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粗利(売上総利益)を増やす方法と順序

粗利(売上総利益)を増やす方法と順序

税引後利益を増やしましょう、というハナシがあります。その税引後利益を増やすのに必要なのが粗利(売上総利益)です。では、その粗利を増やす順序と方法は?というお話をしていきます。

目次

方法も大事だが、順序も大事。

会社の決算書について、「税引後利益」を増やしましょう、というハナシがあります。これは、単純に「会社の目的」が利益だから、という理由が1つ。もう1つは、税引後利益があってはじめて、決算書の内容は良くなる(純資産が増える)から、という理由が1つです。

では、その税引後利益を増やすためにはどうしたらよいか?税引後利益の「源泉」となる「粗利(売上総利益)」を増やすことです。粗利がなければ、税引後利益もありません。

というわけで、本記事では、粗利を増やす方法についてまとめてみます。方法は複数あるものの、順序も大切です。どの方法から手をつけるべきかを誤ると、その後の事業に支障をきたします。

では、粗利を増やす方法と順序について、さっそく話をはじめていきましょう。

まずは固定費に手を付ける

粗利の話をはじめる前に、「税引後利益を増やす方法」を確認しておきます。その方法は3つであり、具体的には次のとおりです↓

税引後利益を増やす方法
  • 売上を増やす
  • 原価率を下げる
  • 固定費を減らす

このうち、「売上を増やす」と「原価率を下げる」が、粗利を増やす方法にあたります。

それはそれとして、冒頭、「税引後利益を増やしましょう」というハナシがある、と前述しました。最終的に、税引後利益を増やせばよいのであれば、固定費を下げる方法もあるわけです。

が、「安易な固定費の削減」には注意しなければいけません。世の中では、とかく「コストカット」が叫ばれます。利益を出そうというハナシになると、コスト削減!が先に出る。

とはいえ、固定費は売上をつくるための必要コストでもあります。たとえば、人件費は最たるものです。ほかにも、仕事をするための道具を買ったときの消耗品費、電気代などの水道光熱費など。

人件費を安易に削れば、社員がやる気を失います。消耗品費を安易に削れば、古い道具を使い続けることで生産性が上がりません。オフィスの電気を消して回るのは、労力がいるし、気持ちを暗くします。

なので、固定費は本来、削減するよりもまず「効率的に利用する」のがセオリーです。たとえば、人件費はそのままに、働きやすい環境・道具を備えて、生産性を上げればよいでしょう。売上は増えます。オフィスの電気を消して回ることに替えて、利益を増やせる行動だってあるはずです。

ただし、「単純にムダ」という固定費については、真っ先に手を付ける必要があります。有名なハナシとして、同じ会社内で、同じ手袋を買うのに、ある部署では5ドルで買っていて、別の部署では10ドルで買っていた…なんてことはあるものです。さすがに、見逃すわけにはいきません。

いよいよ粗利に手を付ける

単純にムダな固定費を削減してもなお、税引後利益を増やそうというのであれば、いよいよ粗利に手を付けなければいけません。

まず先に固定費に手を付けたことには、単純にムダがあること以外に、もう1つ理由があります。粗利に手を付けるということは、誰かしらの「第三者に犠牲をしいる」ことになるからです。

そのあたりもふまえて、3つの方法と順序を確認していきます。前述した「税引後利益を増やす方法」のうち、「売上を増やす」「原価率を下げる」にあたる方法です。

順序1・値上げ

まずは、値上げを検討します。売値を上げるということです。いまはとくに、原材料高騰や人件費高騰の背景がありますから、それらの価格転嫁も含めて、値上げの検討は欠かせません。

ところが、人が好い社長ほど値上げができないのは「あるある」です。値上げをすれば、お客さまに迷惑がかかる。そう、「お客さま」という第三者に犠牲をしいることになります。

とはいえ、値上げをせずに、結局、会社がつぶれてしまうのではもっと迷惑をかけることになるわけで。必要な値上げは、自社を守り、お客さまを守ることにもつながります。

また、値上げをすると客離れが心配だ…という社長もいるでしょう。ところが、少々の客離れがあっても、値上げした分の利益で、客数が減った分の利益を補えるケースは少なくありません。

さらには、値上げをしたことで必要販売数量が減り、営業時間を削減できるのだとすれば、固定費の削減にもつながり、いっそうの利益増加を見込めるのもメリットです。

中小企業の社長は、周囲(とくに大企業)の価格を意識しすぎて、価格を低く決めすぎる傾向があります(低価格を据え置くことも含めて)。

大企業と、価格競争をしても勝てないことはあきらかです。低価格戦略は、大資本があるからこそ成り立つ戦略なのであり、資本力で劣る中小企業がとるべき戦略ではありません。

価格で売るのではなく、価値で売るのが中小企業の戦略です。

順序2・付加価値アップ

価値で売るとは、付加価値を上げるということです。ただ、付加価値を上げる以前に、値上げは検討しましょう。繰り返しになりますが、「そもそも安すぎる」ことがあるからです。

そのうえで、さらなる値上げもできるように、付加価値アップに取り組みます。具体的には、既存商品の改善、アフターフォローの充実、新商品の開発などです。

とはいえ、それらに取り組むのには、おカネや時間がかかるじゃないか?と、おもわれるかもしれません。そのとおりです。だから、先に値上げをしましょう、とも言いました。

もともと安すぎるところ、値上げをすれば、必要販売数量が減ります。営業時間を削減できれば、固定費の削減につながる、と前述しました。

これは、営業時間が減った分、人を減らしましょう、というハナシではありません。営業時間が減った分、付加価値を上げる時間に充てましょう、というハナシです。

また、値上げをすることで、値上げ前よりも粗利が増えるのは、けして珍しいことではありません。そもそも安すぎる値決めをしている場合、少々値上げをしたところで客離れはないものです。

すると、客数は変わらずに値上げをするのですから、利益は値上げ前よりも増えます。増えた利益を原資に、付加価値アップに取り組むこともできるでしょう。

というように、「値上げ→付加価値アップ」の順序であれば、付加価値アップにも取り組みやすくなります。いっぽうで、その順序が逆になると、取り組みづらくなることを覚えてきましょう。

順序3・相見積もり

さいごに、相見積もりの検討です。仕入先や外注先に、値下げをしいるということであり、「第三者に犠牲をしいる」ことなので、順序としてはさいごになります。

この点、「そもそも高すぎる」というケースはあるものです。長いあいだ、相見積もりもとらずに、特定の仕入先・外注先と取引を続けている会社があります。やはり、人が好い社長ほど、気をつけたいところです。

その場合には、実は、相場よりもだいぶ高く支払っている…となるわけです。であれば、相見積もりをすることで、仕入先や外注先に値下げを求めることになっても、「犠牲をしいる」とまではいえないでしょう。

いっぽうで、相見積もりをしまくって、強烈に値下げを迫るような行為はおすすめできません。結果として、犠牲をしいることになり、加えて、商品の「品質低下」を招くことになるからです。

たとえば、いままで1本100円で仕入れていたものを、1本95円で、90円で…と、値下げを迫り続ければ、相手は品質を落として価格を下げようとする可能性があります。

また、相手がこちらの希望価格に応えてくれないのなら、別の仕入先・外注先に変更することもできるわけですが、従来の仕入先・外注先よりも、品質が悪くなることはあるでしょう。

そうなると、いずれお客さまにも見抜かれて、商品が売れなくなってしまいます。相見積もりのしすぎには、くれぐれも気をつけましょう。

まとめ

税引後利益を増やしましょう、というハナシがあります。その税引後利益を増やすのに必要なのが粗利(売上総利益)です。では、その粗利を増やす順序と方法は?というお話をしてきました。

どの方法から手をつけるべきかを誤ると、その後の事業に支障をきたすことを理解しておきましょう。

粗利(売上総利益)を増やす方法と順序

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