なぜスーパーの値引きはOKで、フリーランスの値引きはNGなのか

スーパーの値引き、フリーランスの値引き

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閉店時間前のスーパーの値引き、あれって経営的にだいじょうぶなの・・・?

20%引きや半額など、消費者としてはうれしい反面、他人事ながら心配にもなります。

そんなスーパーの値引きと、フリーランスの値引きについてのお話です。

閉店時間前のスーパーの値引きは「ただしい」

閉店間際のスーパーは、ある種の活気に満ちています。

その活気の源は、生鮮食品や総菜品の値引き販売。「20%引き」や「半額」などのシールが貼られた品にお客さんが集まります。

さて。あなたが、スーパーの生鮮食品や総菜品の売り場を預かるリーダーだとして。

この値引き販売をどう考えますか? ただしい判断なのかどうか。ただしいのであれば、なぜ、ただしいと言えるのか。ちょっと考えてみましょう。

閉店30分前、売れ残り品を見てあなたが考えるべきこと

あなたは、スーパーの鮮魚売り場を任せられたリーダーです。おさかなリーダー。名前はどうでもいい、とにかく責任者です。

時刻は夜8時半。閉店時間の9時まであと30分。

売り場にはまだ相当数の「売れ残り品」が並んでいます。鮮魚ゆえ消費期限も短く、これらを明日に持ち越すことはできません。売り残せば当然に廃棄です。

廃棄になるのがもったいないことはわかる。じゃあ、値引きしてでも売るか。ということもなんとなくわかる。

でもいったい、いくらまで値引きをしてもよいのだろうか・・・? 

おさかなリーダー、もとい、あなたが所持している情報は以下。売れ残り品への対応を考えてみましょう。

  • 売れ残り品ひとつあたり・・・売価 500円、原価(仕入値)350円
  • 売り場家賃・・・月額 150,000円
  • 売り場光熱費・・・月額 100,000円
  • 人件費・・・正社員1名 月額 300,000円、パート2名 時給 1,300円

計算をしているヒマはない、計算をする必要もない

いくらまでなら値引きをしてもだいじょうぶなのか? さきほどの「情報」を見て、電卓を叩いているようではいけません。

アタマを抱えて値決めをしているようでは「だめリーダー」のそしりを免れない。

情報を見るまでもなく、計算をするまでもなく。正解は、「1円以上で売ればよい」です。

もちろん、高く売れるに越したことはありませんが。残り30分で売り切る(廃棄にしない)ためには、いくらまで値下げできるかが勝負。その極限が1円です。

残り時間と売れ残り品の数とを見比べながら、徐々に値を下げ「続けて」いけばいい。あなたは下げ続けることができる。極論1円まで、というのが正解です。

閉店直前のスーパーではすべてのコストが消えてゆく

なぜ1円まで値を下げることができるのか? そりゃもう捨てるよりはマシでしょ、ということではありますが。

「捨てるよりマシ」という倫理観や道徳的なこととは別に、きちんとした理屈があります。経済的に合理的な理由があります。

それは、閉店を間近にしたスーパーでは、すべてのコスト(原価その他の費用)が消えてゆくからです。コストが無くなっていくから、1円以上で売れば1円以上の利益が生まれる。

んな、バカな。コストが消えるわけあるかいっ! と叫びたいところですが、事実、消えます。こういうことです ↓

  • 売れ残り品ひとつあたりの原価(仕入値)350円 → 売れようが売れまいが発生
  • 売り場家賃・・・月額 150,000円 → 売れようが売れまいが発生
  • 売り場光熱費・・・月額 100,000円 → 売れようが売れまいが発生
  • 人件費・・・正社員1名 月額 300,000円、パート2名 時給 1,300円 → 売れようが売れまいが発生

これは、コストが消えてゆくと言うよりは、コストを考える必要がなくなる、ということです。

つまり。閉店直前のスーパーでは、いずれのコスト(原価その他の費用)も「発生が確定」しているので、売れようが売れまいがコストに変化がない。

すでに仕入れてしまった商品の原価は、売れなかったからといってなくなるものでもなし。値引き販売をしたからといって増えるものでもなし。変わらない。

売り場の家賃や光熱費も、商品の売れ行きとは関係なく発生します。人件費もいっしょです。値引きをしてもしなくても発生しますが、追加で増えるものでもない。

売れ残るほどつくってしまって失敗だったなぁ、というのもこの時点ではムダな反省です。それは閉店後、明日の開店前までに考えましょう。

閉店30分前の鮮魚売り場では、あなたがどんな判断をして行動しようともコストに変化がない。いまはそれが大事。

よって、そこから先(閉店30分前から閉店まで)は、たとえ1円でも売り上げた分だけ利益は増えていく。ということになります。

確認・コストが消えたのは閉店直前だったから

ここで、念のため確認をしておきます。

上記のように「コストが消えた」のは、閉店直前のスーパーが前提であったからです。これがオープン時間前であれば、当然に状況は変わります。

きょうはどんな商品をいくつつくろうか、というところが起点になり、コストは変化します。

商品の内容しだいで仕入代金は変わります。商品数に応じて、商品ひとつあたりの家賃・光熱費や人件費も変化します。

コスト全体が変化することで、「いくらで売れば利益が出るか」という原価計算と値決めをしなければいけません。

このように、オープン時間前のスーパーと、閉店直前のスーパーとでは状況が異なることは理解をしておきましょう。

 

で。フリーランスの値引き戦略をどうみるか?

閉店直前のスーパーの値引きについて話をしたところで。ここからはおもむろに、フリーランスの値引きについてを考えてみます。

ちなみにここで言う「フリーランス」とは、スーパーのようなモノ売りではなく、たとえばコンサルタントのようなサービス業をイメージします。

鮮魚の消費期限、サービスの消費期限

繰り返しになりますが、閉店直前のスーパーでは鮮魚の値引き販売は「ただしい判断」でした。

では、本日の営業時間終了直前のコンサルタントが、自身のサービスを値引き販売するのはどうでしょう?

「どうでしょう?」って、おかしいに決まっていますよね。

鮮魚を売り残せば廃棄処分ですが、サービスを売り残しても廃棄にはなりません。鮮魚に消費期限はあっても、サービスに消費期限はありません。

サービスに消費期限が絶対にないかというと、そうではありませんが。あったとしても、鮮魚の消費期限とは比較にならないほど長いものがほとんどです。

そんな「サービス」を値引き販売するのは、スーパーの値引きとは違うよな。ということはわかるでしょう。

営業時間終了直前のコンサルタントが値引き販売をすれば、その先に追加でコストが発生します。

コンサルティングを遂げるための人件費、資料代、調査費用などなど。これらのコストは、鮮魚のときのように消えてはくれません。

値引きをすればするほど、コンサルタントは首の締まる思いをすることになります。

言うまでもないことですが、営業時間開始前にあっても状況は変わりません。値引きをすれば、その分だけ利益が削られていくのがサービス業です。

「安くなければ買わない」と言われるフリーランスにならないために

フリーランス(サービス業)の値引きが利益を削る行為であることはわかった。それでも、戦略的に値引きで売上を伸ばす、という判断もあるでしょう。

たとえ薄利であっても、ゼロよりはよい。そういう考え方です(推奨はしませんが、考え方としてはありえます)。

この場合の注意点は、「安売りイメージが定着する」こと。あの人は値引きをするから、定価で買ってはいけないというイメージを持たれることです。

この点、よく言われる実例として、美容院の「割引クーポン」が挙げられます。

競争激化にともない、顧客争奪の手段として割引クーポンを配る。それも定期的に配る。

結果として、「あの美容院には、割引クーポンがなければ行ーかない」ということになり、定価の存在は薄れていきます。割引後の価格が事実上の定価になります。

口はばったい言い方をすると、値引きはブランド価値を毀損(きそん)する。みたいな。デキる美容院は、ヘタな値引きをしないものです。

このあたりをフリーランスは気を付けて、値引きをしなければいけません。

ブランド価値が毀損するフリーランス、毀損しないスーパー

ところで、スーパーの値引きはブランド価値毀損にはならないのか? 毀損度ゼロではありません。ゼロではないけれど、スーパーはあまり毀損しない。

なぜならば、スーパーの値引きというのは、古くから常用的に広く用いられてきた販売手法だから。いまも昔も、いつもみんなやっているから。

いっぽうで美容院は、コンサルタントは、フリーランスは? スーパーほどに、いつもいつもみんながみんなやっているわけではありません。

だから、値引きをすることで足元を見られ、ブランド価値が毀損する「可能性」がある。

さらに。スーパーと、サービス業たるフリーランスの違いの本質として。スーパーは商品自体に他店と大きな差異がないこと、フリーランスはサービス自体に他者との差異が大きいことが挙げられます。

Aスーパーの鮭とBスーパーの鮭にそれほどの差異はありません。鮭は鮭であることを(味や価格、品質など)みんなが知っています。

いっぽうで、Cコンサルタントの経営コンサルティングとDコンサルタントの経営コンサルティングの差異は? 鮭ほどにみんなは知りません。E美容師とF美容師の差異もよくわからない。

ゆえに、サービスを売る場合。価格の高低が、そのサービス自体のイメージを左右することがあります。

たとえば、同じ「経営コンサルティング」という商品でも、Cコンサルタントは常時10万円、Dコンサルタントは定価10万円のところ値引きで1万円だとしたら。

Dコンサルタントはなんか安すぎない? ほんとうはたいしたコンサルじゃないんじゃなかろうか? というイメージを持たれることもあるでしょう。

値引き戦略もひとつの手段ですが、以上のようなサービス業における値引きの特性を、フリーランスは押さえておく必要があります。

 

まとめ

スーパーの値引きと、フリーランスの値引きの話をしてきました。

スーパーの値引きとは違い、フリーランスの値引きには「難しさ」をともなうというのが結論です。

フリーランスにとって、「値段=サービスの価値」であることを念頭に、値引きやそもそもの値決めについて考えましょう。

安易に価格(値引き)を売るための道具にすると、サービスの価値が傷つきます。

 

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  きょうの執筆後記
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ABOUTこの記事をかいた人

税理士レス経理エバンジェリスト、フリーランス型税理士。1975年生まれ。
フリーランスの経理・会社の銀行融資支援を得意にする、横浜市の諸留誕税理士事務所・所長。2016年4月、18年間の「勤め人」を脱して独立開業。以来、ブログを毎日更新中!