” 税務調査対策として、できることってありますか? ”
そうですね、心象対策もありますね。というわけで、税務調査で調査官の心象がよくなる5つの方法についてお話をしていきます。
税務調査は「調査官からの心象」もだいじ
会社・事業をやっていると、いつかはやって来る税務調査(ぜんぜん来ない、ということもあるけれど…)。
そんな税務調査に対する備えのひとつとして。「調査官からの心象対策」が挙げられます。
「心象対策」などと言うと、いやらしいカンジがしないでもありませんが。どうせ税務調査を受けるのであれば、心象はよいに限ります。
だってそうでしょう。調査官からの心象が悪い、つまり、疑われたり、イライラさせたり、怒りを買ったり。これでトクになるとは思えませんよね(お互いに)。
もちろん「心象だけ」ではダメですが、「心象も」よければ、税務調査はスムーズに進むものです。税務調査に立ち会う身として、実際にそういう場面をなんども見てきました。
というわけで。税務調査で調査官の心象がよくなる方法について、お話をしていきます。具体的には次の5つです ↓
- 現金がビタっと合っている
- 知りたいことがメモ書きされている
- 書類が整理されている
- 根拠資料がある
- 温厚・誠実な態度でいる
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
税務調査で調査官の心象がよくなる5つの方法
わたしの実体験をもとに、税務調査官の心象がよくなる方法を5つ、お話していきます。
《方法①》現金がビタっと合っている
帳簿つけ(経理)の対象として、「現金出納帳」があります。カンタンに言えば、日々の現金の出入りと、結果としての残高を記録する帳簿が現金出納帳です。
会社・事業で「現金(いわゆる現ナマ)」を扱うのであれば、この現金出納帳の記録は必須になります。
また、現金は絶えず出入りし、絶えず残高が変わります。その履歴は、預金通帳のように第三者が記録してくれるものではありません。
したがって、現金出納帳は「日々記録・随時記録」が求められる帳簿です。「いつかまとめてつければいいよね〜」というわけにはいかないのです、理屈として。
この点について、調査当日、調査官から「ではまず現金出納帳を」と言われることがあります。
その現金出納帳の残高と、手元にある実物の現金残高が合っているかどうかを確認する(「現金実査」と言います)ためです。
ここで、現金出納帳と現物とがビタっと合っていると心象がよくなります。言うまでもないことですが、「へ〜、ちゃんとやっているんですね」ということです。
逆に、「いやぁ、まだ帳簿をつけてなくて…」とか「あれ、なんか合ってませんね…」ということだと。調査官からすれば、一事が万事ですべてが疑わしく思えてしまいますから要注意です。
ちなみに。この現金実査は、小売店や飲食店などの現金商売の会社・事業だけが対象になるわけではありません。現金を扱っている限りは油断をしないことです。
現金出納帳を日々記録して、現物がそれと合っている。これは「あたりまえ」のことなのですが。あたりまえをあたりまえにできない会社・事業もあるので、あたりまえが評価をされる部分です。
《方法②》知りたいことがメモ書きされている
調査官が知りたいことがメモ書きされていると、心象がよくなります。
ひとつ具体的を挙げると。接待飲食代の領収書の裏面(あるいは余白)で、「同席者の氏名・会社名・人数」などがメモ書きしてある。
税務署は、あらゆる経費について(と言っていいでしょう)、「これはほんとうに経費なのかなぁ?」という疑いを持っています。
ですから、さきほどの接待飲食代も、「ほんとうは家族で食事をしたんじゃないの?」と考えたりもします。なんて疑り深いんだっ! と思われるかもしれませんが、調査官も仕事ですからしかたない。
その「疑い」に応えるかのようなメモ書きがあると、疑いがゼロにはなりませんが、「きちんと経理をする会社(人)だな」という印象になるものです。実際に、そう言われることもあります。
領収書やレシートなどの書類には、調査官が「ほんとうに知りたいこと(誰と行ったの?など)」は書いていません。そこをメモ書きしておく、と心象にはよい効果があるということです。
もっとも、メモ書きするのも「手間」ではありますから。税務署のため、税務調査のためにわざわざ手間をかけるのか? という考え方もあるでしょう。
そこは調査を受ける側の考え方しだいです。手間と心象を天秤にかけてみる。税務調査のよりスムーズな展開を期待するのであれば、手間をかける価値はあります。
《方法③》書類が整理されている
たとえば、領収書やレシートがスクラップブックにきちんと貼付されている。請求書や契約書などが整然とファイリングされている、など。
調査官がチェックをする書類が整理されていると、心象がよくなります。
書類が整理されているということは、帳簿つけ(経理)に対する重要性を認識している、理解している会社(人)なのだろう、という見方をされるからです。
それに書類が整っていれば、調査官もストレスなく、スムーズに書類をチェックできます。結果、調査が早く済んでお互いハッピー、ということもあります。
いっぽうで、書類がグチャグチャだと。言わずもがな、ですね。調査官に対してこんなことを言っているようではいけません ↓
- あれれぇ、あの書類どこいったっけかなぁ…?
- いま探すんで、ちょっと待ってください(→ 待てども待てども見つからない)
- 間違って捨てちゃったかもしれません…
書類がグチャグチャであれば、帳簿つけ(経理)もまたグチャグチャで間違えているのではないか? 税務署はそのように連想します。
疑いをかけられれば、チェックされる書類も増え、調査官からの質問も増えるのですから、税務調査は長引くことになります。疑われている分、気分も悪いですし、まるでいいことがない。
必要以上に整理することはありませんが、調査官に要求される書類をすぐに出せるくらいの整理はしておきましょう。
《方法④》根拠資料がある
ときに調査官は、「判断・計算の根拠資料」を求めます。たとえば、社宅家賃の金額の計算根拠とか、自宅兼事務所の経費分の金額の計算根拠とか。
社宅家賃であれば、物件の固定資産税に関する情報を入手して、家賃の金額を計算した過程が書類として残っているかどうか?
自宅兼事務所については、仕事場の面積・間取り図などの情報をもとに、経費の金額を計算した過程が書類として残っているかどうか?など。
このあたりについて、「そもそもテキトー」というケースもあれば、そのときはちゃんと考えたのだけど「考えた過程を記録にまでは残していない」というケースもあります。
いずれにせよ、調査官に与える心象としてよいものではありません。逆に、「はいどうぞ」と根拠資料を提示できれば、心象はよくなります。
税務署は、領収書や請求書など「第三者とのあいだで交わされた書類」だけをチェックするわけではありません。
第三者とは関係がない「内部的な書類」であったとしても、税金上の判断・計算に必要なものであればチェックしたい。
そのように考えれば、前述したような判断・計算の根拠資料は、そもそも「当然に内部にあるべき書類」です。税務調査うんぬん以前に、きちんと整えておきましょう。
《方法⑤》温厚・誠実な態度でいる
たとえば、税務調査中にある間違いが見つかったとします。間違いによって、納税額が間違っていた・不足していたとします。
これについて本来であれば、もちろん、間違いを正して、不足分を納税です。けれども、間違いについて指導(次からは気をつけて!)で終わることも、「結論」としてはあります。
「結論」は、総合勘案の結果ではありますが。その「総合勘案」のなかに、調査官の心象は含まれているはずです。
であるならば。調査官に対していたずらに、強い口調で反論したり、強い姿勢で応じるようなことは避けるべきでしょう(もちろん、正当な理由があればOKですが)。
調査官の口調・態度に、ついイライラして… ということもあるのでしょうが、できうる限り「温厚・誠実」であることです。
調査官を怒らせたり、イライラさせたり、不審に思わせたりすれば、心象に影響します。前述したように、その心象が「結論」を左右することもありえます。
税務調査は、ヒト対ヒトです。税法という絶対的な基準はあるものの、さいご(さじ加減)はヒト対ヒトに依存することを心得ておきましょう。
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まとめ
税務調査で調査官の心象がよくなる5つの方法についてお話をしてきました。
いつか来るかもしれない税務調査に備えて、「心象対策」を押さえておきましょう。
- 現金がビタっと合っている
- 知りたいことがメモ書きされている
- 書類が整理されている
- 根拠資料がある
- 温厚・誠実な態度でいる
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きょうの執筆後記
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