” ねぇねぇ、家族での食事も経費でいいんだよね? だって、みんなやってるし ”
って、どこからそういうハナシになってしまったのやら… というわけで、経費か否かの判断基準「仕事に関係があるか?」についてお話をします。
いわゆる「経費判断フローチャート」が使えない理由
会社・個人事業者が帳簿つけ(経理)をするうえでの悩みごとのひとつに、「これは経費か否か?」というものがあります。
つまり。モノやサービスを購入したときの支払いについて、「これは経費にできるのだろうか? 」という悩みごとです。
この点では、一般に、「経費判断フローチャート」なるものが示されます。こんなカンジです ↓
なるほど、なるほど。と、もっともらしいフローチャートではありますが。
いざ、実際に使ってみると、「う〜ん…?」と首をかしげてしまいがちな箇所があります。
それは、フローチャート上の判断の2つめ「仕事に関係があるか?」という箇所です。
「仕事に関係があるか?」は本人しだい?
たとえば。ここに「飲食代の領収書」があります、という場合。
領収書には、「支払日(◯月◯日)・支払金額(◯◯円)・支払内容(◯◯代)」は書いてあっても、それが「仕事に関係があるか?」までは書いていないはずです。
それなら、ほんとうはプライベートの飲食代なのに「得意先との接待だ」「取引先との商談だ」と言い張ることもできそうだよね。「仕事に関係があるかどうか?」なんて、本人しだいじゃん。
でも、それってもう「判断基準」とは言えなくない? と首をかしげてしまうわけです。
もちろん、「本人しだい」などということはなく。あくまで、実際に仕事に関係があるかどうかです。
そこを勘違いして、本人しだいで都合よく解釈をした結果、事実がバレて税務調査でヒドいめにあう… という事例は枚挙にいとまがありません。
そんなヒドい事態にならぬよう、正しく「仕事に関係があるか?」を見極める方法はないのか?
ということで、おすすめをするのが「仕事に関係があるか? 判断フローチャート」です。それがこちら ↓
上記フローチャート上の3つの判断について、このあとお話をしていきます ↓
- 他人がやったらズルいと思う?
- 迷う気持ちがある?
- 良心に恥じるところはある?
それでは、順番に見ていきましょう。
他人がやったらズルいと思う?
さきほども例に出した「飲食代」について。
もしも、完全にプライベートな家族での食事代を、他人が「経費」として帳簿つけ(経理)をしていたら。それをじぶんはどう感じるか?
ズルいっ! と感じるのであれば、「仕事とは関係がないのに」と理解をしているからです。
とはいえ、じぶんのこととなると、「ちょっとくらいいいかも」と考えてしまうこともあるでしょう。もちろん、わたしにもあります。他人には厳しく、じぶんには甘い。
だからそこは客観的に、いちど他人に置き換えて考えてみる。他人だとズルいものが、じぶんだとズルくない、という理屈はありませんよね。だからわたしはやりません。
同じことを他人がやって、ズルいと感じるのなら、それは仕事に関係ない。ズルいとは感じないのであれば、仕事に関係ありと言えるかも。そういうことです。
ちなみに。「ちょっとくらいいいかも」の気持ちには、エスカレートをするという特徴があります。
さいしょは小さな金額だったのに、これっきりのはずだったのに。気がついたら、アレもコレも「ま、いっか」と常習化してしまうケースを見てきました。
出来心は小さなうちに潰しておくのがよし。逆に潰しそこねた出来心は、じぶんにも他人にも止めることが難しくなるものです。気をつけましょう。はい、気をつけます。
迷う気持ちがある?
手にした領収書を眺めながら、「これ、経費か経費じゃないか、どっちだろうなぁ? 」と迷う気持ちがあるのであれば。経費ではない可能性がきわめて高いと言えます。
なぜならば。「どっちだろうなぁ?」という気持ちのウラ側には、「どうすれば経費にできるかなぁ」という思惑があり。
「どうすれば経費にできるかなぁ」という思惑の前提として、「経費と言うにはきびしいだろうなぁ」という本音があるものだからです。
したがって、疑わしきは罰せよ。迷ったときは「クロ(経費じゃない)」と割り切ってしまう、という考え方です。
たとえば、仕事で遅くなったときのひとり外食代。個人的な食事とも言えるが、福利厚生的な食事と言えなくもない。う〜ん、どうしよ…
そこを迷い続けるのも、もったいない(時間も労力も)ハナシです。迷ったら瞬間的に「クロ」ならば、迷い続けずに済みます。
ちなみに。「どっちだろうなぁ?」と迷う可能性があるモノの中に、「家事関連費」が挙げられます。
家事関連費とは、仕事とプライベートとが混じった費用のことを言います。
たとえば、自宅兼事務所の家賃。仕事とプライベートどっちつかずにも見えますが、「仕事部屋の面積分だけ」など、明らかに仕事に関する部分は問題なく経費です。
家事関連費については、経費にし忘れないよう、しっかりと勉強をしておきましょう。くわしくはこちら ↓
良心に恥じるところはある?
仕事に関係があるか? を見極める最後の判断基準は「良心に恥じるところはある?」です。
他人がやってもズルいと思わない。迷う気持ちもない。それでも最後の最後に、じぶんの「良心」にたずねてみましょう。
ほんとうに、これは経費なのか? と。
ふたたび、完全にプライベートな家族での食事代について。そんなの周りもみんなやっているし、ズルいことだとは思わない。だから迷いもしない。
ということだとすれば、フローチャート上を「仕事に関係がある」のほうへと進みます。そんな暴走を止めるには、もう「良心」しかありません。
みんながやっていることだからと、じぶんもズルをするのなら。税金が高い、とグチる資格はありますか? ありません。
世の中の不正経理を非難する権利はありますか? やはり、ありません。家族に堂々と胸を張ることができますか? もちろん、できませんね。できてしまったら立派な悪人です。
ところで、老婆心ながら申し添えると。良心が機能しなくても、「天」が見逃すことはありません。
とりわけ深い信仰心も無いわたしですが。おのずと悪事が明るみになる場面はなんども目にしてきましたから、「天」はたしかにあると信じています。
バレていない、と思っているのは意外と本人の思い違いで。周囲(従業員、得意先、家族、友人、税務署、などなど)はしっかりと見ていることを忘れてはいけません。
事実、いわゆる「タレコミ」により税務署が動く、ということは少なくないのです。
それはさておき、まずはじぶんの「良心」なのですけれど。
良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬である。
セオドア・C・ソレンセン / 米国の弁護士、作家、ケネディ政権大統領特別顧問
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まとめ
経費か否かの判断基準「仕事に関係があるか?」についてお話をしてきました。
経費か否かを判断するにあたって、小難しい税法のハナシもありますが。それはそれとして、「各人の感情」で判断できることもあります。覚えておくとよいでしょう ↓
- 他人がやったらズルいと思う?
- 迷う気持ちがある?
- 良心に恥じるところはある?