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他行を引き合いに出して銀行交渉するときの注意点

他行を引き合いに出して銀行交渉するときの注意点

他行を引き合いに出して銀行交渉をするのは、有効な銀行対応の1つです。ただし、場合によっては、銀行との関係性を壊してしまうことがあるので気をつけましょう、というお話です。

目次

場合によっては、銀行との関係性が壊れる。

会社が複数の銀行と取引(融資を受けている)をしている場合、他行を引き合いに出して銀行交渉をするのは、有効な銀行対応の1つの方法です。

たとえば、A銀行から金利1%で融資提案をされた場合、その提案内容をB銀行に伝えることで、B銀行からも提案をしてもらうようにはたらきかける。あわよくば、A銀行よりもさらに低い金利で融資提案をしてもらおう、といった具合です。

うまくいけば金利が下がり、会社にとっては良い方法にもおもえますが。場合によっては、銀行との関係性が壊れてしまうことがあるので気をつけましょう。

というわけで、他行を引き合いに出して銀行交渉するときの注意点がこちらです↓

他行を引き合いに出して銀行交渉するときの注意点
  • 提案書をもらっておく
  • 経済合理性を理由にする
  • 恩義を示しつつ交渉する
  • それでもダメなら今回は

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

他行を引き合いに出して銀行交渉するときの注意点

提案書をもらっておく

冒頭の例で言えば、A銀行から金利1%で融資提案をされたときには、A銀行から「提案書」をもらうようにしましょう。つまり、「文書」として提案してもらう、ということです。

これは、B銀行に話をするときの「証拠」になります。もちろん、提案書がなくても、口頭でB銀行に話をすることはできるわけですが、銀行からすれば「疑わしさ」もあるでしょう。

この点で、文書があれば、その疑わしさを解消するのに役立ちます。たしかに、A銀行から金利1%で提案されていることの証拠になるからです。となると、A銀行もより真剣に検討をしてくれるようになります。

とはいえ、A銀行がはじめから提案書を用意しているとは限りません。口頭だけで提案をしてくることもあります。そのときには、「提案書(文書)にしてもらえますか」と伝えましょう。

しいて付け加えるのであれば、「ほかの役員や顧問税理士にも話をしたいので」といったところでしょうか。銀行から「なぜ提案書が必要なのか」と聞かれたときなどには、そのように伝えます。

このとき気をつけたいのは、「ほかの役員」や「顧問税理士」に決定権があるような言い方はしないことです。借入について、社長に判断の自信がなかったり、権力がなかったりで、社長自信で決定ができないとすれば、銀行からすれば「心配」になってしまいます。

結果として、融資が受けにくくなることがあるため、決定権は社長にある点は疑われないようにしましょう。ほかの役員や顧問税理士は、あくまで伝達をするだけ、ということになります。

経済合理性を理由にする

B銀行に、A銀行の融資提案を伝えたところ、B銀行からはさらによい融資提案をもらえたとします。そこで、B銀行から融資を受けることにする、というのは1つの方法です。

ただし、ここでも注意点があります。それは、A銀行との関係性です。A銀行としては提案をしているわけですから、融資を断れれば良い気はしません。B銀行から融資を受けたことがわかれば、なおさらでしょう。

ひとまず、B銀行から融資を受けたことを黙ってはおけますが、いずれはわかってしまいます(税務申告がおわって決算書を渡したとき、など)。A銀行とは、多少関係性が悪くなってもかまわない、というのならそれはそれですが。

関係性が悪くなるのは困る! というのであれば、対応に気をつけなければいけません。そこでまずは、「経済合理性を理由に交渉する」ようにしましょう。

具体的には、「B銀行からもこのような提案をもらいました(B銀行の提案書を見せる)。会社としては、融資条件が良い提案を選択せざるをえないので、B銀行からの提案を受けようと考えています」と、A銀行に伝えます。

このときの「融資条件が良い提案を選択」というのが、経済合理性です。経済合理性とは、端的に言えば「もうかるほうを選びます」ということです。会社は、利益が目的なのですから、おかしなハナシではありません。

言い換えると、「A銀行がB銀行よりも良い融資条件を提示してくれれば、そちらを選んだのに」ということであり、「ウチは悪いことはしていないんだからね」という念押しでもあります。

とはいえ、それはこちらの言い分です。A銀行としては「裏切られた(先に提案したのはこっちなのに!)」というのが正直な思いでしょう。では、どうするか?

恩義を示しつつ交渉する

さきほど、A銀行への伝え方について話をしました。再掲すると、「会社としては、融資条件が良い提案を選択せざるをえないので、B銀行からの提案を受けようと考えています」という伝え方です。

今後もA銀行とは、できるだけ良好な関係を維持したいのであれば(A銀行がメインバンクである場合はとくに)、次のような言葉を付け加えるとよいでしょう↓

「とはいえ、当社としては、これまでの御行とのお付き合いも大事にしたいと考えています。もういちど、ご提案内容を検討してもらえませんか?」

というように、「できればA銀行から融資を受けたいんです」というフンイキを伝えるわけです。A銀行が「貸したい」と考えれば、もういちど検討してくれるでしょう。

そういう意味では、A銀行が自社のことをどう考えているかがわかる場面でもあります。そのうえで、A銀行がまったく検討もしてくれないのであれば、そもそもの関係性に問題があるのかもしれません。

そのときは、B銀行の提案を受け入れるということでよいでしょう。悩ましいのは、A銀行が再検討はしてくれたのだけれど、結局はB銀行のほうが良い提案だった場合です。

どちらを取るか(A銀行との関係性、B銀行の経済合理性)はケースバイケースですが、もし、B銀行を選ぶというのであれば、できるだけA銀行との関係性を壊さないような伝え方をしましょう。その伝え方とは?

それでもダメなら今回は

A銀行が再検討してくれたものの、やっぱりB銀行の提案内容が良いので、そちらを採用したいという場合。どうしたら、A銀行との関係性をできるだけ悪くしないようにできるのか?

1つの方法が、「今回は」という伝え方をすることです。もう少し具体的にいうと、「今回は、B銀行の提案を受け入れますが、次回は、はじめから御行(A銀行)からの融資をお願いします」というような。

要は、「今回だけはすみません」との趣旨です。こちらとしては、いきなりB銀行に決めたわけではなく、A銀行にも再検討の機会を提供はしました。だとすれば、「最低限の義理は果たした」のですから、「今回だけは」ということで勘弁してもらいたいところです。

もちろん、それをどう受け取るかはA銀行しだいであり、結局は、関係性を壊すことになるのかもしれません。だからこそ、他行を引き合いに出しての銀行交渉は「慎重」に、というのが大事なポイントでもあります。

あまり頻繁に、他行を引き合いに出した銀行交渉を続けていると、取引銀行みなから嫌われしまう… というのもありうるハナシです。お付き合いできる銀行がなくなってしまったら、元も子もありませんので気をつけましょう。

まとめ

他行を引き合いに出して銀行交渉をするのは、有効な銀行対応の1つです。ただし、場合によっては、銀行との関係性を壊してしまうことがあるので気をつけましょう。

銀行対応においては、その場限りで、良い融資条件を引き出せればよい、というわけではありません。中長期の視点で、銀行との関係性まで考えるようにしましょう。

    他行を引き合いに出して銀行交渉するときの注意点
    • 提案書をもらっておく
    • 経済合理性を理由にする
    • 恩義を示しつつ交渉する
    • それでもダメなら今回は
他行を引き合いに出して銀行交渉するときの注意点

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