ふるさと納税をしてみたいけど、いくらまでがいいの?
と、悩んでいるフリーランスに向けて。「ふるさと納税の最適額」の目安を計算する方法についてお話します。
ずばり!ふるさと納税の最適額を計算する方法
地域の特産品などがもらえるという「お礼」が魅力的な「ふるさと納税( ≒ 地方自治体への寄付)」。
けれども、ふるさと納税をやり過ぎてしまうと、思いもよらない「損」をしてしまうことがあります(なぜ損をするのかのワケは後述します)。
そんな損をしてまで「ふるさと納税をしたい」という人は少ない(というか、いない)でしょうから。
まずは結論として、損をしない「ふるさと納税の最適額」の計算方法について見ていきましょう。
ふるさと納税最適額の計算式
損をせずに済むふるさと納税の目安金額、つまり、「ふるさと納税はいくらまでがいいの?」に応える計算式は次のとおりです ↓
住民税所得割額 × 20% ÷(90% - 所得税率 × 1.021)+ 2,000円
なんじゃこりゃあ! と、叫びたくなるのも無理はない計算式に仕上がってはおりますが。
ここはひとつ、計算式の「意味」までは気にせずに。式に数字を当てはめて、「計算」ができるようになることを目指しましょう。
【注意】給与収入の目安表は使えない
具体的な計算方法についてお話する前に、ひとつだけ注意喚起をしておきます。
損をしないふるさと納税の額として、一般に「上限額」や「最適額」などの表現が使われています。
その「上限額」や「最適額」の目安については、さきほど提示したようなメンドー算式ではなく、カンタンな表形式で提示をされていることがあります。こんな感じです ↓
フリーランスに関して言うと、上記の表は使えません。なぜなら、このような表は、「給料をもらう人」を対象につくられているからです。
上記の表でも、「給与収入」という言葉が使われていますね(赤色枠の部分)。
ゆえに、フリーランスが自分の「収入(=売上)」を上記のような表にあてはめるのは誤りだ、ということに注意が必要です。
「損をしないふるさと納税の目安」を具体的に計算する
では、さきほどの算式にもとづいて、「損をしないふるさと納税の目安」を計算してみましょう。算式を再掲します ↓
住民税所得割額 × 20% ÷(90% - 所得税率 × 1.021)+ 2,000円
上記算式を見てわからないのは、「住民税所得割額」と「所得税率」です。それぞれ見ていきましょう。
住民税所得割額を計算する
税金の厳密なハナシをはじめると大混乱になりかねませんので。以降、わかりやすさ重視で、「おおまかなレベル感」で話をまとめていきます。ご容赦ください。
さて、算式中の「住民税所得割額」とはなにか? カンタンに言うと、ふるさと納税をする本人の「住民税」の金額です。その住民税を求める算式はこちら ↓
(事業所得※-各種所得控除)×10%
※ 事業所得 = 事業収入 - 事業経費 - 青色申告特別控除
上記のとおり、「事業所得」から「各種所得控除」をマイナスして、そこに10%をかけます。これが、フリーランスの住民税額です。
「事業所得-各種所得控除」について、フリーランスにはおなじみの確定申告書用紙(B様式・第1表)で言うと、この箇所です(赤色枠部分)↓
また、「事業所得」とは、上記※書きのとおり、「事業収入-事業経費(=利益)」から、青色申告特別控除(10万円または65万円)を引いて計算します。
おなじく、確定申告書用紙で示すとこの箇所です(赤色枠部分)↓
「各種所得控除」とは、基礎控除や扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除など、各種の所得控除の合計額です。確定申告書用紙で言うとここ(赤色枠部分)↓
ここで大事なことは、計算する住民税は、「ふるさと納税をする(しようとしている)年」の住民税の金額だということです。
つまり、「ふるさと納税をする(しようとしている)年」の決算・確定申告を予測することが必要なのです。
前年、税務署に提出した確定申告書を見て計算をするわけではありませんのでご注意を!
よって、ふだんから経理をしておらず、さいごにまとめてやろうという場合。損をしないふるさと納税の目安はよくわからない、ということになってしまいます。
所得税率とは
続いて、「所得税率」について。さきほどの「住民税」が計算できていれば、「所得税率」はカンタンです。
住民税の計算で使った、「事業所得-各種所得控除」の金額を、下記にあてはめるだけです ↓
事業所得-各種所得控除 | 所得税率 |
~1,950,000円 | 5% |
1,950,001~3,300,000円 | 10% |
3,300,001~6,950,000円 | 20% |
6,950,001~9,000,000円 | 23% |
9,000,001~18,000,000円 | 33% |
18,000,001~40,000,000円 | 40% |
40,000,001円~ | 45% |
もし、「事業所得-各種所得控除」の金額が 3,000,000円ならば、「1,950,001~3,300,000円」ですから、所得税率は「10%」です。
具体例で計算練習してみよう
では、ここまでのおさらいとして。下記の具体例で、「損をしないふるさと納税の目安」を計算してみましょう ↓
《具体例》
次のフリーランスの予測数字にもとづき、「損をしないふるさと納税の目安」を計算しましょう。
- 事業収入 7,650,000円、事業経費 3,000,000円、青色申告特別控除 650,000円
- 各種所得控除 2,000,000円
解答は次のとおりです ↓
《解答》
- 事業所得-各種所得控除=(事業収入 7,650,000-事業経費 3,000,000円-青色申告特別控除 650,000)-各種所得控除 2,000,000=2,000,000
- 住民税所得割額=(事業所得-各種所得控除)×10%=2,000,000×10%=200,000
- 所得税率 … 「事業所得-各種所得控除=2,000,000」を税率表にあてはめ、10%
- 損をしないふるさと納税の目安=住民税所得割額 × 20% ÷(90% - 所得税率 × 1.021)+ 2,000円
=200,000×20%÷(90%-10%×1.021)+2,000 ≒ 52,131円
以上より、52,131円までのふるさと納税であれば、損をすることはない。ということがわかります。
とはいえ、前述したとおり、これは「予測」です。予測をした時点以降、年末までの収入や経費などの変化に応じて、計算し直してみるようにしましょう。
【補足】ふるさと納税をやり過ぎれば損をする
冒頭、ふるさと納税をやり過ぎると思いもよらない損をする、という話をしました。
ここで言う「損」とは、いったいどういうことなのかについて補足をしておきます。
ふるさと納税の「お得」とは?
ふるさと納税とは、好きな地方自治体や応援したい地方自治体に「寄付」をした額に応じて、本来納めるべき税金を控除するしくみです。
これは、本来であれば国や住まいの都道府県・市区町村に納めるべき税金の代わりに、任意の地方自治体に寄付をするということです。
つまり税金は減るけれど、その分の寄付もするわけなので。「節税」というお得は無い、ということになります。
では、なぜふるさと納税は「お得」だと話題になるのか?
それは、ふるさと納税(寄付)をすることで、寄付先の地方自治体から特産品などの「お礼」を受け取ることができるからです。「お礼」の分だけお得。
どんどん寄付をすると「損」をする
それならば。お礼がもらえるのならドンドン寄付しちゃおう、というのは誤りです。
なぜなら、ふるさと納税(寄付)をすることで控除される税金は、所得(≒ 利益)の大きさによって異なるからです。
所得の大きな人ほど控除できる金額が大きく、所得が小さな人ほど控除できる金額は小さくなる。
そのしくみが、さきほどまでお話をしてきた「損をしないふるさと納税の目安」の計算式に表れています。
この計算式によって計算された金額を超えてふるさと納税をすると、本来納めるべき税金から控除しきれず。
結果、ふるさと納税をしない場合よりも、トータルでの出費が増えることになるのです。
そんなことにならないように、「損をしないふるさと納税の目安」の計算式でチェックをしておきましょう。というお話になります。
なお、「損をしないふるさと納税の目安」より少ない金額でのふるさと納税であっても、2,000円だけは自己負担が生じるようになっています。
つまり、「損をしないふるさと納税の目安」より少ない金額でのふるさと納税であれば。2,000円の自己負担で「お礼」がもらえる、ということです。
まとめ
「ふるさと納税の最適額」の目安を計算する方法についてお話をしてきました。
ふるさと納税に興味はあるけれど、「いくらまでがいいの?」と迷っているのであれば計算をしてみましょう。
実際の確定申告書の作成は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」が便利です。
ふるさと納税があるときの対応は、こちらが参考になります ↓
地方税ポータルシステム eLTAX 「ふるさと納税をされた方のための確定申告書作成の手引き」
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きょうの執筆後記
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