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メインバンクから金利引き上げを打診された場合、企業の8割は受け入れる

メインバンクから金利引き上げを打診された場合、企業の8割は受け入れる

マイナス金利が解除となり、借入金利の引き上げが迫っています。とある調査によれば、メインバンクから0.1%の金利引き上げを打診された場合、受け入れる企業は8割。では0.5%なら…?

目次

0.5%引き上げを許容できる会社は2割のみ

先日(2024年4月12日)、東京商工リサーチから次のような調査結果が公表されていました↓

メインバンクから借入金利について、現状から0.1%上昇を打診された場合、「受け入れる」との回答は77.3%に達した。

というわけで、メインバンクから金利引き上げを打診された場合、それが0.1%の上げ幅であれば、およそ8割の会社は受け入れるということです。

ご存知のとおり、マイナス金利も解除となり、中長期的には政策金利の上昇が見込まれることから、金利引き上げに対する「企業側の許容度は上昇している」との記述もあります↓

なお、金利の上げ幅がもっと大きい場合はどうなのか。調査結果によれば…

0.3%の上昇では37.3%、0.5%の上昇では19.1%だった。

とのことであり、当然ながら、上げ幅が大きくなるほど受け入れる会社は少なくなります。なお、受け入れられない場合はどうするのか?

これまた調査結果によれば、「他行へ調達を打診する」のが次善策であり、次いで「借入を断念する」のであることがわかります。とはいえ、メインバンクが金利の引き上げを提示している状況で、他行の金利がそれを下回るのかははなはだ疑問です。

そもそも、世の中の金利が上がっていくのであれば、会社側が金利を引き下げようにも限度があるでしょう。以上をふまえて、現状、「0.5%ていど」までは引き上げを許容すべきというのが私見です。

もちろん、銀行側の引き上げ理由を確認したうえではありますが。

それはさておき、調査結果によれば、0.5%の金利引き上げを許容できる会社は2割弱です。では、どうしたら許容できるようになるのか。具体的には次の3つのステップで考えましょう↓

借入金利引き上げを許容するステップ
  1. 増加する利息額をシミュレーションする
  2. 必要な利益率を計算する
  3. 利益率を上げる施策を検討し、実行する

それではこのあと、順番に確認をしていきます。

借入金利引き上げを許容するステップ

1.増加する利息額をシミュレーションする

あたりまえのハナシですが、借入金利の引き上げがあれば、会社が支払う利息が増えます。では、借入金利の引き上げによって、実際にどれだけの利息が増えるのか?

金利(率)にばかり注目し、具体的な金額までは把握をしていない会社が少なくありません。これでは、許容できるかどうかの判断をするにも「判断材料が不足している」といえるでしょう。

というわけで、まずは、金利引き上げによって増加する利息額をシミュレーションです。といっても、難しいことはありません。現状の借入残高に対して、引き上げされた金利を掛け算して計算すればよいだけです。

たとえば、いま現在の借入残高(総額)が5,000万円だとして、0.5%の金利引き上げを想定するなら、年間で増加する利息額は「5,000万円 × 0.5% = 25万円」です。

いやいや、毎月返済をしているのだから、5,000万円はだんだん減っていくだろう。と、おもわれるかもしれませんが。返済が進めば(借入残高が減れば)、また借り直すものですから、借入残高は変わらないと見るほうが現実的です。

そのうえで、25万円という金額を見てどう考えるのか。もしかすると、「意外と、それほど大きな金額でもないな」ということかもしれません。ひと月あたりにしたら2万円強であり、なんとかなりそうにもおもえるでしょう。

というわけで、利息は「金利(率)」ばかりではなく、「金額」でも確認をすることが大切です。にもかかわらず、金利ばかりに気を取られ、躍起になって銀行と金利交渉をするのではデメリットをこうむりかねません。

交渉するにも、社長の時間・労力がかかりますし、交渉される銀行側はおもしろくないわけで。結果として、銀行との関係性が悪化すれば、以降の融資が受けにくくなるのはデメリットです。

2.必要な利益率を計算する

では、金利引き上げによって、年間25万円の利息が増えることがわかったとして。次に考えるべきは、「必要な利益率」です。どれだけ利益率を上げれば、25万円の利息をまかなえるのか?

もちろん、コスト削減によってまかなうという考え方もありますが、コスト削減にも限度があります。いまは、金利の上げ幅を0.5%と見ていても、いずれは1%、2%…ということだってありうるハナシです。

そうなれば、コスト削減では追いつかず、利益率を考えなくてはならなくなります。なお、ここでいう利益率とは、「売上総利益率(粗利益率)」のことです。

「売上総利益 = 売上高 − 売上原価」であり、売上総利益率は「売上総利益 ÷ 売上高」で求められます。

では仮に、年間の売上高が1億円だとしたら、25万円の利益(25万円の利息をまかなうための)を増やすためには、売上総利益率を0.25%引き上げればよいことがわかるでしょう(25万円 ÷ 1億円)。

それくらいであれば、0.5%の金利引き上げを許容できそうだとの判断ができるかもしれません。そのうえで、0.5%までではなくとも、たとえば0.3%くらいの引き上げを許容すれば、銀行としても喜ばしいことであり、今後も良い関係を築きやすくもなります。

ところが、金利引き上げを許容するのに必要な利益率もわからず、ただただ「金利引き上げ」という言葉尻に抵抗感を示すばかりだと、銀行との関係性が悪化するのは前述したとおりです。

金利引き上げを許容するか、どこまで許容できるかは「数字」で判断するようにしましょう。

3.利益率を上げる施策を検討し、実行する

必要な利益率の計算ができたらそれでおしまい、ではありません。実際に利益率をそこまで上げられるように、施策を検討し、実行するところまでがステップです。

では、利益率(売上総利益率)を上げるのにどのような施策があるのか?大きく2つです。1つは、売上を増やすこと。もう1つは、売上原価を下げること。

このうち、後者には限度があります。売上原価を下げるとは、仕入れ値を引き下げるということであり、引き下げが過度になると品質が悪化することに繋がり、結果、売上が減るのでは本末転倒だからです。

よって、利益率を上げる施策は、原則、売上を増やすこと。それも、値上げによって売上を増やすことです。

いっぽうで、数量を増やす施策もありますが、数量を売るには「コスト」や「リソース」を要するものです。在庫管理コストが増えたり、社員の労働時間が増えたり…それらも、品質・サービスの悪化に繋がりやすく、いずれ売上が減るようでは困ります。

では、値上げならどうでしょう。値上げをした分、少ない数量でも売上を増やすことができます。すると、さきほどとは逆で、コストやリソースの削減が可能です。削減できたおカネやリソースを、商品・サービスの付加価値アップに充てれば、さらに値上げもできます。好循環です。

これなら、金利引き上げが続いたとしても、対応できる可能性が高まります。つまり、いまは、金利引き上げにより必要な利益率が0.25%でも、このさきは0.5%、1%、1.5%…と上がっていくかもしれず。それでも、「値上げ→付加価値アップ」の循環であれば、持続できるということです。

ところが、値上げを避け、付加価値アップを怠り、仕入先に値下げを強いるばかりでは、どこかで限界を迎えてしまいます。利益率を上げる施策は、値上げを軸に考えましょう。

まとめ

マイナス金利が解除となり、借入金利の引き上げが迫っています。とある調査によれば、メインバンクから0.1%の金利引き上げを打診された場合、受け入れる企業は8割です。では0.5%なら…?

というわけで、借入金利の引き上げをあるていど許容できるにはどうしたらよいか、その考え方のステップを押さえておきましょう。

借入金利引き上げを許容するステップ
  1. 増加する利息額をシミュレーションする
  2. 必要な利益率を計算する
  3. 利益率を上げる施策を検討し、実行する
メインバンクから金利引き上げを打診された場合、企業の8割は受け入れる

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