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社長が知らない攻めの銀行借入

社長が知らない攻めの銀行借入

中小企業の銀行借入について。守りのイメージを持つ社長は多いようですが、攻めのイメージを持つ社長は少ないようです。が、銀行借入には攻めの役割もありますよ、というお話をします。

目次

守りのイメージが強い銀行借入

日々、中小企業の銀行借入について発信をし、銀行借入をおすすめもしているわけですが。意外と多くの社長が知らないようだと感じていることに、「攻めの銀行借入」があります。

ひとくちに銀行借入といっても、攻めの銀行借入と守りの銀行借入があって、守りのイメージは強く持っているようだけど、攻めのイメージはだいぶ弱いようだ…みたいな。

ちなみに、攻めや守りとはどういうことなのか。

守りのほうは、会社がピンチのときでも、銀行借入によるおカネがあれば、そのあいだはしのぐこともできるよね、というものです。これは、多くの社長がイメージできています。

いっぽうで、攻めのほうはというと。自社の成長に向けた「投資」をするにあたって、先立つものはおカネであり、このとき銀行借入によるおカネがあれば、即座に投資が可能です。

だから、攻めのチャンスを逃さぬためにも、ふだんから借りられるうちに借りられるだけ借りておきましょう、といったハナシをわたしはしています。が、このイメージをお持ちの社長は少ないらしい、というのが肌感覚です。

そこで、攻めの銀行借入について、もう少し具体的なお話をしてみることにします。次のとおりです↓

社長が知らない攻めの銀行借入
  • 売上増加
  • 新規事業
  • 業績悪化時の姿勢

このあと、順番に確認していきましょう。

社長が知らない攻めの銀行借入

売上増加

経験としてわかっている社長もいるものとおもいますが、売上増加時には資金繰りが悪くなるものです。経験がない社長からすると、「おいおい、そんなバカな!」と、おもわれるかもしれません。

だって、売上が増えれば利益も増えて、おカネも増えるのだから、資金繰りが良くなるに決まっている。たしかに、「長期的」に見ればそのとおりです。ところが、「短期的」には資金繰りが悪くなります。

まず、売上が増えると「売掛金」が増えるからです。売掛金とは、売上代金のツケであり、入金されるのを待っている金額です。いっぽうで、売上を増やすための仕入や人件費などの支払いが選考することから、売上が増えているあいだは資金繰りが悪くなるのです。

また、売上が増える過程では、在庫(棚卸資産)も増える傾向があります。売上が増えれば、早く商品が売れていることになりますから、在庫を増やしておかないと品切れを起こしかねません。なので、売上が増えているあいだは、在庫も増えていくのです。

その在庫もまた、販売されておカネになるのを待っている金額ですから、在庫が増えれば増えるほど資金繰りは悪くなっていきます(在庫するにあたって、仕入代金の支払いも必要だし)。

というわけで、売上を増やすにあたっては、おカネの手当てをしておくことが大切です。その手段が銀行借入であり、これを怠れば、最悪の場合には黒字倒産も起こりえます。

売上増加を「攻め」と捉えるのであれば、そのための銀行借入は「攻めの借入」です。売上増加を狙うのであれば、「事前」に銀行借入をできるようにしましょう。あらかじめ資金の手当てができていれば、思い切って売上増加にのぞめるはずです。

ちなみに、売上増加にともなう銀行借入は、「増加運転資金の借入」と呼ばれます。売上増加の根拠資料(受注書や受注見込みリストなど)を用意して、銀行に借入の相談をしましょう。

増加運転資金について、くわしくは別の記事も書きました。ご参考にどうぞ↓

新規事業

会社が、新規事業の検討を必要とするときもあるでしょう。というか、会社の持続・成長を前提にするのであれば、新規事業の検討は常に必須です。

これだけ変化の速い時代にあって、いつまでも同じ商売が成り立つほうが不自然だといえます。実際、新型コロナの折には、生活様式の変化によって既存の商売が成り立たない事態となりました。

このとき、すばやく新規事業に舵を切った会社は生き残ることができ、旧態依然の商売を続けた会社は、コロナが収束したいまもなお厳しい状況にある…というのは、よく聞くハナシでもあります。

また、次々と新規事業に挑む会社は、ただ生き残るだけではなく、むしろ、大きく成長を遂げているというケースも少なくありません。とはいえ、新規事業をはじめるにもおカネがかかる…

ゆえに、そのときにおカネがないと結局は何もできない、手詰まりだということはあるでしょう。だったら、やはり、ふだんから借りられるときに借りられるだけ借りておくことです。

いまは不要だとおもえるようなおカネも、借りられるときに借りて、手元に置いておくことができれば、いざ新規事業をはじめようというときにも、おカネで躊躇することはなくなります。

もちろん、新規事業をはじめようというタイミングで銀行借入をすればいい、との考え方もあるでしょう。ところが、そのときに銀行が貸してくれるかはわかりません。貸してくれるとしても、審査には相応の時間もかかります。

そのあいだに、タイミングを逃してしまった…ということはあるものです(良い出店場所があったのに、ほかの人に押さえられてしまったとか)。

それに、銀行は「新規事業をはじめるのでおカネを貸してください」というと、警戒をするものでもあります。新規事業は「はじめての挑戦」ですから、失敗する可能性も高いからです。なので、ふだんから、手元のおカネを積み上げておくようにしましょう。

業績悪化時の姿勢

新規事業の話をしました。この点、業績悪化時のときほど、新規事業への挑戦が必要だともいえます。新型コロナの例を挙げたとおりです。

ところが、会社におカネがない場合、社長は「攻めの姿勢」を持ちづらくなる傾向があります。おカネがないから、新規事業に投資するおカネがない…ということもありますが、それとは別に「マインド(心持ち)」の問題として、新規事業がおっくうになるということです。

会社にじゅうぶんなおカネがなく、仕入代金や人件費などの支払いに窮するようになれば、社長は資金繰りの心配をしなければいけません。心配だけではなく、資金繰りのために動く必要もあるでしょう。

その結果、心身が疲労してしまい、時間を使っていては、新規事業を検討するエネルギーも時間もない…ということになってしまいます。すると、会社の状況はますます悪くなるでしょう。

なので、業績悪化時であっても、社長が「攻めの姿勢」を崩さぬように、手元のおカネを増やしておくことをおすすめします。つまり、ふだんから、借りられるときに借りられるだけ借りておくことです。

一例として、年間売上高の半分くらいの預金を持っている会社がありました。業績悪化の傾向が見られたものの、当面の資金繰りには支障がないことから、躊躇なく人材採用を進められました。結果、売上回復(というよりも、以前より売上増加)。

「おカネを持っていてよかった。持ってなければ、何もできずに、さらに状況が悪くなっていた」というのが、社長の言葉です。

まとめ

中小企業の銀行借入について。守りのイメージを持つ社長は多いようですが、攻めのイメージを持つ社長は少ないようです。が、銀行借入には攻めの役割もありますよ、というお話をしました。

事業を持続・成長させるうえで、攻めも必要です(旧態依然 ≒ 衰退)。攻めるにあたって先立つものはおカネ、だとすれば、銀行借入を活用していきましょう。

社長が知らない攻めの銀行借入
  • 売上増加
  • 新規事業
  • 業績悪化時の姿勢
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