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銀行融資に強い仕訳・弱い仕訳

銀行融資に強い仕訳・弱い仕訳

銀行から融資を受けるにあたって、重要な審査材料といわれる決算書。その決算書のもとになる仕訳について。銀行融資に強い仕訳・銀行融資に弱い仕訳、というお話です。仕訳が融資の可否に影響することはあります。

目次

本質ではないが、無視はできない。

会社が銀行から融資を受ける際、もっとも重要な「審査材料」といわれるのが決算書です。その決算書は日々の経理処理、言い換えると、日々の仕訳がもとになっています。その仕訳のしかたによって、融資の可否に影響があると言ったら驚かれるでしょうか。

同じ取引であったとしても、それをどのように仕訳するかで融資の可否が変わるかもしれない。さらに言えば、最終利益に変わりはないとしても、仕訳によっては融資の可否が変わるかもしれない、ということです。

そういう意味では、銀行融資に強い仕訳もあれば、銀行融資に弱い仕訳もあります。仕訳自体が、融資審査の本質ではありませんが、仕訳が融資審査に影響を与えることはあるのです。おもなものとしてぜんぶで7つ、このあと確認をしていきましょう。

銀行融資に強い仕訳・弱い仕訳

貸付金

会社から、社長などの役員や社員に対して、あるいは関連会社や取引先などに対して、おカネを貸し付けているというケースがあります。このとき、銀行融資に弱い仕訳となるのがこちらです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
長期貸付金×××普通預金×××
銀行融資に弱い仕訳

そもそも、銀行から融資を受けるうえで、貸付金があるのは望ましくありません。銀行が「会社」に貸したはずのおカネが、結果的には「違う人・違う会社」に貸したことになってしまうからです。こうなると、銀行は融資がしづらくなります。

とはいえ、どうしても貸し付けが必要なケースもあるでしょう。そんなときには、こちらが銀行融資に強い仕訳になります↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
1年以内返済長期貸付金×××普通預金×××
長期貸付金×××普通預金×××
銀行融資に強い仕訳

これは貸付金を、1年以内(決算日から見て)に返済してもらう分と、1年を超えて返済してもらう分とに分けるための仕訳です。1年以内の返済分を明確にすることで、返済してもらえる貸付金であることの「意思表示」をします。

これが、前述のような「長期貸付金」だけとなると、いつ返してもらえるのかわからない、もしかしたら返してもらえない貸付金なのではないかと見られやすくなります。すると、銀行は以降の融資を躊躇することを覚えておきましょう。

現金

会社の「現金」について、銀行融資に弱い仕訳がこちらです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
現金×××普通預金×××
銀行融資に弱い仕訳

上記の仕訳の意味合いとしては、「会社の預金口座から現金を引き出しました」というものです。これに関連して、社長がちょっとキャッシュカードで現金を引き出した、というようなケースがあります。

そのあと、なにに使ったかわからなくなる。あるいは、プライベートに使ってしまい、精算ができなくなる。結果、現金が残ってしまう… というのは、意外と「あるある」です。場合によっては、そのような仕訳が繰り返されて、決算書の現金がウン百万円に… という会社も見かけます。

こうなると、銀行が融資を躊躇する理由にもなるところです。言うまでもなく、貸したおカネがなにに使われるかわかならいから、ですね。では、そのようなことにならないように、銀行融資に強い仕訳がこちらです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
仕訳なし
銀行融資に強い仕訳

ここで言う「仕訳なし」とは、そもそも、そのような取引が発生しないようにする、ということです。社長がちょっと現金を引き出したりしない。もっと言えば、会社は「現金」を扱わないようにする。

おカネの入出金は、現金を通さずに預金口座を通すようにすれば、決算書の「現金」が増えることもありません。たとえ、「ウチは現金商売だ!」としても、できるだけ現金の取り扱いを減らす「くふう」が大切です。

役員借入金

社長などの役員から、会社が借入をするケースがあります。この場合、銀行融資に弱い仕訳がこちらです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
預金×××短期借入金×××
銀行融資に弱い仕訳

役員からの借入金のうち、その役員がすぐには返済を求めていないものについては、「資本とみなす」のが銀行の見方です。すぐに返さなくてもよいのだから「資本金(出資)」といっしょだろう、ということになります。

ところが、そのような場合でも「短期借入金」にしていると、銀行は「すぐに返済しなければいけない借入金」と見ますから、「資本とみなす」ことはありません。つまり、負債として見ることになります。

決算書の評価は、負債が多いほど悪くなるので、融資が受けにくくなる点で、融資に弱い仕訳だと言っていいでしょう。そこで、銀行融資に強い仕訳がこちらになります↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
預金×××役員借入金
(固定負債として)
×××
銀行融資に強い仕訳

さきほどの「短期借入金」は、流動負債に位置する勘定科目でした。いっぽうで、こちらの「役員借入金」は、固定負債に位置する勘定科目です。固定負債とすることで、「すぐに返済する必要がない」との意思表示になります。

また、「長期借入金」といった勘定科目ではなく、「役員借入金」として、役員からの借入金であることを明らかにしましょう。役員からの借入金とわからなければ、銀行が資本とみなすことはないからです。

なお、固定負債の役員借入金としていても、実際には返済をしている(役員借入金の金額が減っている)と、当然、銀行が資本とみなすことはありません。

仕入・外注費

会社が商品を仕入れる、あるいは、業務を外注するという場合。銀行融資に弱い仕訳がこちらです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
仕入または外注費×××普通預金×××
銀行融資に弱い仕訳

たとえば、仕入先や外注先から「月末締め・翌月末払い」の請求書を受け取っている場合、実際に支払いをしたときに上記の仕訳をするのは問題があります。仕入や外注費を計上するのは、仕入や外注が発生したとき(≒ 請求書を受け取ったとき)だからです。

もしこのまま決算を迎えると、計上すべき仕入や外注費が漏れることになります。利益が水増しされるという点では、「粉飾決算」となり、銀行からは融資が受けにくくなるところです。そこで、銀行融資に強い仕訳を確認しておきましょう。まずは、仕入や外注が発生したとき↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
仕入または外注費×××買掛金×××
銀行融資に強い仕訳

その後、支払いをしたときの仕訳がこちらです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
買掛金×××普通預金×××
銀行融資に強い仕訳

退職金

会社が、役員や社員に退職金を支払う場合、融資に弱い仕訳がこちらです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
退職金
(販売管理費)
×××普通預金×××
銀行融資に弱い仕訳

中小企業にあっては、役員や社員の退職は「ひんぱん」に起きているというわけでもないでしょう。むしろ、「特別」なできごとだとすれば、退職金は「特別損失」として仕訳をするほうが実態に合っています。

にもかかわらず、販売管理費として仕訳をするとどうなるか? その分だけ、「営業利益」が少なくなります。特別損失とすれば、営業利益が少なくなることはないという点で、融資に強い仕訳がこちらです↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
退職金
(特別損失)
×××普通預金×××
銀行融資に強い仕訳

上記の仕訳をしても、もちろん、最終利益は変わりません。が、営業利益は多くなります。決算書には、いろいろな種類の利益がありますが(売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、税引後利益)、それぞれの利益をできるだけ大きく見せることが大切です。

「見せる」などと言うと、小手先のテクニックのように聞こえるかもしれませんが。より実態に合わせる、というのが適切な表現です。

退職金のほかにも、何年かにいちどの大きな修繕費、特別償却費、事業や店舗の撤退費用、貸倒損失、商品廃棄損など、いろいろな特別損失が考えられます。そういったものを、販売管理費として仕訳をしていなか、気をつけるようにしましょう。

まとめ

銀行から融資を受けるにあたって、重要な審査材料といわれる決算書。その決算書のもとになる仕訳について。銀行融資に強い仕訳・銀行融資に弱い仕訳、というお話をしてきました。仕訳が融資の可否に影響することはあると理解しておきましょう。

銀行融資に強い仕訳・弱い仕訳

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