銀行からも提示を求められる試算表。では、銀行に好かれる試算表のポイントとは? 融資の受けやすさにも影響するところですから、社長は押さえておきましょう。
好かれるに越したことはない。
社長が、自社の財務状態をタイムリーに把握するためにつくるのが試算表です。
その試算表を、銀行から提示を求められることもあります。銀行もまた、融資先の財務状態をタイムリーに把握したいからです。では、銀行から好かれる試算表とは?
などと言うと。「試算表は、銀行のためにつくるものではない!」とのお叱りを受けることになるのかもしれません。たしかに、試算表はそもそも社長のための書類です。
が、銀行からも提示を求められる以上、好かれるに越したことはないでしょう。だとしたら、銀行に好かれる試算表のポイントを押さえておくに限ります。次のとおりです↓
- 速い
- 黒い
- 正しい
これらのポイントについて、具体的にはどういうことなのか? このあと、順番に確認していきましょう。融資の受けやすさにも影響するところです。
銀行に好かれる試算表のポイント
速い
まずは、速さです。ここで言う「速さ」とは、試算表ができあがるまでの速さであり、前月分の試算表がどれだけ速くできるのか? をいいます。
たとえば、いまが4月で、3月分の試算表が4月3日までにできていれば、速いと言えるでしょう。4月10日までにできていれば、まずまず。20日となれば、ちょっと遅い… みたいな。
速さに明確な基準はないものの、速ければ速いほどいい。速いほど銀行から好かれる、ということは覚えておきましょう。ではなぜ、速いと好かれるのか?
社長が、「最新の財務状態を元に経営判断できるから」です。これがもし、「3月分の試算表ができるのは5月末になります」といったことだと、社長はだいぶ前の財務状態を元に経営判断をしていることになります。
さらには、試算表をつくっていない会社もあるわけで。そうなると、社長は財務状態を知るよしもなく、「勘・経験・度胸」だけで経営判断をしているのか… と、不安になるのが銀行です。
また、銀行に言われてから、あわてて試算表をつくりはじめる会社もあります。すると、提示までには時間がかかるので、やっぱり銀行は不安になるものです。
加えて、あまり時間がかかるようだと、「もしかして、数字に細工をしているのでは(=粉飾をしているのでは)?」との疑いをもたれるきっかけにもなり、融資はいっそう受けにくくなります。
というわけで、銀行から好かれるためには、試算表をつくるのは速ければ速いほどいい、と考えておきましょう。
黒い
続いて、2つめのポイントは「黒い」です。ここで言う「黒い」とは、「黒字」のこと。つまり、利益が出ていることをあらわします。それも、利益が出ているほどいい。真っ黒がいい。
銀行が、融資先の黒字を好むことは、もはや説明の必要はないでしょう。赤字では、貸したおカネを返してもらえるのか、銀行は不安になりますから。赤字となると、融資は受けにくくなります。
また、黒字であったとしても、毎月の返済額に対して黒字の額が不十分だと、やはり銀行は不安になるものです。「税引後利益+減価償却費>返済額」が、安心の基準になることを覚えておきましょう。
なお、「黒い」については、もうひとつ大事なポイントがあります。それは、「断続的な黒字」よりも「連続的な黒字」がよい、ということです。
たとえば、「4月は黒字、5月は赤字、6月は黒字」よりも、「4月から6月まで毎月黒字」のほうが、銀行からは好まれます。考え方としては、決算書の毎期黒字が好まれるのといっしょです。
ところが、決算書の毎期黒字は注意するのに、試算表の毎月黒字には無頓着な社長がいます。試算表は、経理処理のしかたによって、黒字になることもあれば赤字になることはあるものです。
たとえば、保険料の年払い。支払った月に全額費用にすることで、その月が赤字になることはあるでしょう。でも、毎月にあん分して費用にすれば、支払った月も黒字になることがあります。
銀行に試算表を提示する場合には、そのあたりにも気をつけましょう。銀行はいつだって、「黒い」試算表を好むことを忘れてはいけません。
正しい
銀行が「黒い」を好むからといって、無理矢理、黒にするのはいけません。たとえば、減価償却費。本来は、毎月、減価償却費を計上するのが正しい経理処理です。
ところが、それだと毎月の試算表が赤字になってしまうので、毎月の減価償却費は計上せずに、本決算のときにまとめて1年分を計上する会社があります。
このような試算表・決算書を見た銀行はなにをおもうのか? それは「この会社の試算表は信用できない」ということです。そうなると、以後、銀行からは試算表を信用してもらえません。当然、融資は受けにくくなります。
ですから、黒字にするために、正しさを犠牲にすることがないようにしましょう。銀行は、「正しい」試算表を好みます。正しくない試算表は、黒くない試算表よりも嫌われます。
なお、社長に「悪意」や「自覚」はなくとも、正しくない試算表が散見されるので注意が必要です。
たとえば、毎月棚卸をしていないとか、売上を現金主義で経理している(売掛金の勘定科目を使っていない)とか、買掛金や未払金などを計上していないとか。
これらは、無理矢理に黒字にしようという意図はなく、単純にメンドーだからとか、正しい経理処理を知らないからといった状況で起こります。
結果として、社長には悪意や自覚がないのに、銀行からは「正しくない試算表」と見られて嫌われているケースはあるものです。必要があれば、顧問税理士とも相談をしながら、正しい試算表づくりにつとめましょう。
正しい試算表でなければ、社長もまた経営判断を間違えることになります。
まとめ
銀行からも提示を求められる試算表。では、銀行に好かれる試算表のポイントとは? 融資の受けやすさにも影響するところですから、社長は押さえておきましょう。
- 速い
- 黒い
- 正しい