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これからの銀行融資は『低金利=高評価』ではない、というハナシ

これからの銀行融資は『低金利=高評価』ではない、というハナシ

「銀行融資」について。これまでは「低金利=高評価」という見方がありましたが、変わろうとしています。

その結果、これまで融資を受けるのが難しかった会社にもチャンスが生まれますよ。というお話です。

目次

高金利な融資、というチャンス。

会社における資金調達手段のひとつ、「銀行融資」について。これまでは、「低金利=高評価」という見方がありました。

つまり、銀行からおカネを借りようとしたときに「金利が低い」のは、「自社の評価が高い」からだ! ということです。評価が高い会社、すなわち、返済力がある会社は銀行にとって安心な融資先。ゆえに銀行は、低金利での融資にも応じることができます。

ところがいま、「低金利=高評価」の見方は変わりつつあることは、理解をしておいたほうがいいでしょう。では、どのように変わるのか?

端的に言えば、銀行融資は「高金利」にシフトしようとしています。低金利の融資よりも、高金利での融資を、銀行は目指すことになります。高金利だなんて、おカネを借りる会社にとっては悪いことか? と言えば、そうでもありません。

なぜなら、これまで融資を受けるのが難しかった会社にもチャンスが生まれます。ただし、黙って待っているだけでは、チャンスをつかむことはできません。というわけで、そのあたりのお話をしてみようかと思います。

銀行はなぜ、高金利にシフトするのか?

まずは、カンタンに「経緯」を確認しておきましょう。銀行はなぜ、高金利の融資にシフトするのか? その経緯について。

1990年代の「バブル崩壊」にともない、銀行では「不良債権」が増加しました。バブル以前、「イケイケドンドンで貸しすぎた」ことの反動でもあり、銀行の経営は大きく悪化したわけです。

そんな不良債権の処理と、銀行の融資姿勢をあらためるべく、1999年には「金融検査マニュアル」なるものが誕生します。金融庁は、このマニュアルをもとに、各銀行に対して「定期的な厳しい検査」を開始したのです。

では、その結果なにが起きたのか?

検査を通じてマニュアルの考え方が、各銀行に根付くこととなりました。かつては「イケイケドンドンで貸しすぎた」ことを思えば、それはそれで良かったのですが。こんどは、萎縮をしてしまった。

検査の厳しさ、マニュアルの厳しさゆえに、各銀行の融資審査は慎重をきわめ、型にはまった審査へと変化したわけです。結果として、担保ありき・決算書ありきの融資になったことは、多くの社長が実感をされていることでしょう。

すぐに担保を要求される、決算書の内容が良くないと融資をしてもらえない… 担保になるような資産もなく、バブルのあおりを受けて業績不振にあえぐ会社にとっては、ほんとうに厳しい状況です。銀行に対しては、「貸し渋り・貸し剥がし」などといった批判も出ました。

けれども、マニュアルを推し進めた甲斐あってか、銀行の不良債権処理は一段落。ところが、次の問題が発生します。銀行の「慎重な融資」が「低収益体質」を招いてしまったのです。

マニュアルに忠実な銀行はみな、融資審査を慎重にすすめました。ここで言う「慎重」とは、「じゅうぶんな担保がある」か、「じゅうぶんに決算書の内容が良い」かです。そういった慎重な審査をクリアできる会社は、返済力がある安全な会社なので、貸出金利を下げることができます。

安全な会社におカネを貸したい銀行どうしが競って、貸出金利はますます下がっていく。そして、多くの銀行が「融資をしても儲からない」という、「低収益体質」に陥ってしまったわけです。

こんなことになってしまったのも、元はと言えば、金融検査マニュアルが厳しすぎたのではないか? 厳しいのはいいにしても、あまりに「機械的・画一的」な審査に偏りすぎてしまったのではないか? という反省があったのかどうなのか(あったのでしょう)。

2019年12月、金融検査マニュアルは廃止となりました。

銀行は、高金利にシフトせざるをえない。

これまでのあいだ、いわば融資審査のよりどころでもあった「金融検査マニュアル」が廃止。その意味するところは、各銀行の「独自性の発揮」です。どこの銀行も似たりよったりの「機械的・画一的」な審査ではなく。それぞれの銀行が、それぞれの独自性を発揮した審査が可能になったわけです。

また、独自性を発揮した融資をすすめることで、低収益体質を改善せよ! というのが、金融庁からのメッセージでもあります。そういう意味で、いま銀行は、低収益体質をあらためるために「高金利」にシフトせざるをえないのです。

じゃあ、銀行はどうするか?

リスクをとっておカネを貸す。リスクをとる分の金利は上げる。いままでよりも柔軟に、いままでよりもリスクがある会社に対して、融資の幅を広げよう! ということになります。

どこまで広げるかは銀行それぞれですし、すぐに広がるかと言えば、時間はかかるでしょう。ただ、それでも。銀行が高金利にシフトせざるをえない、いままでよりもリスクをとって融資をせざるをえないという「流れ」にあることは理解しておきましょう。

だとすれば、会社にとってはこれまでよりも融資のチャンスが広がります。担保がない、決算書の内容が良くないから融資が受けられなかったような会社にも、チャンスは広がるはずです。

誤解なきように申し添えると。担保がなくてもいい、決算書の内容が悪くてもいい、という話をしているわけではありません。担保はあったほうが借りやすいし、決算書の内容が良いほうが借りやすいけれど、そうでなくても借りられるチャンスが広がりますよ、という話です。

それはそれとして。2021年4月からは、「伴走支援型特別保証制度」や「経営改善サポート保証制度」といった融資制度もはじまっています。これらはいずれも、いまは状況が厳しい融資先に対して、銀行が積極的・直接的に支援・関与しようというものです。

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銀行は、会社への支援・関与を通じて、会社の状況をより把握できますから、状況に応じたリスクをとりつつ融資もできるだろう、ということになります。リスクをとるわけですから、金利も相応にとるのが筋でしょう。結果として、銀行はこれまでよりも高金利で融資をすることが可能です。

これらの制度に限らず、今後は、似たような融資が増えていくものと考えられます。繰り返しになりますが、銀行は高金利にシフトせざるをえないからです。

では、そんな銀行に対して、会社はなにをすべきか? どう対応すべきか? そのあたりを、このあと考えてみましょう。

会社は、銀行の事業性評価に協力する

じゅうぶんな担保がない、じゅうぶんに決算書の内容が良いわけでもない。そんな会社に対して、銀行が高金利で融資をするのには、「条件」があります。それは、「事業の将来性がある」ことです。

いまはまだじゅうぶんではないけれど、いずれ花咲く事業の「芽」があるかどうか? 芽があるのなら、それは将来性があると見て、銀行は融資を検討することになります。

では、芽があるかどうかをどのように見極めるのか?

ひとことで言うと、「事業性評価」です。事業性評価とは、決算書や財務分析などの「定量情報(数字)」ではわからないもの、つまり「定性情報」にまで注目をする評価方法になります。

もちろん、これまでの融資審査でも、定性情報をまったく見ていないわけではありませんが。定量情報にかたよった審査だったと言っていいでしょう。そのかたよりを正そう、というのが事業性評価です。

とはいえ。会社の外部にいる銀行が、事業性評価を実行するのは容易ではありません。事実、事業性評価がすすんでいない理由のひとつはそこにあります。では、どうするか?

会社が協力をすることです。銀行が事業性評価できるように、会社のほうから協力をすることです。自社の事業の将来性をはかるのに役立つ「定性情報」を提供することで、銀行の事業性評価は前進します。

でもいったい、どうやって「定性情報」を提供すればいいのか? そもそも「定性情報」とはなんなのか? と、疑問に思われることもあるでしょう。そんなときには、経済産業省が提供しているツール「ローカルベンチマーク」が役立ちます。

ローカルベンチマークとは。「社長や銀行などが会社の状態を把握して、双方が同じ目線で対話を行うための基本的な枠組みであり、事業性評価の入口として活用すべき」とされているツールです。内容について、くわしくはこちらの記事も参考にどうぞ↓

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また、経済産業省のWEBサイトでは、対話の流れやコツ、ローカルベンチマークの利用方法がイメージできる動画が掲載されています。ひととおり観ておくのがおすすめです。

というわけで。いまじゅうぶんな担保がない、いまじゅうぶんに決算書の内容が良いわけではない、という会社は、ローカルベンチマークも使いつつ、「銀行の事業性評価への協力」に取り組んでみる。あたらしい事業を考えている会社なども、取り組んでみるといいでしょう。

あらたな銀行融資の道が拓けるはずです。

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まとめ

「銀行融資」について。これまでは「低金利=高評価」という見方がありましたが、変わろうとしています。

これまでの「定量情報」にかたよった評価では低評価だった会社も、事業性評価による「定性情報」の評価では高評価になりえます。すると銀行は、リスクをとりつつ、「高金利=高評価」の融資をすることが可能です。

結果、これまで融資を受けるのが難しかった会社にもチャンスが生まれます。チャンスをつかむために、事業性評価やローカルベンチマークについて押さえておきましょう。

これからの銀行融資は『低金利=高評価』ではない、というハナシ

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