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会社が銀行にカンタンには担保を預けてはいけない理由

会社が銀行にカンタンには担保を預けてはいけない理由

会社が銀行融資を受けるにあたり、担保を提供するのは1つの方法ですが、会社にとっての不利益があるものです。そこで、カンタンには担保を預けてはいけない理由についてお話をしていきます。

目次

1つの方法ではあるけれど。

会社が銀行から融資を受けるにあたって、担保を提供することは「1つの方法」ではあります。担保を提供することで、融資が受けやすくなったり、融資条件が良くなったり、という効果があるのはたしかです。

が、「カンタンには担保を預けてはいけない」とは考えておく必要があるでしょう。当然ながら、担保を預けることには、会社にとっての不利益があるからです。

その不利益とは、返済できなくなったときに「担保を売却処分されてしまう」ことだけではありません。ほかにもまだ不利益はあるのです。

というわけで、会社が銀行にカンタンには担保を預けてはいけない理由についてお話をしていきます。具体的には次のとおりです↓

会社が銀行にカンタンには担保を預けてはいけない理由
  • 銀行も会社も担保依存になる
  • 担保を外すのが困難になる
  • さいごの砦がなくなる

このあと順番に確認をしていきましょう。

会社が銀行にカンタンには担保を預けてはいけない理由

銀行も会社も担保依存になる

もはやいうまでもありませんが、担保があれば、銀行は「安心・安全」です。仮に担保価値が 5,000万円、融資残高が 5,000万円であれば、その融資については「貸倒リスク(回収不能)」を心配する必要がありません。

その「安心・安全」が行き過ぎると、銀行は「担保さえあれば・担保ありき」の融資しかできなくなる。これが問題です。つまり、担保があれば融資をするけれど、担保がなければ融資をしない。担保価値の範囲内であれば融資をするけれど、それ以上は融資をしない。

ところが、本来、銀行がすべきことは「担保評価」よりも「事業評価」です。融資先の事業を評価して、いうなれば事業を担保に融資をする。これを「目利き」と呼びます。

この点、金融庁は「事業性評価による融資」として、銀行に取り組みを求めているところです。銀行が担保に依存すると、事業性評価による融資が滞ることを理解しておきましょう。会社にとっては、融資を得られる機会が減りますので不利益です。

そう考えると、融資が受けやすくなるからとカンタンに担保を預けてはいけないとわかります。まずは事業性評価が先です。

ただし、銀行が事業性評価に取り組むためには、会社が情報提供をする必要があります。銀行が事業を評価するためには、決算書や試算表などを渡すだけでは不十分だからです。

では、どのような情報提供をすればよいのか? たとえば、自社の商品・サービスについて、現物を見てもらったり体験してもらったり。店舗や工場、事務所などの現場を見てもらったり。ビジネスモデルを図解(商流図)して、説明をしたり。経営計画書を提示して、自社の課題や方向性を銀行と共有したり。時間や手間がかかるし、カンタンなことではないでしょう。

そこで、カンタンに担保を提供してしまう会社があります。繰り返しになりますが、担保を提供すれば、銀行は融資をしてくれるからです。しかしこれは、会社にとっての担保依存にほかなりません。

結果として、事業性評価による融資を、会社みずから放棄していることになります。もったいないハナシです。

さらにいうと、銀行も担保さえあれば融資をしてくれるわけではありません。目利きこそが銀行の本来の特長であり、事業性評価が求められてもいるからです。いまは昔ほど「担保ありき」ではありません。

なので、まずは「返済できるだけの利益が出ていること」が前提です。利益は出ていないけど担保さえあれば… という話は通用しづらくなっていることを覚えておきましょう。担保ありきではなく、利益ありきです。

担保を外すのが困難になる

まずは利益ありき、とはいえ利益が足りなければ担保で補う、ということはあるでしょう。ただそれでも、担保の提供にはくれぐれも慎重に対応しなければいけません。

なぜなら、いちど担保を提供すれば、担保を外すことは困難だからです。これは、銀行の立場で考えればわかることでしょう。銀行にとって、担保は「安心・安全」の材料ですから、そうやすやすと担保を外せるものではありません。

たとえば、不動産担保。多くの場合、銀行は「根抵当権」を設定します。根抵当権であれば、「不特定」の債権を対象にできるからです(ふつうの抵当権は、特定の債権のみを対象にします)。

よって、いまある借入を完済したからといって、自動的に担保が外れるわけではありません。あらたに借入をすれば、それもまた抵当権の対象になってしまいます。銀行にとっては「おいしい状況」ですから、やすやすと担保を外せないのは当然です。

したがって、どうしても担保提供するのであれば、根抵当権ではなく「ふつうの抵当権で」ということも検討するようにしましょう。

また、担保としては「定期預金」も考えられます。しかし、これもいちど担保に提供すれば、外すことは困難です。さらにいえば、担保に提供していなかったとしても、融資を受けている銀行に定期預金をするのは、担保を提供しているのと同じです。

実際に、その定期預金を解約しようとすると、ほぼほぼすべてのケースで、銀行から解約を止められることになります。解約の理由を詰め寄られたり、解約をすれば融資が受けにくくなるといわれたり… あの手この手で解約を止められるはずです。

定期預金を預けて銀行から融資を引き出すのは、得策ではありません。これは、社長個人の定期預金についても同じことです。融資を受けている銀行に預ければ、同じことになります。

ですから、定期預金をするのであれば、融資を受けていない銀行にしましょう。そのうえで、定期預金があることを、融資を受けようとする銀行に情報提供すれば、評価の対象にはなります。ほかの銀行に預けられているとはいえ、いざというときには返済原資になりうるからです。

そういう意味では、不動産も同じだといえます。実際に担保提供はしなくとも、不動産に関する情報を提供するのは1つの方法です。やはり、評価の対象になることがあります。

担保を外すのは困難なのですから、カンタンには担保を預けないこと。預けずに、不動産や定期預金を活かすことを検討しましょう。

さいごの砦がなくなる

冒頭でもふれたとおり、担保を提供することで融資が受けやすくなったり、融資条件が良くなったり、という効果があるのはたしかです。

なので、さいごのさいごは、担保を提供するというのは有効な手段となりえます。いっぽうで、「さいごのさいごまで、担保の提供を温存しておく」という考え方も重要です。

担保を提供しなくても、まだ融資を受けられるのに、カンタンに担保を提供していたのでは「さいごの砦」を失うことになってしまいます。前述したとおり、事業性評価もあるのですから、まずは担保提供を必要としない道を探りましょう。

ちなみに、事業性評価について、必ずしも「いま利益が出ていなければいけない」わけではありません。いま利益が出ているに越したことはありませんが、近い将来に利益が見込まれるのであればそれはそれです。

事業性評価では、「将来性」も対象になります。市場予測や受注見込みを銀行に提示したり、それらをふまえた、利益計画・資金繰り計画を銀行に説明したり。できることはいろいろあります。

なお、事業性評価への取り組み方は、銀行によって「かなり」の差があるのが現状です。ある銀行では積極的でも、ある銀行は消極的。同じ銀行であっても、ある支店では積極的、ある支店では消極的ということもあります。担当者によって変わることもあるでしょう。

なにがいいたいのか、というと。1つの銀行でダメだったからといってあきらめない、ということです。ある銀行では「担保がなければ貸せない」といわれても、別の銀行であれば、担保を提供してなくても融資が受けられることはあります。

そのためにも、ふだんから複数の銀行とお付き合いをしておくのがよいでしょう。なんにせよ、カンタンには担保を提供しないことです。会社にとってのさいごの砦を守りましょう。

まとめ

会社が銀行にカンタンには担保を預けてはいけない理由について、お話をしてきました。担保を提供するのは1つの方法ではありますが、会社にとっての不利益があることを忘れないようにしましょう。

会社が銀行にカンタンには担保を預けてはいけない理由
  • 銀行も会社も担保依存になる
  • 担保を外すのが困難になる
  • さいごの砦がなくなる
会社が銀行にカンタンには担保を預けてはいけない理由

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