これからは、これまでのように銀行員が会社に来なくなる、来れなくなる…
それならば、会社のほうから銀行に行きましょう。ということについて、お話をしていきます。
そうだ銀行、行こう。的な
きょうは 2021年6月3日。銀行の業績悪化が伝えられているところであり、銀行によってはリストラの報道もあり。この難局を乗り越えるべく、銀行業界では「再編」も進んでいます。
結果として、銀行(の支店)の数は少なくなり、銀行員も少なくなり。ひいては、銀行員ひとりあたりの担当融資先はますます増えていくことでしょう。
すると、なにが起きるのか? これまでのように、銀行員が会社に来なくなる、来れなくなる。ということが、考えられます。銀行員は、いままで以上に忙しくなるわけです。
これを聞いて、「だからなに? 必要なときに来てくれればそれでいいよ」などと言っているようではいけません。なぜなら、銀行融資の可否は、銀行との「コミュニケーション量」で決まる一面があるからです。
銀行員が会社に来なくなれば、当然、コミュニケーション量は落ちます。銀行は会社の情報をとりづらくなり、会社は自社の情報を伝えづらくなる。融資審査に必要な情報が不足すれば、融資はしづらくなるものです。
では、どうするか? 銀行に行くことです。銀行員が来れないのであれば、会社のほうから行くことです。銀行員も行くよりは来てもらうほうが、時間と手間を考えれば助かるはずですし。
というわけで。会社が銀行に行くことについて、ポイントをお話ししていきます。ぜんぶで3つ、こちらになります↓
- 決算報告は絶対行く
- 四半期にいちどの定期報告に行く
- すべての取引銀行に行く
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
会社が銀行に行くことについて、ポイント3つ
【ポイント1】決算報告は絶対行く
会社が銀行に行くことについて、まず1つめのポイントは。決算報告は絶対行く、です。
毎年の決算書(税務申告書)ができあがると、銀行に取りに来てもらう。という会社は少なくありません。忙しい銀行員も、さすがに決算書は取りに来るでしょう。重要な審査材料ですから。
けれども、決算書を受け取るとロクロク見もせずに、カバンにしまいこんでいそいそと帰ってしまう… なんてことはありませんか? いまはなくても、これから忙しくなれば、そういう銀行員が増えるかもしれません。
でも別に、銀行に持ち帰ってから決算書を見ればいいだろう? と思われるのであれば、それは違います。
たしかに、持ち帰ってから決算書を見ても「数字」はわかるでしょう。ですが、数字の「背景(根拠や経緯など)」は、会社が伝えなければ、会社から聞かなければ、銀行員は知りようもないことです。
その「背景」こそが、融資の可否に影響を与えることは覚えておきましょう。銀行が、数字の背景を理解できなければ、融資審査はしづらくなります。結果として、融資もしづらくなります。
これを避けるためには、会社のほうから伝えること。伝える方法が、「決算報告をしに銀行に行く」ことです。
繰り返しになりますが、銀行員も忙しいのですから、こちらから出向いたほうが助かるでしょう。また、こちらから出向くことで、いつもの銀行担当者以外にも、その上司や融資担当者、うまくいけば、支店長とも話ができるかもしれません。
融資の可否を決めるのは、いつもの銀行担当者ではなく、稟議で決まります。ですから、稟議に関わる人たちともコミュニケーション量を増やすことで、融資は受けやすくなるものです。
銀行は、決算書ができあがったタイミングで、向こう1年(次の決算書ができあがるまで)の融資方針を決めています。つまり、決算書しだいで、向こう1年どれだけ融資が受けられるかが、ほぼほぼ決まるということです。
それだけ重要なタイミングなのですから、会社は手間を惜しまず、決算報告に行くようにしましょう。どのように決算報告をしたらいいのか? どんな準備をしていけばいいのか? は、こちらの記事をどうぞ↓
【ポイント2】四半期にいちどの定期報告に行く
会社が銀行に行くことについて、2つめのポイントは。四半期にいちどの定期報告に行く、です。
決算書がいちばんの審査材料ではありますが、それだけというわけではありません。たとえば、毎月の試算表。決算書は黒字だったけれど、その後も順調なのだろうか? みたいなことを銀行が確認するには、試算表が必要になります。
そこで、試算表ができあがったタイミングで、銀行員に取りに来てもらえばいいのですが。銀行員も忙しく、これからはますます忙しくなる。試算表を取りに来るのもタイヘンでしょう。
だったら、会社のほうから試算表を渡しに行こう、ということです。
とはいえ。毎月では、会社も銀行も負担でしょうから、おすすめは「四半期にいちど(3ヶ月に1回)」になります。四半期にいちど、試算表をもって銀行に行く。
このとき、できれば「過去3ヶ月の資金繰り実績、向こう1年の資金繰り予測」をまとめた、資金繰り表を持参するのがベストです。銀行がより、会社の状況を把握しやすくなります↓
しかし、そんなことをされても、銀行は「ありがた迷惑」だったりしないのか? と思われるかもしれませんが。むしろ、逆です。銀行は今後、「モニタリング」の実行必要性が高まります。
おカネを貸しておしまい、ではなく。貸したあとどうなったのか、どうなっているのかを把握したうえで、銀行としてできる支援(融資に限らず)をしていくことが求められているのです(金融庁から)。
そのあたりのことは、こちらの記事にも書きました。ご参考にどうぞ↓
また、四半期にいちどの定期報告に行くのは、銀行への協力のためばかりではありません。経営者保証の解除にも役立つところです。
社長であれば、できることなら銀行借入の経営者保証は避けたいものでしょう。この点で、「適時適切な情報開示」が、経営者保証を解除する要件の1つになっています。
定期報告を通じて、会社の情報開示を進めるなかで、いずれ経営者保証の解除につながるかもしれません。そのあたり、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
なお、銀行に定期報告に行くときには、「コンパクト」な報告を心がけましょう。いくらこちらから行くとはいっても、銀行は時間を取られることになります。
再三のお話のとおり、銀行員は忙しいのですから、要領よくスムーズに伝えられるように準備をしていきましょう。面談時間のは 30分くらいを目安にするのがよいかと考えます。あまり長くならないように。
【ポイント3】すべての取引銀行に行く
会社が銀行に行くことについて、3つめのポイントは。すべての取引銀行に行く、です。
ここで言う「取引銀行」とは、融資を受けている銀行のこと。会社が融資を受けている銀行については、すべて等しく、決算報告・定期報告に行きましょう。
と言うと、「メインバンクだけでもよくない?」などと思われるかもしれませんが。すべて等しく報告に行くことが重要です。
銀行ごとに「融資方針」には違いがあるから、というのが理由になります。
同じ報告をしても、積極的に話を聞いてくれる銀行もあれば、そうでもない銀行、むしろ消極的な反応をする銀行はあるものです。
そういった銀行の「姿勢(融資方針)」を知ることで、会社は「お付き合いを深めるべき銀行」の当たりをつけられるようになります。姿勢がわからないままにお付き合いをしていると、ミスマッチも起こるところです。
というわけで、各銀行の姿勢(融資方針)を把握するためには、「すべて等しく報告をする」のが有効だと言えます。言うまでもありませんが、銀行ごとに報告内容を変えていたら、銀行ごとに反応や姿勢が異なるのは当然だからですね。
だから、すべて等しく報告をしたときに、各銀行がどういう反応や姿勢を見せるのかを確認していきましょう。冒頭でもお話ししたとおり、変化を余儀なくされている銀行の状況をつかむのにも役立ちます。
まとめ
これからは、これまでのように銀行員が会社に来なくなる、来れなくなります。それならば、会社のほうから銀行に行くことです。コミュニケーション量を維持することができます。
というわけで。会社が銀行に行くことについて、3つのポイントを押さえておきましょう。
- 決算報告は絶対行く
- 四半期にいちどの定期報告に行く
- すべての取引銀行に行く