また、銀行が書類を出せってうるさくて・・・
そうですね、書類の提出はメンドーですよね。けれども、融資を受けるにあたって、理由もなく求められる書類・資料はありません。
ということで、融資のときに銀行から提出を求められる書類・資料についてを総まとめです。
銀行はなんとかおカネを貸したくて、書類・資料の提出を求めている
会社・個人事業主が銀行から融資を受けようという場合。銀行からは、決算書や税務申告書をはじめ、実にさまざまな書類・資料の提出を求められます。
求められる側としては、その執拗さにウンザリするばかりといったところではありますが。求める側の銀行には、もちろん理由があります。
それは、「おカネを貸してもだいじょうぶかどうか、ちゃんと返してもらえそうかどうか」を見極めるため、審査するため。という理由があります。
もう少し解釈を広げるのであれば、「なんとか貸すことができるように、プラス材料になる書類や資料を探している・そろえようとしている」ということです。
銀行もビジネスとして、貸せるものなら貸したいわけで。審査で落としてやろうというのではなく、審査に耐えうるだけの材料としての書類・資料を探しているのです。
というわけですから、「書類、書類ってうるさいなぁ!」という気持ちはひとまず抑えて。粛々と、必要な書類・資料を提出することが融資への近道です。
それでは、融資のときに銀行から提出を求められる書類・資料について、お話をしていきます。次のようなものが挙げられます ↓
【 融資のときに銀行から提出を求められる書類・資料 】
- 決算書一式
- 月次試算表
- 資金繰り表
- 借入金一覧表
- 経営(改善)計画書
- 担保に関する資料
- 保証人に関する資料
- 会社案内、商品パンフレット、写真
- 受注に関する契約書・請求書
- 設備投資に関する契約書・見積書・請求書
- その他(通帳、役員名簿・株主名簿、納税証明書など)
このあと、順番に説明をしていきます。
決算書一式
銀行が求める書類・資料のなかで、もっとも重要性が高いと言っていいでしょう。その会社・個人事業主の決算書一式(税務申告書含む)です。
提出を求める銀行の意図
- 貸そうとしているおカネに対する返済力をはかる → 決算書のチェック
- 決算書に「粉飾(利益の水増し)」はないかを確認する → 勘定科目内訳明細書(法人税申告書の添付書類)のチェック
- 税金の滞納など、資金繰りに問題はないかを確認する → 法人税別表(法人税申告書の添付書類)のチェック
提出にあたっての注意点
決算書の出来不出来は、融資の可否を左右する大きな要素です。出来がよければ借りやすい、悪ければ借りにくい。そういうことです。
では、その「出来不出来の基準」とは? 大きく3つ、「キャッシュフロー」「債務超過の有無」「債務償還年数」になります。
上記3つの基準について、常日頃から気を配りましょう。自社は基準をクリアできているのかどうか? できていないのであれば、対策を検討し実行することです。
いざ決算書を提出する段階では、もはやなにもすることはできないのですから、常日頃どれだけできるかで決まります。3つの基準について詳しくはこちらの記事を ↓
月次試算表
決算書が、基本1年に1回つくるものであるのに対し、その毎月作成版が「月次試算表」です。というわけですから、決算書に匹敵するほどの重要性が高い書類と言えます。
提出を求める銀行の意図
- 決算後の業績推移を確認する
- 先に提出された決算書に「粉飾(利益の水増し)」がなかったかの検証をする
- 毎月試算表をつくることができる経営管理能力があるかの確認をする
提出にあたっての注意点
決算直後の融資であれば決算書で済みますが、決算後数か月もたっていれば「月次試算表」の提出を求められます。
いくら決算書の内容が良くても、その後に「急落」なんてしていないよね? と不安になるのがおカネを貸す側の銀行です。
このとき、試算表が提出できない(できていない)、あるいは、数か月も前の試算表しか提出できないとなると。「あぁ、経営管理能力が低い会社なのね」と見られます(口に出しては言われません)。
そうなれば、結果として融資は遠のくのであり。融資に対する基本中の基本姿勢として、月次試算表の作成には注力しましょう。試算表について詳しくはこちらの記事を ↓
資金繰り表
決算書や月次試算表からはわからない、「おカネ(現金・預金)の動き」を記録する帳票が「資金繰り表」です。
前述した「月次試算表」と、後述する「借入金一覧表」と、この「資金繰り表」とをあわせて、融資時必携の「3種の神器」と称するほどに重要です。
提出を求める銀行の意図
- なぜおカネが必要なのかを確認する(資金使途)
- どうやっておカネを返済するのかを確認する(返済原資)
- 決算書、月次試算表とのつじつまを検証する
提出にあたっての注意点
はっきり言って。おカネを借りようというときに限らず、資金繰り表は常時備えておくべき必須の書類です。
過去から現在にいたるおカネ(現金・預金)の増減理由を示し、将来にわたるおカネの増減要因を示すことができるのが「資金繰り表」。
決算書や月次試算表をいくら眺めていても、おカネの増減理由や要因を見出すことはできず。利益があるからと言って、おカネがあるとも言えず。
ゆえに、資金繰り表の作成が求められ、銀行は見たがっているのです。
にもかかわらず。資金繰り表をつくらない、つくれない会社は少なくなく。きちんとつくることができるだけでも自社のアピールにつながることでしょう。資金繰り表について詳しくはこちらの記事を ↓
借入金一覧表
自社のいま現在の借入金に関する情報をとりまとめたものが「借入金一覧表」。どの銀行から、どのような条件で、どのくらいの融資を受けているかを一覧にした書類。
月次試算表、資金繰り表とあわせて、融資時必携の「3種の神器」を構成します。
提出を求める銀行の意図
- その会社への融資に対する他の銀行の姿勢や動向を確認する
- 決算書や月次試算表、資金繰り表などとの整合性を確認する
提出にあたっての注意点
銀行は融資をするかどうかにあたり、他の銀行の動きを気にしています。とても気にしています。
他の銀行が融資に積極的であれば、ウチも貸し遅れてはいけないと考え。他の銀行が消極的であれば、ウチもやめたほうがいいかなと考えるところがあるのです。
そこを逆手にとって(というと若干語弊はありますが)、この「借入金一覧表」を融資交渉の材料にするという考え方も持ちましょう。
たとえば。他の銀行が自社にとって良い融資条件でがんばってくれている(金利が安い、など)のであれば、「おたくの銀行もがんばって」というプレッシャーにはなりえます。
ただし、ほんとうにおカネが必要で、本気で借りたときには、あまりプレッシャーをかけ過ぎてはいけません。じゃあ貸さない、と言われたら元も子もないのですから。
借入金一覧表について詳しくはこちらの記事を ↓
経営(改善)計画書
場面によっては、その重要度が一気に上昇するのが「経営(改善)計画書」です。その場面とは、会社・事業の状況が悪いとき。
決算書や月次試算表の内容(過去の実績)が悪いと、借入は難しくなります。過去は過去として、将来を描くことで融資を引き出すために「経営(改善)計画書」は役立ちます。
提出を求める銀行の意図
- 会社が窮状を招いている原因を確認する
- 窮状を脱することができるか否かを、計画書の妥当性で検証する
提出にあたっての注意点
ここしばらく赤字が続いている、債務超過(資産よりも負債が多い)になっている、など。会社の窮状にあっては、通常、融資は難しくなります。
おカネを貸す側としては、返済されないリスクが高まりますので当然です。それでも借りたい、というのであれば。経営(改善)計画書の提出は必須となります。
計画書の中で、現状を分析し、改善していくための施策と道筋を描くのです。なによりも大事なことは、その実現可能性。
いわゆる「画餅(絵に描いた餅)」にならぬよう、効果が高く実行できる施策を挙げ、窮状を脱するまでの過程を数字で示します。
いろいろとコツも必要であることから、作成は難儀であり。ほんとうに危機を脱するためにも、税理士など専門家のチカラの借りどころとも言えるでしょう。
経営(改善)計画書について詳しくはこちらの記事を ↓
担保に関する資料
融資に担保を提供する場合、あるいは、いま現在の担保の状況確認として、資料の提出を求められることがあります。
たとえば、不動産であれば「登記簿謄本」「固定資産税の納税通知書」など、売掛債権であれば取引を確認できる「契約書」など。
提出を求める銀行の意図
- 担保となるものが確かに存在するかの確認
- 担保の価値を検討するための材料集め
提出にあたっての注意点
必ずしも担保が必要なわけではありませんが、あれば貸しやすいのは事実でしょう。
とはいえ、銀行は万一の際の「担保の処分」ばかりを前提に考えているのではなく。担保を提供するという会社・経営者の「覚悟の姿勢」を見ているという側面も理解しておくとよいでしょう。
たとえば。自宅を担保に出せるくらいの覚悟があるのであれば、なんとか融資を検討しよう。とか。
また、「社長個人の資産についても教えてもらえますか?」と言われても。「また担保かいっ!」と腹を立てるのはちょっと早い。
最終的に担保にとるかとらぬかは別として、社長の個人資産も会社の資産と一体と見ることで。「資産じゅうぶん」であるからなんとか融資しようという銀行の心意気の表れであるかもしれず。
どうしても融資を受けたいという局面では、銀行への協力を惜しんではいられません。担保について詳しくはこちらの記事を ↓
保証人に関する資料
融資について保証人が必要である場合、保証人に関する書類を求められる場合があります。
たとえば、本人確認書類(免許証等)、印鑑証明書、住民票、保証人が所有する財産に関する資料など。
提出を求める銀行の意図
- 保証人となる者が確かに存在するかの確認
- 保証人の返済能力を検証するための材料集め
提出にあたっての注意点
保証人に関する話として。中小企業や個人事業者主が、銀行からおカネを借りようというとき。多くの場合、経営者は「連帯保証人」を要求されます。
ただし、考え方は変わりつつあり、経営者の連帯保証という慣行もまた変わりつつある。ということも覚えておくとよいでしょう。保証人について詳しくはこちらの記事を ↓
会社案内、商品パンフレット、写真
銀行が融資を検討するにあたって。その融資先の会社はなにをやっているのか、どういう仕事をしているのか、は大きな関心事です。
会社案内、商品やサービスのパンフレット、工場や製品の写真など。さまざまな書類が考えられます。
提出を求める銀行の意図
- より具体的に融資先のビジネスについて理解したい
- 借りたおカネを返せるだけの有望なビジネスであるかどうかを検証する
提出にあたっての注意点
銀行から求められずとも、できれば積極的に提出して自社をアピールしましょう。こちらが思っているほど、銀行はこちらのビジネスのことをわかっていないことは多いものです。
たとえば、製造業と言っても、何をつくっているかは会社によって異なります。ネジをつくっていると言っても、どんなネジをつくっているのかは会社ごとに違うでしょう。
そういった他社との違いをうまく表現することで、融資の良い材料になることも考えられます。
受注に関する契約書・請求書
売上増に伴う運転資金が借入の理由である場合。その受注に関する契約書・請求書などの提出を求められることがあります。
提出を求める銀行の意図
- ほんとうに売上増が見込めるのか(事実なのか)を確認する
- 資金繰り表などの数字との整合性を確認する
提出にあたっての注意点
銀行は、資金使途(貸したおカネの使いみち)がはっきりしない会社には融資をしません。その延長で、資金使途がたしかであるかの確認・検証もおこないます。
したがって、売上増のケースに限らず。季節ものの大量仕入れが資金使途であれば、その見積書。賞与支給が資金使途であれば、賞与明細の一覧表など。求められる書類は、資金使途に応じて変わりえます。
設備投資に関する契約書・見積書・請求書
さきほどの「受注に関する契約書・請求書」と同じく、資金使途(おカネの使いみち)に関する書類です。
設備投資をするという資金使途である場合には、その設備購入に伴う契約書や見積書、請求書の提出を求められます。
提出を求める銀行の意図
- ほんとうにその設備を買うのか(事実なのか)を確認する
- 資金繰り表などの数字との整合性を確認する
提出にあたっての注意点
数ある資金使途の中でも、設備資金は扱う金額も大きいことから、とくにきびしいチェックを受けます。
もしも、設備資金として融資を受けながら、実は運転資金に使っていました。ということになると、「資金使途違反」として大きなペナルティを被ります。資金使途については、十分な注意が必要です。
資金使途について詳しくはこちらの記事を ↓
その他(通帳、役員名簿・株主名簿、納税証明書など)
その他、状況に応じて、求められる書類・資料があります。
「たとえば」ということで、主なものを下記に列挙します。
提出を求める銀行の意図・提出にあたっての注意点
- 預金通帳 ・・・ 社長個人への不明瞭なおカネの出金などに注意(社長への貸付金を銀行は嫌います)
- 役員名簿・株主名簿 ・・・ 経営者親族の関わり具合を銀行は気にしています
- 納税証明書 ・・・ 税金の滞納有無を確認されます(税金を納めないような会社を銀行は信用しません)
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まとめ
融資のときに銀行から提出を求められる書類・資料についてお話をしてきました。
どのような書類や資料が、どういう意図で提出を求められるのかを知っておくと、銀行との意思疎通がスムーズになります。
また、それぞれの書類・資料の注意点も理解して、融資の実行可能性を高めていくようにしましょう。