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黒字の会社にこそ勧めたい財務の打ち手3選

黒字の会社にこそ勧めたい財務の打ち手3選

財務改善というと、赤字のときに取り組むイメージがありますが。それは、「凡手」というものです。というわけで、黒字の会社にこそ勧めたい財務の打ち手について、お話をしていきます。

目次

赤字だから財務改善、は凡手。

財務改善、という言葉がありますが。ややもすると、「事業の状況が悪いとき」に取り組むのが財務改善である、との理解があるようです。事業の状況が悪いときとは、たとえば「赤字のとき」みたいな。

たしかに、それも財務改善ではあるものの、わたしは「黒字のとき」にこそ財務改善を勧める派です。なぜなら、黒字のときにしかできないこと、黒字のときだからやりやすいことがあるから。

では、財務改善として、具体的な打ち手にはどのようなものがあるのか?おもには3つ、次のとおりです↓

黒字の会社にこそ勧めたい財務の打ち手3選
  • 銀行借入をする
  • 値上げをする
  • 費用を先取りする

これらの打ち手について、なぜ黒字のときがよいのか、どういった効果が見込めるのかなどを、このあと解説していきます。のちの資金繰りに大きな差が出るところです。押さえておきましょう。

黒字の会社にこそ勧めたい財務の打ち手3選

銀行借入をする

黒字のときこそ、銀行から借入しましょう。というのは、多くの社長にとって、ちっとも響かない助言のようです。黒字で調子がよいのに、おカネを借りる必要なんてなかろう?多くの社長が、そのように考えます。

いっぽうで、銀行は黒字の会社にこそ貸したいので(安全に回収できる可能性が高いから)、「借りませんか?」と営業をかけたりもするわけですが、社長は「要らない、要らない」と断ってしまう、というのは「あるある」です。

この点、銀行は「貸したい」のですから、借りやすい状況なのであって、だとしたら借りることをおすすめします。利息がもったいない?黒字であれば、利息は実質ディスカウントがあることを理解しておきましょう。

ご存知のとおり、利息は費用です。費用が増えれば利益が減って、納める税金も減ります。その「減った税金」分が、ディスカウントです。

法人税率が30%、銀行の金利が2%だとしたら。実質、1.4%の金利で借りられることになります(2%ー2%×30%)。これは、かなりお得だとおもいませんか?というハナシです。

そのうえ、借入をすることで、預金残高を増やせるのですから、さらにお得だといえます。預金残高が多ければ、不測の事態に備えられるし、新規事業をはじめる原資にすることも可能です。

これに対して、赤字になってから借入をしようとしても、カンタンには借りられず。赤字で税金もないので、ディスカウント効果も得られず。つぶれる可能性が高まるのは問題です。

なお、黒字のときに借入をすると、銀行に対して「融資条件の交渉」がしやすくなる、というメリットもあります。銀行は黒字の会社にこそ貸したいのですから、交渉にも応じてもらいやすくなるものです。

融資条件(融資金額、返済期間、金利、担保・保証など)が良くなれば、資金繰りも良くなるので、いっそう財務改善が進みます。文字どおりの好循環です。

値上げをする

けして少なくはない社長が、「値上げ」を苦手としています。人のよい社長ほど、お客さまのことを考えて「できるだけ売値を据え置こう」とするものです。

ところが、「必要な値上げをしない」のは、悪手になることを理解しておきましょう。たとえば、仕入値が上がっている(原価が増えている)のに、値上げをしないとどうなるか?

言うまでもなく、利益が減ります。利益を増やすのが、会社の「目的」なのですから、あきらかに悪手だとわかります。だったら、企業努力で吸収すればいいだろう?というのも問題です。

たしかに、1回限りの原価増や、わずかな額の原価増であれば、企業努力でもなんとかなるでしょう。ところが、現在のように、度重なる原価増や、多額の原価増となればそうもいきません。

それでもなお、売値を据え置こうとするとどうなるか?必ず、品質の低下をともなうことになります。モノであれば、原材料の質を落としたり、サービスであれば、人の数を減らしたり。

結果として、商品の品質が下がり、いままで売れていたものも売れなくなってしまう…これは、何としても避けなければいけません。だから、必要な値上げはしなくてはいけないのです。

とはいえ、値上げには「客離れ」の恐怖をともないます。実際、多かれ少なかれ客離れはあるでしょう。この点、黒字のときであれば、赤字のときよりも恐怖がやわらぐはずです。

なので、黒字のときこそ積極的に、値上げを検討しましょう。

ちなみに、値上げをする場合の客離れを、過度に恐れる必要はありません。値上げをした分の利益で、客離れによって減る利益を補えるものだからです。場合によっては、プラスにさえなります。

費用を先取りする

黒字がじゅうぶんに出ているのであれば、費用の先取りもおすすめです。将来の費用を、いま先取りすることで、将来の黒字を確保しやすくなります。

ではなぜ、将来の黒字を確保する必要があるのか?銀行からの借入がしやすくなるからです。銀行が、黒字を好むことはご存知でしょう。黒字が続くのは、もっと好むのが銀行です。

たとえば、「今期は500万円の黒字、翌期は300万円の赤字」よりも、「今期は100万円の黒字、来期も100万円の黒字」のほうがよい、ということになります(どちらも、2期累計で200万円の黒字)。

なので、黒字のときには、費用を先取りすることで、翌期も黒字にできる可能性を高めることを検討してみましょう。では、費用の先取りとは、具体的にどういった方法があるのか?

たとえば、減価償却があります。税法には、「法定耐用年数」というものがあって、ほとんどの会社が、その法定耐用年数によって、減価償却費を計算していることでしょう。

ところが、「法定耐用年数は6年でも、実際には3年しかもたない」というようなケースもあるわけです。だとすれば、3年を耐用年数として減価償却費を計算することもできます。

すると、減価償却費の額が大きくなるため、将来の費用を先取りすることになるわけです。ただし、法定耐用年数による減価償却費を超えた分については、税金計算上の費用にはなりません。このあたりは、顧問税理士に相談をするのがよいでしょう。

また、含み損を抱えている資産を売却するのも、費用の先取りにあたります。遊休不動産を処分するとか、塩漬けになっている有価証券を処分するとか、陳腐化した在庫商品を処分するとか。

というように、費用を先取りすることで、将来の黒字を確保しやすくなります。加えて、いま現在の黒字に自信があることをアピールもできる点でも、銀行の印象を良くすることにもなるでしょう。

まとめ

財務改善というと、赤字のときに取り組むイメージがありますが。それは、「凡手」というものです。というわけで、黒字の会社にこそ勧めたい財務の打ち手について、お話ししてきました。

黒字のときに財務改善できるかどうかで、のちの資金繰りに大きな差が出るものです。本記事で挙げた打ち手を、ぜひ押さえておきましょう。

黒字の会社にこそ勧めたい財務の打ち手3選
  • 銀行借入をする
  • 値上げをする
  • 費用を先取りする
黒字の会社にこそ勧めたい財務の打ち手3選

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