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社長は資金繰りの怠慢を他人に押し付けてはいけない

社長は資金繰りの怠慢を他人に押し付けてはいけない

資金繰りについては、「回収は早く、支払いは遅く」と言われますが。それは、資金繰りの怠慢を他人に押し付けているだけではないのか? という注意喚起のお話です。

目次

もっともらしいハナシには気をつけろ。

資金繰りに関して言われることに、「回収は早く、支払いは遅く」があります。

文字どおり、おカネをもらう(回収)のは少しでも早く、おカネを払う(支払)のは少しでも遅く。そうすれば資金繰りは良くなるよね、ということです。

たしかに、もっともらしいハナシではありますが。これを社長が実践しようとするのなら、「資金繰りの怠慢を他人に押し付けている」と言えなくもありません。

仕事とは、「多くの他人」との関係によって成り立っているものですから、そのような押し付けをしていると、関係性を悪くする原因になってしまいます。

でもなぜ、「回収は早く、支払いは遅く」が他人への押し付けだというのか? ではいったい、どのようにして資金繰りを改善すればよいというのか? このあと確認していきましょう。

「回収は早く、支払いは遅く」が他人への押し付けになる理由

回収は早く=売掛金の早期回収・在庫の圧縮

「回収は早く」は、大きく2つに分かれます。「売掛金の早期回収」と「在庫の圧縮」です。

ではまず、売掛金の早期回収から。売掛金とは、売上代金の未回収額をいいます。

たとえば、「月末締め・翌々月入金」という回収条件であれば、「月末締め・翌月入金」にすることで、資金繰りを改善することが可能です。これが、売掛金の「回収は早く」にあたります。

ところが、売掛金の早期回収は「売上先(お客さま)」にとってはツラいことです。言うまでもなく、売上先の資金繰りが悪化するからです。社長が自社の都合を押し付けている、と言えるでしょう。

それでも早期回収を進めれば、次にツラい思いをするのは「社員」です。それぞれの売上先に、回収条件の変更を伝えるのが社員であれば、社員は売上先からの不満にさらされます。

厳しいことを言うようですが、これもまた、社長が社員に押しつけている状況だと言えるでしょう。

いっぽうで、在庫の圧縮とは。これまでは、常時 500万円分の在庫を用意していたところ、300万円分に減らすようなケースです。200万円がおカネになるので、資金繰りが改善します。

ところが、在庫の用意が減ることで「欠品」や「納期遅れ」が起きるのだとすればどうでしょう? これまた、社長が自社の都合を「売上先」に押し付けることになってしまいます。

このとき、欠品や納期遅れの対応に迫られる「社員」もまたタイヘンです。やはり、社長が社員に押しつけている状況だと言えるでしょう。

支払いは遅く=買掛金の支払先延ばし

「支払いは遅く」とは、買掛金の支払先延ばしです。買掛金とは、仕入代金の未払額をいいます。

たとえば、「月末締め・翌月支払」という支払条件であれば、「月末締め・翌々月支払」にすることで、資金繰りを改善することが可能です。これが、買掛金の「支払いは遅く」にあたります。

ところが、買掛金の先延ばしは「仕入先(お客さま)」にとってはツラいことです。仕入先の資金繰りが悪化するからですね。社長が自社の都合を押し付けている、と言えるでしょう。

それでも支払先延ばしを進めれば、次にツラい思いをするのは「社員」です。それぞれの仕入先に、支払条件の変更を伝えるのが社員であれば、社員は仕入先からの不満にさらされます。

これもまた、社長が社員に押しつけている状況であり、前述した売掛金の早期回収と同じことです。

資金繰りの怠慢=できるはずの資金調達をしないこと

というわけで、「回収は早く、支払いは遅く」を実践すると、他人(売上先・仕入先・社員)への押し付けになる、との話をしました。

何を押し付けているのかといえば、冒頭で言ったとおり「資金繰りの怠慢」です。では、資金繰りの怠慢とは? もう少し具体的に言えば、「できるはずの資金調達をしないこと」です。

できるはずの資金調達とは?

では、できるはずの資金調達とは何なのか。ずばり、「経常運転資金分の銀行借入」です。

経常運転資金とは、算式であらわすと「売掛金 + 在庫 ー 買掛金」であり、この分のおカネを銀行から借りることができます。いわゆる「運転資金の借入」です。

だとすれば、どれだけ回収が遅かろうと(売掛金・在庫が多かろうと)、どれだけ支払いが早かろうと(買掛金が少なかろうと)、銀行借入でまかなえることになります。

にもかかわらず、社長が借入の算段もせず、売上先・仕入先・社員に当たっているのだとしたら… それこそが、資金繰りの怠慢ではないのか? という話をしています。

「回収は早く、支払いは遅く」も正しい

では、「回収は早く、支払いは遅く」は誤りなのか? といえば、そういうわけではありません。本質的には(表面的には、ではなく)、正しいと言えます。

なぜなら、売掛金のなかに不良債権があったり、在庫のなかに不良在庫があったりするのはよくないからです。資金繰りが悪化します。そういったことにならないように、早く回収をすべきでしょう。

具体的には、売掛金の未回収を把握して、未回収があればすぐに督促をするとか。在庫の滞留を把握して、余剰分があれば適正在庫まで調整をするとか。

このようなこともせずに、ただただ売掛金の回収条件を早めたり、在庫の圧縮をしようとすることがないように気をつけましょう。「回収は早く」の本質から遠ざかることになってしまいます。

「支払いは遅く」も同じことです。短すぎる支払条件は交渉すべきですが、そうでもないのに、ただただ支払を先延ばししようとするのでは、やはり怠慢の押し付けになってしまいます。

運転資金の借入をしよう

「回収は早く、支払いは遅く」が本質的には正しいことを理解したうえで、社長がすべきことは「銀行借入」です。

前述したとおり「売掛金 + 在庫 ー 買掛金」にあたる金額を、「運転資金」という名目(資金使途)で、銀行から借入することを検討しましょう。

ただし、売掛金のなかに不良債権があったり、在庫のなかに不良在庫があったりすると、その分までは銀行も融資をしてくれません。そういう意味でも、本質的な「回収は早く」に努める必要があります。

運転資金の融資について銀行は、原則、積極的です。会社が事業を続けるためには、運転資金が必要であることを銀行は理解しているから。また、いざとなったら、売掛金・在庫を現金化して返済してもらえるからです。

そうはいっても、赤字が大きい・赤字が続いているようだと、さすがに銀行も融資を躊躇します。社長はあらためて、「利益の必要性」を理解しておきたいところです。

そのうえで、「運転資金は借りやすい」ことを覚えておきましょう。それを忘れて、あるいは知らずに、表面的な「回収は早く、支払いは遅く」に走ってしまう社長はいるものです。

なお、最近では「短期継続融資」という借りかたがあります。端的に言えば、利息の支払いだけで毎月の返済はなく、実質的に「借りっぱなし」の融資です。

これであれば、会社はいっそう資金繰りを安定させることができます。このあたり、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓

まとめ

資金繰りについては、「回収は早く、支払いは遅く」と言われます。が、それを「表面的」に受け取り、そのまま実践してしまうと「資金繰りの怠慢を他人に押し付ける」ことになりかねません。

資金繰りの怠慢とは、「できるはずの資金調達をしないこと」です。できるはずの資金調達とはどういうことなのか? 本記事の内容を押さえておきましょう。

社長は資金繰りの怠慢を他人に押し付けてはいけない

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