現金が足りない! 現金が多い!
そんな「現金と帳簿のズレ(現金過不足)」についての仕訳や原因についてお話をしていきます。
「現金と帳簿が合わない」のは、現金を持つ経理の宿命
経理で「現金(いわゆる、現ナマ)」を扱っていると。「現物と現金出納帳が合わない!」ということが起こりえます。
つまり。現金出納帳の残高よりも、現物の残高が少ない! あるいは、現金出納帳よりも現物の残高が多い! という事態です。
困った経理担当者がまずやるべきことは原因究明なのですが、究明できなかった場合はどうしたものか…
ということで。本記事では、「なぜ現金は帳簿とズレてしまうのか」という原因と、ズレについての仕訳・経理についてお話します。
加えて、「現金なんて使うのをやめたらどう?」という提案もしていきます。そもそも現金が無ければ、「ズレ」も生じませんから。
そんな本記事のお話の流れは次のとおりです ↓
- 現金が足りないときの経理《 雑損失 》
- 現金が多いときの経理《 雑収入 》
- 【注意】現金過不足をカンタンに「雑損失・雑収入」で処理しない
- 【提案】そもそも現金を使わなければいい
現金が足りないときの経理《 雑損失 》
「現金出納帳の残高よりも、現物の残高が少ない!」というときの経理について見ていきます。まずは仕訳から。
現金が足りないときの「仕訳」
通常、2段階での仕訳になります。現金が足りないことがわかったとき、その原因がわからないとあきらめたとき、の2段階です ↓
《 現金が足りないことがわかったとき 》
仮払金 xxx / 現金 xxx
《 その原因がわからないとあきらめたとき 》
雑損失 xxx / 仮払金 xxx
現金が足りないことがわかったときと、その原因がわからないとあきらめるのが同時であれば、2段階ではなく1発仕訳でこうなります ↓
雑損失 xxx / 現金 xxx
以上のとおり、現金が足りないということは現金出納帳の残高が現物よりも多いということなので、「雑損失」を相手勘定科目にして、現金出納帳の残高を減らします。
足りない現金について具体的にふさわしい勘定科目がないために、しかたなく「雑損失」で… という経理処理になります。
現金が足りないときの「原因」
仕訳に続いて、原因を考えてみます。なぜ、現金は足りなくなってしまうのか?
これがわかれば「雑損失」で処理しなくても済むわけですから、きちんと押さえておきましょう。次のとおりです ↓
- 領収書やレシートを精算する際、誤って、それらに記載された金額よりも多く出金してしまった
- 領収書やレシート無しで、おカネだけを出金してしまった
上記の①は、従業員などが立て替えた経費を精算する場面をイメージしてみましょう。
従業員から提出された領収書やレシートを、経理担当者が精算して出金するときに、精算金額を間違えて多く支払ってしまうというケースです。
出金後、領収書やレシートの金額どおり正しく現金出納帳に記録をすることで、現物と帳簿とのあいだにズレが生じます。
②は、従業員が領収書やレシートの提出は後回しの状態で、経理担当者が出金をする場面をイメージしてみましょう。
出金時に経理担当者が、「領収書やレシートを受け取ってから現金出納帳に記録しよう」と考えていた場合、この時点で現物と帳簿にズレが生じます。
その後、従業員が領収書やレシートの提出してくれればよいのですが失念してしまうと… ズレたまま。経理担当者も経緯を忘れてしまう、ということがあります。
現金が多いときの経理《 雑収入 》
「現金出納帳の残高よりも、現物の残高が多い!」というときの経理について見ていきます。まずは仕訳から。
現金が多いときの「仕訳」
通常、2段階での仕訳になります。現金が多いことがわかったとき、その原因がわからないとあきらめたとき、の2段階です ↓
《 現金が多いことがわかったとき 》
現金 xxx / 仮受金 xxx
《 その原因がわからないとあきらめたとき 》
仮受金 xxx / 雑収入 xxx
現金が多いことがわかったときと、その原因がわからないとあきらめるのが同時であれば、2段階ではなく1発仕訳でこうなります ↓
現金 xxx / 雑収入 xxx
以上のとおり、現金が多いということは現金出納帳の残高が現物よりも少ないということなので、「雑収入」を相手勘定科目にして、現金出納帳の残高を増やします。
多い現金について具体的にふさわしい勘定科目がないために、しかたなく「雑収入」で… という経理処理になります。
現金が多いときの「原因」
仕訳に続いて、原因を考えてみます。なぜ、現金は多くなってしまうのか?
これがわかれば「雑収入」で処理しなくても済むわけですから、きちんと押さえておきましょう。次のとおりです ↓
- 領収書やレシートを精算する際、誤って、それらに記載された金額よりも少なく出金してしまった
- 入金に関する書類無しで、おカネだけを入金してしまった
上記の①は、前述した「現金が多いときの原因①」の逆バージョンですから、これ以上の説明は省きます。
②は、なにかしらの現金を受け取る(たとえば、現金売上)際に、現金出納帳への記載を後回しにするケースをイメージしてみましょう。
このとき、入金の事実を示す書類(たとえば、領収書の控え)などをもとに、経理担当者は後日、現金出納帳への記録を行うことになります。
ところが、入金の事実を示す書類が無い、経理担当者が受け取っていないという場合、現金と帳簿とのあいだにズレが生じます。
【注意】現金過不足をカンタンに「雑損失・雑収入」で処理しない
さきほど、「現金と帳簿が合わない(現金過不足)」という場合の、仕訳についてお話をしました。
仕訳だけの話であれば、現金と帳簿のズレを合わせるのはカンタンです。2本もしくは1本の仕訳で済んでしまいます。
ところが、コトの本質はそれほどカンタンではありません。
なぜなら、現金と帳簿がズレるということは、「現金管理の状況に問題がある」ということの表れだからです。
現金と帳簿のズレによる「雑損失・雑収入」の金額が大きい、あるいは、ズレが生じる頻度が高いとなれば、経理に対する信頼度は下がってしまいます。
会社組織の経理であれば、内部統制の不備ということになるでしょう。対税務調査の観点で言えば、税務署の警戒を招くことは避けられません。
ゆえに、現金と帳簿のズレを、仕訳でカンタンに片づけるのではなく。現金管理における問題を明らかにする、という姿勢が大切です。
組織ではなく、個人に責任を負わせる
「現金管理における問題を明らかにする」という姿勢について。現金と帳簿のズレの責任を、組織(会社)ではなく、個人に負わせるという考え方があります。
たとえば。現金が足りないというケースにおいて。それは、「現金を扱う経理担当者(あるいはその上司など)の責任だ」と考えるということです。
つまり。現金が足りない(帳簿よりも少ない)分は、責任者の個人的負担で入金をしてもらうことでズレを解消します。
これを仕訳で表わすと次のとおりです ↓
《 現金が足りないことがわかったとき 》
仮払金 xxx / 現金 xxx
《 現金が足りないことを個人に責任を負わせるとき 》
貸付金 xxx / 仮払金 xxx
以上のとおり、責任者への「貸付金」として仕訳します。その後、責任者から返済をしてもらうという流れです。
なお、逆に、現金が多いときは「借入金」になるのかというとそれはありません。責任者からおカネを借りたわけではないからです(返すのもヘン)。
いずれにせよ。現金と帳簿のズレについては、意識も体制もきびしく改善が求められるところです。
【提案】そもそも現金を使わなければいい
さいごに、ひとつ提案です。現金と帳簿のズレが生じるのは、経理で「現金」を持つからです。
もしも、現金を持たない、扱わないというのであれば。現金出納帳は不要であり、現金と帳簿のズレは起きようもありません。
現金管理の意識や体制の問題に挑むよりも、そもそも現金を持たないほうが解決は早く、容易です。
- いままでずっと、経費は現金払いをしてきた
- いままでずっと、現金で経費精算をしてきた
という過去の慣習があるのであれば、思い切ってやめてみることを検討してみましょう。
「そんなのムリ」という考え方を、いちどリセットしてみることです。こんなことが考えられます。
- 経費はなるべく、銀行振込やクレジットカード払い、電子マネー決済などにする
- 経費の精算は、現金ではなく、給与支払時に併せて銀行振込にする など
現金は手軽に扱えてしまう分だけ、間違いを起こしやすいのが欠点です。現物管理という手間もあります。
繰り返しになりますが、過去は過去として、これから先の経理についてをあらためて考えましょう。
まとめ
現金が足りない!現金が多い!(現金過不足)ときの仕訳・経理について、お話をしてきました。
現金過不足については、現金を持つ経理の宿命です。避けては通れません。
徹底した現金管理で乗り切るか、現金を持つことをやめるか。
現金過不足が生じたことを機に、検討してみましょう。
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きょうの執筆後記
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