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経営者保証の説明を受けたときに社長も記録をしておくべきこと

経営者保証の説明を受けたときに社長も記録をしておくべきこと

2023年4月以降、経営者保証の説明義務化がはじまっています。銀行が説明内容を記録しているのとは別に、社長もまた記録を残しましょう。その理由と、記録すべき内容についてお話をします。

目次

のんきにしているようではいけない。

会社の銀行融資について。2023年4月以降、経営者保証の説明義務化がはじまっています。つまり、会社が銀行から融資を受けるときに、社長が連帯保証を求められる場合には、銀行に説明義務が生じるようになった、ということです。

この点、銀行は「説明記録」を残さなければいけないものとされています(記録の様式は、各銀行の任意)。金融庁に対して記録件数の報告をしなければならず、求めがあれば、記録の内容を見せる必要もあるのです。

これを聞いて、「銀行もタイヘンだよねー」とのんきにしているようではいけません。銀行から経営者保証に関する説明を受けたときには、社長もまた、記録を残しておくことをおすすめします。

言うまでもありませんが、銀行が「正確な記録」を残しているかはわからず(故意や悪意がないにしても)、担当者の異動があったりすれば、うやむやになってしまうこともあるでしょう。

とはいえ、なにを記録しておけばよいのか? おもなものは、次のとおりです↓

経営者保証の説明を受けたときに社長も記録をしておくべきこと
  • 金額的な根拠
  • 応諾のやりとり
  • 保証解除の条件

社長にとって、経営者保証はなければないほうがよいものです。説明義務化による「メリット」をえられるようにするためにも、記録を残していきましょう。このあと、くわしく解説します。

経営者保証の説明を受けたときに社長も記録をしておくべきこと

金額的な根拠

銀行が融資先に経営者保証を求める場合、「(経営者保証の)金額的な根拠」をもって示すものとされています。たとえば、税引後利益 500万円、減価償却費 100万円の会社があったとして。

この会社の年間返済力は「税引後利益 500万円 + 減価償却費 100万円 = 600万円」です。これを「簡易キャッシュフロー」と呼びます。「利益 = 返済力」が銀行の見方です。

では、この会社の既存借入が 6,000万円、あらたに返済期間5年で 3,000万円の借入を検討しているとしたらどうでしょう。いわゆる「債務償還年数」は「(6,000万円 + 3,000万円)÷ 600万円 = 15年」となります。つまり、完済に 15年かかるということです。

すると、あらたに借りたい 3,000万円を1年で返せる金額は 200万円だと考えられます(3,000万円 ÷ 15年)。返済期間は5年ですから、そのあいだに返せる金額は 1,000万円(200万円 × 5年)なので、2,000万円が不足する… というのが銀行の見方です。

そのうえで、この 2,000万円については、物的担保(不動産とか定期預金とか)を差し入れてもらうか、それができないのであれば、経営者保証を付けてもらう、と考えることになります。

というように、いまの例であれば「2,000万円(と、その説明)」が、金額的な根拠です。社長は、この説明を受けて、内容を理解して、記録に残すようにしましょう。

まずは、経営者保証が必要なのか・必要ないのか。必要なのであれば、「いくら」の経営者保証が必要なのか、妥当なのか。必要がない部分にまで、経営者保証をとられているケースもあるので注意です。

応諾のやりとり

前述した「金額的な根拠」をはじめ、銀行の説明に疑問があれば、社長はそれを伝えるようにしましょう。そのうえで、「社長が質問をした内容」と「銀行の回答」とを記録に残します。

また、銀行の回答について、「納得ができないこと(心情的な話ではなく、合理的・論理的な話として)」があれば、きちんと意思表示をすることも大切です。

疑問があるにもかかわらず黙っていると、銀行は「社長はすべて納得のうえで、経営者保証に応諾した」などと記録をすることになります。こうなると、あとで反論するのは困難です。

なので、疑問があるのなら「はっきりと質問」をする。その旨を、社長自身が記録に残すようにしましょう。この点、記録は銀行担当者の目の前でとる(ノートに書き書きする)のがおすすめです。

社長が、目の前のやりとりを記録に残していることが銀行担当者に伝われば、銀行担当者のほうも「あいまいな記録は残せないぞ…」と考えることになります。

いっぽうで、記録をとっているのは銀行側だけとなると、あとになって「言った言わないの事態」になっても、銀行から「だって記録にはそう残っています」と言われておしまいです。

したがって、社長もまた、銀行の説明についてはその場で記録をとり、銀行に対して「牽制」をかける。そのうえで、将来、「言った言わないの事態」になってしまったときでも、じぶんの記録を見せられるようにしておくのがよいでしょう。

保証解除の条件

いましがた、「言った言わないの事態」という話をしました。具体的に、どういう事態なのか? 最たるものは「保証解除の条件」です。

たとえば、今回の融資では、経営者保証を解除することができなかったとして。この場合、銀行は「どうすれば経営者保証を解除できるのか(保証解除の条件)」についても説明するものとされています。

前述した「金額的な根拠」などは、その1つです。借入額に対して、どれくらいの利益(簡易キャッシュフロー)が必要か、というのは「保証解除の条件」にあたります。

また、ほかにも「会社から社長に対する貸付金があるので、それがなくなれば」といったことも、保証解除の条件にあたるものです。ちなみに、貸付金があると、銀行は「会社に貸したおカネが社長に流れてしまう」と考えるため、経営者保証を外しにくくなります。

というように、保証解除の条件についても、社長は記録を残しましょう。そのうえで改善につとめ、条件をクリアできるようになったところで、ふたたび銀行と交渉をすることになります。

このときに記録がないと、銀行から「そんな話(保証解除の条件)はしていない」と言われる可能性もありますので、やはり記録は大切です。

なお、ある銀行での「保証解除の条件」は、別の銀行での保証解除の場面でも役立ちます。保証解除の条件は、銀行ごとに異なるものではあるものの、いずれの銀行も他行の動向は気になるものです。

なので、A銀行が「〇〇を保証解除の条件にしている」ということになれば、それを聞いたB銀行も、〇〇による保証解除の「検討をせざるをえない」ということはあります。

ですから、社長はA銀行での記録を活かして、B銀行に保証解除の交渉をすることもできるわけです。

まとめ

2023年4月以降、経営者保証の説明義務化がはじまっています。銀行が説明内容を記録しているのとは別に、社長もまた記録を残しましょう。その理由と、記録すべき内容についてお話をしました。

社長にとって、経営者保証はなければないほうがよいものです。説明義務化による「メリット」をえられるようにするためにも、記録を残していきましょう。

    経営者保証の説明を受けたときに社長も記録をしておくべきこと
    • 金額的な根拠
    • 応諾のやりとり
    • 保証解除の条件
経営者保証の説明を受けたときに社長も記録をしておくべきこと

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