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銀行によって融資の可否が違うなぜ

銀行によって融資の可否が違うなぜ

銀行は、どこも同じように見えて、実はそうでもありません。A銀行では融資を断られたのに、B銀行では借りられた、ということはあるものです。融資の可否に違いが生じるのはなぜなのか。

目次

同じように見えて、実は違う。

銀行は、どこも同じように見えて、実はそうでもないことがあります。

たとえば、融資の可否。会社が融資を受けるにあたって、「A銀行では断られたのにB銀行では借りられた」ということはあるものです。ゆえに、1つの銀行に断られたからといって、必ずしもあきらめる必要はありません。

にもかかわらず、あきらめてしまうことがないように。銀行によって融資の可否が違う理由を、社長は理解しておきましょう。ではなぜ、銀行によって違いが生じるのか?

おもには、次のとおりです↓

銀行によって融資の可否が違うなぜ
  • 基準の差
  • タイミング
  • 優先順位

それではこのあと、順番に解説をしていきます。

銀行によって融資の可否が違うなぜ

基準の差

融資審査には「基準」があります。その基準は、すべての銀行において「おおむねいっしょ」と言ってよいでしょう。ですが、「完全にいっしょ」ではありません。

なので、A銀行では融資NGでも、B銀行ではOKということはありえます。たとえば、「債務償還年数」という指標について。借入余力をあらわす指標であり、算式は次のとおりです↓

債務償還年数 = 借入金残高 ÷(税引後利益 + 減価償却費)

とはいえ、これは「基本」の算式であり、銀行によっては「借入金残高」から「現金預金残高」をマイナスしたり、「運転資金分の借入金残高」をマイナスしたりします。

ちなみに、それらをマイナスする(借入金がないものとみなす)のは、現金預金があればその分は回収可能であり、運転資金分の借入金は売掛金や棚卸資産の現金化によって回収可能だからです。

だとすれば、現金預金残高や、運転資金分の借入金残高をマイナスする銀行のほうが、債務償還年数が良くなる(短いほど良い)ので、会社にとっては借りやすいということになります。

この点、銀行担当者に計算方法をたずねてみるのも、1つの方法です。門外不出というものでもありませんから、場合によっては教えてくれることもあります。

そのうえで、会社にとって有利な基準の銀行に、融資を申し込むのもよいでしょう。

もちろん、基準は債務償還年数だけではないので、他も考慮する必要はあります。ここで大事なのは、銀行によって「基準の差」があって、融資の可否に違いが生じうるということです。

なお、そもそも論として、都市銀行は決算書の良し悪しに対する比重が高く、信用金庫・信用組合はその比重が低めであり、地方銀行はそのあいだくらい、という違いもあります。

イメージとして、決算書の評価が融資審査全体に占める割合は、都市銀行は9割、地方銀行は8割、信用金庫・信用組合は7割といった具合です。

つまり、信用金庫・信用組合であれば、残り3割くらいは「決算書以外の要素(将来性、社長の個人資産など)」で評価をします。ゆえに、決算書の内容に不安がある会社は、信用金庫・信用組合のほうが借りやすいわけです。

タイミング

銀行には、貸したいタイミングがあり、そのタイミングは銀行ごとに異なります。では、銀行が貸したいタイミングとはいつなのか?典型例が、ノルマが未達のタイミングです。

最近では、ノルマを廃止する銀行も増えていますが、まったくなくなったわけでもありません。よって、ノルマが未達のために「なんとか貸したい…!」と考えている銀行(支店)もあります。

そういった銀行からは、借りやすいと言ってよいでしょう。融資審査が少々甘くなる傾向にあるからです。これに対して、ノルマを達成している銀行(支店)であればどうでしょう。

無理をして融資をする必要はありませんから、審査が甘くなることもありません。むしろ、次回のノルマへの影響を考えて、融資を控えることさえあります(ノルマを大きく超えた実績を挙げると、次回のノルマを厳しく設定される)。

このあたり社長は、ふだんから銀行担当者とのコミュニケーションを通じて、各取引銀行(支店)のようすに探りを入れておくことが大切です。

ノルマは基本的に、銀行の決算時期(四半期ごと)に応じて設定されるものですが、どのタイミングで「貸したい」と考えるかは、銀行(支店)ごとに差が生じるものでもあります。

わりと決算近くになってから、あわてて動き出すような銀行(支店)もあれば、四半期のはじめから積極的に動き出す銀行(支店)もあるからです。やはり、銀行員とのコミュニケーションを通じて、ようすをつかむのがよいでしょう。

この点、銀行から融資セールスがあったときにはチャンスです。つまり、銀行のほうから融資提案があるということは、「貸したい」ということであり、「借りやすい」ということになります。

このチャンスを断っておきながら、のちのち、融資を申し込んで断られているのでは悪手です。いずれ融資を受ける「可能性」があるのなら、融資提案は受けることをおすすすめします。

優先順位

銀行(支店)や、銀行担当者ごとに、優先順位があります。数ある案件のうち、どの案件から優先的に取り組むか、ということです。

なので、同じタイミングで融資を申し込んだとしても、対応が早い銀行もあれば、あとまわしにされて遅くなる銀行もあります。とはいえ、優先順位をこちらからコントロールできるものでもない…

かといえば、けしてそうとも言い切れません。優先順位を引き上げる手段はあります。それは、銀行担当者が「稟議書を書きやすい状況」をつくることです。具体的に、どういうことなのか?

端的にいえば、審査に必要な書類を、きちんともれなく準備することです。たとえば、試算表や資金繰り表、借入金一覧表などを、最新情報に更新された状態で提供できるかどうか。

そういった書類が準備できないと、銀行担当者は稟議書を書くにも、アタマを悩ませることになります。アタマを使うばかりでなく、足りない情報を補うために手も動かさなくてはなりません。

こうなるとメンドーなので、後回しにされる可能性が高まります。銀行員はみな忙しいのです。そのうえノルマを課されていれば、取り組みやすい案件から手をつけるのは当然でしょう。

そこを理解していない社長は、けして少なくありません。スムーズに融資を受けたいのであれば、銀行担当者に「協力する姿勢」が重要になります。

なので、ろくろく書類も準備をせずに、「ちっとも融資をしてくれない!」などと怒っているのはお門違いです。銀行の優先順位は、社長の姿勢しだいだと考えるようにしましょう。

まとめ

銀行は、どこも同じように見えて、実はそうでもありません。

A銀行では融資を断られたのに、B銀行では借りられた、ということはあるものです。というわけで、融資の可否に違いが生じるのはなぜなのかについてまとめました。

1つの銀行に断られただけであきらめることがないように、銀行ごとに違いが生じる理由を理解しておきましょう。

銀行によって融資の可否が違うなぜ
  • 基準の差
  • タイミング
  • 優先順位
銀行によって融資の可否が違うなぜ

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