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資金使途とは違う『融資事由』を銀行に伝える方法

資金使途とは違う『融資事由』を銀行に伝える方法

借りたおカネをなにに使うのか(資金使途)と、なぜおカネが必要なのか(融資事由)とはイコールではありません。

というわけで。資金使途とは違う「融資事由」を銀行に伝える方法について、お話をしていきます。

目次

資金使途 ≠ 融資事由

会社が融資を受けようとするときに、銀行から必ず聞かれることとして「資金使途」が挙げられます。資金使途、つまり、おカネの使いみち。借りたおカネをなにに使うのか? ということです。

そんな資金使途と似て非なるものに、「融資事由」があります。融資事由とは、平たくいえば、なぜおカネが必要なのか? です。それって、資金使途と同じことじゃないの? と思われるのであれば違います。

借りたおカネをなにに使うのか(資金使途)と、なぜおカネが必要なのか(融資事由)とはイコールではありません。

したがって、会社は銀行に対して、資金使途に加えて融資事由を伝えるのがベストです。ところが実際には、そのあたりがよくわからないために融資事由を伝えられず、うまく融資が受けられない… という会社もあるでしょう。

そこで。資金使途とは違う「融資事由」を銀行に伝える方法について、3つのケース別にお話をしていきます↓

資金使途とは違う「融資事由」を銀行に伝える方法
  • 設備資金の場合
  • 運転資金の場合
  • 赤字補てん資金の場合

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

資金使途とは違う「融資事由」を銀行に伝える方法

設備資金の場合

設備資金、という資金使途があります。設備資金とは、設備(不動産、機械設備、クルマ、備品類など)を購入するためのおカネです。

したがって、銀行に「借りたおカネをなにに使うのか?」と聞かれたら、会社は「設備資金です」と答えることになります。では、資金使途が設備資金である場合の「融資事由(なぜおカネが必要なのか)」は何なのか?

それは、「事業を持続・成長させるため」です。あらたな設備投資をすることで、あらたな利益を獲得する。その利益をもって、事業を持続・成長させる。そのためにおカネが必要だ、ということになります。

この点で、銀行が考えているのは「設備投資が妥当かどうか」です。その設備投資が、ほんとうに事業の持続・成長に役立つのかよ? ということです。会社はそこを銀行に伝える必要があります。

では、設備資金の場合に、融資事由を銀行に伝える方法とは。「設備投資計画書(事業計画書)」です。具体的には、以下のような内容を盛り込んだ計画書を銀行に提示することになります↓

  • 投資の必要性(なぜいま投資するのか)
  • 投資内容の妥当性(たとえば高性能すぎる機械でないか)
  • 投資による利益(いくらの利益を見込んでいるか)
  • 返済の可能性・安全性(何年で返済できるか)

これらによって、その設備投資が会社にとって必要なものであることを伝えるようにしましょう。

なお、設備投資以前に会社が赤字だと、銀行は設備資金の融資を躊躇します。なぜなら、貸したおカネが赤字補てんに使われてしまう可能性があるからです。また、過去の設備投資がうまくいかなかったことによる赤字であれば、今度も失敗するんじゃないか。だったら貸せない、ともなるでしょう。

よって会社は、現状の好調や順調をアピールできるような、過去の設備投資の成果をアピールできるような資料もとりまとめて、準備しておくのがおすすめです。

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運転資金の場合

運転資金、という資金使途があります。運転資金とは、さきほどの設備資金以外のおカネ。たとえば、仕入代金や諸経費の支払いをするためのおカネが運転資金です。

したがって、銀行に「借りたおカネをなにに使うのか?」と聞かれたら、会社は「運転資金です」と答えることになります。では、資金使途が運転資金である場合の「融資事由(なぜおカネが必要なのか)」は何なのか?

それは、「入金と支払のズレを補うため」です。商品・サービスが売れても、代金が入金されるまでには時間がかかります(現金商売は別として)。いっぽうで、入金されるまでにも、仕入代金の支払いや、給料・家賃など経費の支払いはあるものです。

この入金と支払のズレ分だけ、会社は資金が不足します。だから、おカネが必要なんです。ということを、銀行に伝える必要があります。

この点で、銀行が考えているのは「どれだけのズレがあるのか?」です。どれだけの入金があって、どれだけの支払があって、結果、どれだけのズレが生じるのか。そのズレ分であれば融資をしてもいい、と銀行は考えています。逆に、ズレ分以上の運転資金の融資はしたくない・できない。

では、運転資金の場合に、融資事由を銀行に伝える方法とは。ひとつは、決算書や試算表です。それらから、「売上債権(売掛金・受取手形)+たな卸資産(在庫)ー仕入債務(買掛金・支払手形)」の算式で計算した金額を「運転資金(入金と支払のズレ)」と見ることができます。

このあたり、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓

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ただ、算式で求められる金額は「信用性」に疑問が残ります。なぜなら、決算書や試算表に掲載された売掛金のなかには、取引先が倒産して回収できないものがあるかもしれない。もっと言えば、架空債権(架空売上)だってあるかもしれない。

また、たな卸資産も同じように、不良在庫や架空在庫があるかもしれません。だとしたら、算式の結果を鵜呑みにはできない。というのが、銀行の不安・心配になります。

その不安・心配を解消するために、会社は「取引先一覧表」や「在庫一覧表」を銀行に提示するのがよいでしょう。

取引先一覧表には、売上先や仕入先の名称を記載します。加えて、売上先であれば「締日・入金日(回収条件)」を、仕入先であれば「締日・支払日(支払条件)」も記載します。これであれば、銀行は決算書や試算表の売上債権・仕入債務の妥当性を検討できるでしょう。

また、在庫一覧表には、決算書や試算表のたな卸資産の内訳(品名・数量・単価)を記載します。内訳に加えて、各品名ごとに一定期間の入出庫状況まで記載するのがベストです。入出庫があるということは、そのたな卸資産が「実在する・売れている」ということですから、銀行の不安・心配を軽減できます。

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赤字補てん資金の場合

資金使途は、大きく分けると「設備資金」と「運転資金」の2つなのですが。細かく見た場合には、運転資金のなかに「赤字補てん資金」というものがあります。文字どおり、赤字を補てんするためのおカネです。

そんなおカネを銀行から借りられるのか? と思われるかもですが。銀行も、やむなく貸すことはあります。赤字の会社には原則貸せないけれど、貸さずに倒産されてしまうのも困るので… といったところです。

というわけですから、表立って「赤字補てん資金」という資金使途はありません。銀行から資金使途を聞かれたときに、会社が「赤字補てん資金です」と答えるのは無しです。表向きは、「運転資金」になることを覚えておきましょう。

では、資金使途が赤字補てん資金である場合の「融資事由(なぜおカネが必要なのか)」は何なのか?

言うまでもありませんが、「過去の赤字を補うため」です。赤字によって、おカネの流出が続いてしまった。資金繰りが厳しくなってしまった。だから、おカネが必要なんです。ということを、会社は銀行に伝える必要があります。

この点で、銀行が考えているのは「その赤字は解消するのか?」です。過去の赤字はしかたないにしても、これから先はだいじょうぶなのか。黒字になる見込みがあるのなら、融資を検討できる。赤字のままなら、融資をするわけにはいかない。銀行は、そんなことを考えています。

では、赤字補てん資金の場合に、融資事由を銀行に伝える方法とは。経営改善計画書です。赤字の原因を明らかにして、黒字に転換するための行動を記載した経営改善計画書が必要になります。この計画書の内容に妥当性がなければ、融資を受けることはできません。

なお、具体的には次のような内容を、経営改善計画書に折り込みます↓

  • 会社概要・・・役員、株主構成、ビジネスモデルなど
  • 現状分析・・・どのような窮状にあるのか
  • 課題・問題の提示・・・窮状に陥った原因はなにか
  • 解決策の提示・・・立て直すためにすべきこと
  • 具体的な行動計画・・・「いつから、だれが、なにを、いつまでに、どうする」など明確に
  • 利益計画・・・おおむね5年分
  • 資金計画・資金繰り表・・・おおむね5年分

大きな赤字が出ている、赤字が続いているにもかかわらず。経営改善計画書もなしに、融資を受けようとする会社もありますが。それはとても、分が悪い勝負だと言えますので気をつけましょう。

銀行融資のためばかりではなく、会社自身が黒字化の実行可能性を高めるためにも、経営改善計画書をつくることをおすすめします。経営改善計画書について、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓

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まとめ

借りたおカネをなにに使うのか(資金使途)と、なぜおカネが必要なのか(融資事由)とはイコールではありません。

資金使途とは違う「融資事由」を銀行に伝える方法について、押さえておきましょう。うまく伝えられるかどうかは、融資の受けやすさに影響するところです。

資金使途とは違う「融資事由」を銀行に伝える方法
  • 設備資金の場合
  • 運転資金の場合
  • 赤字補てん資金の場合
資金使途とは違う『融資事由』を銀行に伝える方法

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