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資金繰り表をつくれる、とはどういうことか?

資金繰り表をつくれる、とはどういうことか?

ウチの会社は資金繰り表をつくれます! とおもわれるかもしれませんが。実際には、ポイントを外している資金繰り表はあるものなので気をつけましょう、というお話をしていきます。

目次

それを、つくれるとは言わない。

社長が会社を経営するうえで、資金繰り表が重要であることに異論はないでしょう。なぜ、重要なのか? 資金繰りが破たんすれば、会社はおしまいだからです。ゆえに、資金繰りを管理するための資金繰り表が重要になります。

では、その資金繰り表について。「ウチは資金繰り表をつくっているし、つくれる!」と、おもわれるかもしれませんが。実際には、「それを、つくれるとは言わない」というケースはあるものです。

そこで、「資金繰り表をつくれる」とはどういうことなのか? をお話ししてみます。結論として、ポイントは5つ。以下のポイントをすべて押さえていてこその資金繰り表です↓

資金繰り表をつくれる、のポイント
  1. 残高維持
  2. 税金計算
  3. 借入計画
  4. 実績比較
  5. 毎月更新

これらを見て、「えっ、どういうこと?」とおもうものがあれば、このあとの話を確認しておくようにしましょう。ポイントを外していると、資金繰りに支障をきたすばかりではなく、銀行からも信頼性の低い資金繰り表と見られて、資金調達にまで支障をきたします。

資金繰り表をつくれる、のポイント

残高維持

まずは、もっとも大事なポイントから。資金繰り表に記載される「預金残高」は、その残高を維持する。もう少し正確に言うと、維持が最低限であり、できる限り増加を計画しましょう。

そもそも、資金繰り表(月次)は、「前月の預金残高 = その月の入金 ー その月の出金 = その月の預金残高」という計算の過程と結果を、向こう6ヶ月〜1年分ていど記載する書式です。

したがって、資金繰り表の最下段には「毎月末の預金残高」が並び、その最右端は、6ヶ月後なり1年後なりの月末預金残高が記載されることになります。

その金額と、いま現在の預金残高とを比べたときに、最低でも残高を維持できるように。できる限り、いま現在の預金残高よりも、増加するように計画すること。これが、ポイントです。

この点で、資金繰り表の最右端の預金残高が、いま現在の預金残高よりも減ってしまう資金繰り表が散見されます。これでは、なんのために資金繰り表をつくっているかわかりません。

冒頭でもふれたとおり、資金繰りが破たんすれば会社はおしまいなのですから、資金(預金残高)を維持する・増加させるための資金繰り表を計画しましょう。

もちろん、「テキトーに入金を増やしてしまえ」みたいな数字遊びではいけません。入金を増やすための「具体的な行動計画」があってこそです。数値計画と行動計画はセットで考えましょう。

税金計算

資金繰り表をつくるときに、抜け落ちるとマズいものとして「税金」が挙げられます。会社であれば、法人税や消費税、源泉所得税など。利益が出ているときなどは、税金が多くなりがちですから、見落としていると資金繰りで慌てることになりかねません。

ところが、税金計算がいい加減な資金繰り表はあるものです。金額が間違っているだけではなく、金額そのものが考慮されていないケースもあります。法人税や消費税などは、難しい計算・わかりづらい計算もあるでしょうから、顧問税理士に確認をとるのがおすすめです。

なお、法人税や消費税は、途中で納付する「予定申告分」と、決算のときに納付する「確定申告分」とがあります。この点で、資金繰り表が1年未満の期間を対象にしていると、年間の税額がわからないので不便です。

いっぽうで、向こう1年の資金繰り表をつくっていれば、年間の税額を把握することができます。というわけで、資金繰り表をつくるなら、「向こう1年分」をつくるのがおすすめです。

借入計画

資金繰り表のなかには、借入計画も折り込みましょう。つまり、「いつ・いくら借りるか」を、資金繰り表に記載するということです。そのうえで、銀行に資金繰り表を見せて「良いご提案があればお願いします」と伝えておきます。

銀行から見れば、「時間的余裕をもった、計画的な借入」という印象になるのがメリットです。逆に、「いますぐ貸して」と融資を依頼すれば、銀行からは警戒されてしまうので気をつけましょう。

銀行に、借入計画の説明をするときには「資金使途(借りたおカネの使いみち)」も伝えることが大切です。大きく分けて、2つ。設備投資のための借入か、それ以外の運転資金のための借入か。資金繰り表を見ればわかるところではありますが、自主的に説明できるようにしておきましょう。

また、資金繰り表には「借入(入金)」だけではなく、その「返済(出金)」も記載します。ひとまず計画として、希望の返済期間に応じた毎月の返済額を記載しておけばだいじょうぶです。利息については、金利2〜3%くらいの概算で記載しておくとよいでしょう。

以上の借入計画をふまえたうえで、前述した「残高維持」ができるかどうかになります。

実績比較

ここまでお話をしてきた資金繰り表は、「予定」あるいは「計画」です。向こう1年の資金繰り表をつくるのであれば、それはまだ「予定」や「計画」であって実績ではありません。

だとすれば、その予定や計画は信頼に足るものなのか? いい加減なものであれば、社長は経営判断を間違えることになりますし、銀行は融資を躊躇することになるでしょう。

なので、資金繰り表は「信頼」を担保するものでなければいけません。とはいえ、どうやって? 1つの方法が、「実績」を付け加えることです。

資金繰り表は通常、左から右に向かって時間軸が流れます(1月、2月、3月…)。この点で、資金繰り表の左端には、過去3ヶ月の資金繰り実績を記載します。その続きとして、向こう1年の資金繰り予定を記載する、という書式がおすすめです。

これだと、過去3ヶ月分の実績値と、向こう1年の予測値との比較ができるので、「大きなズレ」や「違和感」に気づきやすくなります。

それから、もう1つ。資金繰り予定に対しては、その後の実際の数値(実績)との比較をするようにしましょう。つまりは、「答え合わせ」です。予定と実際の数値に差が大きいようであれば、今後の資金繰り予定を検討する際の「情報」として役立ちます。

予定と実際の数値との比較、検証を続けることで、資金繰り予定の精度は高まるものです。

毎月更新

資金繰り表のポイント、さいごにもう1つ。それは、毎月更新をすることです。資金繰り表をいちどつくったきり、というケースもありますが。資金繰り表はいちどつくっておしまい、ではありません。

ひと月がおわったら、前述したとおり「実際の数値との比較・検証」をしたうえで、資金繰り表を1ヶ月分更新します。つまり、さらにもう1ヶ月先の資金繰り予定を検討する、ということです。これができれば、常に1年先の資金繰りを見通すことができます。

1年先まで資金繰りが回るとわかれば、社長の資金繰りに対する不安はだいぶ減るはずです。実際に、資金繰りに使う時間も減りますから、より経営に集中することができます。結果、業績が上がり、資金繰りはさらに良くなれば好循環です。

また、資金繰り表を毎月更新していれば、いつどんなタイミングでも、銀行に対して「最新の資金繰り表」を渡すことができます。銀行が融資の可否を検討するうえで、資金繰り表は有用な情報になるため、積極的に提出していきましょう。

まとめ

ウチの会社は資金繰り表をつくれます! とおもわれるかもしれませんが。実際には、ポイントを外している資金繰り表はあるものなので気をつけましょう、というお話をしてきました。

自社でつくる資金繰り表が、5つのポイントを押さえているかどうか確認してみましょう。より精度が高い資金繰り表、より確度が高い資金調達に役立つはずです。

    資金繰り表をつくれる、のポイント
    1. 残高維持
    2. 税金計算
    3. 借入計画
    4. 実績比較
    5. 毎月更新
資金繰り表をつくれる、とはどういうことか?

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