(仕事とプライベート両方に関わる費用)

たとえば、自宅兼事務所の家賃など。仕事とプライベート両方に関わる費用を「家事関連費」と言います。この家事関連費のうち、プライベート分は「事業主貸」を仕訳に使います 。支払う家賃 100,000円について、事務所分 30%、自宅分 70%ならば ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
地代家賃
事業主貸
30,000
70,000
現金(または普通預金)100,000

この場合の「事業主貸」についても、仕訳をして終わりです。

税金を支払った Part2

具体例

事業(仕事用)のおカネ(現金・預金)で、

  • 3月15日の確定申告による所得税を支払った
  • 住民税を支払った
  • 自宅の固定資産税を支払った
  • 仕事では使わないクルマの自動車税を支払った

上に挙げた税金は、「経費」にはなりません。経費からは外すように、「事業主貸」を仕訳に使います ↓

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
事業主貸×××現金(または普通預金)×××

というわけで、仕訳をして終わりです。

同じ税金でも、前述した「予定納税」「源泉所得税」とは取扱いが異なりますので気をつけましょう。

 

まとめ

仕訳で終わりの事業主貸・借、仕訳で終わらない事業主貸・借、についてお話をしてきました。

事業主貸・事業主借は、仕訳をしておしまいというものもあれば、そうではないものもあります。

内容に応じて、「仕訳をしたあとどうなるか?」をイメージできるようにしておきましょう。

 

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  きょうの執筆後記
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事業主貸・事業主借の仕訳後

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