” 決算のときにまとめて仕訳すればいっか ”
って、それ年に1回というのはよくありませんよ。というわけで、「決算でまとめて仕訳」がよくない具体例ワースト5についてお話をします。
「決算でまとめて仕訳」がよくない具体例ワースト5
決算仕訳、という言葉があります。
年に1回、決算のときに行う特別な仕訳のことをそう呼びます。
たとえば、減価償却費。高額なモノを買った場合には、いちどに経費にできず、複数年に分割して経費にするときの金額が「減価償却費」です(くわしくは後述します)。
これを年に1回、決算でドーンと仕訳をしていると。突然の利益減少に驚いてしまいます。もっと利益が出ると思っていたのに… と。
ほかにも、このような「決算仕訳」はありますが。年1回だけの仕訳にしてしまうことで、決算時に利益が減ることもあれば、逆に増えることもあります。
いずれにせよ、想定外に利益が増減することで、納税額もまた想定外に増減することになります。結果、手元のおカネも想定外に増減します。ていどによっては大慌ての事態を招きます。
そのようなことがないように。年に1回の決算ではなく、毎月の決算のなかで織り込んでおきましょう。
「決算でまとめて仕訳」がよくない具体例を挙げながら、お話をしていきます。具体例は次の5つです ↓
- 在庫(棚卸)
- 減価償却費
- 家事関連費のあん分
- 年払いの費用
- 消費税
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
在庫(棚卸)
在庫を持つような仕事をしている会社・個人事業者
モノを仕入れて店頭に並べて売る、というような仕事の場合には「在庫」という考え方があります。
モノを仕入れたときには、その金額は経費と見ることができますが、まだ売れずに在庫になっている分は経費から外す。それが在庫の考え方です。
したがって、毎年の決算のときには、在庫を数えて(棚卸、と言います)、その金額を経費から外す仕訳をするわけです。
けれども、在庫は絶えず変動するものであり、毎年の決算のとき1度だけ数えていたのでは、思わぬ在庫金額(多い場合でも少ない場合でも)に驚くことがあります。
そのような思い違いを回避するために、毎月の決算のつど、在庫の仕訳をします ↓
【毎月の決算時・1ヶ月目】前期末在庫 500,000円、当月末の在庫 700,000円の場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
期首棚卸高 | 500,000 | 商品 | 500,000 |
商品 | 700,000 | 期末棚卸高 | 700,000 |
【毎月の決算時・2ヶ月目以降】前月末在庫 700,000円、当月末の在庫 400,000円の場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
期末棚卸高 | 700,000 | 商品 | 700,000 |
商品 | 400,000 | 期末棚卸高 | 400,000 |
前月末在庫については、1ヶ月目だけは借方「期首棚卸高」、2ヶ月目以降は借方「期末棚卸高」である点には注意です。
これにより、「期末棚卸高」の勘定科目を通じて、毎月の経費(売上原価)が正しく計算されることになります。
なお、毎月の決算時にまで厳密な棚卸などやっていられない、ということはあるでしょう。その場合には、「概算」だとしても在庫金額の仕訳をしましょう。なにもやらないよりはよいはずです。
たとえば、こういうことです ↓
- 平均的な原価率は50%
- 前月末在庫 500,000円、当月仕入金額 700,000円
- 今月の売上高は2,000,000円
この場合の、当月末における概算在庫金額は?
(500,000円 + 700,000円)− 2,000,000円 × 50% = 200,000円
上記から、ひとまず当月末の在庫は 200,000円として仕訳をします。前期末在庫の 500,000円にしておくよりはいいだろうなぁ、ということです。
モノを売るわけではないサービス業にも、在庫の考え方はあります。
たとえば。ある売上をあげるために必要な外注費を、売上があがる前に先行して支払った場合。売上が計上されるまでのあいだは、この外注費の金額は「在庫」になります。
減価償却費
減価償却をすべき固定資産を持っている会社・個人事業者
ひとつあたり10万円以上(青色申告者の場合には30万円以上)のモノについては、購入時にいちどには経費にできません。
そのモノを使う期間で等分して経費にする、「減価償却」という考え方があります。
たとえば。300万円のクルマを買った、という場合。6年使うので、毎年 50万円を経費にする。このときの 50万円を「減価償却費」と呼びます。
この「減価償却費」について、決算月にまとめて仕訳をするのはやめましょう。
年間の減価償却費の金額を 12等分して、毎月の決算時に仕訳をします ↓
【毎月の決算時】年間の減価償却費が500,000円のクルマの場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
減価償却費 | 41,666 | 車両運搬具 | 41,666 |
上記の仕訳により、年間の減価償却費を、毎月に等分して経費計上します。
なお、12等分したときの端数(上記の例では、500,000円 − 41,666円×12ヶ月= 8円)は、さいごの月で調整しましょう。
繰延資産がある場合には、その償却費についても、固定資産の減価償却費と同じく、毎月に等分して仕訳をしましょう。
また、信用保証協会付き融資を受けている場合、信用保証協会への保証料についても同様です。保証料の償却費は、毎月に等分して仕訳をしましょう。
家事関連費のあん分
仕事とプライベートが混じった費用(=家事関連費)がある個人事業者
個人事業者には、「家事関連費」という考え方があります。家事関連費とは、仕事とプライベートが混じった費用のことを言います。
たとえば、自宅兼事務所の家賃。事務所部分は仕事ですが、自宅部分はプライベートです。したがって、家賃の金額のうち、事務所分だけを経費にして、自宅分は経費にはしない。ということになります。
この点について。毎月の家賃支払時は、全額経費の仕訳をしておいて、決算時にまとめてプライベート分を経費からはずす。という仕訳をしているケースがありますがやめましょう。
毎月の家賃支払時(少なくとも毎月の決算時)ごとに、仕事分とプライベート分とは区分をします ↓
【毎月の支払時】自宅分 70,000円・事務所分 30,000円の家賃の場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
地代家賃 | 30,000 | 普通預金 | 100,000 |
事業主貸 | 70,000 |
上記の仕訳により、毎月の段階で、事務所分の金額だけが「地代家賃」として経費になります。
これをひとまず毎月は「地代家賃 100,000円」としてしまうと、年末の決算時に一気に経費が減りますから(上記の例で言えば 70,000円×12ヶ月=840,000円の経費が減る)。
その分、利益が増えて、税金が高くなることにビックリすることになります。気をつけましょう。
年払いの費用
生命保険料の年払いなど、まとまった支払いが決算月にある会社・個人事業者
決算対策(?)として、決算月にまとまった支払いを恒例にしている会社・個人事業者があります。
たとえば、会社における生命保険料の年払いなどはその典型です(個人事業者の生命保険料は経費ではなく、所得控除になります)。ほかにも、年会費や年間保守料なども挙げられます。
そのような支払いについて、金額が大きく、利益に与えるインパクトが大きい場合には、決算月の支払時にまとめて仕訳をするのはやめましょう。
年払いの金額を12等分して、その金額を毎月の決算のなかで仕訳をします。
毎月の決算時、決算月の支払時、それぞれの仕訳は次のとおりです ↓
【毎月の決算時】年払い額が600,000円の保険料の場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
保険料 | 50,000 | 未払金 | 50,000 |
【保険料の支払時】年払い額が600,000円の保険料の場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
未払金 | 600,000 | 普通預金 | 600,000 |
上記の仕訳により、年払いの費用を「保険料」などとして毎月経費計上します。
いっぽうで、未払額として溜まった金額(毎月の未払金の合計)は、支払時に相殺します。
消費税
消費税を納めなくてはいけない会社・個人事業者(=消費税の課税事業者)
消費税を、年1回の決算のときにまとめて計上するのはやめましょう。
毎月、その月の消費税の額を試算(←いずれ試算のしかたの記事を書きます)して、その金額を毎月の決算のなかで仕訳をします。
毎月の決算時、消費税の納税時、それぞれの仕訳は次のとおりです ↓
【毎月の決算時】試算額が100,000円の場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
租税公課 | 100,000 | 未払消費税等 (または未払金) | 100,000 |
【消費税の納税時】毎月の試算額の合計が1,200,000、実際の納税は1,210,000円の場合
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
未払消費税等 (または未払金) | 1,200,000 | 普通預金 | 1,210,000 |
租税公課(※) | 10,000 |
上記の仕訳により、「租税公課」として毎月経費計上します。
いっぽうで、未払額として溜まった金額(毎月の試算額の合計)は、納税時に相殺します。相殺する金額と、実際の納税額に差がある場合には「租税公課」で調整します。
消費税の納税が、年1回の決算時だけでなく、年の途中で予定納税がある場合でも。考え方は変わりません。
つまり。毎月、試算額の仕訳をする。予定納税時には、未払額として溜まった金額(毎月の試算額の合計)を相殺します。
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まとめ
「決算でまとめて仕訳」がよくない具体例ワースト5、についてお話をしてきました。
年に1回の決算で、想定外の利益・税金で大慌てをすることがないように。よくない具体例を押さえておきましょう。
- 在庫(棚卸)
- 減価償却費
- 家事関連費のあん分
- 年払いの費用
- 消費税
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きょうの執筆後記
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