自社と関係が密なはずの「メインバンク」でも。変える・変えたいというときもあるでしょう。
というわけで、会社がメインバンクを変えるときに注意すべき3つのことについてお話をします。
関係が密な銀行はありますか?
会社・事業における銀行融資について、いわゆる「メインバンク」の存在は重要です。
なお、ここで言う「メインバンク」とは、融資残高のシェアが大きいということもありますが。本質的には、いついかなるときにも会社の話を聞いてくれる銀行。つまり、「関係性が密」と言える銀行がメインバンクです。
もし、自社にとってのメインバンクがないと、業績悪化時に話を聞いてくれる銀行がない、融資を考えてくれる銀行がないなどの困った事態が想定されます。
そんなメインバンクではありますが。いちど決めたらずっといっしょ、というわけでもありません。メインバンクを変える、変えたい、そんな場面もあるはずです。
そこで、会社がメインバンクを変えるときに注意すべきことについてお話をしていきます。次の3つです ↓
- メインバンクを変える理由
- あたらしいメインバンクの選び方
- 元メインバンクほか各銀行への配慮
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
会社がメインバンクを変えるときに注意すべき3つのこと
《注意1》メインバンクを変える理由
会社がメインバンクを変えるにいたる経緯はいろいろあるでしょう。たとえば、
- どうにも融資に積極的ではない、話をまともに聞いてくれない
- 銀行(担当者)の態度・対応などが悪く不満がある
- 他の銀行から条件が良い借り換えを提案されている
- 事業規模の拡大にともない、もっと大きな銀行とお付き合いをしたい
などなど。
たしかに、どれも「なるほど」と言えるようなものではありますが。「ほんとうにメインバンクを変えるべき理由」と言えるかどうか、あらためて検証をしてみるのがよいでしょう。
上記の理由を順番に見ていくと、
どうにも融資に積極的ではない、話をまともに聞いてくれない
自社の業績があまりにも悪くて融資を躊躇しているのだとすると、業績を改善できれば銀行の対応は変わる可能性はじゅうぶんにあります。メインバンクとはいえ、業績が悪すぎれば融資はできないからです。
また、業績が悪いのであれば、メインバンクを変えようとしたところで他の銀行もまた融資を躊躇することでしょう。あたらしいメインバンクを見つけるのは困難です。
したがって、メインバンクが融資に積極的ではない、話を聞いてくれない原因はどこにあるのか、その見極めが大切になります。
銀行(担当者)の態度・対応などが悪く不満がある
自社の業績は悪くもないのに、銀行が融資に積極的ではない。ただただ銀行担当者の態度が悪い、理不尽な対応をされているというのであれば。メインバンクを変えるのも選択肢のひとつでしょう。
ただし、担当者個人の問題だとすると、その上司に掛け合う、あるいは担当者が異動になるまで我慢するという選択肢もあります。
これまで築いてきたメインバンクとの関係が長ければ長いほど、費やしてきた時間は大きなものです。その関係をほんとうに断ってもよいか、いちど冷静になって判断をしましょう。
他の銀行から条件が良い借り換えを提案されている
融資条件の良さも魅力的なものですが、「一時的」な良さではないかに注意が必要です。
会社がメインバンクを持つことの最大のメリットは、「中長期的」に安定した融資が期待できることにあります。
一時的には融資条件が良くても、その銀行が以後も中長期的に同じように融資をしてくれるかどうかはわかりません。
メインバンクとしての関係を築くには時間もかかるものです。目先の利益ばかりではなく、長い目で利益の大きさをはかりましょう。
事業規模の拡大にともない、もっと大きな銀行とお付き合いをしたい
メインバンクを変えるにあたって「妥当」な理由です。
ただし、あたらしいメインバンクの選び方には注意を要します。次の《注意2》で確認をしましょう。
《注意2》あたらしいメインバンクの選び方
いざ、あたらしいメインバンクに変えるというのなら。その銀行がメインバンクとして妥当かどうか、には気をつけましょう。
あたらしいメインバンクの「選び方」が重要です。ポイントは大きく2つあります ↓
- 自社の身の丈に合っているかどうか
- 銀行の業績、方向性はどうか
これらのポイントを順番に見ていくと、
自社の身の丈に合っているかどうか
端的に言うと。大きい会社は大きい銀行と、小さい会社は小さい銀行と付き合うべき、ということになります。
具体的には、年商(年間の売上高)10億円を超えているなら都市銀行と、年商3億円を超えているなら地方銀行と、それ以下なら信用金庫・信用組合と、が目安です。
目安であって絶対にお付き合いできないわけではありませんし、地域によっては銀行が少なくて選びようがない、ということもあるでしょう。
それはそれとして、「大きい会社は大きい銀行と、小さい会社は小さい銀行と付き合う」との役割分担がある。そういうことです。
したがって、年商数千万円の会社が、都市銀行をメインバンクにしようと考えるのは「ただの無謀」だと言えます。気をつけましょう。
また、いわゆるメガバンクは基本的に中小企業への融資に積極的ではありません。いま現在、メガバンクの興味関心は「海外」にあるので、国内の、しかも中小企業への融資には極めて消極的です。
融資をしたとしても「信用保証協会付き」がほとんどですから、以後のプロパー融資は期待できず、メインバンクと呼べるような関係になることは難しいと覚えておきましょう。
銀行の業績、方向性はどうか
最近のニュースを見ていてもわかるとおり、銀行は生き残りが厳しい時代を迎えています。とくに、地方銀行については「10年後に6割赤字」との試算もあります。
そのなかで、自社があたらしく選んだメインバンクがつぶれてしまう。どこか別の銀行に統合されてしまうとしたらどうでしょう?
その「別の銀行」の方針・姿勢がいままでと変われば、メインバンクを失ってしまうかもしれません。
そう考えると。「将来性」がある銀行をメインバンクに選ぶことも重要です(選べるくらいの数の銀行がある地域に限りますが)。
たとえば。自己資本比率が高い、不良債権比率が低い、預貸率が高い、きちんと配当を出しているなど、「業績」が良い銀行を選ぶ、というのは1つの方法です。
加えてもうひとつ。銀行の「方向性」も確認をしておくとよいでしょう。どのような方針・姿勢で融資をしているか、どのような融資にチカラを入れているか。
具体的には「金融仲介機能のベンチマーク」と呼ばれるものを確認します。
金融仲介機能のベンチマークとは、ひとことで言えば、金融庁が各銀行の取り組みを評価するための指標です。
この指標に対して、各銀行はどのように取り組むか、取り組みの成果はどうかをインターネットなどで公表しています。
あたらしいメインバンクを選ぶときには、いちど見ておくとよいでしょう。
《注意3》元メインバンクほか各銀行への配慮
あたらしいメインバンクに切り替えるにあたり、これまでのメインバンクとの関係性が「悪化」する可能性があります。
元メインバンクの銀行としては「乗り換えられた、裏切られた」との思いが多かれ少なかれあるからですね。
会社側としてはメインバンクではなくなっても、融資を受けることはありえますから、できれば「穏便」にすませたいところではあります。
元メインバンクの反応を見ながら、少しずつ融資残高シェアを変えていく(つまり、新メインバンクからの融資を増やしていく)のがよいでしょう。
これに対して、新メインバンクで元メインバンクからの借入を「一気に借り換える」ような行為は致命的です。
銀行にとって、他の銀行に借り換えられることはたいへんな屈辱だ、という話はよく聞くところ。元メインバンクとの関係性は「悪化」では済まず、「断絶」することを覚悟しておかなければいけません。
なお、メインバンクが変わると、その他の取引銀行が「警戒」するということにも配慮が必要です。
他の銀行からすると、「もしかしてこの会社、メインバンクに見限られたのかな?それくらいヤバい状態なのかな?」と警戒をされてしまう。そういうことです。
警戒をされれば当然、以降の融資は受けづらくなります。必要に応じて、メインバンク変更の理由を説明するなどの配慮をしましょう。
ちなみに。「〇〇銀行の融資条件がいいから借り換えた」との理由だと、それを聞いた他の銀行は「浮気症な会社だなぁ。うちもいつか浮気をされるのかなぁ」と及び腰にもなるものです。
メインバンクはもちろん、銀行とのお付き合いは「中長期的」が前提であることを押さえておくのがよいでしょう。
メインバンクを変えると言うのであれば、中長期的な理由によるべきだということです。
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まとめ
いまあるメインバンクを変える・変えたい、というときもあるでしょう。
会社が銀行融資を考えるうえで、メインバンクの存在は大きなものです。そのメインバンクを変えるのですから、じゅうぶんに注意をしながら進めましょう。
- メインバンクを変える理由
- 新メインバンクの選び方
- 元メインバンクほか各銀行への配慮