取引先の経費を立替払いしたときの仕訳は2通り【フリーランスの経理】

立替払い経費の仕訳




” 取引先の経費を立替払いしたときの仕訳ってどうするの…? ”

それ、「フリーランスの経理あるある」ですね。立替払いをしたときの仕訳は、ケースバイケースで2通り。というお話をしていきます。

経費を立替払いしたときの仕訳は「2通り」ある

フリーランスがお客さまから受注する仕事について、経費を立替払いするケースがあります。

受注した仕事を進めるにあたりかかった経費(の一部)を、あとからお客さまに請求できるというケースです。

この「立替払い」の仕訳には、「2通り」あります。と言っても、どっちか好きなほうでやればよいわけではありません。

立て替えた経費の種類に応じて、2通りの仕訳を「使い分ける」のが基本です。まとめるとこうなります ↓

立替払い経費の仕訳【使い分け】
  • 純粋な立替払い経費 → 「立替金」の勘定科目を使った仕訳
  • 不純な立替払い経費 → 「立替金」の勘定科目を使わない仕訳

「純粋」な立替払い経費はともかく、「不純」っていったいなんなんだろうね? という思いはありますが。

これら2つ(純粋な立替え経費、不純な立替え経費)の使い分けとその仕訳について、このあとお話をしていきます。

 

「純粋」な立替払い経費の仕訳

2通りある立替払い経費の仕訳のうち。まずは、「純粋」な立替払い経費のほうから見ていきましょう。

純粋な立替払いとは?

さっそくですが。純粋な立替払いとは? についてまとめてみます ↓

  • お客さまが使うモノの代金を立替払いした
  • お客さまが使うサービスの料金を立替え払いした

ポイントは、「お客さまが使う」というところです。

モノであれば。たとえば、お客さまが使う資料用書籍を立替払いで購入。その書籍は最終的にお客さまのもとにわたる、というようなケース。

サービスであれば。たとえば、お客さまが利用するシステム利用料を立替払い。そのシステムはのちほどお客さまが利用する、というようなケース。

これら、立替払いの対象(モノ・サービス)を使うのがお客さまである場合には、「純粋」な立替払いと定義します。

いっぽうで。くわしくは後述しますが、「不純」な立替払いとはお客さまが使うのではなく、実は自分(立替払いした人)が使っているケースです。

たとえば、交通費。お客さまの仕事のために立替払いした交通費であっても、電車やバスに乗ってサービスを受けているのは自分です。お客さまではない。これは「純粋」な立替払いではありません。

「立替金」の勘定科目を使った仕訳

それでは、「純粋」な立替払い経費についての仕訳を見ていきましょう。「立替えたとき」と「立替えた金額が入金されたとき」に仕訳が必要です。

【立替えたとき】

例)お客さまのところでセミナーをするときに使う資料として、書籍(単価 1,500円)10冊を現金払いで購入しました。

勘定科目(借方) 金額 勘定科目(貸方) 金額
立替金 15,000 現金 15,000

【立替えた金額が入金されたとき】

例)立替払いしていた書籍代 15,000円が銀行口座に入金されました。

勘定科目(借方) 金額 勘定科目(貸方) 金額
普通預金 15,000 立替金 15,000

以上2つの仕訳を経て、「立替金」はゼロになっておしまいです。

【補足】利益を乗せている場合

上記の例示で、1冊 1,500円の書籍について、お客さまからは1冊 2,000円で入金をしてもらっている場合。つまり、「利益」が乗っている場合。

それはもう立替金ではありません。書籍の購入は「仕入」であり、お客さまからの入金は「売上」です。立替金は利益ゼロ、金額が「行って来い」の関係にある場合に限られます。

領収書・レシートは取引先に渡す

「純粋」な立替払いをした際の領収書・レシートは、取引先(お客さま)に渡します。

さきほどお話をしたとおり、「お客さまが使う」に対するモノ・サービスの領収書・レシートだからです。

立替払いをした側(フリーランス)は、参考資料としてそれら領収書・レシートのコピーをとっておくとよいでしょう。

ちなみに。「純粋」な立替払いをした際の領収書に「宛名」を記載してもらうのなら、厳密に言えば「取引先名」ということになります。

もし、立替払いをした側(フリーランス)の氏名が宛名になっていたとしても、実務的に大きな問題になることはないとは思いますが念のため。

 

「不純」な立替払い経費の仕訳

2通りある立替払い経費の仕訳のうち。続いて、「不純」な立替払い経費のほうを見ていきましょう。

不純な立替払いとは?

前述した純粋な立て替払いに対して、不純な立替払いとは? についてまとめてみます ↓

  • 自分が使うモノの代金を立替払いした
  • 自分が使うサービスの料金を立替え払いした

ポイントは、「自分が使う」というところです。立替払いでありながらも、結局使っているのは「自分」というところ。

モノであれば。たとえば、受注した仕事で使う資料用書籍を立替払いで購入。その書籍は自分が読み、自分が持っているというようなケース。

サービスであれば。たとえば、受注した仕事をするにあたっての交通費を立替払い。電車やバスに乗るのは自分、というようなケース。

立替払いの飲食代なんかもこれにあたります。飲食したのはお客さまではなく、自分です。

これら、立替払いの対象(モノ・サービス)を使うのが自分である場合には、「不純」な立替払いと定義します。

前述の「純粋」と、ここでの「不純」との違いは、「誰が使うのか?」にあります。

お客さまが使うモノ・サービスの立替払いなら「純粋」、自分が使うモノ・サービスの立替払いなら「不純」です。

「立替金」の勘定科目を使わない仕訳

それでは、「不純」な立替払い経費についての仕訳を見ていきましょう。「立替えたとき」と「立替えた金額が入金されたとき」に仕訳が必要です。

【立替えたとき】

例)受注した仕事での移動交通費として、電車代 3,000円を現金で支払いました(お客さまに立替経費で請求できる)。

勘定科目(借方) 金額 勘定科目(貸方) 金額
旅費交通費 3,000 現金 3,000

「不純」な立替払いの場合には、上記のとおり、「立替金」の勘定科目は使いません。

代わりに、支払内容に応じた「経費の勘定科目」を使います。交通費であれば「旅費交通費」、接待飲食代であれば「接待交際費」、書籍であれば「新聞図書費」など。

再三の繰り返しになりますが、取引先から入金されるとはいえ、純粋な立替ではなく、あくまで自分が使った経費でしかないからです。

【立替えた金額が入金されたとき】

例)立替払いしていた移動交通費 3,000円が、売上 100,000円といっしょに銀行口座に入金されました。

勘定科目(借方) 金額 勘定科目(貸方) 金額
普通預金 103,000 売上 103,000

「不純」な立替払いの場合、取引先(お客さま)から入金される金額は「売上」です。

立て替えたときには「経費」にしたのですから、入金されたときには「収入(売上)」にすることで対応させます。

このとき、税金の対象になる「利益(収入ー経費)」は影響を受けません。上記の例で言えば、経費も売上も3,000円ですから、相殺されて利益はゼロです。

利益がゼロという点では、「立替金」を使う場合と変わるところはありません。

じゃあ、別に「立替金」を使った仕訳だっていいじゃないか! ということについては後述します。

領収書・レシートは自分が持つ

「不純」な立替払いをした際の領収書・レシートの原本は、自分が持ちます。

立替払いとは言いながらも、「自分が使った」に対するモノ・サービスの領収書・レシートだからです。

したがって、取引先に対しては、その領収書・レシートのコピーを渡すようにしましょう。

 

「立替金」の勘定科目を使うも使わないもいっしょ! とは言えないケース

以上、立て替えた経費の種類に応じて、2通りの仕訳を「使い分ける」のが基本だというお話をしてきました。

とはいえ。こと「利益」の金額については、2通りある仕訳のどちらを使おうと変わりません。

利益の金額が変わらない、つまりは税金の金額は変わらない。だったら仕訳はどっちだっていいだろう、という件について補足しておきます。

どっちでもよくない消費税問題

利益の金額が変わらないから税金の額が変わらない、という場合の税金とは「所得税・住民税・個人事業税」を指します。

これら3つの税金は、利益に対して課税をするというタイプの税金です。

これに対して、利益ではなく、売上の金額で計算をする税金があります。消費税です。

売上の金額が変わると、国に納めるべき消費税の金額も変わることがあります(とくに簡易課税を採用している場合)。

くわしいことは省略をさせていただきますが、売上の金額しだいで消費税額が変わりうるということがポイントです。

もともと消費税の納税が必要ないフリーランス(2年前の年間売上が1,000万円以下)であれば問題にはなりませんが、消費税の納税が必要なフリーランスは気をつけなければいけません。

具体的には、2通りの仕訳を正しく使い分けるということです。

【補足】納税義務の判定にも注意

2年前の年間売上が1,000万円を超えるか否かで消費税の納税義務を判定します。この「判定」自体においても、仕訳の使い分けが影響することは押さえておきましょう。

年間売上が1,000万円以下なので納税義務なしと思っていたけれど。本来「売上」で仕訳すべきところを「立替金」で仕訳していた… というようなケース。

正しく仕訳をしたら、実は消費税の納税義務者でした! ということもありえますので、年間売上が1,000万円に近いときにはとくに注意が必要です。

オマケに源泉徴収問題

売上(報酬)から源泉徴収をされているフリーランスの場合。立替金についてはどう扱うのか? という問題があります。

結論としてはこうなります。2通りです。 ↓

  • 「純粋」な立替金 → 源泉徴収の対象にならない 
  • 「不純」な立替金 → 源泉徴収の対象になる

わたしの経験上、「純粋」「不純」のどちらも「立替金」を使って仕訳され、源泉徴収の対象にしていないケースが多いように見受けられます。

たとえば、移動交通費。「立替金」として仕訳(本来、「売上」)をし、取引先から入金をされる際にも源泉徴収をされていない(本来、源泉徴収対象)。

つまり、2通りの仕訳も、2通りの源泉徴収もごっちゃごちゃになっているわけです。けれども、正しくは上記のとおりです。

「純粋」な立替金は、仕訳上も報酬(売上)ではなく、実質的にも報酬(売上)ではないのですから源泉徴収の対象ではありません。

いっぽうで、「不純」な立替金は、仕訳上も報酬(売上)であり、実質的にも報酬(売上)なのですから源泉徴収の対象になります。

立替払い経費の源泉徴収金額はそれほど大きくならないことも多く、実務上は問題になっていない・ならないことも多いのですが。正しい考え方については押さえておきましょう。

 

まとめ

取引先の経費を立替払いしたときの仕訳は2通り、についてお話をしてきました。

正しくは2通りを使い分けるべきなのですが、わりと使い分けがなされず、「立替金」で仕訳をしていることが多いようです(経験上)。

それでも影響がないケースは多いのですが、影響があるケース(消費税、源泉徴収)には注意が必要です。

2通りの仕訳の正しい使い分けを覚えておきましょう。

 

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  きょうの執筆後記
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ABOUTこの記事をかいた人

税理士ブロガー。銀行融資、税理士いらずの経理の立ち上げを得意にする、横浜市の諸留誕税理士事務所・所長。2016年4月、18年間の「勤め人」を脱して独立開業。以来、ブログを毎日更新中!