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利上げによって高まる、インタレスト・カバレッジ・レシオの重要性

利上げによって高まる、インタレスト・カバレッジ・レシオの重要性

日銀が、マイナス金利の解除を決めました。今後、利上げがはじまる状況において、これまでよりも重要性が高まる財務指標があります。ずばり、インタレスト・カバレッジ・レシオです。

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聞いたことくらいはあります。

2024年3月、日銀はマイナス金利の解除を決めました。これにより、今後は利上げに向かうこととなります。そのような状況のなか、とある財務指標の重要性が高まっていることはご存知でしょうか。

その財務状態とは、ずばり、インタレスト・カバレッジ・レシオです。

いやいや、何それー!と、おもわれる社長もいらっしゃるかもしれません。聞いたことくらいはあるかもしれませんが、いったい何だったっけ?という社長がほとんどだとおもわれます。

なので、いまのうちに思い出しておきましょう。そして、なぜいま、インタレスト・カバレッジ・レシオの重要性が高まっているのかを理解しておきましょう。今後の経営判断や、財務戦略を考えるうえで、必ずや役立つはずです。

インタレスト・カバレッジ・レシオって何だっけ?

インタレスト・カバレッジ・レシオとは、なんとも大仰な名称です。英語だから、ということも多分にあるでしょう。なので、まずは日本語訳にしてみます。すると…

  • インタレスト → 支払利息
  • カバレッジ → カバー範囲
  • レシオ → 割合

といった感じです。これらをつなげてみると、「支払利息のカバー範囲の割合」とりますが。いっそうわけがわからなくなったじゃないか!ということでもあります。

だったら、算式にしてみましょうか…ということで、次のとおりです↓

インタレスト・カバレッジ・レシオ =(営業利益 + 受取利息 + 受取配当金)÷ 支払利息

やれやれ、ますますよくわからん…という声が聞こえてきそうです。ここで、少し算式をシンプルにしてみることにしましょう。

受取利息とは、おもに預金利息です。マイナス金利の解除もあって、預金金利も上がっているとはいえ、たかが知れているといってよいでしょう。(現状、普通預金で0.02%とか)。なので、預金金利はないものとして無視します。

また、受取配当金は、株式投資をしている場合の配当などをいうわけですが、中小企業が積極的に株式投資をしているケースは限られますので、やはりないものとして無視しましょう。

すると、インタレスト・カバレッジ・レシオの算式は、次のとおりです↓

インタレスト・カバレッジ・レシオ = 営業利益 ÷ 支払利息

ちなみに、営業利益とは「売上高 ー 売上原価 ー 販売管理費」で計算されます。その営業利益から、支払利息をマイナスしたものが「経常利益」です。よくわからなければ、自社の決算書(損益計算書)で確認をしてみましょう。

そのうえで、「営業利益 ÷ 支払利息」が何を示すのか?これだけシンプルになれば、もうわかりますよね。営業利益は支払利息の何倍あるか?です。でも、それが何だというのか?

先に、結論をいいます。営業利益は支払利息の1倍以上が「絶対」です。でもなぜ、1倍以上でなければならないのか?逆に、1倍未満になるとはどういうことなのかを考えればわかります。

営業利益が支払利息の1倍未満とは、言い換えると、「営業利益 < 支払利息」です。さきほど、「営業利益 ー 支払利息 = 経常利益」だといいました。「営業利益 < 支払利息」の場合、経常利益がマイナス(赤字)になってしまいます。

経常利益とは、自社の経常的な収益力を示す重要指標であり、黒字であってしかるべき。少なくとも銀行は、融資審査をするときにはそのような見方をしています。

繰り返しですが、インタレスト・カバレッジ・レシオが示すのは、「営業利益は支払利息の何倍あるか?」です。1倍以上は「絶対」としたうえで、あとはどれだけ余裕を持てるかどうか。

インタレスト・カバレッジ・レシオの値(倍数)が大きいほど、利息を支払う余裕があるということになります。それが、前述した「支払利息のカバー範囲の割合」の意味するところです。つまり、支払利息を営業利益でどれだけカバーできているか。

なぜいま、インカバの重要性が高まっているのか

というわけで、インタレスト・カバレッジ・レシオ(略称:インカバ)がそもそも何なのかがわかりました。では、なぜいま、インカバの重要性が高まっているのか?

インカバが何なのかがわかったいまとなっては、それも愚問というものでしょう。これからは、利上げがはじまるのであり、支払利息が増えていくことが予想されるからです。

政策金利が上がり、融資金利も上がれば、支払利息の金額が増えていきます。このとき、営業利益が変わらなければ、インカバは悪化する(値が小さくなる)ことがわかるでしょう。ひいては、経常利益がマイナス(赤字)になるわけです。

したがって、インカバは今後の利上げにどれだけ耐えうるか(黒字を維持できるか)をはかる指標でもあります。これまでのような「超低金利時代」に比べて、今後は、インカバの重要性が高まることが理解できるはずです。

営業利益や経常利益が、黒字がよいのはもちろんとして、あわせてインカバにどれくらいの余裕があるかにも注目をするようにしましょう。

具体的には、自社の決算書から過去数年分のインカバを比較してみたり、同業他社の平均値(ネットで検索)と比較してみたりがおすすめです。

インカバを良くするにはどうするか

自社のインカバを把握しておしまい、ではありません。さいごは、そのインカバを良くするにはどうするかを考えることが必要です。ここで、インカバの算式を再掲します↓

インタレスト・カバレッジ・レシオ = 営業利益 ÷ 支払利息

この値を良くする方法は2つです。営業利益を増やすか、支払利息を減らすか。

結論、営業利益を増やしましょう。支払利息を減らすのは得策ではありません。この点、支払利息を減らす方法はおもに2つ、借入金利を引き下げるか、借入額を減らすかです。

まず、借入金利の引き下げについて。もちろん、必要以上に引き上げられるのは困りますが、世の中の金利上昇に見合った金利であれば、それはやむなしでしょう。にもかかわらず、銀行に対して執拗に引き下げを迫れば、「だったら貸さない」となりかねません。

その結果、資金繰りが悪化しているようでは本末転倒です。

借入額を減らそうとするのも、似たようなことだといえます。利息負担を惜しんで借入を減らすあまり、資金繰りが悪化して、社長が資金繰りで悩んだり、動いたりする時間が増える…その結果、経営にたずさわる時間が減って、利益が減少するのではやはり本末転倒です。

よって、インカバを良くするにあたり、金利を下げるのは二の次、借入を減らすのは三の次くらいに考えておきましょう。では、インカバを良くするにはどうしたらよいのか。

答えはひとつ、営業利益を増やすことです。もう少しいうと、「利益率を上げる」ことです。

これに対して、「売上を増やして利益を増やす」ということだと、値引きをしてでも売上を増やすということにもなりがちであり、すると、利益率が下がってしまいます。

利益率が下がれば、同じ利益額を得るにも大きな売上が必要となり、大きな売上をあげるためには、リソース(人手や手間、時間)を要するものですから、会社は疲弊しやすくなるものです。

では、利益率を上げるにはどうすればよいか?いちばんに考えるべきは「値上げ」です。自社の商品やサービスの価格を見直しましょう。

あえて乱暴にいうのであれば、まず値上げです。値上げによって利益率が上がれば、利益率が下がるのとは逆に、リソースに余裕ができます。その余裕を源泉にして、付加価値を上げることができれば、値上げをしても顧客離れを抑えることもできるでしょう。

付加価値が上がったことで、顧客の満足度が上がれば、さらなる値上げにもつながり好循環です。

まとめ

日銀が、マイナス金利の解除を決めました。今後、利上げがはじまる状況において、これまでよりも重要性が高まる財務指標があります。ずばり、インタレスト・カバレッジ・レシオです。

そもそも、インタレスト・カバレッジ・レシオとはどういうものなのか。そして、なぜいま、インタレスト・カバレッジ・レシオの重要性が高まっているのかを理解しておきましょう。今後の経営判断や、財務戦略を考えるうえで、必ずや役立つはずです。

利上げによって高まる、インタレスト・カバレッジ・レシオの重要性

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